亀井亨(Dr)|絶妙なバランスで20年間やってきた感じ

僕が作ってるメロディって変なんじゃないか

──アルバムが完成しました。手応えはいかがですか?

うーん、そうですね。「できたな!」って感じですね。

──今回前作と違う手応えなどは?

「Arma」とかでホーンを使ったり、バンドとしてはそういうことをやったりしましたけど、作り方とかは前回と変わってないですね。

──今回亀井さん作曲の曲が多いですね。11曲中7曲を作られています。

そうですね。がんばってできました(笑)。

──普段はどんな形で曲を持っていくんですか?

デモテープを家で作るんですけど、完成型というわけではなくて。デモテープを作って、みんなに聴いてもらって、そこから広げていくという形です。

──そのデモテープにはコード進行があって、リズムがあって……。

あとメロディですかね。曲作りは僕にとっては、メロディを作ってる作業ですかね。

亀井亨(Dr)

──以前、自分の役割はメロディのある歌モノを作ることだと話されていましたが、それは今回も変わらず?

そうですねえ。自分は歌モノ、メロディのあるものが得意なんです。最近はセッションで作ったりもするんで。メロディアスじゃないものは、セッションでできればいいなと思ってやってますね。

──今回亀井さんの曲が多いってことは、メロディアスな曲を作ることにバンドの意識が向いていたんでしょうか?

バンドで話はしなかったんですけどね。素直に、できるものを持って行こうと思ってました。

──どんどん湧いてきた?

いやあ、全然。けっこうひねり出して。

──でもそんな作業を繰り返しながら2年に1枚以上のペースで作っている。

そう。もう20年くらいやってますけど、そんなにバリエーションがないんですね、自分は。出てくるものはそんなに変わらなかったりするんで、とっかかりをちょっと変えてみたりしてます。最近はパソコンのソフトで作ったものもあるし。以前はギターを持って弾き語りで作ってたんですけど、やっぱり同じもんしか出てこなかったりするんで、アプローチの仕方を変えたりしましたかね。「ソープオペラ」とかは、シーケンスがずっと入ってるんですけど。アルペジエーターみたいな。僕がそういうのを家で打ち込んでっていう作業から始めて。それは本チャンでも生かされてますね。結果的にそんなにいつものと変わらないものができてるかもしれないですけど、入り口が違う分、多少は変わってるかもしれない。

──バンドの中でご自分は歌うわけではない、歌う方は別にいらっしゃるという状態で、メロディを作るときは何を考えながら作ってるんですか?

けっこう何作っても田中くんが歌ってくれるんで、あんま考えてないですね。

──歌いこなしてくれる?

田中くんがすごい器用なんで、ほぼ僕のメロディを汲み取って歌ってくれるんです。でも、僕が作ってるメロディって変なんじゃないかって思います。変って言うか難しいんだろうなって。田中くんだから歌えてるのかなって。

──どういうところが難しいんですか?

人がたまにバインの曲を歌ってるのを聴くんですけど、全然歌えてない人が多いので、あんまり素直なメロディじゃないと思うんですよね。コードとメロディの関係性かもしれないですけど。でも田中くんは歌ってくれるので、僕はそこは気にせず作ってます。

──田中さんのキーだけ頭に入れて、あとはなんでもやってくれと。

そうですね。僕がめちゃくちゃ歌ってても汲み取ってくれます。

──あ、デモテープはご自分で歌ってるんですか?

歌ってます。すごいちっちゃい声でボソボソ歌ってるんですけど、それを1オクターブ上げたら田中くんのキーになるという。うまくできてると言うか。

──では、作曲家としては自由にやれている。

あと持って行ってからだいぶ変わることもあるので、アレンジとか。メロディも意図的に変える場合もあるし。そこはわりと余白を残して。

──亀井さんが持って行った曲をみんなで寄ってたかってああだこうだと発展させていく?

そうですね。まったく原型をとどめないくらい変わったりすることもありますし、忠実にやるときもあります。

──そこで自分のこだわりは貫きたい?

そういう曲も稀にありますね。たまにちゃんと細かめにデモテープを作ったりするんですけど、そうすると、そのデモテープの印象を大事にしたいって話になって、それが生かされることが多いです。こだわりがある場合は、細かめに録ったりします。

ストレートに男らしくやったらいいんじゃないか

──デモテープの完成度が高すぎると、バンドとしてのアプローチが難しくなるという面もありますね。

僕のはあんまりクオリティは高くないです(笑)。田中くんは高いクオリティのを持ってきたりしますね。やっぱり歌う人ですし、ちゃんとしたものを持ってくる。ただ、なかなか難しいんですよね。かっちりしたものを持っていくとそれにならって演奏しちゃう。デモよりよくなってほしい気持ちがあるので、あんまり作り込み過ぎてないデモテープがいい場合もあるんですよね。

亀井亨(Dr)

──なるほど。「Arma」はシングルにもなって、非常にインパクトのある曲ですが、原型はどんな感じだったんですか?

