GLAY「WINTERDELICS.EP~あなたといきてゆく~」特集

GLAY「WINTERDELICS.EP~あなたといきてゆく~」特集|JIRO(B)ソロインタビュー

曲のよさを純粋に伝えることが大事

──「SUMMERDELICS」は「今までのGLAYとは違う作品」という評価がありましたね。リリースしたあとで発見したことはありますか?

いや、特にないですね。そういう評価も受けたりするんですけど、たまたまみんなが普段作ってるような楽曲をバランスよく集めてみたらバラエティに富んだアルバムになったみたいな感じなんで。昔はTAKUROが作った曲がGLAYのリリースする作品の6、7割ぐらいだったのが、今回のアルバムはほかの人たちの曲がバランスよく入ってる。だから、TAKUROが一番発見があったんじゃないかな。

──オリコン週間アルバムランキング1位という快挙について思うことなどは?

うーん、俺、あんまり昔からランキングとか気にしないタイプなんで(笑)。それよりは、その結果を受けてスタッフの人たちが喜んでるのを見て、「ありがとうございます。みんなのおかげです」と頭を下げたい気分になりました。

──現在、アルバムを携えてひさびさのアリーナツアーの真っ最中ですが、手応えはいかがですか?

面白い感じになってますね。春までやっていたツアー(「GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 "Supernova"」)が、「GLAYはこうであるべき」って言うようなオーソドックスなツアーだったと思うんです。演奏面に関して言うとキーボードなしで、ギターを中心に組み立てていくようなライブにしようってことで、みんなでバンドアンサンブルを考えてやってた。それで今回のアリーナツアーをどういう感じにしていこうかってなったときに、継続してギターを中心にしたライブにする方針にして。そのうえで、アリーナっていう空間を映像を使って見せていこうってことになったんです。で、最初のステージプランは、メンバーの後ろにけっこう大きいスクリーンがある作りになってて。でもなんとなく俺としては自分たちの背景に自分たちの映像が映るっていうのが、当たり障りがなくて嫌だなと思ったんです。

──当たり障りがない、ですか?

ええ。表情を見せるためとは言え、自分たちの後ろに自分たちのアップが映るっていうのがクリエイティブじゃないなと。どうせだったら毎回違った背景を映したほうが面白いよねって言う。例えばハワイの映像のあとに北極の景色を映したり。その曲にマッチしていればサービス的にメンバーが映ってる映像を見せるよりは全然クリエイティブだし、曲の世界観をより広げられるんじゃないかなと思って。その話をしたら、メンバーそれぞれが自分の曲は「こうしたい」「ああしたい」ってプランを立ててきて、結果的にかなりいびつなものになった。そういうのも含めて俺たちは楽しんでるけど、ファンの人たちは戸惑ってて。

──戸惑ってる(笑)。

JIRO(B)

戸惑ってるけど「なんかこの感覚って新鮮!」みたいな感じ。いろんな意味で「これはデビュー23年目にして面白いライブができてる」という手応えがあります。

──ライブの構成自体を練り出したのはいつだったんですか?

春のホールツアーが終わってすぐですね。難易度の高いセットリストにしたいなと思ってたんです。

──難易度とは具体的には?

楽器を弾くメンバーが「曲覚えるのすごい大変」「懐かしすぎる!」って思うような内容ですね。「SUMMERDELICS」に入ってる14曲やいつもやってる曲に加えて、普段のライブでやってないような眠っていた曲を入れたりして。2DAYS公演のところは1日目と2日目の曲は、「SUMMERDELICS」の曲以外はほぼ変えようっていう。だから早い段階でセットリストを考えて、スタッフにも「こういう選曲でいきます。何かアイデアを考えてください」みたいに伝えて準備してました。

──ええ。

今回はステージセットのすごさや演出がどうこうと言うよりは、「SUMMERDELICS」の曲や普段やってない曲をじっくり演奏するツアーにしたいと思ってて。そもそも俺たち、ライブで最新技術とか使ったりっていうのにあんまり興味のないバンドなんでね。

──そうなんですか?

変な話、最新技術を使えば予算は莫大にかかるし、すごいものもできるけど、GLAYのライブにおいて大事なのは演奏や歌だから。2004年にユニバーサル・スタジオ・ジャパンでやった「GLAY EXPO」の頃までは「日本で最高のエンタテインメントをやるぜ!」みたいな感じで当時の最新技術を試したいって要求してたんですけど、それ以降は「やっぱ違うな」と。俺たちにはお客さんとの一体感を感じられる空間を作ることや、曲のよさを純粋に伝えることが大事だから。演出にお客さんの気を持っていかれるのがちょっと嫌だなと言うか、「もっとこっち見て!」「曲を聴いて!」みたいな気持ちになっちゃう(笑)。

──今回のツアーでは曲を軸に、今までとは違う見せ方をしていると。

そうですね。でも、結果的に振り幅のあるライブができているのはHISASHIが要因だと思うんですよ。TAKURO、TERU、俺は、これまでのGLAYをベースにしながら振り幅のリミッターを定めてるけど、HISASHIの場合は自分のやりたいことをどんどん押し込んでくる。「この曲からこの曲の流れってすごく悪くない?」みたいな意見が出ても、「いや、大丈夫じゃない?」って(笑)。

