音楽ナタリー Power Push - グッドモーニングアメリカ

武道館、ハチテン、たなしんの葛藤を経て

11月に初の主催フェス「八王子天狗祭2016」(通称「ハチテン」)を大成功に収めたグッドモーニングアメリカ(参照:グッドモーニングアメリカ、主催フェス「ハチテン」で生まれ育った八王子に恩返し)が、メジャー4枚目となるアルバム「鉛空のスターゲイザー」を12月14日にリリースする。音楽ナタリーでは今作の魅力を探るため、メンバー全員にインタビューを実施。4人に「ハチテン」やアルバムの制作過程を振り返ってもらうと、たなしん(B, Cho)の知られざる葛藤も明らかになった。

取材・文 / 田山雄士 撮影 / 藤川正典

生まれ育った八王子で実施した「ハチテン」

──まずは、11月に東京・エスフォルタアリーナ八王子で実施した「八王子天狗祭2016」の話から聞かせてください。

グッドモーニングアメリカ

たなしん(B, Cho) 高校生のときに(渡邊)幸一と初めてバンドを組んだのが八王子で。八王子RIPSや八王子Match Voxといったライブハウスにも出ていたし、思い出がたくさんある場所なんです。「八王子観光PR特使」に任命していただいてたこともあり、「ハチテン」に向けて八王子をどう盛り上げていくかが課題でしたね。RIPSとMatch Voxの店長であるおっくん(奥泰正 / THE WELL WELLS)にいろいろスポットを紹介してもらったり、金廣の八王子での弾き語りイベントに行ってビラ配ったりして、地元の方と触れ合って。出てくれるバンドにも「八王子を盛り上げたい」という思いを伝えていくうちに、どんどん自分の中で気持ちが高まっていった気がします。当日は、出演者みんなが気持ちのこもった演奏をしてくれて、お客さんも純粋に楽しんでくれたのがうれしかった。自分も天狗の衣装で登場したし、イベントを盛り上げられたんじゃないかな。ただ個人的には演奏技術の面でもっとパワーアップしなくてはという課題も見つかりました。

金廣真悟(Vo, G)

金廣真悟(Vo, G) 僕は今回の会場の近くに中学生からずっと住んでいたので、八王子は“育ってきた風景”というか。あの場所に今まで集まったことがない数の人が集まったこと自体がうれしいし、地元の方にも喜んでもらえて。率直に、無事に終わって第1歩を踏み出せたことがよかったと思います。続けていくのはきっと大変だけど、続けていきたいですね。出演バンドもMCでグドモのことを愛を込めていじってくれたり、曲をカバーしてくれたり、バトンをつなげるようなライブをしてくれて。

ペギ(Dr, Cho) 終わって2週間以上経つけど(取材は11月後半に実施)、来てくれたお客さんがいまだに「すごく楽しかった」って言ってくれてて。そういうのなかなかないですよね。本当に思ってないと言わないじゃないですか。だからうれしかった。「次はもっと楽しませたい」って気持ちにさせてもらえて、まだ高ぶってます!

金廣 うん。お客さんと出演者の表情、ステージから見た景色。あの場にあったものが「ハチテン」を肯定してたと思う。そういう実感を得ることはできましたね。

渡邊幸一(G, Cho)

渡邊幸一(G, Cho) 僕はメンバーの中で一番長く八王子に住んでたし、バンドの活動がスタートしたのも、しんどいときを支えてくれたのもこの街なので、「ハチテン」ができたことは大きな意味があると同時に、すごく幸せなことでした。自分たちだけじゃ絶対にできなくて、いろんな人の力を借りてこその成功で。八王子に恩返ししたいのに、またたくさんの恩を借りてしまったんですが、金ちゃんが当日のMCで言ってたように「続けていくことで恩返しという形にできたら」と思ってますね。

──「ハチテン」前には高尾山で成功祈願してましたね。

金廣 みんなで登らせていただきました(笑)。本当にいいところですよ。

──事前に会場への行き方を紹介したり、出店フードの紹介をしたりと、こまめに動画をアップしてたのも印象的で。フェスの来場者にすごく優しいなと思いました。

一同 あはははは!(笑)

渡邊 僕は新宿から電車に乗って、会場までを案内しました。

ペギ あれ、俺いまだに観てないんですけど。

渡邊 観てよ! がんばったんだから(笑)。八王子の魅力を知ってほしい、当日は思う存分楽しんでほしいという思いから、いろんなことに挑戦してみました。

武道館公演を終えて肩の荷が下りた

──ニューアルバム「鉛空のスターゲイザー」は、「ハチテン」の準備と同時進行での制作だったと思います。

ペギ(Dr, Cho)

金廣 今年の始めくらいから夏まで、かな?

