自己満足で終わるような内容じゃないと自負

──例えばラストの「She's...」はまるでSigur Rosみたいなスケール感があって。

金廣　そうですね。（「フランダースの犬」の）パトラッシュが死ぬシーンをイメージして作りました（笑）。

──あはははは（笑）。でも、こういう曲は音楽を表現したくてバンドをやっている人たちじゃないとできないと思うんですよ。それって当然のようだけど、バンドをやってる自分が好きで音楽を作ってる人だって少なくないと思うから。でも、グッドモーニングアメリカは前者だと思うし。そこはすごく肝だなと思うんですよね。

金廣　僕も圧倒的にそう思いますね。

──たなしんはキャラクター的にバンドのイメージを背負ってるところも大きいと思うんですけど、バンドの現状も踏まえて自分の立ち位置や役割について考えてることはありますか？

たなしん　さっき話に出た音楽シーンのレースを意識しつつも、そうじゃない部分もグッドモーニングアメリカにとって大事だと思うので。より音楽的な部分をしっかり伝えていこうという流れにはなっていると思います。そうすると自分の役割は変わってくると思うし、もっとプレイの面でバンドを支えられるようになりたいと思ってます。

金廣　前作も今作も本当にいいアルバムだと思うし、自己満足で終わるような内容じゃないと自負しているので。ちゃんと音楽と向き合って、バンドを続けていこうと思います。

住んでいる502号室に自分にとっての星があった

──このインタビューが公開されるときには終了していますが（取材は9月上旬に実施）、9月23日には台湾でのライブがあります。バンドにとってこれが初の海外ライブですか？

金廣　初です。楽しみですね。電圧の状況とかわからないので不安もありますけど。

──海外への興味は以前から持ってましたよね。

金廣　そうなんですよ。そういう意味でも最初は親日家の多い台湾でやれるのはいいかなと。やっぱりライブが大事だなとあらためて強く思ってます。テレビやMVは音源とバンドの存在を知らせる1つのツールとして活用すればいいなってようやく思えるようになったので。

──ちなみにアルバムタイトル「502号室のシリウス」にどんな意味を込めてるんですか？

金廣　いつもならリード曲の曲名をタイトルにするんですけど、「風と鳴いて融けてゆけ」ってアルバムタイトルっぽくないなと思って。

──前作「鉛空のスターゲイザー」もアルバムタイトルっぽくはないけどね（笑）。

金廣　そうですか？（笑） あと、「風と鳴いて融けてゆけ」は自分がリフレッシュできた曲ではあるけど、その前にネガティブな面もあったから、この1曲がアルバムタイトルを背負うのは違うなと思って。それでいろいろ考えたんですけど、僕が今502号室に住んでいて……家の中に閉じこもって自分をシャットダウンした時期もあったし、それと同時にこの部屋の中で生まれたアルバムでもあるので。そこに自分にとっての星があったと言うか。

──星の名前をタイトルに付けるの好きですよね。

金廣　自分でもなんでかわからないけど、好きなんですよね。ベテルギウス（「ベテルギウスが消えてしまう様に」）とシリウスをタイトルに付けたので、もう1つ（プロキオン）出せば冬の大三角形が完成します。

──来年はメジャーデビュー5周年ということですが、いろいろ計画してるんですか？

金廣　考えてます。乞うご期待、という感じですね。今年から来年にかけて楽しい時間を過ごしたいし、提供したいですね。