ナタリー PowerPush - ゴスペラーズ
最新作「STEP FOR FIVE」メンバーのフィーチャー曲を徹底解説
一番ゴスペラーズから振り切れてる「Your Hero」
──安岡さんのソロは「Your Hero」。
安岡 2年前に「架空の主題歌」っていう本を出したんですけど、その中で51本書いた歌詞のうちのひとつが「Your Hero」だったんですよ。唯一、全部を英語で書いた歌詞だったんですけど、それを山田ひろしさんに日本語に直してもらって曲にしました。詞先で曲を作るっていうところが僕らしいところになるかなと思ったし、あえて自分で歌詞を書かない自由さもゴスペラーズの中でやるソロとして意味があるかなと。
──ハードロックなサウンドを選んだところが安岡さんらしいところでもありますよね。
安岡 僕らがデビューした当時、スティングとロッド・スチュワートとブライアン・アダムスが「三銃士」という映画の主題歌「All For Love」を歌ってて、それがものすごくカッコよかったんですよ。3人のボーカルが絡んでいきながら、サビではちょっとハーモニーを効かせて、でも全体的にはハードロックな世界観があるっていう。そういうものをゴスペラーズとしてもできないかなとずっと思っていたんです。で、さっきの酒井さんの話と同じなんですけど、そういうテイストの曲をハードロック全盛期にコピーバンドをやっていたような人ではなく、自分よりも年下の堀向(彦輝)くんにアレンジしてもらうっていうのも重要なポイントだったんですよね。
村上 この曲が一番、普段のゴスペラーズからすると振り切れてる部分が大きいよね。コーラスがガッツリ入ってくる構成で、「I'm your Hero」っていう人と人との関係ありきで生まれてくる歌詞を歌い込めたのもすごく良かったと思う。
黒沢 サビの上ハモは僕がやったんですよ。金髪でガリガリな北欧系のサイドギターを弾いてる人をイメージしながら。でもね、本気で死にそうになりました(笑)。
安岡 キーが高いんだけど、裏声を禁止したからね。ファルセットで歌ったらサウンドにマッチしないからハードロック唱法で行ってくれと。ライブでやる場合はガソリン飲んでがんばってほしいですね(笑)。
酒井 ガソリン飲むとハードロックっぽいすげえ声が出るようになるっていうのは俺の高校時代の友人の説なんですけど(笑)。
「Soul Song Juke」は名ベーシストへのトリビュート曲
──そしてソロフィーチャー曲ラストは村上さんの「Soul Song Juke」です。
村上 自分がこれまでに聴いてきた音楽の中で、大好きなベーシストの1人だったドナルド・ダック・ダンが5月に亡くなってしまって。あまりに寂しかったので、トリビュートとして何か曲を作りたいなと思ったんです。とは言いつつ書いているうちに、ドナルド・ダック・ダンのことだけを書いてもしょうがないかもなって気がしてきたので、自分が生きてきた中でいろんなことがあったよなっていうパーソナルなことを書いてみようと。これまでの曲にもパーソナルな部分って入ってはいるんだけど、具体的なエピソードなんかをはっきり入れ込んだのは、ゴスペラーズとしてはあんまりないことなんですよね。
──サウンドはすごくストレートなソウルになってますね。
村上 俺らが聴いてる黒人音楽っていうのは黒人だけが作ってるわけじゃないんだっていうことを、白人のダック・ダンに教えてもらったところがあって。で、そのことは自分が音楽をやる上ですごく励みにもなったんですよね。だから、そういう意味でもこの曲は自分の中から絞り出せる濃ゆいソウルを書くというのがテーマで。そういうことをするのって、自分の中でてらいがあるかないかで言えばあったりはするんだけど、これをきっかけにソウルミュージックやポピュラーミュージックというものを聴いたり、考えたりしてもらえたらいいかなと思って。
酒井 で、この曲は本間(将人)くんっていう若手のミュージシャンにアレンジを手掛けてもらったことで、また上の世代から下の世代への橋渡しにもなってますしね。
村上 そうそう。ベースとギターにベテランのミュージシャンを起用したっていうのもゴスペラーズとしてはなかなかないことなんだけど、その人たちと若手を一緒に合わせたっていうのも大事なところだったから。中間管理職的な年齢になった俺らなりの橋渡しができたんじゃないかなって思いますね。
酒井 そういうところも含めて“This is music”って感じがすると思います。
ライブを観てるようなアルバムにしたかった
──ソロフィーチャー曲をメインに話を訊いてきましたが、その他の楽曲たちも非常に魅力的なものばかりです。何よりも全体通してライブが楽しみになる内容になっているのがすごく印象的でした。
安岡 そうですね。ライブを観てるようなアルバムにしようっていうことで曲順を決めていったんで、まさに感じていただいたとおりのものになってるとは思います。
村上 オープニングの「STEP!」とラストの「ギリギリSHOUT!!」は非常にショーアップできる曲になってますね。で、その間に5人の技の対比を感じられる曲たちを挟み、アンコールで「BRIDGE」が来るっていう構成。全体通して、ここからまた僕らが少しずつ先に向けて“STEP”を踏んでいけるイメージをもってもらえるんじゃないかなと思ってます。
──間もなくスタートする全国ツアーを楽しみにしてます。
安岡 今回のアルバムの初回限定盤には「STEP!」と「ギリギリSHOUT!!」の振り付けDVDもついてくるんでね、それで予習してから遊びにきてください。
北山 もちろん予習せずにフラッと来てもらっても楽しめるとは思いますが、今回は特にいろいろ準備してきたほうがより楽しめる内容になってると思いますので。
- ニューアルバム「STEP FOR FIVE」 / 2012年11月7日発売 / Ki/oon Music
- ニューアルバム「STEP FOR FIVE(初回限定盤)」[CD+DVD] / 4000円 / Ki/oon Music / KSCL-2143~2144
- ニューアルバム「STEP FOR FIVE(通常盤)」[CD] / 3100円 / Ki/oon Music / KSCL-2145
CD収録曲
- STEP!
- It's Alright ~君といるだけで~
- 2080
- CLASH
- 真夏の夜の夢
- Love me! Love me!
- astro note
- Your Hero
- Soul Song Juke
- ギリギリSHOUT!!
- BRIDGE
初回限定版DVD収録内容
- マイケル鶴岡先生の「STEP!」振付講座
- マイケル鶴岡先生の「ギリギリSHOUT!!」振付講座
ゴスペラーズ(ごすぺらーず)
北山陽一、黒沢薫、酒井雄二、村上てつや、安岡優の5人からなるボーカルグループ。1991年、早稲田大学のアカペラサークル「Street Corner Symphony」内で結成され、1994年にシングル「Promise」でメジャーデビュー。シングル「永遠に」「ひとり」が立て続けに大ヒットを記録し、トップアーティストの仲間入りを果たす。毎年精力的に全国ツアーを行う一方、他アーティストへの楽曲提供・プロデュースやソロ活動なども活発に行っている。2012年11月7日、約1年5カ月ぶりとなる最新フルアルバム「STEP FOR FIVE」をリリース。11月16日からは全国ツアー「ゴスペラーズ坂ツアー2012~2013“FOR FIVE”」を開催する。