考えるな、感じろ
──では、アルバムの収録曲について聞かせてください。1曲目の「HIGHER」は曲名通り、高揚感にあふれたロックチューンで、歌詞の中でリフレインされる「理由を捨てろ」というフレーズも印象的でした。
牧 僕自身けっこう感覚派というか、直感型なんですよ。たまに「やっぱり違うかな」と迷うこともあるんだけど、違うものを選ぶと「やっぱり最初にいいと感じたほうにすればよかった」って後悔することが多くて。そういう経験を踏まえて、「なぜこれをやりたいのか」という理由を探すのではなくて、直感を大事にしてほしいという曲を作りたくなったんですよね。若い人というか、“これからの人たちに向けて”という気持ちもあるんですよ。今は何をやるにしても動機や理由が必要だし、能力が高い人が目立つじゃないですか。でも「言葉じゃなくて、感じろよ」というか、できるだけ可能性を減らしてほしくなくて。
──セイヤさんも直感タイプ?
セイヤ そうですね! ブルース・リー大好きなんで。「Don't think, feel」です。
──「考えるな、感じろ」。ブルース・リーの名台詞ですね。
セイヤ はい(笑)。理由を考えると「こんなことやっても意味ないんじゃないか?」となりがちだと思うんですけど、無駄なことなんて一切ないんですよ。全部がつながってるので、「思い切ってやってみたら?」と。
──最近の若い人は無駄なことを嫌う傾向もありますからね。
柳沢 そうですね。なるべく近道したいという。
プリティ 僕はもともと考えすぎるところがあるんです。自分の考えを人に伝えるときに言い方を気にするから、メンバーに「言葉を選ばなくていいよ」と言われることもしばしば。ただ、この1年は自分の感覚を大事にできるようになってきたんですよ。牧に「もっと直感を信じたほうがいいよ」と言われたことがきっかけになってますね。セイヤにも「細かいことを気にしなくていい」と声をかけてもらいました。
──そういう会話もあるんですね。
牧 そうですね。確かにプリティはちょっと考えすぎるところがあったからね。「理由は捨てろ」です(笑)。
柳沢 「HIGHER」はプリティさんの曲なのかも(笑)。
ステージを自分の居心地のいい場所に
──「I Don't Wanna Be You」と「My Favorite Things」は柳沢さんが作詞作曲を手がけられています。
柳沢 「I Don't Wanna Be You」は最初、「クライベイビー」(2021年リリースの5thアルバム「PANDORA」)に寄せようと思ってたんですけど、さらにパワフルな曲になりましたね。「My Favorite Things」は、9月に大阪城ホールと武道館で開催したアリーナワンマン(参照:go!go!vanillas、“My Favorite Things”提示した満員の日本武道館ワンマン)のタイトルなんですけど、曲はライブのタイトルが決まる前からあって。リードギターのフレーズを考えているときに、牧さんが「この曲のタイトルを『My Favorite Things』にするのはどう?」と言ってくれたんですよ。「自分の周りに好きな人がいて、好きなものがあれば絶対に幸せになれる」という意味を込めてるんですけど、曲の雰囲気にもピッタリで。ライブで演奏できたのもうれしかったですね。
牧 「LIFE IS BEAUTIFUL」ともつながるテーマですね。
──アリーナワンマンのタイトルも「My Favorite Things」にしたのはどうしてなんですか?
牧 1回目の武道館(2020年11月に行われたバニラズ初の日本武道館公演「ROAD TO AMAZING BUDOKAN TOUR 2020 -FINAL-」)も楽しかったんですけど、コロナの影響でキャパシティは50%以下だったし、どこか寂しかったんですよね。今回は人数制限もなく、満員だったんですよ。すごくうれしかったし、だからこそ大阪城ホール、武道館を自分の大事な場所にしたいと思って。ただ自分が一番休まる場所は、家なんですよ。ステージではスイッチを入れるべきだと思っていたんですけど、最近は「それってちょっと不自然だったかもな」と思い始めて。ステージを自分の居心地のいい場所にして、それをお客さんにも感じてもらいたいなと。
──ステージにはソファやランプなどの装飾品が置かれて、部屋のような空間でした。
牧 そうなんです。それをお客さんと共有することで、居心地がいい空間になると思って。今も声は出せないですけど、そのぶんお客さんの空気を感じるようになったんですよ。ワンマンのときの緊張感や、イベントやフェスで初めてバニラズを観る人が多そうな雰囲気を。大阪城ホール、武道館は本当に幸せな空気感だったし、うれしかったですね。
若いバンドに花を咲かせてほしい
──バラードナンバー「硝子」は、ピアノと歌で構成されていて、バンドの楽曲としては、かなり思い切ったアレンジなのかなと。
牧 そうかもしれないですね。このアプローチは、ジョージの「Glimpse of Us」を聴いたことがきっかけなんです。ピアノと歌のアレンジなんですけど、運転しながら音楽を聴いていて、この曲が流れたときにハッとしたんですよね。今は音圧とパワーを強調したり、派手さを追求した曲が多いけど、だからこそシンプルな編成に引き込まれて。「硝子」は作ったときから「すごくいい曲になりそうだな」と思ったし、自分もピアノと歌でやってみようと。レコーディングは惇志くんと一緒に一発録りしたんです。
柳沢 「硝子」のレコーディングではメンバー全員いたんですよ。僕らは演奏してないですけど、惇志さんはバンドメンバーみたいな関係だし、最高の演奏を聴かせてくれて。この曲がアルバムに入っているのは、すごくいいなと思いますね。
セイヤ めっちゃいい曲ですね。レコーディングの演奏もすごくよくて。
プリティ ここまで自分の音が入ってない音源は初めてですけど、レコーディングを見ていて、「すごいな」と感じました。この曲がアルバムの最後の録音だったんですよ。この曲で「FLOWERS」が完成したというか……。そういえばスタジオに向かってるとき、進太郎から「ケーキ買ってきてください」と連絡が来たんです。
