go!go!vanillasレーベル移籍第1弾シングル「SHAKE」特集|新たな一歩を踏み出した経緯とは (2/3)

自分たちの音楽を追求するために移籍

──続いて新曲「SHAKE」について聞かせてください。IRORI Recordsから初めてリリースされた楽曲ですが、どんな思いでレーベル移籍を決めたのかを教えていただけますか?

 僕たちがやっている音楽は、今の日本の音楽シーンの中では独特なものだと思うんですよ。ルーツにしている音楽も含め、「ほかの多くのバンドとは違うものが好きなんだろうな」という感覚がずっとあって。そんな中で、自分たちの音楽をより追求していくためにはIRORI Recordsと一緒にやるのがいいんじゃないかと思いました。レーベルヘッドの守谷(和真)さんとは、好きなものがけっこう共通しているので。

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──守谷さんとはもともと知り合いだったんですか?

 昔からの仲です。俺らに最初に「めっちゃいいね」って言ってくれた大人の人なんですよ。

プリティ 10年以上前から僕らのことを見てくれていて。当時の自分たちは今以上に何者でもなかったけど、「俺はカッコいいと思う。この音楽を届けたいと思う」という一心で一緒にいてくれたんです。自主制作でCDを出したときも手伝ってくれました。

セイヤ 自主制作って「デストロイヤー」?

プリティ そうそう。

セイヤ へえ、あれも守谷さんだったんだ! 「デストロイヤー」のリリースは俺がバニラズに入るより前なんですけど、守谷さんは俺が入ってすぐの頃のライブも観に来てくれました。この10年間、守谷さんはいろいろなアーティストを育てられて、俺らも違うところで10年活動して。運命の再会を果たしてまた一緒にできるのはめちゃくちゃうれしいですね。

プリティ また一緒にできるとなったときに「守谷さん、全然変わってないな」と思えたのもうれしかったですね。10年前と同じように、少年のような輝かしい目をしていて。

 「カッコいい音楽を世の中にもっと届けたい」という思いはずっと変わらなかったんだろうね。それは、IRORI Recordsに所属しているアーティストの活動からも感じていたことでした。

──柳沢さんは、IRORI Recordsに対してどんなイメージを持っていましたか?

柳沢 「Official髭男dismのいるレーベル」というイメージが強いですかね。ギターの大ちゃん(小笹大輔)と仲良しなので。だからレーベルメイトになれるのがうれしかったし、より機材の貸し借りがしやすくなるなと思いました(笑)。あとはやっぱり、心機一転というタイミングで「ロンドンにレコーディングをしに行こう」と言ってくれるなんて、普通じゃないなと思っていて。

 僕らも守谷さんもUKロックが好きだから、「ロンドンでレコーディングできたらいいよね」「やろうぜ」という話になったんですよ。僕らからしたら、昔からの夢が叶ったような感じで。

柳沢 今回「SHAKE」という楽曲をロンドンで録れたことが自信につながったし、顔を上げて未来へ進めるような環境を用意してくださって、本当にありがたいなという気持ちです。ここまでしていただいたからには、今後の活動で、もっとすごいものを返したいなと思っています。

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夢のようなロンドンでのレコーディング

──改めて、ロンドンレコーディングの感想を聞かせてください。

柳沢 自分たちの機材は楽器くらいしか持って行かず、エフェクターやアンプは現地のものを借りたんですよ。そしたら出てくる機材がレジェンダリーなものばかりで、夢のような感じで。「すげえ……」と思いながら弾いてました。あと演奏していて、いいプレイができると、エンジニアさんも一緒になって喜んでくれて。

プリティ うん。あれはうれしかった。

柳沢 自分的には「もうちょっと攻めたい気がするけど」と思ったプレイでも、「俺的にはめっちゃよかったけどね。まだやる?」と言ってくれるんですよ(笑)。気持ちよく録らせてもらえました。

 Metropolis Studiosのエンジニアさんたちは世界的なアーティストを見てきた人たちだから、安心して身を委ねられたし、勉強になることも多かったです。

柳沢 だって後半、牧さんいなかったですよね? 「曲作りたくなっちゃった」って、惇志さんと一緒にいなくなっちゃって(笑)。

 スタジオの上にあるロビーがめちゃくちゃ居心地がよかったんですよ。ちょっと声を出してみたら、音のリバーブ感もちょうどよくて。「ここだったら気持ちよく歌えるから、曲も作れそうだ」と思ったんですよね。伝説のスタジオと呼ばれる場所はたくさんあるけど、たぶん、それぞれ理由があるんだろうなと思いました。

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──日本でのレコーディングと比べると、どういうところが違いましたか?

セイヤ 音の作り方が全然違いました。日本よりも空気が乾燥しているから楽器の鳴り方がまず違うし、そうなると、チューニングやマイキングの仕方も違ってくる。レコーディングしてからミックスするんじゃなくて、ミックスされた音でレコーディングしたんですけど、エフェクトをかける兼ね合いで、ドラムをセパレートで録ったのが面白かったです。まずはシンバルを録って、次は太鼓を録って……という感じで。ドラムやベースの音像の違いは、聴いてもらったらすぐにわかると思います。

 ロンドンでやるからには「この音は絶対に日本で録ったものじゃないよね」とわかる音にしたかったんです。理想通りの仕上がりになったのですごく満足してますね。

──柳沢さん、ギターに関してはいかがでしょう。「これは絶対に日本じゃないよね」というサウンドを実現するためにこだわったことはありましたか?

柳沢 コードをバッキングするときは、リズム感を自分で出さなきゃと今までずっと思っていたんですよ。だけどロンドンでのレコーディングを経て、ギターがリズムの縦を司れば司るほど、しっくりこなくなって。要は、クリックに対して完全に合わせに行くんじゃなくて、ズラしたり遊び感覚でやる部分も作らないと、海外特有の浮遊感のあるビートは出ないんだなと。チェックの音を聴きながら「気持ちいいな」と思うときは、適度なタイトさと適度なルーズさが混ざり合っていたので、「なるほど、こういうことか」と思いました。そういうふうに、勉強になったことは随所にあって。「イギリスに行ったからいい音で録れた」じゃダメだと思うし、日本でももっといい音で録るために、盗めるものは全部盗んでやろうとずっと目を光らせていましたね。

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──あと、今回の曲はベースラインが新鮮だなと思いました。

 ボーカルとのかけ合いになっているAメロのベースラインは僕が作ったんです。僕はギター弾きだから、こういうフレージングが好きなんですよ。今までプリティはそういったアプローチをしてこなかったけど、だからこそ見てみたいという気持ちもあって。

プリティ デモを聴いてからレコーディングまでの間に、自分の力を高める期間を作りました。なんならロンドンに行ってからも、録る直前まで練習していたと思う。ただ弾くんじゃなくて、ちゃんと自分の武器にできるように、体に染み込ませていましたね。

 ベースもそうですけど、今回の曲は各々のキメがすごくカッコいいです。ドラムのフィルもそうだし、ギターの最後のフレーズもそう。それぞれの楽器が歌っているような曲です。僕の思うバニラズのいいところはメンバーそれぞれが光っているところなので、そこが際立つ必殺技のようなアレンジにしたいという意識はありました。