レコーディングスタジオに入れない時期に宅録に挑戦
三原 コロナ禍になって制作で変えたことがあって。家でレコーディングして、CDを出したんですよ。一昨年出した「ASOVIVA」はほぼ全曲そうで。
井上 すげえ!
石原 ドラムも?
三原 そう。自宅でレコーディングできるようにそれぞれギターを買ったりエレドラを買ったり。
牧 そのスタイルは今もなの?
三原 そのときはレコーディングスタジオに入れなかったからそういう方法でやったんやけど、入れるようになってからもケースバイケースでやってる。さすがにボーカルはレコスタで録ってるけど。
牧 慎也は制作でDTM使うんだっけ?
石原 使うんですけど、ギターと歌しか入れない。
牧 弾き語りスタイルなんだ。送るときに「ベースとドラムはこういう感じで!」とか伝えないの?
石原 伝えても結局1人ひとり考えていることが違うから「そういう感じは嫌!」と言われることが多くて(笑)。
井上 自分で打ち込んで渡そうとはならへんの?
石原 打ち込んで渡したこともあるんですけど、結局総替えになるから最終的に入れないことになりました。
井上 めっちゃオーガニックなやり方やな。バンドらしいというか。
三原 バニラズは?
牧 俺が基本作ってたんだけど、新曲の「青いの。」や去年出した「LIFE IS BEAUTIFUL」はそのスタイルはやめて、ある程度固めたらみんなからも返してもらう感じにしました。みんな戻してくるときにめっちゃ「このフレーズどう?」と聞いてくれて。
三原 聞かなそうなメンバーやのに……(笑)。
牧 セイヤとかめっちゃ聞いてくれるで(笑)。「こっちのほうがいい? それともこっちのほうがいい?」って。プリティ(go!go!vanillasの長谷川プリティ敬祐[B])は3パターンくらい作ってくれるし。
石原 いいですね!
井上 僕は制作で最近変えたことはないかな。デモは8割くらい仕上げて、アレンジしたいところは各々やってくださいという感じで、そこは今も昔も変わらず。DTM関連で言うと、コロナ禍になって家で集中して制作できる時間が増えたから新しいソフト買ったくらいですね。
牧 プラグインとか?
井上 そうです。めちゃめちゃいろいろ試して買って。DTM系のYouTuberを調べて勉強するようになりました。
牧 機材周りで言うと、俺も新しくギターを買ったり、家で使うマイクをいいやつに変えたりしたな。自分の気持ちがノるレベルまで制作環境を上げようと思って。
恋しい熱さ
──ちょっと大きなテーマになってしまいますが、今の音楽業界に必要だと思うものや戻ってきてほしいものはなんですか?
井上 レコード会社の人が新人をライブハウスで発掘する機会が減って、YouTubeやTikTokで探す時代になってるじゃないですか。いいことでもあると思うけど、寂しいなって思いますね。
石原 その影響かもしれないですけど、最近めっちゃバンド減りましたよね。
牧 減った減った。
石原 ギターを担いでる高校生をあんまり見かけなくなって。
井上 地元のライブハウスの店長が言ってたんやけど、軽音楽部のライブもできへんから、先輩に憧れるっていうことがないんやって。そもそも新歓ライブもないから軽音楽部に入部する人がいないという。その店長も落ち込んでましたね。バンドがぜんぜんいないよって。
牧 時代の流れだね。自分の考え方は古いと思うんですけど、技術やスキルが先行して、その人が持つ熱量が重視されなくなってきてるような気がしてきて。もちろん今でも変態的なバンドはいるし、新たに出てきてるとは思うけど。
井上 確かに最近は、そのアーティストの温度感みたいなものを感じにくいことが多いかも。
石原 うまいけど響かないバンドより、下手でもカッコいいバンドのほうがいいですよね。もしかしたら下手なバンドが減ったから、バンドを始めるハードルが上がってしまっているんじゃないかな。
