ナタリー PowerPush - GOING UNDER GROUND
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「東京」はあの当時シングルとして出すべきだった
──シングルには「愛なんて」のエレキギター弾き語りバージョンも収録されていますが、なぜこのバージョンを制作したんですか?
「愛なんて」のレコーディングが終わってから、ライブでこの曲を弾き語りで披露したんですよ。アコースティックギターと歌だけ、ピアノと歌だけでやったら評判が良くて。それと、うちの事務所の社長が「エレキの弾き語りバージョンも聴いてみたい」って言ったからやってみたら、ひんやりした感じが意外と良かったので入れてみました。
──確かに原曲とは違った面白さがありますね。ほかにも、2005年リリースのアルバム「h.o.p.s.」に収録されていた「東京」を再録音していますが。
ずっと「東京」を再録したかったんですよ。まず、いい曲だっていうのと、あの当時シングルとして出すべきだったなっていう後悔が僕の中にあって。この曲はGOING UNDER GROUNDというバンドの魂であって、それを改めて4人だけで、一発録りでやりたかったんです。
──ピアノが入っていない分、ギターロック感が前面に出てますね。それにテンポも若干スローになったことで、より歌が伝わりやすくなった気がします。
やっぱり「東京」をシングルで切らなかったことが、バンドとして大きな間違いだったな(笑)。そこまでやっておくべきだったなっていう。
「青春っぽい」って言われるけど自分ではよくわかってない
──さらに、丈さん(河野丈洋 / Dr, Vo)の作詞・作曲による新曲「Madonna」も入っています。ほかの3曲とは毛色が全く異なる、これぞパワーポップという曲ですね。こうやって4曲並べて聴くと、シングルとしてのコンセプト云々というより、録音していい曲が4曲できたんで入れてみましたってイメージのほうが強い気がしました。
アナログでいうと12インチシングルみたいですよね。おっしゃるとおりで、単純にこの曲を入れたいっていう4曲を入れてみたんです。
──キャッチーでカッコいい曲ですね、「Madonna」って。
1995~6年頃にこういうサウンド、あったなって。ギターソロなんてWEEZERの1stアルバムの曲に近いですしね(笑)。今回もいろんな曲ができたんですけど、僕らは別にロックだけが好きなわけじゃないんです。GOING UNDER GROUNDの音楽について、周りからよく「青春っぽい」「甘酸っぱい」って言われるけど、それって自分たちではよくわかってなかったんですよね。ただ自分たちが思ったことをアウトプットして、好きな曲を並べてるだけだから。そういう周りのイメージを壊さないように「GOING UNDER GROUNDってどんなバンドだっけ?」って昔を振り返って、そこに合わせようとしたりするのは避けたいんです。
──「GOING UNDER GROUNDはこういうバンドだ」って自分たちで言ってきたわけじゃないですもんね。
でも、今思えば青春以外の何ものでもないんですけど(笑)。とにかく、カテゴライズできるものは面白くないっていうのが自分の中にあって、「なんだかもうよくわかんなくなってきてるね」くらいのほうがしっくりくるし、そういうバンドが好きなんですね。WEEZERもまさにそうで、「このメガネのちっちゃい人は誰!?」「このジャケット大丈夫?」みたいな(笑)。王道よりも本筋からちょっと外れたものが好きなんです。王道をやろうとして間違っちゃった人の音楽とか大好きだし、GOING UNDER GROUNDもそういうバンドでありたいなと常々思いながらやってます。
次のアルバムは「ゴーイングの2枚目、3枚目っぽい」
──次のアルバムに向けてもう動いてるんですか?
曲はかなり作っていて、残り半分くらいですかね。
──どんな感じになりそうですか?
現時点で言えるのは……「稲川くん」はヒダカ(トオル)さんと一緒に作ることで男らしいロック感が前面に出ていたんだけど、今回はもっと歌モノになってるのかな。うちの事務所の社長が言うには、「GOING UNDER GROUNDの2枚目、3枚目のアルバムっぽい」みたいで。あまりロック然としたものにはならないのかもしれないですね。
──でも、まだ残り半分があるからどう転がるかわからない?
そもそも、「稲川くん」っていう曲自体がまだ完成してないし(笑)。前のアルバムのときからずっと作りかけで。ほかにも録音はしたけど世に出してない曲もあって、その曲が完成したときはうれしくて世の中に対して「こんなにいい曲ができたぞ、ざまあみろ!」って思ったんですけど、前作に入れなかったから今後楽しみっちゃあ楽しみなんですよね。
──2枚目、3枚目感っていうのは、バンドとしてまた新たに再生できてるってことなのかもしれないですね。
そうですよね。多分こういうことをずっと繰り返していくんだろうな、とはなんとなく思いました。バンドを10年もやっていると楽しいときも楽しくないときもあるし、今は楽しいときなんだなってのは自分たちでもよくわかってます。そういうときって曲がどんどんできるし、歌いたいことがたくさんあるんですよ。
──バンドがそういうふうに好調な中、発表されるこのシングルがいろんな人に届くといいですね。
GOING UNDER GROUNDのことを全く知らない人に聴いてほしいな……あ、1つ思い出した。数年前に「レスラー」っていう映画を観にいったんですけど、映画のエンディングでブルース・スプリングスティーンの曲が流れるんですね。僕、それまでスプリングスティーンのことをずっとダサイと思ってたんですよ。でも、映画館で彼の曲を聴いたらめっちゃいい曲で、思わず泣いてしまって。それからアルバムを全部買ったんです。だから、「愛なんて」も同じようになってくれたらいいなって思ってます。
GOING UNDER GROUND
(ごーいんぐあんだーぐらうんど)
THE BLUE HEARTSに憧れて松本素生(Vo, G)、中澤寛規(G, Vo)、石原聡(B)伊藤洋一(Key)が集まって中学時代に前身バンドを結成。河野丈洋(Dr ,Vo)が加わり、何度かのメンバーチェンジを経て、高校卒業時に5人体制となりGOING UNDER GROUNDと名乗り始める。インディーズシーンでの活躍を経て、2001年にシングル「グラフティー」でメジャーデビュー。「ミラージュ」「トワイライト」「ハートビート」など、切なく爽やかメロディで幅広い支持を集める。2005年には「トゥモロウズ ソング」をNHK「みんなのうた」に提供し、新境地を開拓。2006年7月に初の日本武道館公演を行い大成功を収める。2007年初頭には彼らの楽曲が原案となった映画「ハミングライフ」が公開された。2009年4月に伊藤が脱退。以降はサポートメンバーを迎えた形でライブを行いつつ、松本や河野はソロ活動も積極的に行っている。
2010年にポニーキャニオンへの移籍を発表。同年5月に新体制として初のシングル「LISTEN TO THE STEREO!!」をリリースした。メジャーデビュー10周年を迎えた2011年は、記念ツアー「GOING UNDER GROUND 10th Anniversary Tour 2011『Rollin' Rollin'』」を実施。4月に約2年ぶりのオリジナルアルバム「稲川くん」をリリース。5月には日比谷野外大音楽堂でワンマンライブを行い、元メンバーの伊藤と共演してファンを驚かせた。同年11月には映画「ハラがコレなんで」の主題歌としてシングル「愛なんて」を発売する。