いい声で歌うのは大事だけど……
──7月にリリースした「SUMMERDELICS」が、4年半ぶりにオリコン週間アルバムランキングで1位を獲得しましたね。
やっぱりうれしかったです。至るところで“オリコン1位”っていう枕詞を付けて紹介してたっていう(笑)。
──自分たちとしても手応えのあった作品だと思うのですが、周りの評価が付いてくるとまた違う思いがある?
そうですね。仕様を4種類とか5種類作ってリリースする形ではなく、作品としてシンプルに勝負して1位を取れたのがすごくうれしかった。前回インタビューしてもらったときは(参照:GLAY「SUMMERDELICS」特集)、アルバムが完成した喜びを話してたと思うんですけど、改めて聴き返すといろんなジャンルの楽曲があったなと。あとライブでやってみてイメージが変わった曲もあって。
──具体的には?
「聖者のいない町」はよりサイケになったし、「SUMMERDELICS」はロックな感じになった。もともと「SUMMERDELICS」はオシャレなシティポップの曲っていう印象があったんですよ。今、アリーナツアーでアニメ「The World of GOLDEN EGGS」の映像を演出を交えて披露してるんですけど、シュールな感じが曲と合ってて。サイケでロックな曲に変化して、レコーディングしていたときの感じとは全然変わりましたね。
──開催中のツアーの調子はいかがですか? SNSを拝見しているとかなり充実した、楽しいツアーになっているみたいですが。
ホントに楽しいですね。「SUMMERDELICS」っていうアルバムから新しい道を歩み始めたGLAYの形を、映像と音楽の両方で表現できてます。今までGLAYのライブってあまり映像に頼らず、自分たちのマンパワーで魅了していくやり方をしてたんです。でも、デビュー20周年を経てGLAYのこれからを考えたときに、エンタテインメントの部分は切り離しちゃいけないなと。なので、今回のツアーでは映像をたくさん使用してます。
──それは確かに新しい試みですね。
ツアー中なので詳しくは言えないんですけど……「SUMMERDELICS」の中で自分が作った楽曲に関しては“責任編集”っていう形で、作ってほしい映像を発注して演出に盛り込んでいます。「SUMMERDELICS」同様、演出面も「G4」の拡大版って感じになってます。そのほかにも「BEAUTIFUL DREAMER」とかファンの子たちに伝えたいメッセージが入ってる曲に関しては、言葉を重要視したいのでスクリーンいっぱいに歌詞を出したり。長年やっていくうえで、自分たちが楽しめる刺激のあるツアーをやらないとどこかで飽きちゃう怖さがあるんで、どんどん新しいものを取り入れてます。アルバムを作っていたときのように、自分たちが新鮮な気持ちでできることをしないと。
──TERUさんがステージに立つうえで、心がけていることってなんですか?
年齢で変わってきてるけど、今は健康管理をがんばりすぎると精神的につらくなってくるので、どこかでうまく気を抜くようにしてますね。「ライブがあるからあれしちゃいけない、これしちゃいけない」ってなると、不安ばっかりになってライブが楽しめない部分もあって。自分の中の許容範囲を広げていくようにしてます。
──あんまりがんじがらめに考えないようにしてる?
そう。だってこれから歳を重ねていったら、体力的にもどんどん低下していくだろうし、喉の管理をいくらしても老化には勝てないところもあるから。いい声で歌うのは大事かもしれないけど、それをファンの子たちが必ずしもそれを求めてるかって言うと、GLAYの場合そうじゃないと思うんです。同じ時代を一緒に歩んでるファンと同じ空間にいられる幸せを共有するのが大切。だからライブをするうえでも、そういうところに気が向き始めてる。
──それはいつ頃から?
デビュー20周年を越えてからかな? でもまだ実験中で。あえてリハーサルの前にガンガン呑んでちょっと声をガラガラにして、喉のコンディションを悪くしてリハーサルをやってみたり。でも、あくまで実験の一環ですよ! いろんなコンディションで対応できるようにしておかないと、本番のときに対応できなくなっちゃうから。
──4カ月におよぶツアーで自分のテンションやモチベーションを保つのはなかなか大変な気もしますが。
昔は半年ずっとツアーで全国を走り回ってたこともあるし、今は楽なほうです(笑)。リフレッシュの方法もそれぞれうまくなってると思うし。僕の場合は友達とごはんを食べたり、飲んだりすることでリフレッシュしてますね。だから、あんまり不安や心配はないです。
今後成長させていきたい「あなたといきてゆく」
──今回のシングルに収録されている「あなたといきてゆく」は、春に行われたホールツアーと開催中のアリーナツアーですでに披露されていますね。
はい。レコーディングは去年終わっていて。「SUMMERDELICS」に収録するかどうかという話もあったんですけど、アルバムの中の1曲として聴いてもらうより、シングルとしてたくさんの人に届けたいという思いが生まれて。
──季節感や曲のトーンを考えると、「SUMMERDELICS」の中だと浮いちゃうかもしれませんね。
僕自身は「SUMMERDELICS」の曲と一緒に聴いても違和感はなかったんですけど、TAKUROが「これ1回ここから外していい?」って言ってきて。確かに「SUMMERDELICS」というアルバムのテーマを考えたら、外したほうがいいなとは思いましたね。
──TAKUROさん作詞作曲の曲ですが、初めて聴いたときの印象は?
