GLAYにピリオドはない
──新曲のタイトルを、ピアニストを意味する「Pianista」にした理由は?
サクライくんのアレンジが入るまでは、かなりピアノ押しの曲だったんですよ。アレンジがだいぶ変わって、名前だけが残った感じです。
──歌詞の着想点はどういうものでしたか?
「スマホの数だけ咲いたストーリー」というフレーズがありますけど、いろんな生き様があるということですね。スマホの中には写真もあれば、SNSのアプリもあって、それぞれの人生が凝縮されている。本当に十人十色の人生があって、それが非常にドラマチックであり、誰もがそれぞれの人生の主人公であると改めて思ったんです。あと夢半ばでも、すごくいい出会いに恵まれて、幸せな人生が歩めたりすることもあることとか。人生の中にはいろんな着地どころがあるなと。
──そして必ずしも、自分が掲げる目標や夢が“正解”なわけじゃない。
GLAYは「BEAUTIFUL DREAMER」で夢は叶うと歌ってるけど、そんなに簡単に叶うものではない。それでも、夢に向かっていくこと、細くて難しい関門を目指すことに人生のドラマチックな部分があると思うんです。
──HISASHIさん流の人生讃歌なんですね。歌詞の中で私が一番気になったのが、「ある音楽家思い詰める27シンドローム」「生きる事と生かされる意味問い正す暇もなく シアトルの夜にグランジが鳴る」というフレーズで。これは27歳で自ら命を絶ったNirvanaのカート・コバーンのことを指しているのかなと。カート・コバーンのほかにも、27歳で亡くなった天才的なミュージシャンというとジミ・ヘンドリックスやジム・モリソン、ジャニス・ジョップリン、エイミー・ワインハウスなどがいて、そういった人たちへの憧憬が言葉の端々から感じられました。
今も27歳で亡くなって伝説を残したミュージシャンたちへの憧れはありますね。そもそもバンドを始めた頃は、30歳を過ぎても活動ができる道筋が見えなかったし、50歳までバンドをやってると思わなかったんですよ。27を過ぎてから自分が何を歌えばいいのかも想像できなかったし、悩みがあった。それが時代が進む中で、価値観や活動方法がアップデートされて、今GLAYが歌ってるような言葉が自然と出てくるようになったんです。
──ちなみにHISASHIさんが27歳の頃というと1999年。「GLAY EXPO」を初開催した年ですね。
過去一番忙しかった年ですね。そしてGLAYを解散しようと思っていた時期でもあります(笑)。すごく売れていたし、バンドとして順調に見えていたかもしれないけど内情は限界で。バンドをやるために東京に出てきてデビューしたのに、思うように活動できないし、GLAYというバンド名すら嫌いになってて。「紅白」(「NHK紅白歌合戦」)に出て、2000年へのカウントダウンライブをやったらGLAYは解散しましょうとメンバーで決めたんです。解散というか、GLAYという名前と一度お別れして、別のバンド名でまた4人でやろうと思ってた。でも、レコ大(「日本レコード大賞」)を獲ったときにインディーズ時代から僕らのことを支えてくれていた人たちが喜んでくれたことが大きくて。スタッフの生活を考えて解散を踏みとどまった。まあ、レコ大を獲っても僕らは全然喜んでなかったんだけど。もうちょっと喜べばよかったな(笑)。あの頃はどう考えてもまだ子供だったね。あとはロックにすがっていました。
──すがっていた?
ロックに抱く幻想というか。「GLAY EXPO」をやって、初のドームツアーもカウントダウンライブも開催して、大きくなっていくGLAYというブランドと、ロックに対するジレンマがあったのかもしれない。
──とはいえ、そういう季節を超えて、GLAYは解散せずに続いて、歌詞にも登場する“ピリオド”の向こう側にいるわけですよね。
そうですね。好き勝手音楽を楽しんで、新しいクリエイターの人たちと制作をできていることを考えると、GLAYにはピリオドというものはないのかなと思うんですよね。と同時に、常々ピリオドがあるとも感じていて。
──ツアーを終えたり、アルバムを発表したりとか。
そうそう。例えば何かが終わると、新しい何かが始まるわけで。「FREEDOM ONLY」の一連の活動が終わってから、「ブラッククローバー」のタイアップの話をいただいたり。いつの間にか、求められるまではやり続けたいという気持ちになった。あとGLAYは約束が多いからね(笑)。「GLAY EXPO」もアジアツアーも実現できてないし、アメリカでのライブもひさしくやってないし。
──TERUさんが公約されているベネチアでのファンクラブ30周年ライブの開催もそうですよね。
だから休めないんですよ、GLAYは。
──バンドとしてのピリオドを打ってる場合じゃないと。
そうそう(笑)。
HISASHIが考える“ぽさ”とは
──今回のミニアルバムのリード曲でもある「Buddy」を、HISASHIさんが最初に聴いたときの感触はいかがでしたか?