──「SUMMERDELICS」という作品の振り幅が、ライブにも多大に影響しているみたいですね。

はい。実際、ツアーの初日はメンバーも戸惑っていた感じがあったんで、「なんかTERUがつなぎづらそうだな」と思ったら、終わったあとにホテルの部屋で「インタールードを入れてみよう」とか調整しました。映像が入るので、曲自体の長さを延ばしたり縮めたりはできないですけど、曲のつなぎとかは全然変えることができるので、全員がやりやすいように調整してます。今、だいたい固まりつつあるので、あとは俺たちが飽きないように、ファンの人たちをガッカリさせないようにやっていく感じですね。

JIRO(B)

気持ちはファンの人と一緒です

──ライブのセットリストを作っているJIROさんが感じる、ホールツアーとアリーナツアーの違いってどんなところですか?

違いはあんまりないですね。特にわけて考えたりはしてないです。セットリストを作るときに、穏やかに始まるか派手に始まるか、自分で言うのもなんですけど、途中で泣きのコーナーが入って、さらに遊びのブロックが入って、暴れる曲があって……みたいな流れがあると思うんです。伝統芸能じゃないですけど、GLAYにはGLAYなりのライブの流れがあって、どういう流れで組んでいったら充実感があるかは意識するようにしてます。ただ、野外ライブとか「EXPO」、ファンクラブ限定ライブとか特別な公演のときはいつものフォーマットとは違う形で作ることはあります。メドレーだけしかやらないとか、シングルの曲しかやらないとかね。

──ツアーになってくると、どちらかと言うと最大公約数的な考え方で構成していく?

そうですね。ある程度作ってからメンバーにプレゼンして、そこでの反応やリハーサルの様子を見て微調整してます。

──メンバーと意見がぶつかることは?

これがないんですよ。もちろん事前に「なんかやりたい曲ある人、そろそろセットリスト考えたいんでなんかあったら言ってください」って聞いて意見を吸い上げますけど。

──メンバーの意見以外に参考にするものは?

俺、ファンのアンケートをすごい見るんです。過去のアンケートで挙がっていたリクエストの中から人気の高い曲を盛り込みますね。アリーナツアーのときは「友達に連れられて観に来ました」っていう人もけっこういるから、超メジャーなシングル曲を入れたりとか。

──前回のホールツアーと、今回のアリーナツアーのセットリストの違いがあるとすればその点でしょうか?

そうですね。実は毎回ライブでやってる曲は、ちょっと“寝かせ期間”に入ってもいいかなと思ったんですけど、俺が病気してライブを休んだ一件があってから「もったいぶってる場合じゃないな」と。大げさな話ですけど今やっとかないと、ぽっくり誰か死んだときにできないわけで。それは困ったもんだなと思ったし、やっぱり今やんなきゃダメだみたいな。

──前回のインタビューで、昔に比べるとツアーがゆっくりしたスケジュールになってるというお話がありましたね。

そうなんです。詰まってるほうがテンションは保ち続けられるんですけど、スケジュールがゆっくりだと難しいですね。

──では、テンションやモチベーションはどうやって保っているんでしょうか。

JIRO(B)

ライブ以外に楽しいことをしないことですね。今は打ち上げもほとんど行かないし、ライブの2時間半を自分のピークにしたいんです。ツアー中は、休みの日も極力ライブに向けてテンションを溜めてると言うか。気持ちはファンの人と一緒です。序盤の宮城公演も、そういう気持ちで臨んだら最高に楽しくて、ファンの人よりも楽しんでんじゃないかなみたいな(笑)。でも、そういう空気って伝わるみたいで、アンケートで「JIROさん楽しそうで楽しかったです」みたいなことを書かれたり。

──それがパフォーマンスに反映されると。

今まで最高のライブをしたあとは、翌日に本番があっても「今日打ち上げ行かないでどうする!」って思ってたけど、今はそれをグッと抑えて「明日、いいライブができる喜びを取っておこう」みたいな。なので終演後に最後にトレーニングとストレッチをして帰るのが定番です。

──ストイックですね。

いやいや、結果自分に返ってくることだし、結局自分がライブを楽しみたいんです。

──ツアーではニューシングルのリード曲「あなたといきてゆく」も披露してますね。お客さんの反応はいかがですか?

自分の演奏が忙しくて、お客さんの表情が見れてないんです(笑)。けっこう繊細な曲なので演奏に集中してて。ただアンケートとか見てると評判いいですね。

──アレンジの際に気を配ったことはありますか?

