動いて汗をかくベーシストたち
──ベーシストとしてはお互いどんなふうに、プレイスタイルやステージングを見ていますか?
山本 みんなステージで動くのが好きですよね(笑)。あとライブでどのメンバーよりも一番汗かいてる。俺、野球部上がりなんで大好きなんですよ、汗かいてる人。お二人とも、音を聴いていても、パフォーマンスを観ていても楽しいベーシストだから好きです。
プリティ 田淵さんの動きはめちゃめちゃグルーヴありますよね。リズムの取り方がすごく気持ちいいです。
田淵 恐縮です。でも私は動こうと思って動いてるんじゃなくて、踊ってる人がベースを持ったら、たまたまそうなったみたいな感じだから。
プリティ・山本 あはははは。
田淵 フロアでライブを観ながら踊ってるのとあんまり変わんなくて、自分の好きな曲を聴いたら体が動いちゃうみたいなことの延長なんですよ。それをグルーヴと言ってもらえるのは、ちょっと恐れ多いですけど。
山本 俺からすると2人のベースプレイはホントに勉強になります。音源を作るときはライブのことを考えるんで、ちょっと演奏を簡素化したりするんですけど、2人は抜かないじゃないですか。ハイフレットもガンガン使うし。
田淵 使っちゃうね。俺は1回レコーディングで弾いたものをライブでもその通りに弾きたいというか、それ以外のことができないから、もう丸覚えするしかないんだよ。
山本 俺もそうです。だから最初の段階で簡素化しちゃうんですよ。2人のプレイを観てると、こんなに弾けないと思っちゃう。
プリティ 俺は音源とライブでベースラインを変えちゃう。自分のブームだったり、バンドのフィーリングだったりで、ずっとやってきた曲でも日によってけっこう変えますね。
山本 へえ、そうなんすね!
田淵 「ちょっと気が変わったから、こういうフレーズやったろ」みたいなのができる人なのね?
プリティ できるというより、やりたくなっちゃう。うちはメンバーみんなそうで。特に牧が「そこのベース、こう弾いてみて」とか「1回この刻みでやってみて」とか、けっこう言ってくるんですよ。
田淵 いやぁ、音楽家の鑑ですな。プリティくんのベースは、ファニーなバンドの裏でめちゃくちゃ誠実ですよね。これはセイヤくんもそうなんだけど、ステージの上であれだけ暴れ回ってるのに演奏はめちゃめちゃ丁寧っていうのが、俺の爆笑ポイントで(笑)。
プリティ ははははは。
田淵 ちゃんと演奏を楽しむけど、ここ外したらダサいよねというポイントが明確にあるんだろうな。
プリティ ライブで「俺、今めっちゃリズムよかったよな」っていうときに進太郎を見ると、ストローク1個捨てて、親指立てながら「うえーい!」とかやってくるんですよ。そういうときにめちゃめちゃテンションが上がります。
山本 メンバーがめっちゃ音聴いてるんですね! 逆に怖くないっすか?(笑)
田淵 怖い。「うえーい!」って言われなかったらどうしようと思っちゃう(笑)。
プリティ 実際に「ちょっと微妙でしたね」みたいな反応のときもあって(笑)。そのときは「クソー!」ってなります。自分が楽しみたいと思う一方で、一緒にやってるメンバーを一番楽しませたい気持ちがあるのかもしれない。そのためにはちゃんといい演奏を心がけたいんです。
マイヘアのベースに求められるもの
──プリティさんから見て山本さんのベースはどうですか?
プリティ めちゃめちゃしなやかで力強い。同時に、音が途切れ途切れにならず、全部が流れるようにつながっていて。そのうえでちゃんと感情が伝わってくるから、すごいなと思う。
山本 ありがとうございます(笑)。よく言っていただいて。
田淵 今プリティくんが言った“つながってる感”って、マイヘアの中でけっこう重要なポイントだと思う。椎木(知仁)くんのギターの音とメロディを埋めていくスタイルに合わせて、わりとカチっとしたドラムが鳴ってるから、下で支える人がいないと曲として成り立たない。しゃべってる人の音楽みたいになっちゃうから。ボトムの重いベースがバーンと鳴ってることで、バンドの音楽になるんですよね。
山本 え、うれしいです……もうこの取材終わってもいいです。
──勝手に終わらせないでください(笑)。
田淵 はははは。スリーピースという編成はユニゾンも一緒だけど、俺と山本くんが担ってる役割は全然違っていて。それはバンドのスタイルがそうさせたところだから、逆立ちしても得られない部分だなってライブを観るたび思います。
山本 メンバー全員ELLEGARDENが好きで。結成当初から椎木に「ELLEGARDENみたいにルートで弾いて」と言われてたんですよ。言葉で説明すると、低くどっしりみたいな。それとライブで椎木が何をやるかわからないから、ベースとドラムはブレずにしっかりしてなきゃいけない。そのために絶対に崩さないようにしてます。
田淵 椎木くんが何をやっても、リズム隊のおかげでお客さんがちゃんとノレるんですよね。最初は「何をしゃべり出すかわからないカリスマフロントマンがいるバンド」というイメージだったけど、ライブを観て「ちゃんとスリーピースのバンドなんだな」と思った。3人の中にきちんとバンドの方程式みたいなのがあるんでしょうね。
お互いのバンドで好きな曲は?
