GRANRODEO|結成15周年&サブスクリプションサービス解禁記念 著名人7名が作成した“ロデオプレイリスト”

GRANRODEOの楽曲が主要サブスクリプションサービスにて配信された。音楽ナタリーではこれを記念して結成15周年を迎えるGRANRODEOの歴史を振り返る。また彼らを愛する7名がそれぞれのテーマで選曲したプレイリストも掲載。サブスク解禁を機に、アニソン界の第一線を担ってきた彼らの楽曲を存分に堪能してほしい。

文 / 阿部美香

アニメ「黒子のバスケ」「文豪ストレイドッグス」「バキ」など、数々の人気作品に主題歌を提供し、日本のアニソン界を代表するロックユニットとしてキャリアを重ねてきたGRANRODEO。2020年、デビュー15周年アニバーサリーイヤーの真っただ中にいる彼らが、ついにサブスクを解禁した。2005年11月23日に発表されたデビューシングル「Go For It!」から2020年9月9日リリースの「情熱は覚えている」まで、百数十曲におよぶ彼らのレパートリーは、いわゆる“アニソン”の枠に止まりきらない多彩な音楽性に満ちている。「GRANRODEO Tribute Album "RODEO FREAK"」に参加したGRANRODEO楽曲をリスペクトするアーティストのラインナップが、でんぱ組.inc、BREAKERZ、OxT、シド、ベリーグッドマン、超特急、MUCC、西川貴教、そして2014年から断続的に続いているコラボユニット・FLOW×GRANRODEOでの朋友・FLOWと、ジャンルを跳び越えた多様性を見せたのも、それを証明していると言えるだろう。

そもそもGRANRODEOは、「進撃の巨人」のジャン・キルシュタイン役や「文豪ストレイドッグス」の中原中也役など、声優・谷山紀章としても第一線で活躍するKISHOW(Vo)と、飯塚昌明名義で作編曲家、演奏家として活動を続けていたe-ZUKA(G)が、アニメ「君が望む永遠」のキャラクターソングでコラボレーションしたことをきっかけに誕生したユニットだ。今でこそミュージックシーンにすっかり定着した “声優アーティスト”という言葉も生まれていなかった15年前。作品ありきの声優ユニットは珍しくなかったが、声優と生粋のミュージシャンがユニットを組むこと自体が当時は異色の出来事だった。今でこそOLDCODEXやSCREEN mode、OxTなど、アニソンシーンにも本格的かつクリエイティブな男性2人組ユニットは増えたが、GRANRODEOは確実にムーブメントの先駆けだった。そして放たれたデビュー曲「Go For It!」は、キャッチーなメロディ、本格派ハードロック / ヘヴィメタルサウンドとe-ZUKAのテクニカルなギタープレイ、KISHOWのタフなボーカルと突き刺すようなシャウトが楽曲を豪奢に彩る、重量感にあふれたものだった。

GRANRODEOのハード&ヘヴィかつメロディックな音楽性は、2007年発表の4thシングル「慟哭ノ雨」で確実に花開いた。同年発売の1stアルバム「RIDE ON THE EDGE」には、今もライブアンセムとして熱狂を呼ぶ「Once & Forever」やスケール感に満ちたサウンドを提示した「紫炎」などが収録され、その夏に開催された1stライブ「GRANRODEO FIRST LIVE "RIDE ON THE EDGE"」は初ワンマンにして神奈川・横浜BLITZ公演2DAYSをソールドアウト。音源で聴く以上の迫力ある歌唱と演奏、KISHOWとe-ZUKAが魅せるフルアクションのパフォーマンスは、軽快なポップソングが多数を占めるアニソンフィールドに、新星の到来を見事に予感させていた。その後も、手練れのサポートベーシストとドラマーをパーマネントなメンバーに迎えて、実力派ライブバンドとしての力量を遺憾なく発揮してきた彼らは、結成5年目の2010年に初の東京・日本武道館ワンマンを成功させ、全国ツアーと共にほぼ毎年行われている周年ライブ「ROCK☆SHOW」も、神奈川・横浜アリーナ、大阪・大阪城ホール、埼玉・さいたまスーパーアリーナ、千葉・幕張メッセ国際展示場と着実にバンドとしてのスケールをステップアップ。海外にもファンを増やし続けている。今年は7月31日に行われたコロナ禍での初の生配信オンラインライブ「GRANRODEO 15th ANNIVERSARY Startup Live ~たかが15年~」が、同時視聴者数2万弱、2週間のアーカイブ視聴者数約12万人を数える成功を収めたのも記憶に新しい。