「Only One,Only You」を経てTAKUROがどんな曲を持ってくるのかなと思ってたんですが、歌詞を含めて意外と泥臭い曲をこの時代に書き下ろすんだなと。
──サウンドもホーンが入っていたり生音を重視した感じで、「Pianista」とは質感が違いますよね。
そうですね。亀田さんのアレンジもあり、すごくアカデミックなサウンドになった印象です。
──今回のEPには、TAKUROさん作詞作曲の「U・TA・KA・TA」「SEVEN DAYS FANTASY」、TERUさん作詞作曲の「刻は波のように」、「THE GHOST」の80KIDZリミックス、ツアーでも大きくフィーチャーされていた「Ghost of GLAY 愛のテーマ」が収録されていて、かなりバラエティに富んでいます。この作品をHISASHIさんの言葉で総括するとしたらどういうものになりますか?
コロナ禍を思い出す作品ですね。サウンドも歌詞の方向性もバラバラだけど、コロナ禍や今の時代に起きていることが反映されている。でもGLAYっぽさは通底している。
──以前のインタビューで、「これから“GLAYっぽさ”は分析できると思う」とおっしゃっていたのですが(参照:GLAY「FREEDOM ONLY」特集 HISASHIインタビュー)、その“ぽさ”を今のHISASHIさんが説明するとしたら?
どんなにネガティブな歌詞でも、TERUが歌うと前向きになるところかな。GLAYの曲を演奏している瞬間は楽しい時間にしたいという願いがあるんですよね。あとは、「カタカナ禁止飲み会」とかをこの歳になってもやってるのが、よくも悪くもGLAYって感じで“ぽさ”にもつながってる。以前から言ってるんですが、わかりやすく言うと文化祭っぽいんですよね。
──(笑)。このEPを携えてのアリーナツアー「GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2023 -The Ghost Hunter-」が11月にスタートします。
「The Ghost」シリーズのツアーは、「ゴースト」と名が付くだけあってみんなの想像以上のセットリストになるので楽しみにしていてほしいですね。
──どんな演出が取り入れられるのかも期待が高まります。
僕が演出のことを考えると、サスペンスとかホラーのほうにいっちゃうんだよな(笑)。いずれにしてもちょっとスパイスの効いた、刺激的なものになるんじゃないかな。
ライブ情報
GLAY「HC 2023 episode 2 -GHOST TRACK E.P-」購入者限定ライブ
2023年10月25日(水)東京都 Zepp DiverCity(TOKYO)
GLAY The Premium Live 2023 "Premium JIRO" in Fukuoka
2023年10月30日(月)福岡県 福岡サンパレス ホテル&ホール
GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2023 -The Ghost Hunter-
- 2023年11月2日(木)宮城県 ゼビオアリーナ仙台
- 2023年11月3日(金・祝)宮城県 ゼビオアリーナ仙台
- 2023年11月11日(土)北海道 函館アリーナ
- 2023年11月12日(日)北海道 函館アリーナ
- 2023年11月18日(土)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
- 2023年11月19日(日)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
- 2023年11月30日(木)東京都 日本武道館
- 2023年12月2日(土)東京都 日本武道館
- 2023年12月3日(日)東京都 日本武道館
- 2023年12月13日(水)大阪府 大阪城ホール
- 2023年12月14日(木)大阪府 大阪城ホール
- 2023年12月23日(土)愛知県 ポートメッセなごや
- 2023年12月24日(日)愛知県 ポートメッセなごや
GLAY TAKURO Solo Project 4th Tour "Journey without a map 2023"
- 2023年12月8日(金)東京都 Billboard Live TOKYO
- 2023年12月11日(月)大阪府 Billboard Live OSAKA
- 2023年12月19日(火)愛知県 BLcafe
- 2023年12月21日(木)神奈川県 Billboard Live YOKOHAMA
プロフィール
GLAY(グレイ)
北海道函館市出身の4人組ロックバンド。TAKURO(G)とTERU(Vo)を中心に1988年に活動を開始し、1989年にHISASHI(G)、1992年にJIRO(B)が加入して現在の体制となった。1994年にシングル「RAIN」でメジャーデビュー。1996年にはシングル「グロリアス」「BELOVED」が立て続けにヒットし、1997年に12枚目のシングル「HOWEVER」がミリオンセールスを記録したことでトップバンドの仲間入りを果たす。1999年7月には千葉・幕張メッセ駐車場特設会場にて20万人を動員するライブを開催し、当時有料の単独ライブとしては日本最多観客動員を記録する。2010年4月には自主レーベル「loversoul music & associates」(現:LSG)を設立。メジャーデビュー20周年となる2014年には宮城・ひとめぼれスタジアム宮城にて単独ライブ「GLAY EXPO 2014 TOHOKU」を行った。デビュー25周年を迎えた2019年より「GLAY DEMOCRACY」をテーマに精力的な活動を展開。10月にアルバム「NO DEMOCRACY」を、2020年3月にベストアルバム「REVIEW II -BEST OF GLAY-」をリリースした。 2021年3月から6月にかけて配信ライブ企画「THE ENTERTAINMENT STRIKES BACK」を実施。8月にシングル「BAD APPLE」を、10月に2年ぶりのオリジナルアルバム「FREEDOM ONLY」をリリースした。2023年2月に61枚目のシングル「HC 2023 episode 1 - THE GHOST / 限界突破-」、9月にEP「HC 2023 episode 2 -GHOST TRACK E.P-」を発表。11月よりアリーナツアー「GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2023 -The Ghost Hunter-」を行う。
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