ナタリー PowerPush - ゴスペラーズ
被災地復興を願う新曲で人々の心に橋を架ける
ゴスペラーズのニューシングル「BRIDGE」は、東日本大震災の被災地復興の願いを込めて作られた曲だ。彼らは実際に被災地を訪れ、5人それぞれが感じた思いを歌詞で表現しており、この曲を作るにあたって音楽でできること、ゴスペラーズとしてやれることを改めて考えたという。歌詞の作り方も、歌詞のテーマも、これまでのゴスペラーズの作品とは少し違っている。しかし、この曲は今だからこそ作れた歌、今だからこそ歌える歌だと言える。
村上てつや、北山陽一、黒沢薫、酒井雄二、安岡優の5人に、この曲に込めた思い、被災地を訪れて感じたこと、そして9月30日からスタートする全国ツアー「ゴスペラーズ坂ツアー 2011~2012 “ハモリズム”」について訊いた。
取材・文 / 田中隆信
5人全員で持ち寄った歌詞
──アルバム「ハモリズム」に続くニューシングル「BRIDGE」は、東日本大震災の被災地復興の願いを込めて作られた歌だということですが。
黒沢薫 曲を作り始めた時点では、“つながり”をテーマにするっていうことぐらいしか決めてなかったんです。
──作曲は村上さんですが、作詞は“ゴスペラーズ”になっています。
黒沢 曲が決まったところで、歌詞はみんなで持ち寄ってみようってことになったんです。村上が「みんなで書こうよ」って提案してくれて。
安岡優 歌詞を持ち寄るというのは、普段はやらないスタイルなんですけど「震災後にゴスペラーズとして何ができるのか?」というところからスタートしましたから、メンバー5人で作った歌を出すということが重要だと思ったんです。誰が何文字書いたかではなく、5人がまずつながって、5人で書くということ。そのアクション自体が僕らにとって大きな意味があったんです。
村上てつや 「BRIDGE」というタイトルは僕がつけました。5月にみんなで、宮城県南三陸町に行ったんです。震災から2カ月、今でもあまり変わってないと思うんですが、コンクリートでさえも打ち砕かれているような非常に厳しい状況でした。そこに、崩れた橋があったんです。その壊れた橋が象徴的なもののように感じました。この橋が生活道路としての役目を取り戻したときが、本当の意味での復旧、復興なんじゃないかと。
歌が“ともしび”となればいい
──実際に被災地を訪れたからこそ、感じることができたんでしょうね。
村上 そうですね。あと、最近、ゴスペルを聴き直してるんですよ。以前から好きな曲なんですが、「This Little Light of Mine」という名曲がありまして、そのタイトルがすごくいいなって思ったんです。日本語に訳すと“ともしび”だと思ったときに、“橋”と“ともしび”をうまく書くことができればいいなって。
──1コーラス目の歌詞に“ともしび”という言葉が出てきてるのは、そういうところからの発想だったんですか。
村上 はい。曲自体はシンプルな5番構成で、結果的にはそれぞれの思いの丈を語っていくという形にはなってないんですが、メンバーそれぞれが1コーラスずつリードボーカルを歌うというやり方にしたのも、5人全員が思いを伝えようという気持ちになったからなんです。最終的に、歌が“ともしび”となればいいなって。
安岡 18年目にして改めて「僕らはどういう曲を歌うべきなのか」を考えることができたのはいい機会だったと思いますね。ゴスペラーズがゴスペラーズであることの意味を、改めて考えることができましたから。
ゴスペラーズ
北山陽一、黒沢薫、酒井雄二、村上てつや、安岡優の5人からなるボーカルグループ。1991年、早稲田大学のアカペラサークル「Street Corner Symphony」内で結成され、メンバーチェンジを経て、1994年にシングル「Promise」でメジャーデビュー。シングル「永遠に」「ひとり」が立て続けに大ヒットを記録し、トップアーティストの仲間入りを果たす。毎年精力的に全国ツアーを行う一方、他アーティストへの楽曲提供・プロデュースやソロ活動なども活発に行っている。2011年6月には約2年3カ月ぶりのオリジナルアルバム「ハモリズム」をリリース。9月にリリースするニューシングル「BRIDGE」は東日本大震災の被災地支援のチャリティシングルで、収益の一部を被災地支援活動のために寄付する。