GRANRODEO×「ロストマインズ」直監督|キャリア15年、初の試み!音楽×ショートムービーで描く青春物語

GRANRODEOがコンセプトミニアルバム「僕たちの群像」を3月10日にリリースした。

本作ではオリジナル脚本のショートムービーを軸に楽曲を書き下ろすという、GRANRODEOの15年のキャリアでも初の試みが行われている。ショートムービーは4人の高校生たちが、事故で亡くなった生徒・鳴海司の願いを探す群像劇。GRANRODEOは青春感のある物語を全5曲で彩っているほか、作中に教師役で出演している。

ショートムービーのメガホンを取ったのは、嵐やRADWIMPSなど数々のアーティストのミュージックビデオを手がけてきた直監督。音楽ナタリーではGRANRODEOと直監督の対談を行い、映像と音楽が見事に融合する本作について語り合ってもらった。

取材・文 / 須藤輝

無謀な企画だな

──ミニアルバム「僕たちの群像」は、オリジナル脚本のショートムービーを元に新曲を書き下ろすという形で制作されたとのことですが。

e-ZUKA(G) 最初は僕も「なんのこっちゃ?」という感じだったんですよ。でも脚本を読ませていただいて、この内容だったら普通の5曲入りミニアルバムじゃなくて全曲が作品に沿った形の、いわゆるサウンドトラックみたいなものにしたほうがいいのかなって。

KISHOW(Vo) 企画の発案自体は僕らじゃなくて、スタッフからの提案だったんですけど「まだやってないことがあったんだな」と思いましたね。15年活動してなお、また新しいことができるというので勝手にわくわくしてました。

──そのショートムービーの監督に直さんが抜擢されたと。

 去年お話をいただいて、無謀な企画だなと(笑)。僕も10年以上ミュージックビデオを撮ってきているのですが、やっぱりショートフィルム的な作品の制作はどうしても物理的に時間がかかるんですよ。しかも今回はMVと違って楽曲もない、ゼロからのスタート。僕にとっても初めての経験だったので、まなべゆきこさんという、実写映画「心が叫びたがってるんだ。」など、青春映画を多く手がけていらっしゃる脚本家の方に入っていただいて。

──完成したショートムービー「ロストマインズ」は、事故で亡くなった高校生・鳴海司をめぐる群像劇ですね。

 このコロナ禍という状況で、音楽の力で人をポジティブなほうに向かわせる何かを描けないかというのが最初にありつつ、とはいえ単にご陽気な物語にはしたくなかったんですよね。あと、僕は「ブレックファスト・クラブ」という1980年代のアメリカの青春映画が好きで。この映画はスポーツマン、ガリ勉、不良、お嬢さま、不思議ちゃんというまったく接点のない5人の高校生の男女が、休日に補習授業を受けることで徐々に心を通わせていくみたいな話で、いわゆるスクールカーストを初めて本格的に描いた映画だと思うんです。そういう話をまなべさんともしながら脚本を練っていき、あらかたできたところでGRANRODEOのお二人にお渡ししました。

KISHOW いただいた脚本には“世界線”というワードが出てきたんですけど、世界線をテーマにした作品は僕も大好きで、アニメ「STEINS;GATE」あたりからそういう作品に親しんできたんですよ。それに加えて、学生諸君が主役の群像劇という、これまた自分が観る側として好きだったストーリーで。それが今回、自分らが携わる側に回るという点で、ちょっと肩に力が入る感じは正直ありました。

 そうだったんですね。しかも、脚本ができたところでGRANRODEOさんは楽曲制作を、僕らは映像制作をそれぞれ同時にスタートさせる感じだったんですよね。

KISHOW でも案の定というか、うちは曲先なんですけど、e-ZUKAさんがいかにもあの登場人物の子たちっぽい曲を上げてきたので「やっぱりそうだよね!」って(笑)。我が意を得たりというか、そこからは非常に取り組みやすかったですね。

とにかく「青春!」です

e-ZUKA 脚本の第1稿を読ませていただいたのが、去年の11月23日で。その日は僕らの結成15周年記念の配信番組があったんですけど、その控え室でスタッフから台本を渡されて、読んだ瞬間にその場で曲ができましたね。

 すごい(笑)。

e-ZUKA それが「未来線を上って」なんですけど、この曲はあくまで「ロストマインズ」のテーマソングであることを重視したので、GRANRODEOの新曲として新しいことに挑戦するとか、何かトリッキーなことをやるとかそういうことは一切せずに、もう「青春です!」と。なんなら「高校生でもがんばったら弾けるかな?」とか、高校生バンドにカバーされることまで想定してね(笑)。