最初はアルバムの1曲としてはすごくいい、落ち着いたラブバラードという印象で。僕はシングルってキラキラして派手なもんだっていうイメージがあるので、この曲はシングルという印象はなかったんです。もともとアルバムの中の1曲として録っていたこともあって、あんまり熱くしたくなくて、ファルセットを使って柔らかく歌ってたし。シングルになるって聞いてから熱い雰囲気にしなきゃと思って、ライブで歌うときも熱く歌おうとしたんだけどダメだった。無理やり派手な衣装を着せても曲がダメになると思って、もとの雰囲気を生かす形になりました。それで正解だったかと。
──従来のGLAYの王道バラードに最初は寄せようとした?
ええ。だけど、今までのバラードとは同じテンションにはならなくて。結局今回はシンプルに歌うことをテーマにしました。熱くなりすぎず、歌詞が聴き取れるように歌うことを意識しましたね。だから、これは自分の気持ちを落ち着かせて歌えるバラードという感じですね。同じバラードでも、「HOWEVER」と「あなたといきてゆく」の温度は違うじゃないですか。だから歌うときの気持ちも変わりますね。
──TERUさんがバラードを歌ううえで意識していることってありますか?
曲に入り込みすぎないようにすることですかね。TAKUROが歌った仮歌がめちゃくちゃ熱くて(笑)。それに影響されず、歌詞の意味はちゃんと咀嚼するけど、曲の物語に聴き手が入り込めるような余地を残すようにしてます。
──歌詞は「ずっと2人で…」の続きをイメージさせる内容で、登場人物も「ずっと2人で…」が1人だったとすれば、「あなたといきてゆく」は家族の中のさまざまな人物が出てきますよね。歌詞を読んだときTERUさんはどう感じられましたか?
最初に歌詞をもらったときは、「ずっと2人で…」と同じ一人称の曲かなと思ったんですよ。って言うのも完成した歌詞には「祖父」「祖母」っていう言葉に「あなた」とふりがなが振られてますけど、最初はひらがなで「あなた」とだけ書かれてたんで。だから、歌い終わって最終版の歌詞をもらって「あ、そういうことか」って気付くという(笑)。TAKUROが感じる家族愛だったりとか、家族に対する考えが歌詞に表れてますね。作詞をする人間の成長と共に、歌詞の主人公たちの状況や感情が変わっていくのはいいなと思いました。
──歌っていく中で曲自体も変化していきそうですね。
うん、今後成長させていきたいという思いはありますね。五十代、六十代になったときに、この曲をどう歌っていくのか自分的にも楽しみです。
──シングルには「時計」「Satellite of love」の再録バージョンが入ってます。こちらは今回のシングルのために録り直したんですか?
2曲共ではないですね。「Satellite of love」に関しては僕が録り直したいっていう気持ちがずっとあって。10年前の「Satellite of love」は“がむしゃらに歌ってるTERU”の声が入ってるんです。でもライブで歌う中で、歌い方が変化してきたので録り直した。「時計」に関してはホールツアーでバンドアレンジでやってたので、シングルが出ることが決まってから今のモードで録り直しました。
──よく昔の曲を再録してるんですか?
よくやってます。世に出てないものもいっぱいありますよ。「彼女の“Modern…”」とか「誘惑」とか、ライブでやっていく中でBPMやアプローチが変わってきて、昔の音源よりもどんどんカッコよくなってるんです。
──再録のときはアレンジを作り直すんですか?
特に作り直してないです。ライブでやっているアレンジでそのままレコーディングしてます。今回に限らず、今後もライブアレンジした再録音源をリリースすることは出てくると思います。
──また全体的にしっとりしたシングルかと思いきや、「VISUAL JAPAN SUMMIT 2016」でのX JAPAN「Joker」のカバー音源が入っています。
これはTAKUROがすごい「出したい!」って言ってて。3曲目まで「WINTERDELICS」のテーマに沿ってるのに、ここでトーンがいきなり変わるという(笑)。でも、最近はシングルのカップリングはファンサービスだと思ってるので。
──ファンの方に十分喜んでもらえるような内容だと思います。
はい(笑)。
2018年はデビュー25周年に向けて動き始める年
──少し気が早いのですが、2018年のGLAYの展望を教えていただけますか?
