音楽ナタリー PowerPush - GLAY
「MUSIC LIFE」特集
「MUSIC LIFE」参加ドラマーインタビュー
高橋まこと インタビュー
参加曲
「浮気なKISS ME GIRL」
──GLAYの最新アルバム「MUSIC LIFE」の中で、今回高橋さんは「浮気なKISS ME GIRL」のドラムを担当されています。そもそも、どんな経緯でお話を受けられたのでしょうか?
TAKUROくんとは「ふくしま再興祭り2014」で亀田(誠治)さんと一緒にKIZUNA BANDをやっていた関わりもあったし、それ以前からGLAYとはいろいろと話をする機会はあったんですね。東日本大震災直後ぐらいに、TERUやTAKUROには、福島でのイベントに一緒に出てくれない?という話を振っていたこともあったし。その後、ヒムロック(氷室京介)が2011年6月に東京ドームで震災のチャリティライブをやるときに、TAKUROから「一緒に飲みませんか?」という連絡が来て。そのライブでドラムを叩くことになっていたToshi(永井利光)もその場にいて、「(BOØWY楽曲について)どう叩くんですか?」と聞かれたりしながら、一緒に酒を飲んで話をしてたこともあったんです。そのあたりからけっこう会ったりはしてたんですよ。
──そんな中、「GLAYのこの曲のドラムをお願いします」と具体的な依頼が来た際には、どんなお気持ちだったでしょうか?
「俺でいいの?」みたいな。あとは、「GLAYからやっと声がかかった。やっててよかった!」という感じかな(笑)。いつもToshiがレコーディングしているのに、「なんで俺なの?」とTAKUROに聞いたら「いろいろな人にドラムをお願いして、いろいろ試してみたい」という話で。それで俺のところにも回ってきたみたい。
──最初にデモ曲を聴かれたときの印象はいかがでしたか?
もうおおむねできあがった状態で、打ち込みのドラムがみっちり入って、歌詞も乗っていたのね。「ただの『Baby Action』 (BOØWYの楽曲)じゃねーか(笑)。なんだコレ?」と聞いたら、「『Baby Action』じゃなくて、俺なりの『TAKURO Action』です!」とTAKUROが言ってくれたんだよね(笑)。
──(笑)。TAKUROさんとしては、「この曲はぜひ、まことさんに!」という強い思いがあったようです。
たぶん、「俺が叩くならこんなふう」というイメージがあったんじゃないかな? だから細かいリクエストは、スタジオではほとんどなかったですよ。本当は初日は1回音を合わせてプリプロだけして、次の週あたりに本チャンいきましょうか?と言っていたんだけど、俺的にはもう、1回始まっちゃうともう「それが本番じゃん?」という思いがあるんですね。今日このままいけるんだったら今日いっちゃおうよ?という感じでやってみて、わりとサックリと終わったね。亀田さんもそれでいいって言うからさ。
──逆に言いますと、「これでいける!」という完成像が最初から共有されていたのでしょうか?
それはあると思う。俺としては、基本的にロックドラムというのはあまり作り込むもんじゃないと思っているから。集中を高めてガン!といって、勢いがあったほうがいいんじゃないの?ってところでずっとやってきているので。ちょっとヨレていようがシンバル1枚打つの忘れようが、「まあ、いいや」という(笑)。だから、重箱の隅をつつくような「いやあ、そのフレーズがさ……」とかいうのは、今回もなかったですね。
──TAKUROさんから、叩き終わったあとに何か言葉はありましたか?
「ああ、やっぱりまことさんだよね!」というニュアンスのことは言ってくれていましたよ。亀田さんもすごく喜んでいたし。
──ほかのメンバーとはスタジオで話しましたか?
全員と話したんじゃないかな? JIROとはスタジオに一緒に入っていたし、HISASHIもいたし、TERUはブースの外にいて、卓の前で歌っていたから。
──JIROさんとのリズム隊としての呼吸はいかがでしたか?
初めてだったけど、よかったですよ。当たり前だけどうまいし、芯があっていいベースでしたよ。
──ご自身のセッティングはいつもと違うところはありましたか?
