コロナ禍でメンバー同士のコミュニケーションが増えた
──有観客ライブが開催できても、観客の発声や収容率など、さまざまな制限がある状況が続いています。そういった制限のある状況についてはどう考えていますか?
石原 最初はびっくりしたけど、もう今は「お客さんが声出してたときってどんな感じだったっけ?」って思い出すのが難しいくらい。
三原 フレデリックの楽曲にはお客さんが歌うパートがあまりなくて、ライブでは曲のつなぎで歓声が聴こえてくることが多いんです。それがめっちゃ好きやったからなくなって寂しいなと思いますね。でも今はお客さん同士の間隔が空いていることが多いから、踊ったり体を揺らしたりするのは逆にやりやすいんじゃないかなと思う。
牧 確かにね。お客さんがワーッと声を出しているからいいライブ、というわけでもないと思う。あとはステージでメンバー同士でコミュニケーションを取って楽しむのは大事だなと気付きました。コロナ禍になるまではお客さんに意識を向けることに集中していて、意外とメンバー同士のアイコンタクトが少なくなっていたなと。ライブ中にセイヤ(go!go!vanillasのジェットセイヤ[Dr])のほうを見るようにしたら、うれしそうだし、音も変わってきて。
石原 めっちゃ共感します。俺らは温かい“ホーム感”のあるライブを目指していて。そういうライブって誰がやってるかなとメンバーと考えていたときに、バニラズやTHE BAWDIESの名前が上がったんです。今の話を聞いて、改めてメンバー同士で楽しむことって大切やなと思いました。
牧 よかった。ありがとうございます。
三原 バニラズ、この前の横アリでもめっちゃ楽しそうやったよな(参照:go!go!vanillas、11月に初のアリーナツアー!神戸&横浜で3公演)。ステージで大暴れしてたし、しゃべりすぎやろって感じで(笑)。
牧 特にセイヤがしゃべりすぎだったし、運動会みたいになってたよね(笑)。
三原 バニラズらしくてめっちゃよかった。うちはメンバー間のコミュニケーションで言うと、さっきも言ったようにシンプルに仲よくなったのがデカい。ライブでメンバー4人が楽しんでもお客さんが置いてけぼりになることはなくて、会場にいる全員が楽しくなるんだなと思いました。
井上 俺らはオンラインライブをきっかけにライブ中のコミュニケーションが増えました。「カメラじゃなくて人を見たい!」と思ったときにほぼメンバーしかいないから自然と見る回数が増えたんですよね。そのおかげでよりバンドのグルーヴ感を感じられるようになったんじゃないかなと。
フェスのない夏の過ごし方
──4組はコロナ禍までは野外イベントやフェスに出演されることが多かったのではと思いますが、“フェスのない夏”はどのように感じましたか?
牧 俺は意外といい夏を過ごしました。今までは1年のスケジュールが大体決まっていてそのルーティンに沿って動いていたんですけど、それに違和感を感じてきていて。ルーティーンが崩れて、夏を満喫できました。散歩して神社行ってかき氷食ってみたいな。皆さんはどうですか?
三原 確かにあんなにゆっくりした夏なかったかも。俺らもけっこうフェスに出させてもらってたから。今考えると大変だったなと思うのがセットリスト。別に毎回セットリストが一緒でもいいけど、ファンの人がSNSでセットリストを上げてくれて、それを見た人に「全部一緒やん」と思われたくないなと思って。
石原 俺らは2020年、2021年とフェスがほとんど開催されなかったのはけっこう痛かったです。というより、俺らの中におごりがあったということに気付かされた。フェスに出させてもらったら俺らのことを知ってくれる人が増えるだろうという想定で、その後のスケジュールを決めていたんですよ。でもあるときフェスやライブが開催できない状況でも売れていく人はいるということに気付いて。YOASOBI、優里、マカロニえんぴつ、緑黄色社会、挙げたらキリがないですけど。そう思ったら、俺たちは2020年をなんて無駄に過ごしてしまったんだと思って。メンバー内では2020年を“空白の1年間”と呼んでます。
井上 僕は去年も一昨年も夏はレコーディングばかりしていましたね。一昨年はドラマの書き下ろし曲の話をいただいて。コロナ禍になった一昨年の3月から曲を書いてなかったけど、その話があって8月からようやく曲を書き始めて。去年の夏はもともとレコーディングをするスケジュールで、という感じでした。
石原 ふと気になったので聞きたいんですけど、コロナ禍で歌詞や曲の内容って変わりました?