「GRANRODEO 15th ANNIVERSARY Startup Live ~たかが15年~」の様子。

そんなGRANRODEOがリリースにおいてさらなる躍動と躍進を遂げたのは、2012年から7曲続いた、アニメ「黒子のバスケ」の主題歌シリーズだ。アニソンフェスでもカバーされることが多い疾走感あふれる軽やかなロックンロールナンバー「Can Do」のヒットに始まり、ストリートテイストのラップとヘヴィロックを融合した「RIMFIRE」、ライブでのシンガロングも印象的な「The Other self」、ビビッドなポップネスとKISHOWが紡ぐ歌詞の遊び心が発揮された「変幻自在のマジカルスター」、ブライトなブラスサウンドと茶目っ気あるリリックセンスがファンキーな「Punky Funky Love」、切なげなメロディが強いリリックに後押しされ胸に染みる「メモリーズ」。そしてシリーズ集大成となった「劇場版 黒子のバスケ LAST GAME」の主題歌「Glorious days」では、過去6曲の担当主題歌のフレーズを随所に盛りこんだセルフオマージュ的な歌詞で「黒子のバスケ」ファンの作品への思いとGRANRODEOの思いを重ねた。その後も「文豪ストレイドッグス」シリーズの主題歌「TRASH CANDY」や「セツナの愛」を筆頭に、どこか懐かしい哀愁を帯びたメロディ、シリアスさとコミカルさが融合した個性的なリリック、ナチュラルに聴こえる変拍子などテクニカルなフックを効かせつつも親しみやすいサウンド、弾けるようなポップセンスと洋楽志向の重厚なロックスピリットが縦横無尽に入り乱れる曲調といったGRANRODEOの本質的な魅力はどの主題歌にも詰め込まれている。

GRANRODEO「情熱は覚えている」ジャケット

アニメ作品に世界観をしっかりと寄り添わせた主題歌シングルでの表の顔と同時に、アルバムやシングルのカップリングナンバーでは、歌唱、演奏のレベルの高さがあってこそ成立する尖った顔を提示し続けているのもGRANRODEOらしさだ。2ndアルバム「Instinct」では剥き出しの骨太さを見せつけ、3rdアルバム「BRUSH the SCAR LEMON」では甘やかな「Passion」やその対極にあるヘヴィな「カナリヤ」「tRANCE」で柔軟なスタイルを確立した。続く4thアルバム「SUPERNOVA」収録の「進化と堕落の二元論」や5thアルバム「CRACK STAR FLASH」収録の「Urban Sweet」、6thアルバム「カルマとラビリンス」収録の「wonder color」などでは、ハードロックから逸脱したジャジーでブルージーなルーツロック、70~90年代の古きよきロックサウンドを積極的に取り込んで新境地を開拓。7thアルバム「Pierrot Dancin'」では、それまで以上にスピーディかつスラッシーな「ナミダバナ」で喝采を浴び、2018年リリースのコンセプトミニアルバム「M・S COWBOYの逆襲」も、1曲1曲がまるで異なるサウンドと世界観を提示。8thアルバム「FAB LOVE」では、持ち前のポップさを封印した正統派ブルース「ラクガキMOON」や、アメリカ・ロサンゼルスで現地のレジェンドミュージシャンとセッションした往年の西海岸サウンド全開の「Take it easy」などで、アニソンアーティストとしてのGRANRODEOに触れるだけでは知ることのできない、意外性や深みを存分に感じさせた。最新シングル「情熱は覚えている」の色濃いエスニックなアプローチも、彼らがいまだ音楽的進化を続けていることを端的に示している。

昨年、音楽生活30周年を迎えたe-ZUKAと、どんな楽曲でも楽々と歌いこなしてしまうKISHOWのチームプレイは、ロックだけでなくファンクやジャズ、ブルースといった本格的なルーツミュージック、キッチュなディスコ&ダンスチューン、切々としたバラードまで、ときにチクリと世相を斬り、ロック界のレジェンドにオマージュを捧げながら、すべてのポピュラーミュージックを我がものとして軽々と誰もが楽しめるエンタテインメントへと昇華する。今年11月4日には、結成15周年を記念したベストアルバム「GRANRODEO Singles Collection "RODEO BEAT SHAKE"」も発売予定。そこに収録される書き下ろし新曲「welcome to THE WORLD」もまた今までとは違った世界観の楽曲になるというから楽しみだ。「GRANRODEOの音楽とは?」をひと言で言い表す難しさは、彼らが15年紡いできたバラエティに富んだ楽曲たちを一気に味わえる、今回のサブスク解禁がシンプルに示してくれることだろう。