「ちょっとBOØWYっぽい音にしてやろうかな?」 と思ったので、ロートタムのセットを持って行ったのね。こだわりというよりも、今回はそっちのほうがいいんじゃないの?というイメージがあったから。別のセットも用意していて、もしダメだったら組み替えることもできたんだけど。ロートタムをセットしたら、「あ、これでいくんですか?」ってTAKUROが言うから、「ダメ?」と言ったら、「いいですよ!」という感じだった。フレーズ的にブレイクがあったので、そこはちょっとBOØWYっぽい、俺がいつも叩いてるフレーズを織り込んでみました。聴くヤツが聴いたら、「あっ!」とわかると思うよ。
──BOØWYっぽい曲というのは、GLAYが20周年というキャリアを積んで来た今だからこそ挑戦できることではないかな?と思うのですがいかがでしょうか。
ああ、それはそうだね。自分たちがまだちゃんと確立してない最初のうちには、そういうことはできなかっただろうしね。懐が深くなったというか、みんな大人になったというか。やっぱり彼らが出てきたばかりの頃は、黒づくめで、一瞬「なんだ? BOØWYみてえじゃん?」と言われていたと思うんだよね、たぶん。俺ですら一瞬「あれっ?」と思ったぐらいだから、そういうイメージはあったんじゃないかな? もちろん、BOØWYを好きだというのはわかっているし。
──憧れだったわけですからね。
もう10何年も前に、「LOVE LOVEあいしてる」(フジテレビ系の音楽番組で2001年に放送終了)でGLAYに呼ばれて行って、BOØWYの「B. BLUE」を一緒にやったことがあったんですよ。そのときも、「ついにあのBOØWYを人前でコピーしてしまいました!」というようなことを、TERUやTAKUROは言っていたからね。奴ら、そのときすげえ緊張してたから、「お前ら、緊張するな! こっちも緊張するんだよ!」とか言ってちょっと和ませたりして。
──そのように愛情深い接し方をしてきたからこそ、GLAYとしても今回、安心してお願いできたんでしょうね。
TAKUROなんて、酒を飲んでると後輩のクセに俺にツッコんでくるからね(笑)。ツッコミやすいんだろうなあ、俺……。でも、ギターはツッコミ上手じゃないとダメだよ。そういう細かいところをググッてツッコんでくるの、布袋(寅泰)と一緒だもん。1回話しているうちに1個は絶対に揚げ足を取るからね(笑)。
──KIZUNA BANDで関わることで見えてきたTAKUROさんの一面、GLAYの一面などはありますか?
TAKUROは、元々ジュンスカ(JUN SKY WALKER(S))も好きだったし、BOØWYも弾けるというので、楽しそうな感じですよ。自分んちのフィールドではないところに出て行くのが、なんだか面白そうで。やっぱりTAKUROの場合はリーダーだし、“GLAYのギタリスト”という看板を背負っているし、なかなかほかにホイホイ出て行きにくいでしょ? だから、そういう意味では楽しかったんじゃないかな? もちろん、僕らも楽しかったし。
──TAKUROさんは20年にわたりリーダーとしての責任感のもと楽曲を作ってきたそうなんですけど、今回は「自分のやりたい曲をのびのびと作ろう!」という思いから「浮気なKISS ME GIRL」が生まれたと言っていました。
やっぱり「自分がやらなきゃいけない」というのがけっこう、TAKUROの足かせになってたのかな? 俺はずっと、歌詞はTERUが書いているんだとばっかり思っていたから。ほとんど全部TAKUROが書いてきたという話を最近知って、「へーっ!」と驚いたんですよ。ヒムロックは自分で歌うから自分で詞を書いていたわけじゃない? 「歌うヤツが書けよ」と普通はブン投げちゃうものなんだよね。「BEAT EMOTION」(BOØWYの5thアルバム)のときは、俺や松井(恒松)に「この曲は書いてよ」というふうに投げられたけど、それは曲が多過ぎて物理的に無理だったから仕方なくだったわけで。だから、TAKUROが全部やっていると知って、「エライな」と思った。そう言えば、「やっと今回TERUが詞を書くんだよ!」って言ってたな(笑)。
──(笑)。今回、一緒に曲を作り上げる中で感じたGLAYの音楽の特徴や魅力はどんなものでしょうか。
けっこう幅広いんだな、とは思ったね。「ふくしま再興祭り」でやったKIZUNA BANDのボーカルは宮田和弥(JUN SKY WALKER(S))なんだけど、GLAYの「HOWEVER」をやったのね。それと今回叩かせてもらった「浮気なKISS ME GIRL」とでは全然違うし、音楽性の幅が広い。「ああ、GLAYこんなこともやるんだ」と思った。やっぱり、20年という年月はハッキリ言って大きいからね。変な言い方だけど、俺たちBOØWYなんか6年しかやってないのに、彼らは20年やっているわけで。3倍もやっているんだから、カッコよくなって当たり前だよな!(笑) だって、毎回毎回、同じことはできないじゃん?
