ナタリー PowerPush - GOING UNDER GROUND

映画から受けた影響で名バラード誕生 松本素生が語る「愛」「震災」「これから」

監督に会って「自分と同じことを考えてる人がいた」って気付いた

──映画の中で、主演の仲里依紗さんがリストラされたサラリーマンに「何か困ったことがあったら何でも言ってね」って突然言ったり、自分が一番困ってるのに貧乏で元気がない人に「大丈夫、私がなんとかする」って励ましたりします。そういう言葉を他人にかけることって僕らが子供の頃にはすごく当たり前にあったものなのに、今ではすごく恥ずかしいとかカッコ悪いとか思われてしまう。

カッコ悪いとか時代遅れとかっていうところだけで片付けられるのはもったいないですよね。僕は「なんで人に迷惑かけちゃダメなんだろう?」ってずっと疑問に思っていて。だって迷惑なんて絶対かけるし、単純にケンカしてもゴメンって謝れば済む話なのに。

──人とのかかわりが面倒だから、迷惑をかけないように予防線を張るみたいな。

そういうのはクソみたいだなって思ってましたけどね。あと単純に、子供ができると他者と接する機会がめっちゃ増えるから、そこでビックリすることもあります。どっちがいいとか悪いとかじゃなくて、「何それ?」みたいな価値観の違いもある。それでもみんな一緒に生きていかなきゃいけないから最終的に会って話すし、それが人と人が接するっていうことだと思うし。そう思うようになったのは2011年からっていうか、「稲川くん」を作ってからですね。で、監督に会って「自分と同じことを考えてる人がいた」って気付いて。彼と出会ったことはデカかったですね。

「愛なんて」は映画がなかったらシングルにしてなかった

──「愛なんて」はアルバム「稲川くん」制作後に作った最初の曲になるんですか?

みんなで作ったって考えると、これが最初ですね。

──タイトルやメロディから、ラブソングなのかなって想像すると、実は恋愛だけじゃなくて人間同士の愛情だったり今の日本の現状だったり、すごくいろんな解釈ができる歌詞だと思いました。

「自分はまだこんなことを歌っているのか」って嫌になりましたけどね(笑)。早く違うことを歌いたいのに、これを歌わなきゃ前に進めないっていうもどかしさはありますよ。

──いろんな出会いから偶然生まれた曲かもしれないですけど、このタイミングでGOING UNDER GROUNDとして、松本素生として歌わなきゃいけなかったんじゃないかなという気がします。

GOING UNDER GROUND(写真は10月22日に行われた「週末Diner vol.3 東京」より)

多分映画の話がなかったらシングルにしてないんじゃないかな。素朴なバラードがGOING UNDER GROUNDのシングルとして出るのも初めてだし、シングルにすることを意識しないで作った曲がシングルになってCDショップに並ぶっていうのも初めての経験。まだまだいろいろと経験したほうがいいなと思いました。

──しかも映画で流れるわけだから、今までGOING UNDER GROUNDを聴いてこなかったような人の耳に届くわけですし。

今回はバンドとしてのエゴがあんまりなかったっていうのもありますね。「映画で流れるんだから、ここで絶対に名前を覚えてもらおう」みたいなつもりで作らなかったところが良かったのかな。僕、結構気を遣うほうだから、いろんな人の意見があると取り入れちゃうんですけど、今回はそれが一切ないし。映画とのタイアップでいろんな人がかかわっている状況で、そこを一切考えないでやれたのもデカいですね。

──確かに「シングルです、主題歌です」みたいな肩の力が入っている感じはしないですし、すごく自然体ですよね。

そうなんですよ。最初に歌詞とメロディが一緒に出てきたんですけど、ちょっとこれは自分の思ってることが100%出過ぎてるなと思って。なんとなく気持ちを抑えた内容に変えて監督にメールしたら「前のほうがいい」って返ってきて、結局最初の歌詞をCDに入れました。

──監督には最初の歌詞がストレートに届いてたんですね。

そうですね。監督は5月の野音ライブも観にきてくれて、そのときに自分たちの思っていることをいろいろ話したんですけど、「このバンドは今、本当に歌いたいことだけを歌っていくモードなんだな」って理解してくれたんじゃないかな。

ニューシングル「愛なんて」 / 2011年11月2日発売 / 1050円(税込) / PONY CANYON / PCCA-03479

  • Amazon.co.jpへ
収録曲
  1. 愛なんて
  2. Madonna
  3. 東京 2011
  4. 愛なんて (Electric ver.)

アーティスト写真

GOING UNDER GROUND
(ごーいんぐあんだーぐらうんど)

THE BLUE HEARTSに憧れて松本素生(Vo, G)、中澤寛規(G, Vo)、石原聡(B)伊藤洋一(Key)が集まって中学時代に前身バンドを結成。河野丈洋(Dr ,Vo)が加わり、何度かのメンバーチェンジを経て、高校卒業時に5人体制となりGOING UNDER GROUNDと名乗り始める。インディーズシーンでの活躍を経て、2001年にシングル「グラフティー」でメジャーデビュー。「ミラージュ」「トワイライト」「ハートビート」など、切なく爽やかメロディで幅広い支持を集める。2005年には「トゥモロウズ ソング」をNHK「みんなのうた」に提供し、新境地を開拓。2006年7月に初の日本武道館公演を行い大成功を収める。2007年初頭には彼らの楽曲が原案となった映画「ハミングライフ」が公開された。2009年4月に伊藤が脱退。以降はサポートメンバーを迎えた形でライブを行いつつ、松本や河野はソロ活動も積極的に行っている。

2010年にポニーキャニオンへの移籍を発表。同年5月に新体制として初のシングル「LISTEN TO THE STEREO!!」をリリースした。メジャーデビュー10周年を迎えた2011年は、記念ツアー「GOING UNDER GROUND 10th Anniversary Tour 2011『Rollin' Rollin'』」を実施。4月に約2年ぶりのオリジナルアルバム「稲川くん」をリリース。5月には日比谷野外大音楽堂でワンマンライブを行い、元メンバーの伊藤と共演してファンを驚かせた。同年11月には映画「ハラがコレなんで」の主題歌としてシングル「愛なんて」を発売する。