ペギ だね。レコーディングは6~8月でやって。

金廣 わりと長い時間をかけました。ライブの隙間でいろいろ考えたり、合宿行ったりしつつ。歌詞に関してだけで言うと、今の社会で生きる気持ちや感覚、書いたときの自分がビビッドに出てるとは思います。ただ、曲自体は山中湖の雪が降ってるような場所で合宿して作ったのがほとんどなので、世間と隔離されてるというか。その一方でライブ中に見えるお客さんの顔を想像したりもしましたし。

──アルバムの青写真みたいなものは?

金廣 ほぼなかったですね。とにかく合宿で「どれをシングルとしてリリースしてもいい曲を作ろう」っていう気持ちで、みんなでテーマやフレーズを持ち寄ってスタートしました。

──前作の「グッドモーニングアメリカ」では、メンバー全員がアイデアを出し合うという試みがありましたけど、今回はどうでしたか?

金廣 今回も近いです。前作はみんなで作ったものが4曲だったのが、今作では8曲くらいに増えましたね。各々が仮の題名付きでフレーズを考えてきて、そこから世界観を膨らませていくんです。例えば幸ちゃんが持ってきたギターリフとペギが持ってきたドラムリフがフィットしたら、タイトル含めて足し算するイメージで。

渡邊 今言った感じでできたのは「カラフル」ですね。僕がリフを持ってきて、ペギのリズムパターンとハマったので。ロッテ「トッポ」の応援ソングを書き下ろすことが決まってたから、そのテーマを意識して詰めていきました。

ペギ そうだね。

渡邊 合宿でメンバー各々の個性を出して、そこに金ちゃんがメロディを乗せてくれる流れなんですけど、よりうまく融合できた気はしてます。

金廣 日本武道館でのワンマン(2015年11月27日実施)を終えたことで(参照:大仁田厚とファイヤーも!グッドモーニングアメリカ、夢の武道館に立つ)肩の荷がちょっと下りて、全体的にリラックスして作れたのもあるかもしれません。

ニューアルバム「鉛空のスターゲイザー」 / 2016年12月14日発売 / 日本コロムビア
初回限定盤 [CD+DVD] / 3292円 / COZP-1264~5
通常盤 [CD] / 2880円 / COCP-39775
CD収録曲
  1. 鉛空のスターゲイザー
  2. Beep!Beep!
  3. フォトグラフ
  4. マイライフ
  5. フライハイ
  6. ノーファング -Album Version-
  7. ダイヤモンド
  8. SOS
  9. カラフル
  10. クラスター -Album Version-
  11. おまけ
  12. リジェネレーション
初回限定盤DVD収録内容

「八王子天狗祭2016」2016.11.5 エスフォルタアリーナ八王子

  1. コピペ
  2. キャッチアンドリリース
  3. 拝啓、ツラツストラ
  4. ノーファング
  5. いつもの帰り道
  6. 空ばかり見ていた
  7. そして今宵は語り合おう
  8. 未来へのスパイラル
グッドモーニングアメリカ
グッドモーニングアメリカ

金廣真悟(Vo, G)、渡邊幸一(G, Cho)、たなしん(B, Cho)、ペギ(Dr, Cho)からなる4人組バンド。2001年に前身バンドfor better, for worseを結成し、2007年より現在のバンド名に変更。for better, for worse時代は英語詞だったが、バンド名変更を機に日本語詞へと切り替え、サウンドもよりポップさを増す方向へ転換した。2008年より現在の編成で活動を開始し、自主企画の開催や作品のリリースを積極的に行う。2012年冬には初のワンマンツアーを成功に収め、2013年5月に1stフルアルバム「未来へのスパイラル」で日本コロムビアよりメジャーデビュー。2014年5月にはテレビアニメ「ドラゴンボール改」のエンディングテーマに採用された「拝啓、ツラツストラ」をシングルとしてリリースした。同年10月に2ndフルアルバム「inトーキョーシティ」を発表し、2015年8月にテレビアニメ「ドラゴンボール超(スーパー)」のエンディングテーマ「ハローハローハロー」をシングルリリース。今作よりコロムビア内のロックレーベル・TRIADに移籍した。10月には3rdフルアルバム「グッドモーニングアメリカ」を発表。11月に初の東京・日本武道館単独公演を行った。2016年1~4月にワンマンツアー「グッドモーニングアメリカ TOUR 2016」を実施し、11月には地元・八王子で主催イベント「八王子天狗祭2016」を成功させた。12月に4thアルバム「鉛空のスターゲイザー」をリリース。