 正直、GRANRODEOさんはロックとして主張が強い音楽性をお持ちなので、この脚本で大丈夫なのかって心配だったんです。でも、僕が「未来線を上って」の完成形をいただいたのは映像の仕上げの段階だったんですけど、しっかり物語と交わった感じがして。

KISHOW お互いにそう思ってたんですね(笑)。僕らもね、これが果たして映像にマッチするのかわからない部分もあって。

「ロストマインズ」より。

 先ほどお話しした「ブレックファスト・クラブ」の主題歌が、Simple Mindsの「Don't You(Forget About Me)」という曲で。この曲はラストシーンですごく印象的に使われているんですけど、それに加えて今や青春映画のアンセム的な位置付けでもあるんです。なので、まなべさんとも「『ロストマインズ』でもそういう曲が最後に流れたら素敵ですね」みたいな話をしてたんですよ。「未来線を上って」も、「Don't You(Forget About Me)」とはタイプは違うけれど、さわやかさと切なさが同居する、とても存在感のある曲だと思いました。

──直監督のおっしゃる通り「未来線を上って」はみずみずしいギターロックですが、作詞はどのように?

KISHOW やっぱり脚本がベースにあったので、例えばサビの「昨日は戻らない明日を拓くんだろう」は、「ロストマインズ」の主人公・日下部達也のセリフを踏襲していますし、それが作品のテーマでもあるので、そこに着地させるために逆算したらこうなったというか……とにかく「青春!」です(笑)。まあ、それを書いているのが45歳のおじさんというのがミソなんですけどね。その視点しか俺にはないんだということに気付かされました。

──「その視点」というのは、過去を振り返るしかないみたいなことですか?

KISHOW そうですね。例えば18歳の自分を思い出しながら「あの頃はよかったな」なんてみんなよく言うけど、僕もそこから抜け出せていなくて、同時に「あの頃にはもう戻れないんだ」みたいなある種の懐古主義に酔いながら。でも冷静に考えれば、10代の頃って楽しいこともたくさんあったけど、それと同じか、もしくはそれ以上につらいこともあったはずなんですよ。結局、過去は美化されるというか、ひょっとしたら10年後の自分は「40代はよかったな」なんて言ってるかもしれない。そう思うと「人はずっと過去を愛おしみながら生きていくのかな」とか、いろんなことに気付くわけですよね。

何かを失った悲しみを癒す曲

 僕はKISHOWさんと同い年なんですけど、同年代だから考え方が近いのかなと思ったことがあって。実はアルバムの5曲目に収録されたバラード「その愛と死を」の歌詞に書かれているようなことを、オーディションのときに演者の子たちに言ったんですよ。

KISHOW へえ!

 要は後悔とかって、僕らぐらいの年齢だったらいくらでもしてるじゃないですか。でも、10代の子たちはそうじゃない。今回の「ロストマインズ」で言えば、友人の死という理不尽な、自分ではどうしようもできないような出来事に、フィクションとはいえおそらく初めて直面するわけです。そうなったとき、その出来事をどう受け止めて、どう悲しめばいいのかわからない状態に陥るだろうけれど、自分なりのやり方で乗り越えて、自分の人生を生きていってほしいみたいな話をしたんです。それもあって「その愛と死を」は、何かを失った悲しみを癒す、めちゃめちゃ優しい曲だなあと。

KISHOW お墨付きをいただきました。

──「その愛と死を」は劇中で、生前の司と音楽室で交流を持っていた孤独な少女・真田千秋のピアノ演奏という形で使用されていますね。

「ロストマインズ」より真田千秋。

 撮影時はまだ歌詞はなくて、デモだけいただいていたんですよね。

e-ZUKA 「ピアノの生演奏を撮りたいのでキーだけ決定してください」と言われて(笑)。だから、普段はちゃんと彼に歌ってもらってキー合わせをするんですけど、今回は……そうだ、我々がちょい役で出演させてもらった日にデモを持っていったんだよね。

KISHOW そうそう。

e-ZUKA 俺が勝手にキーを決めてきて「これでいい?」って聞いて「ああ、いいんじゃない」みたいな。だから歌にも余裕があるというか、めちゃくちゃ高いところにもいかないし、素直に歌える感じになってますね。

 実は、あのピアノを演奏している千秋役の高山葵さんは、お二人の大ファンなんですよ。

e-ZUKA ええー、それは先に言ってほしかった(笑)。

 彼女がピアノを弾くシーンの撮影がちょうどお二人の撮影の次の日だったので、めちゃめちゃ緊張しつつ練習していたんですけど、練習しすぎてご挨拶できなかったという……。

KISHOW それはさぞ心残りだったでしょうね。でも、いいこと聞いたな(笑)。

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俺は多重人格か?