──お互いのバンドで好きな楽曲を挙げるとしたら、どの曲になりますか?
山本 俺はバニラズだと「エマ」が好きです。すっごいミーハーみたいですけど、酔っぱらったときによく妻と一緒に踊ってます。
プリティ はははは。最高!
山本 一番わかりやすくハッピーになれるから大好き。
プリティ うーん、俺はマイヘアだったら「浮気のとなりで」かな。ハイミッドの伸びがめちゃめちゃ伝わってくるし、プレイもカッコいい。
山本 確かにちょっとスラップっぽいこともやって、面白く弾いてますね。こういうことを話したら、(幕張)当日にやらないといけなくなっちゃうな。
プリティ それとこれは別で(笑)。「リルフィン・リルフィン」も途中からスラップがあるけど、前に出てくるんじゃなくて全体を後ろで支えてて、ふと耳を向けたときにめちゃめちゃカッコいいんですよ。「燃える偉人たち」の最後のサビの歪みもいいよね。
山本 ありがたいです。俺の好きな曲というか、ベーシストが好きそうなやつを言ってくれますね。
プリティ ユニゾンの曲から選ぶのは難しいなあ。この前、フェスで一緒になったときに「やられた!」と思ったのは「サイレンインザスパイ」。「え、この曲をフェスでやるんだ!」とびっくりしました。あとベースがすごいなと思うのは「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」。
山本 あ、俺も大好きです!
田淵 あらら。ありがとうございます。
プリティ めちゃめちゃグルーヴィだし、AメロとCメロが同じ刻みなのが、技あり一本って感じでグッときます。各セクションで驚きがあるから、1曲を通してすごく面白いし。
山本 聴いててずっと楽しい曲って珍しいと思うんですよね。「この曲ここはいいけど、ここはちょっと暇だな」とか思うことがあるんですけど、「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」は全編必殺技を出してる感じ。
田淵 はははは。みんなよく聴いてくれてますね。ずっと同じグルーヴが続く曲って、私が作る中ではけっこう珍しくて。「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」を作っていた頃は意図的にそうしていたんですよ。ちゃんと一本調子だからノリやすいし、人気が高いのは、それが理由な気はしていて。
プリティ もう最高です!
田淵 私はgo!go!vanillasだと「THE WORLD」がすごい好きなんですよね。アルバム1枚を通してよく聴いてます。その中で1曲選ぶなら3曲目の「SUMMER BREEZE」かな。俺はずっと牧くんはメロディメーカーで、スイートな感じで歌いたい気持ちがすごく強い人なんだろうなと思ってるんです。「THE WORLD」は1曲目も2曲目も歌がめっちゃよくて、普通だったら3曲目は別の角度で来そうなのに、またいい曲が続いて。「これはもう歌いたい人のアルバムじゃん」って、そこで確信した。あれは感動しました。
「バニラズに呼ばれたんだからこうやるでしょ」で挑むゲスト心理
──幕張はどんなライブになりそうでしょうか。
田淵 ライブに呼ばれて出るときは、必ずその役目を考えるんです。あまり客のことは考えてなくて、マイヘアに呼ばれたらこの役目、バニラズに呼ばれたらこの役目というのを考えながらやるようにしてます。今回に関しては、見た目は大型イベントと同じように見えるけど、企画者の気持ちが伝わるか否かが大事で。「バニラズに呼ばれたんだからこうやるでしょ」という戦略がそれぞれのバンドで違うと思うんですよね。その戦略によってオンリーワンのイベントになるんじゃないかなと思っていて。来たお客さんも「いいイベントだったな」「バニラズ、すごいイベント作ったね」となるのが一番いいゴールなので、そこに対して俺らに期待されてることをしっかり打ち返したいですね。
プリティ ありがとうございます。自分の勝手なイメージなんですけど、ユニゾンもマイヘアも「一緒にやりたい」という確固たる思いがある相手とじゃないと対バンしないバンドだと思っていて。そういうバンドが自分たちのイベントに出てくれるのは本当に幸せだし、当たり前にあることじゃないから、おこがましいけど自信にもなります。
山本 ライブハウスで出会ったけど、大きい会場で対バンできる夢が叶う日なんですよね。そういう気合いの入った日に呼ばれたからには、いいライブをしたいです。最後に出てくるバンドが一番カッコよくあってほしいんで、トリのバンドにプレッシャーかけるようなステージをかまします。
プリティ やっぱりそう思うよね(笑)。
