柳沢進太郎が好きなマカえん曲、田辺由明が好きなバニラズ曲

──お互いのバンドで好きな曲を挙げるとしたら？

柳沢　俺は最新アルバムがめっちゃ好きで、特に「PRAY.」と「星が泳ぐ」が好きですね。どっちもわりとローテンポなんですけど、最近の僕らのテンションもゆったりめなんですよ。

田辺　へえ、何か理由があるんですか？

柳沢　昔、何かの本で、Oasisは会場が大きくなるにつれて後ろまで音が届かないから曲がどんどんゆっくりになっていった、みたいな話を読んだんですよ。そのときは「何言ってるんだろう？」と思ったんですけど、ありがたいことに僕らもデカいところでやらせてもらう機会がすごく増えてきて、300人ぐらいのライブハウスでやってたときと同じ速度でやると、会場の後ろの人まで聴こえてないんじゃないかと感じるようになって。速い曲だと盛り上がり切れない。だから今、意図的にテンポを落としてる曲もあるんです。そうすると確実に届いてる感覚がある。もちろんライブハウスも大好きだけど、デカい会場への憧れも強かった分、もっとミドルテンポの曲も作りたいなと思ってた中で、「PRAY.」と「星が泳ぐ」にはドームクラスのサウンド感と奥行きを感じています。俺自身、こういう曲を書きたいなって思わされた2曲ですね。

田辺　うれしい。僕は「パラノーマルワンダーワールド」がめっちゃ好きで。

柳沢　あ、俺もバニラズの曲の中で一番好き。

田辺　ははは。サウンドも面白いし、僕もああいうことやってみたいって思っちゃう1曲です。あと「LIFE IS BEAUTIFUL」もいいですね。進太郎くんが歌ってるライブ映像を観たんですけど、「歌ウマ！ カッコよ！」って思いました。あとバニラズはとにかく音がいいんですよ。ライブもレコーディングも相当こだわってるんだろうなと思います。

柳沢　レコーディングはとにかく長いっす。

田辺　うちのバンドもめっちゃ長い（笑）。

柳沢　一緒だ（笑）。「さっきのでよくね？」と思ってる人が3人いるけど、1人が納得してないから、もうちょっとやる。俺は決まってるものをパーン！と録って、「最高！ 帰って飲もうぜ！」ってやりたいんですけど。

田辺　はははは。うちの場合は、そもそもレコーディング当日に曲ができてません、っていうところから始まって（笑）。

柳沢　ヤバー！

田辺　メロはあるけど、ドラムパターンや全体の構成が決まってないことが多い。初日にリハーサルスタジオみたいに機材を並べてみんなで向かい合って、あーだこーだ言うところから始まるという。

柳沢　単純に好きなんでしょうね、集まってワチャワチャやりながら曲作るのが。

田辺　さらに僕らのダメなところは、遊び始めるんですよ。はっとりはベイブレードとスタジアムを持ってスタジオ入りするんで（笑）。

柳沢　遊ぶ気満々（笑）。でも、もしかしたらベイブレードの回転数でBPMが決まるかもしれないし。

田辺　ベイブレードがガチャガチャ当たってる音入れてみる？とか（笑）。そんなんばっかりやってるから全然レコーディングが終わらない。

柳沢　でも牧さんも現場の化学反応みたいなものがめっちゃ好きだし、フロントマンとしての感覚がはっとりくんとすごく近いんだろうなと思いますね。

震え上がるバニラズと草食動物なりに熱いライブを届けたいマカえん

──バニラズは現在「DREAMS」を引っさげたツアー中で、マカロニえんぴつは初の全国アリーナツアーが終わったばかりです（※取材は2023年末に実施）。それぞれ、ライブのときに大事にしていることや意識していることはありますか？

柳沢　俺はけっこうお客さんの顔を見てますね。反応とか、どんな気持ちでいるかを知りたい。

田辺　わかります。僕もわりとお客さんのことを見ます。

柳沢　昔は全然客席を見れなかったんですよ。あとからバンドに入ってる分、コンプレックスじゃないけど「どんな顔して見られてるんだろう。怖っ」という気持ちがあって。でもいつからかそういうのもなくなって、普通にお客さんを見れるようになってからファンの人とより深い仲になれた気がしています。

田辺　ワンマンなら僕らのことを好きな人しかいないけど、フェスとかイベントになると特に興味がない人も多いじゃないですか。「マカロニえんぴつってどんなもんなんじゃい」と観る人もいると思うんです。そういう人たちにどう届いてるかっていうのも気になるんですよね。

柳沢　そこもロックバンド精神ですよね。自分らのことを好きな人よりも、嫌いそうなヤツを相手にするときほど燃えちゃうっていう。

田辺　振り向かせるにはどうする？みたいな。そういえば、どこかのフェスで、絶対に僕ら目当てじゃない感じのおじさんが最前列にいたんですよ。ライブが始まった頃は腕組んで怖い顔して見てたんですけど、終盤になったらそのおじさんが泣いちゃって。これは勝った！って（笑）。

柳沢　そういうのいいですよね。

田辺　ちゃんと僕らの音楽が届いたんだと思えて、それはうれしかったですね。

柳沢　やっぱりライブのスタンスも似てますね。共通点がありすぎて、近付くべくして近付いたんだなと今日で改めて思いました。

田辺　ありがとうございます（笑）。

──3月の幕張メッセも楽しみです。それぞれどんな1日にしたいと思ってますか？

柳沢　俺たちは震え上がってますよ。みんなフェスのヘッドライナーを張るようなアーティストたちで、俺らの出番のときにお客さん帰っちゃうんじゃない？って（笑）。だから踏ん張りどころですよね。「このイベントに出てよかった」「このイベントに来てよかった」とみんなに思ってもらえるようなライブをすることが一番重要だと思うので。幕張でバッキバキの状態に持っていけるように、長いツアーを回る中でちゃんと刃を磨いていけたらいいなと思います。対バンってそもそもはバンド同士の“対決”だったけど、それを知らない人も多いじゃないですか。

田辺　確かにそうですね。

柳沢　仲良しのバンド同士がやるものだと思ってるんですよ、今の若い子たちは。でもせっかく一緒にやるなら、リスペクトがあったうえで、「今日一番目立つの誰？」ってバチバチにやり合うのは然るべき姿だと思うんで、そのモチベーションでやっていきたいですね。

田辺　僕らは去年対バンツアーをやりましたけど、そもそもここ数年は対バンってあんまりやってなかったんですよ。それなのにこうやってバンド主催のイベントに呼んでもらえるのがすごくうれしくて。やっぱり何かしら近いものを感じて、何かしら期待して呼んでくれたと思うから、マカロニを呼んでよかったと言ってもらえるようなライブにしたいですね。対決って話が出たけど、僕らは草食動物みたいなバンドなので（笑）、草食動物なりに熱いライブを届けられたらいいなと思います。

柳沢　でも草食動物がキレたときが一番ヤバいですからね。普通にライオンをボコボコにしちゃうし（笑）。楽しみにしてます！