場所を選ばないオルタナティブ感
──DISC 5には2013年から2019年の楽曲が入っています。この中から25周年記念シングルとして発表された最新曲「VOXers」についてお聞かせください。
村上 「VOXers」は、パッと最初に聴いた瞬間にはアカペラだと思わない人もいっぱいいると思うんです。「あれ、これ、ベースラインは人間の声だったのか」とかね。そこがすごくいいと思うんです。こっちはいつでもアカペラでやってみせますよ、っていう。
酒井 ここ最近のライブでの我々のアカペラは、ずっとやってきたことのまとまりを見せる感じなんですね。今流行っているアカペラは、ハイパーな聴き心地なものが目立つなと感じて。これはゴスペラーズが初期からやっている、人間味あふれる度胸一発のアカペラに通ずると思ったんです。だからそういうのをしっかり見せたいというのはありましたね。でもその分、打ち出し方は新しくというか。切り口の新しさを見せなくちゃいけないという執念を抱いて挑みました。
黒沢 しかもこの曲、実はハモっているところが多くない。「1, 2, 3 for 5」もそうなんですけど、酒井はそういう曲を書くんです。
──「♪ウー」といったわかりやすいハモリですね。
黒沢 そう。和声かと思ったら、実はユニゾンになってたりする感じ。「1, 2, 3 for 5」を初めて聴いたときは、「おおっ」と思ったんですけど、「VOXers」はそれをアカペラで構成してるから、それ以上に感心してしまう。「1, 2, 3 for 5」と違うのはサビで5人が違うことをやってること。メリハリの感じがいいと思いますね。声だけで作られた曲だから音色が限られてるし。だからこその構成なんだと思うけど。この曲は、「すげえことやってるぞ」と自負していいと思ってます。むしろ、ハモッて和声で曲を聴かせることのほうが簡単。そこを極端に削り取ってる形がすごいなと思います。今風っていうよりは、ちょっと先に行ってる感じがありますよね。
北山 デビュー25周年だからこそ、この曲をシングルにできたっていうのもあるかもしれないですよね。ゴスペラーズが目指してきたものは、もともと“聴いたことがないアカペラ”だった。そこを一生懸命説明しようとしてきたのが僕らの歴史でもあると思うんです。でも25年経って、そのへんをだいぶ理解してもらえた。そんな中で生まれた「VOXers」は、説明しなくても新しさがわかってくれる曲になったと思います。
──25周年を目前に控えて、今の音楽シーンの中でゴスペラーズはどういう存在でありたいですか?
村上 さっき酒井も言ったように、デビューしたときはスタイルを持たないという意識があったわけですけど、それとは関係なく、結局ずっとオルタナティブな存在なんだと思っているんです。で、そこにちょっと意気揚々としたところがある(笑)。音楽は王道でありながらも、投げかけ方としては「ちょっと変でしょ」というのをわかってほしいと思いながらスタートした。それを25年かけてやってきたんです。昔に比べれば、説明しなくてもわかってもらえるところも増えてきたと思うけど、これからもどんな場に出ていっても歌える男たちであると証明し続けることで、結果的にオルタナティブな存在になれるのかなと。全国ツアーを開催するという王道なアーティスト活動と同時に、例えばビルボードみたいにスタイルが決められた場所で歌ったり、ジャズをやることもできたりする。それとは別に夏フェスに出て、ものすごい熱い夕日浴びながら「マイク5本だけだぞ!」と叫んでみるとか。そうかと思えば、スポーツのイベントや特殊なテーマの企画にも添うことができるし……スポーツが好きでも音楽的には添えないアーティストもいると思うんです。
安岡 そうだね。スポーツもそうだし、あとは季節とかね。
村上 そうそう(笑)。どんな場所にも添えるようにということを意識して活動しながら幅を広げて来たというのもあるけど、メンバーそれぞれがいい意味でバラつきがあるから、それぞれが拡張していくことでゴスペラーズの縁が広がっていくという……そういう25年だったと思うんです。
──なるほど。どんな場所に添えるようにという意味では、ゴスペラーズはここ10年くらい自然災害の復興支援を目的とした「ゴスペラーズ橋ツアー」も定期的にやってますよね。被災地にあるライブハウス以外にも、学校などでも歌っている。そこでの活動で得たものはありますか?