亀田さんがTAKUROのデモテープをもとに作ったベースラインが素晴らしくて、亀田さんの弾いてたものに引っ張られて弾いた感じなんです。俺にはない引き出しのアレンジだったので、「亀田さん以上のフレーズが浮かばない。このまま採用したいんですけどいいですか」と伝えてレコーディングしました。ラストのサビに入る前のハイフレットなベースのフレーズとか俺の引き出しにはないし、亀田さんとは一緒にやってて毎回新たな発見があるんですよね。

──メロディアスなベースラインですよね。

難しいことをやってるわけじゃないんですけど、ボーカルの歌に対して寄り添えるような感じになってて。俺、ホントにデビューした頃からバラードって苦手で。バラードって基本的に聴かないジャンルなんで、もうヤケクソになって弾きまくった時期もあったんですけどね。

──いまだに未知の部分だと。

そうなんです。

JIRO(B)

コンディション維持は今まで以上にちゃんとしないと

──JIROさんが今ハマってるものってなんですか?

ハマってるものかあ、イングランドのサッカープレミアリーグの試合ですね。今だと、土曜日の22:30くらいからライブ中継をやってるんです。なのでライブ後に楽屋でトレーニングして、ケータリングのごはんをホテルの部屋に持って帰ってそれを観ながら食べてます。

──プレミアリーグ観戦から得るものはありますか?

ありますね。サッカー選手ってコンディション維持をしっかりやらなきゃいけないじゃないですか。ちょっとでも怪我をするとベンチ外だし。俺たちの場合、その辺は緩いんで、それこそ2日酔いでもライブやろうと思えばできちゃう。でも、サッカー選手やアスリートはそんなことはできない。そういう姿勢を見て、俺もコンディション維持は今まで以上にちゃんとしないとなと思うようになりました。

──最後に2018年のGLAYの展望を教えていただけますか?

これが、見えないんですよね(笑)。

──個人としては?

この前、BREAKERZのレコーディングに参加したんですけど、すごいBREAKERZのメンバーも喜んでくれたし、俺自身もやりがいあったし楽しかったんです。そういった新しい刺激があればうれしいです。そういうお話があるなら、積極的にやってみたいですね。その経験をGLAYにフィードバックすることもできるでしょうし。

GLAY「WINTERDELICS.EP~あなたといきてゆく~」
2017年11月22日発売 / LSG
GLAY「WINTERDELICS.EP~あなたといきてゆく~」CD+DVD盤

[CD+DVD]
2160円 / PCCN-00029

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GLAY「WINTERDELICS.EP~あなたといきてゆく~」CD盤

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1296円 / PCCN-00030

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CD収録曲
  1. あなたといきてゆく
  2. 時計(再録)
  3. Satellite of love(再録)
  4. Joker(LIVE from VISUAL JAPAN SUMMIT 2016)
  5. 「SUMMERDELICS」reprise
DVD収録内容
  • あなたといきてゆく MUSIC VIDEO
  • シン・ゾンビ MUSIC VIDEO
  • XYZ MUSIC VIDEO
  • SUMMERDELICS MUSIC VIDEO
  • あなたといきてゆく(LIVE from Never Ending Supernova 17.5.15 市川市文化会館)
  • BE WITH YOU(LIVE from Never Ending Supernova 17.5.15 市川市文化会館)
  • the other end of the globe(LIVE from TOKYO SUMMERDELICS 17.7.31 お台場)
  • HOWEVER(LIVE from TOKYO SUMMERDELICS 17.7.31 お台場)
GLAY(グレイ)
GLAY
北海道函館市出身の4人組ロックバンド。TAKURO(G)とTERU(Vo)を中心に1988年から活動を開始し、1989年にHISASHI(G)が、1992年にJIRO(B)が加入して現在の体制となった。1994年にシングル「RAIN」でメジャーデビュー。1996年にはシングル「グロリアス」「BELOVED」が立て続けにヒットし、1997年に「HOWEVER」がミリオンセールスを記録したことでトップバンドの仲間入りを果たす。1999年7月には千葉・幕張メッセ駐車場特設会場にて20万人を動員するライブ「MAKUHARI MESSE 10TH ANNIVERSARY GLAY EXPO '99 SURVIVAL」を開催し、有料の単独ライブとしては世界最多観客動員を記録する。2000年に入ってからも数多くのヒット曲やヒットアルバムを生み出し、2010年6月には自主レーベル「loversoul music & associates」(現:LSG)を設立。メジャーデビュー20周年となる2014年は、9月に宮城・ひとめぼれスタジアム宮城にて単独ライブ「GLAY EXPO 2014 TOHOKU」を行い、11月にオリジナルアルバム「MUSIC LIFE」をリリースした。2015年には5月に10年ぶりとなる東京・東京ドーム公演を2日間にわたって開催。2016年1月にシングル「G4・IV」を発表し、同月より全国ツアー「GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 "Supernova"」を開催した。2017年7月に2年半ぶりとなるニューアルバム「SUMMERDELICS」をリリース。9月末から「GLAY ARENA TOUR 2017“SUMMERDELICS”」と題した全国ツアーを開催している。11月にニューシングル「WINTERDELICS.EP~あなたといきてゆく~」を発表。2018年3月17日に台湾・Taipei Arenaにてライブを行う。

2020年8月24日更新