デビュー25周年に向けて動き始めるでしょうね。2019年が25周年なんですけど、準備を考えると時間があまりないんです。まずは大まかな活動方針を決めていくでしょうね。野外ライブをやるのか、アリーナ公演をやるのか……。まあ、野外はやるでしょうね!
──最後にお聞きしたいのですが、TERUさんがハマってることって何ですか?
「ファイナルファンタジーXIV」はみんな周知の事実だと思うので外すとして(笑)、最近は夏のスノーボードですかね。今年はニュージーランドに行って、ヘリで山頂に行ってスノーボードで降りてきました。本当は冬にスノーボードをやりたいんですけど、ツアーやレコーディングのことを考えるとなかなかできない。そのぶん溜まったストレスを夏に解放するようになってます。
──それがTERUさんのリフレッシュ方法の1つ?
ええ。やっぱり23年もバンドをやってると、安定と言うか、別に冒険しなくてもいいんじゃないかっていう意見もあると思うんです。でも、GLAYは常に1つひとつ挑戦しなからやっていくバンドでありたいんで、リフレッシュも大切。バンドも楽しめて、趣味も楽しめて……相乗効果でいい人生を送れたらなとは思います。
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TAKURO(G)ソロインタビュー
※記事初出時、テキストに一部誤りがございました。訂正のうえ、お詫びいたします。
- GLAY「WINTERDELICS.EP~あなたといきてゆく~」
- 2017年11月22日発売 / LSG
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[CD+DVD]
2160円 / PCCN-00029[CD]
1296円 / PCCN-00030
- CD収録曲
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- あなたといきてゆく
- 時計(再録)
- Satellite of love(再録)
- Joker(LIVE from VISUAL JAPAN SUMMIT 2016)
- 「SUMMERDELICS」reprise
- DVD収録内容
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- あなたといきてゆく MUSIC VIDEO
- シン・ゾンビ MUSIC VIDEO
- XYZ MUSIC VIDEO
- SUMMERDELICS MUSIC VIDEO
- あなたといきてゆく(LIVE from Never Ending Supernova 17.5.15 市川市文化会館)
- BE WITH YOU(LIVE from Never Ending Supernova 17.5.15 市川市文化会館)
- the other end of the globe(LIVE from TOKYO SUMMERDELICS 17.7.31 お台場)
- HOWEVER(LIVE from TOKYO SUMMERDELICS 17.7.31 お台場)
- GLAY(グレイ)
- 北海道函館市出身の4人組ロックバンド。TAKURO(G)とTERU(Vo)を中心に1988年から活動を開始し、1989年にHISASHI(G)が、1992年にJIRO(B)が加入して現在の体制となった。1994年にシングル「RAIN」でメジャーデビュー。1996年にはシングル「グロリアス」「BELOVED」が立て続けにヒットし、1997年に「HOWEVER」がミリオンセールスを記録したことでトップバンドの仲間入りを果たす。1999年7月には千葉・幕張メッセ駐車場特設会場にて20万人を動員するライブ「MAKUHARI MESSE 10TH ANNIVERSARY GLAY EXPO '99 SURVIVAL」を開催し、有料の単独ライブとしては世界最多観客動員を記録する。2000年に入ってからも数多くのヒット曲やヒットアルバムを生み出し、2010年6月には自主レーベル「loversoul music & associates」(現:LSG)を設立。メジャーデビュー20周年となる2014年は、9月に宮城・ひとめぼれスタジアム宮城にて単独ライブ「GLAY EXPO 2014 TOHOKU」を行い、11月にオリジナルアルバム「MUSIC LIFE」をリリースした。2015年には5月に10年ぶりとなる東京・東京ドーム公演を2日間にわたって開催。2016年1月にシングル「G4・IV」を発表し、同月より全国ツアー「GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 "Supernova"」を開催した。2017年7月に2年半ぶりとなるニューアルバム「SUMMERDELICS」をリリース。9月末から「GLAY ARENA TOUR 2017“SUMMERDELICS”」と題した全国ツアーを開催している。11月にニューシングル「WINTERDELICS.EP~あなたといきてゆく~」を発表。2018年3月17日に台湾・Taipei Arenaにてライブを行う。
2020年8月24日更新