これは僕も全然作り込まずに、コードとメロディとリズム、本当に簡単なのを入れてそれをバンドに持っていったんです。いつもならそこから変えていくんですけど、でも「Arma」に関しては、ストレートに男らしくやったらいいんじゃないかって。

──ストレートに亀井さんが作ってきたままをやろうと?

そうですね。ホンマに、Oasisみたいにギターをかき鳴らして。ホーンが入ってますけどこれは高野勲さんのアイデアで。こういうストレートなもののうえにホーンが乗ってるのが面白いんじゃないかというアイデアで成り立ちました。

──これだけ派手にホーンの音が鳴ってるのってなかったですよね。

なかったです。楽しかったですねえ、うん。曲が華やかになりますしね。

──ほかに、これは作ってみて面白いできになったという曲は?

「世界が変わるにつれて」って曲はガラッと変わりました。最初はもっとこう、弦の低い音とか、アコースティックギターのアルペジオとかわりと淡々とした感じで作ってたんですけど、「フリーな空気感が命」みたいな曲に変わって。演奏するのはすごく難しかったですけど。

──そういうアレンジを組み立てていくときはバンドでスタジオに入って音を出しながら作り上げていく?

レコーディング入る前にスタジオに入ってプリプロをするんですけど、そこで構成を決めたりアレンジを決めたりします。それで演奏して、最近はパソコン上で切ったり貼ったりできるので、最後まで構成を考えたりしながらやってますね。

GRAPEVINE「ROADSIDE PROPHET」
2017年9月6日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
GRAPEVINE「ROADSIDE PROPHET」20th Anniversary Limited Edition

20th Anniversary
Limited Edition [CD+DVD]
4320円 / VIZL-1216

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GRAPEVINE「ROADSIDE PROPHET」通常盤

通常盤 [CD]
3240円 / VICL-64820

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CD収録曲
  1. Arma
  2. ソープオペラ
  3. Shame
  4. これは水です
  5. Chain
  6. レアリスム婦人
  7. 楽園で遅い朝食
  8. The milk(of human kindness)
  9. 世界が変わるにつれて
  10. こめかみ
  11. 聖ルチア
20th Anniversary Limited Edition付属DVD収録内容
  • GRAPEVINE STUDIO LIVE 2017
    1. 覚醒
    2. EAST OF THE SUN
    3. KOL(キックアウト ラヴァー)
    4. Arma
    5. スロウ
    6. CORE
    7. 吹曝しのシェヴィ
    8. 放浪フリーク
  • 「Arma」music video
  • RECORDING DOCUMENT 2017
GRAPEVINE Tour 2017
  • 2017年10月5日(木)東京都 LIQUIDROOM
  • 2017年10月7日(土)新潟県 新潟LOTS
  • 2017年10月8日(日)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
  • 2017年10月14日(土)兵庫県 Kobe SLOPE
  • 2017年10月15日(日)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
  • 2017年10月21日(土)熊本県 熊本B.9 V1
  • 2017年10月22日(日)鹿児島県 CAPARVO HALL
  • 2017年10月27日(金)岡山県 YEBISU YA PRO
  • 2017年10月28日(土)愛媛県 松山サロンキティ
  • 2017年11月5日(日)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2017年11月11日(土)岩手県 Club Change WAVE
  • 2017年11月12日(日)宮城県 Rensa
  • 2017年11月18日(土)福岡県 BEAT STATION
  • 2017年11月19日(日)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2017年11月23日(木・祝)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2017年11月24日(金)大阪府 NHK大阪ホール
  • 2017年11月26日(日)石川県 金沢EIGHT HALL
  • 2017年12月1日(金)東京都 東京国際フォーラム ホールA
GRAPEVINE(グレイプバイン)
GRAPEVINE
田中和将(Vo, G)、西川弘剛(G)、亀井亨(Dr)の3人からなるロックバンド。1993年に元メンバーの西原誠(B)を含めた4人で結成。1997年にミニアルバム「覚醒」でデビューし、1999年リリースの3rdシングル「スロウ」が大ヒットを記録する。2002年に西原がジストニアのため脱退して以降は、高野勲(Key, G)、金戸覚(B)をサポートメンバーに加えた5人編成で活動を続けている。2010年にはギタリスト / プロデューサーの長田進と「長田進 with GRAPEVINE」名義でアルバム「MALPASO」を制作。2012年にメジャーデビュー15周年を迎え、9月に初のベストアルバム「Best of GRAPEVINE 1997-2012」を発表した。2014年11月にビクターエンタテインメント内のSPEEDSTAR RECORDSへ移籍し、2015年1月に移籍第1弾シングル「Empty song」収録曲を含むアルバム「Burning tree」をリリース。また2016年2月には高野寛をプロデューサーに迎えて制作されたシングル曲「EAST OF THE SUN」「UNOMI」などを含むアルバム「BABEL,BABEL」を発表した。デビュー20周年を迎える2017年には対バンツアー「GRUESOME TWOSOME」を開催し、9月に通算15枚目のオリジナルアルバム「ROADSIDE PROPHET」をリリース。