牧 変わったな。手放しに明るい曲を書けなかったね。コロナ禍以前はその場で感じたことを曲にしたり、ライブを意識して作ったりすることが多かったけど、それが減った。コロナ禍においての曲作りは、1人でいるときに溜まったフラストレーションを吐き出すような感じだった。
井上 僕は変わらなかったかな。一昨年はそもそも5カ月間なんも書かなかったですけど、それ以降も書く内容はコロナにそんなに影響されてないですね。時間は死ぬほどあったから、音楽をディグることが増えて、あれもやりたいこれもやりたいとか単純に好奇心を持つことが増えた感じ。
石原 そっか、そこめちゃめちゃ気になってたんです。ありがとうございます。
牧 僕も竜馬と同じで、インプットに充てる時間は増えたかも。
井上 YouTubeでアーティストを見つけたり、音楽を聴いたりすることはあります?
牧 あんまりないな。
石原 俺はありますね。自分たちの曲の関連動画を観ます。自分たちの曲を聴いてる人がほかにどんな曲を聴いているのか気になって。
三原 めっちゃ分析家やん。
井上 すごい。意外やな。
石原 意外ですか(笑)。でもそれ以外のときはあんまり音楽聴かないです。
三原 俺は最近Vulfpeckっていうバンドにめっちゃハマってて、ライブのアレンジを考えるときにVulfpeckのライブ映像めっちゃ観てる。
牧 Madison Square Gardenのやつか。
三原 そう。その映像をずっと観てて。こういうアレンジ、こういうライブしたいなって考えたりしてますね。
SNSから受けるダメージと楽曲制作
──先ほど石原さんが“コロナ警察”という言葉を使っていましたが、SNSではコロナと音楽にまつわる議論やネガティブなワードも飛び交っています。コロナ禍になってSNSとの付き合い方は変わりました?
牧 僕は最近どんどん離れていますね。やっぱりずっとSNSを見ていると、気付いたらダメージを食らってるので。
三原 自分というより、曲や歌詞に影響が出そうだから康司(フレデリックで作詞作曲を担当している三原康司[B, Vo])はSNSから離れたほうがいいと思ってて。「見ないほうがいいと思うで」と話したこともあって、今康司はTwitterから離れてるんですよ。でもTwitterで自分のバンドに対して交わされてる意見を無視するのは違うよなという気持ちもあって、そこは担おうと思って俺が見てます。去年は自分がコロナにかかって出る予定やったライブ(2021年8月に大阪・大阪城ホールで開催された「ROCK KIDS 802 OCHIKEN Goes ON!! SPECIAL LIVE HIGH! HIGH! HIGH!」)を辞退したし、けっこう落ち込むこともあったんですよ。それでもなるべくいろんな意見を受け止めようという気持ちはありますね。
石原 俺はSNSはフル活用してます。エゴサもするし。よくも悪くも人からの見られ方を気にするタイプで、昔はマイナスなことを書かれてたら嫌な気持ちになって終わってたんですけど、今はその人がどうしてそう感じたのか考えるんですよ。
井上 やっぱり分析家や(笑)。
石原 (笑)。考えたうえで、いいか悪いかを自分で判断したくて。これは自分が悪いかもなと思ったら直すし。SNSで「何を目指してんの?」みたいなことを書かれたことがあって。
井上 どういうこと?
石原 「アイドルみたいになっていってる」というようなことを書かれたんです。どういう行動がそう思わせたんだろうなと考えて、ちょっとネタっぽい投稿を増やしたり、自撮りの投稿を減らしたり。そういうふうにプラスに活用はしていますね。
井上 めっちゃ冷静やな。俺はSNSは絞って見てるかな。SNSにはミュート機能という便利な機能があるので、バンドマンと犬以外はミュートしていて。
牧 えっどうしよう。ミュートされてたら。
井上 バンドマンは見てますって(笑)。あとエゴサはせえへんなー。リプライやコメントで直接なんかキツいこと言われたとしても、「お前誰?」みたいなスタンスやし。「顔も名前も知らんやつに言われたことで、なんで落ち込まなあかんねん」と思ってる。
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レコーディングスタジオに入れない時期に宅録に挑戦