井上 うまーく曲を作ってるのがわかると寂しくなるよね。「ここにこのコードを入れることによって効果的にエモーショナルな感じを演出できます」みたいなのが伝わってくると。なんか……そういうことじゃないんよと。
石原 わかる。
三原 テレビもそういう傾向あるしな。楽曲の演奏じゃなくて、楽曲の解説がメインになってる番組があったり。
牧 あとフリー素材化がすごいと思う。できのいいフリー素材をうまく合わせて曲作ってる人が多い。
井上 ロジックだけはしっかりしてる、みたいなね。
牧 そのバンドならではの癖というか変態さがほしいよね。
井上 そうそう。「この時代にパワーコードC、F、G!? めっちゃええやん!」みたいなね。
一同 (笑)。
井上 そこにめっちゃ熱い気持ちが乗っかってるみたいな、そういう感じが恋しくなったりする。こんだけみんなうまくて、きれいにそつなくこなしてくアーティストが多いと。
石原 バンド、増えてほしいですね。
牧 ね。俺は最初、Ramonesの曲を聴いて「俺でも弾けそうやん!」と思ったところから今に至るので、敷居の低さって超大事だと思う。今になって気付くとRamonesのやってることはその人たちならではカッコよさだから再現できないんですけど。
「やっぱりバンドってカッコいいな」と思ってほしい
──では最後に、「青いの。ツアー 2022」へ向けての意気込みをお願いします。
井上 対バンライブはバンド同士のつながりやバックグラウンドがわかるのが魅力やなと思うので、そこを感じてもらえたらなと。バニラズにはカッコいいとこ見せたいです。「SHE'S、マジカッコよくなったな」と思ってもらいたい。前に自分たちのツアーに呼ばしてもらったんですけど、そのときの自分たちのライブに手応えがなかったから、リベンジしたいです。
石原 バンド主催のツーマンって、お互いが好意を持ってないと実現しないじゃないですか。絶対楽しいライブになると思うし、楽しいライブにしたいです。お客さんからしたら、自分が好きなバンドと、そのバンドが好きなバンドを観れるわけで。それってすごい素敵なことですよね。
三原 対バンと言ってもいろんな形がありますけど、俺はツーマンが一番好きなんですよ。持ち時間が長いから、その分バンドの魅力がしっかり感じられると思うんですよね。「このバンド、しっとり聴かせる曲もあるんや」「ゆったり話すようなMCもあるんや」とか、フェスとは違う面を見てもらえる。あとフレデリック主催でツーマンする場合は、先にライブされたら自分たちが焦るようなアーティストを選んでいて。前にツーマンした女王蜂は、フレデリックのお客さんも女王蜂の世界観に引き込んでいたんですよね。「このあとに俺たちどういう空気にしたらええんやろ」と焦ったんですけど、それがめっちゃ好きで。
牧 好きなんや。俺、バチバチとかすごい苦手かも(笑)。
三原 ツーマンでしか味わえない空気を感じたくて。バチバチ苦手って言ってたけど、そういうライブにしたい(笑)。付き合い長いし、仲いいし、最終的に絶対ハッピーになるから。音楽的にバチバチにしたいなと。
牧 いいよいいよ。受けて立つよ! 自分たちのツアーに呼ばせてもらって対バンするというのが本当にひさしぶりだしね。そんなときにやりたいなと思ったのがこの3バンドだったんです。3バンドともどういう環境下でも生き残っていける強いバンドだなと思っていて。しかも同世代で、ライブを観たら「俺らも絶対いいライブするぞ!」と思わされるような人たちなんですよね。お客さんには、ひさびさの対バンというものを通じて「やっぱりバンドってカッコいいな」と思ってほしい。「青いの。」には青春や若さというイメージを込めているので、僕らもフレッシュな気持ちでやりたいですね。
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僕らの青春を彩った1曲