村上 ありますね。小さな子供や、家族連れがたくさん観に来ている中で、例えばお客さんからのリクエストで「大きな栗の木の下で」を振り付きで僕らと一緒に歌ったりする機会があるんです。その子供たちの反応、皆さんの歌声にやっぱり「ああ、歌の持つ力はこういうことだよな」と思ったりもするんですね。そこですごく大切な気持ちをもらうっていうか。新曲「VOXers」も、25周年の全都道府県ツアーも本当にグループにとって大切だし、ずっと続けていかないといけない。それと活動を続けていくことが、応援してくれる人への俺たちからの回答だとも思うから。でもそれと同時にやっぱりどんな場所でもシチュエーションに添った歌を歌えるように……そういったことを忘れないでこれからも歌い続けていきたいと思います。
ツアー情報
- ゴスペラーズ「ゴスペラーズ坂ツアー2019~2020 “G25”」
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- 2019年12月21日(土)東京都 かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール
- 2019年12月23日(月)埼玉県 ウェスタ川越 大ホール
- 2019年12月26日(木)神奈川県 神奈川県民ホール 大ホール
- 2019年12月28日(土)千葉県 君津市民文化ホール
- 2020年1月9日(木)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
- 2020年1月11日(土)奈良県 なら100年会館 大ホール
- 2020年1月12日(日)京都府 ロームシアター京都 メインホール
- 2020年1月18日(土)山口県 下関市民会館
- 2020年1月19日(日)岡山県 倉敷市民会館
- 2020年1月25日(土)山梨県 東京エレクトロン韮崎文化ホール 大ホール
- 2020年1月26日(日)群馬県 桐生市市民文化会館 シルクホール
- 2020年2月1日(土)大分県 iichikoグランシアタ
- 2020年2月2日(日)宮崎県 日向市文化交流センター
- 2020年2月9日(日)香川県 ハイスタッフホール 大ホール
- 2020年2月11日(火・祝)愛媛県 松山市民会館 大ホール
- 2020年2月15日(土)鹿児島県 鹿児島市民文化ホール
- 2020年2月16日(日)熊本県 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
- 2020年2月22日(土)栃木県 宇都宮市文化会館 大ホール
- 2020年2月23日(日・祝)茨城県 日立市民会館
- 2020年2月28日(金)新潟県 苗場プリンスホテル ブリザーディウム
- 2020年2月29日(土)新潟県 苗場プリンスホテル ブリザーディウム
- 2020年3月7日(土)三重県 四日市市文化会館 第1ホール
- 2020年3月8日(日)岐阜県 バロー文化ホール
- 2020年3月13日(金)富山県 砺波市文化会館
- 2020年3月14日(土)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
- 2020年3月20日(金・祝)福井県 福井市文化会館
- 2020年3月22日(日)静岡県 静岡市民文化会館
- 2020年3月28日(土)和歌山県 和歌山市民会館 大ホール
- 2020年3月29日(日)滋賀県 滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール
- 2020年4月11日(土)福島県 いわき芸術文化交流館アリオス 大ホール
- 2020年4月12日(日)山形県 山形県総合文化芸術館 大ホール
- 2020年4月18日(土)青森県 リンクステーションホール青森(青森市文化会館)
- 2020年4月19日(日)岩手県 北上市文化交流センター さくらホール 大ホール
- 2020年4月25日(土)北海道 函館市民会館
- 2020年4月26日(日)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
- 2020年4月29日(水・祝)秋田県 秋田市文化会館
- 2020年5月2日(土)徳島県 鳴門市文化会館
- 2020年5月3日(日・祝)高知県 高知県立県民文化ホール オレンジホール
- 2020年5月5日(火・祝)広島県 上野学園ホール
- 2020年5月6日(水・祝)福岡県 福岡サンパレス ホテル&ホール
- 2020年5月9日(土)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
- 2020年5月16日(土)沖縄県 沖縄コンベンションセンター 劇場棟
- 2020年5月23日(土)島根県 島根県民会館
- 2020年5月24日(日)鳥取県 鳥取市民会館
- 2020年5月27日(水)大阪府 フェスティバルホール
- 2020年5月30日(土)東京都 東京国際フォーラム ホールA
- 2020年5月31日(日)東京都 東京国際フォーラム ホールA
- 2020年6月6日(土)長野県 ホクト文化ホール
- 2020年6月7日(日)石川県 本多の森ホール
- 2020年6月13日(土)新潟県 新潟県民会館
- 2020年6月14日(日)宮城県 仙台サンプラザホール
- 2020年6月20日(土)神奈川県 厚木市文化会館
- 2020年6月21日(日)埼玉県 三郷市文化会館
- 2020年6月27日(土)長崎県 島原文化会館 大ホール
- 2020年6月28日(日)佐賀県 鳥栖市民文化会館 大ホール
- 2020年7月5日(日)大阪府 フェスティバルホール