山本 だからかけられるだけかけます。それでバニラズは潰れないと思うし。始まりがよかったら絶対終わりもよくなるんで、そのために俺らはがんばろうかなと。
プリティ プレッシャーだなあ(笑)。でも「最高に楽しい対バンライブだったな」と出演者もお客さんも思えて、自分らが一番そう感じられる前代未聞の日になるだろうと確信できたので、当日は全力で楽しみたいです。
ライブ情報
DREAMS TOUR 2023-2024 FINAL「MAKE MY DREAM」
2024年3月9日(土)千葉県 幕張メッセ国際展示場9~11ホール
<出演者>
go!go!vanillas
DREAMS TOUR 2023-2024 FINAL「MAKE YOUR DREAM」
2024年3月10日(日)千葉県 幕張メッセ国際展示場9~11ホール
<出演者>
go!go!vanillas / [Alexandros] / sumika / 04 Limited Sazabys / My Hair is Bad / マカロニえんぴつ / UNISON SQUARE GARDEN
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プロフィール
go!go!vanillas(ゴーゴーバニラズ)
牧達弥(Vo, G)、柳沢進太郎(G)、長谷川プリティ敬祐(B)、ジェットセイヤ(Dr)による4人組バンド。2013年1月に7inchシングル「人間讃歌 / アクロス ザ ユニバーシティ」、7月に1stアルバム「SHAKE」をSEEZ RECORDSよりリリースした。2014年11月にはビクターエンタテインメント内のレーベルGetting Betterよりメジャーデビューアルバム「Magic Number」、2015年4月にメジャー1stシングル「バイリンガール」を発表。2020年11月にはツアー「ROAD TO AMAZING BUDOKAN TOUR 2020」を開催し、最終公演では東京・日本武道館のステージに立った。2022年12月に6thアルバム「FLOWERS」をリリース。2023年10月にはデビュー10周年記念アルバム「DREAMS」を発表した。2024年1月にポニーキャニオン内のレーベル・IRORI Recordsに移籍し、シングル「SHAKE」を配信リリース。3月には千葉県・幕張メッセ国際展示場9~11ホール公演「MAKE MY DREAM」「MAKE YOUR DREAM」を行う。
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UNISON SQUARE GARDEN(ユニゾンスクエアガーデン)
斎藤宏介(Vo, G)、田淵智也(B)、鈴木貴雄(Dr)からなるスリーピースロックバンド。2004年7月に結成され、都内を中心に活動を開始する。2008年7月にシングル「センチメンタルピリオド」でメジャーデビュー。2015年7月に結成10周年アルバム「DUGOUT ACCIDENT」をリリースし、初の東京・日本武道館単独公演を成功させた。2019年7月にはカップリングベストアルバムとトリビュートアルバムを同時リリース。さらに大阪・舞洲スポーツアイランド 太陽の広場で結成15周年ライブ「プログラム15th」を開催した。2023年4月に9枚目のオリジナルアルバム「Ninth Peel」をリリースし、全国ツアーを行った。結成20周年を迎える2024年は「20th Anniversary project“20年目のプロローグ”」企画を展開する。
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My Hair is Bad(マイヘアーイズバッド)
新潟県上越市にて2008年に結成されたスリーピースロックバンド。2013年に初の全国流通作品となる1stミニアルバム「昨日になりたくて」をリリース。2016年5月にシングル「時代をあつめて」でEMI Recordsからメジャーデビューを果たした。2022年4月に5枚目のフルアルバム「angels」、10月に配信シングル「瞳にめざめて」をリリース。ライブハウスを中心に活動しつつ定期的にアリーナ公演も行っており、2023年2月には全国ツアー「アルティメットホームランツアー」“ファイナルシリーズ”として東京日本武道館、大阪・大阪城ホールにてそれぞれ2DAYSライブを行い、全4公演をソールドアウトさせた。2024年2月に2週連続で配信シングル「悲劇のヒロイン」「自由とヒステリー」をリリースする。
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