柳沢 先にスタジオに着いてたんですけど、「この曲でレコーディングが終わるし、これは祝ったほうがいいな」と。
プリティ なぜかセイヤも買ってきたんですよ、ケーキ。
セイヤ 進太郎の誕生日の数日後だったから(笑)。
柳沢 レコーディングが終わって「ケーキ買ってきました!」って言ったのに、牧さんは全然興味がなかったんです(笑)。歌のテイクをチェックしたいモードでしたね。
牧 そりゃそうだよ(笑)。録って終わりじゃないから。
柳沢 もうちょっと待つべきでした(笑)。
──「FLOWERS」というタイトルについても聞かせてください。アルバムのポジティブなイメージを象徴する言葉だなと。
牧 そうですね。いろいろな思いがあるんですけど、まずは下の世代のバンドやアーティストに向けた言葉で。ここ数年はライブが思うようにできなかったし、若いバンドにとっては苦しい時期が続いていたと思うんです。でも、今はいろいろな選択肢や発信の場があるし、それぞれ花を咲かせてほしい。こういう大変な状態だからこそ、たくましくて強い花が咲かせる奴らが出てくるはずだと思っているので。もちろん音楽だけじゃなくて、それぞれの目標や仕事を通して、新しい世界を構築してほしいという気持ちもあります。このアルバムをきっかけに、5年後、10年後に花を咲かせてもらえたら最高じゃないですか。
──下の世代や未来に向けた思いがある、と。そういう視点を持つ年齢になってきたのかも。
牧 まだそんなに年を取ってるわけではないんですけどね(笑)。ただ、間違いなく大変な世の中なので、変えていかなくちゃいけないと思うんですよ。若い世代だけではなくて、僕らよりも上の年代を含めて、凝り固まったシステムや価値観を打ち破っていかないと。それを音楽を通じて伝えたいという思いもありますね。アルバムを楽しんでもらいながら、いろんなメッセージを感じ取ってもらって、いい方向に向かっていけたらいいなと思います。
──バニラズにとっても大きな意義を持つアルバムになると思います。ちなみに皆さんが好きな花はなんですか?
牧 えーと、水仙かな。
柳沢 僕はバラしか思いつかないですね。
プリティ 自分はカーネーションです。
牧 母の日の花じゃん。
プリティ 毎年、母親にあげてるから。前はお金がなくてあげられなかったんですけど(笑)、今は毎年あげてます。
セイヤ いいね。僕はコスモスかな。地元に帰ったとき、庭にめっちゃ咲いてて。それがすごくきれいだったんですよ。
ツアー情報
go!go!vanillas「FLOWERS」TOUR 2023
- 2023年1月17日(火)神奈川県 KT Zepp Yokohama
- 2023年1月20日(金)大阪府 Zepp Osaka Bayside
- 2023年1月21日(土)大阪府 Zepp Osaka Bayside
- 2023年1月26日(木)長崎県 DRUM Be-7
- 2023年1月27日(金)大分県 DRUM Be-0
- 2023年1月29日(日)福岡県 Zepp Fukuoka
- 2023年2月4日(土)福島県 郡山HIP SHOT JAPAN
- 2023年2月5日(日)宮城県 SENDAI GIGS
- 2023年2月11日(土)北海道 Zepp Sapporo
- 2023年2月17日(金)愛知県 Zepp Nagoya
- 2023年2月18日(土)愛知県 Zepp Nagoya
- 2023年2月26日(日)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
- 2023年3月9日(木)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
- 2023年3月11日(土)広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA
- 2023年3月12日(日)香川県 高松festhalle
- 2023年4月7日(金)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
- 2023年4月8日(土)新潟県 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館
追加公演
- 2023年3月24日(金)東京都 中野サンプラザホール
- 2023年3月25日(土)東京都 中野サンプラザホール
- 2023年4月20日(木)大阪府 オリックス劇場
- 2023年4月21日(金)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
- 2023年4月23日(日)福岡県 福岡市民会館
- 2023年5月5日(金・祝)秋田県 鹿角市文化の杜交流館 コモッセ 文化ホール
プロフィール
go!go!vanillas(ゴーゴーバニラズ)
牧達弥(Vo, G)、柳沢進太郎(G)、長谷川プリティ敬祐(B)、ジェットセイヤ(Dr)による4人組バンド。2013年1月に7inchシングル「人間讃歌 / アクロス ザ ユニバーシティ」、7月に1stアルバム「SHAKE」をSEEZ RECORDSよりリリースした。2014年11月にはビクターエンタテインメント内のレーベルGetting Betterよりメジャーデビューアルバム「Magic Number」、2015年4月にメジャー1stシングル「バイリンガール」を発表。2020年11月にはツアー「ROAD TO AMAZING BUDOKAN TOUR 2020」を開催し、最終公演では東京・日本武道館のステージに立った。2021年3月にニューアルバム「PANDORA」を発表。2022年10月に林萌々子(Hump Back)をフィーチャリングゲストに迎えた楽曲「Two of Us feat. 林萌々子」を配信リリースした。12月に「PANDORA」から1年9カ月ぶりとなるフルアルバム「FLOWERS」をリリースした。2023年1月からは全国ツアーの開催が控えている。