──何かしら変化して、進化し続けないといけませんからね。
そうそう。定番みたいな芯はもちろんあってもいいけど、そればっかりやると飽きられるし、「ずっと同じだ」と言われたらもうダメでしょ? だから、大変だと思うよ。「次何しようか?」と考えることすらも、ミュージシャンとしてはけっこう大変なんだから。そういう意味では、メンバーも変わらずに長年ガッツリやっているのはすごいよね。俺の知っているのでは、あとはBUCK-TICKぐらいなものかな? でも、やっとロックバンドも日本に根付いて来たというか、20年、30年続けてやっているバンドが出てきたというのは、いいことだと思うよね。
──今後のコラボレーションへの期待を含め、最後にGLAYに向けて一言お願いします。
こっちからあんまり「またやらせろ!」と言うのはどうなの?というのはあるよね。「お呼びでない」みたいな感じかもしれないし(笑)。まあ、「やろうよ」と言われたらもちろんやりたいですけどね。そう言いながら、KIZUNA BANDも「ふくしま再興祭り」1回こっきりかと思っていたら、そのあとも「風とロック」のイベントで呼ばれたり。ROUGEが群馬で再結成して、「GBGB」っていう今年2回目を迎えるイベントで奥野(敦士)が歌ったときに呼ばれたり。気が付いたらTAKUROとは3回も一緒にやっているんだよね。先のことはわからないけど、「また何かあるのかな?」とも思ったりしますね。GLAYはもう、十分に日本のトップバンドだから、このまま突っ走ってもらうしかないでしょう!
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- ニューアルバム「MUSIC LIFE」 / 2014年11月5日発売
- 「MUSIC LIFE」
- 2CD豪華盤 BALLADE BEST☆MELODIES / 3996円 / ポニーキャニオン / PCCN-00017
- 2CD豪華盤(G-DIRECT限定)BALLADE BEST☆MEMORIES / 3996円 / loversoul music & associates / LSCD-0018
- 1CD盤 / 2700円 / ポニーキャニオン / PCCN-00018
CD収録曲
- BLEEZE(Album Ver.)
[作詞・作曲:TERU / ドラム:永井利光] - 百花繚乱
[作詞・作曲:TAKURO / ドラム:松下敦] - Only Yesterday
[作詞・作曲:TAKURO / ドラム:村石雅行] - 疾走れ!ミライ
[作詞・作曲:TERU / ドラム:永井利光] - 祭りのあと
[作詞・作曲:TAKURO / ドラム:永井利光] - 浮気なKISS ME GIRL
[作詞・作曲:TAKURO / ドラム:高橋まこと] - 妄想コレクター
[作詞・作曲:HISASHI / ドラム:永井利光] - Hospital pm9
[作詞・作曲:TAKURO] - DARK RIVER
[作詞・作曲:TAKURO / ドラム:村石雅行] - TILL KINGDOM COME
[作詞・作曲:TAKURO / ドラム:中村達也] - MUSIC LIFE
[作詞:TAKURO / 作曲:JIRO / ドラム:永井利光]
GLAY(グレイ)
函館出身の4人組ロックバンド。TAKURO(G)とTERU(Vo)を中心に1988年から活動を開始し、1989年にHISASHI(G)が、1992年にJIRO(B)が加入して現在の体制となった。1994年にシングル「RAIN」でメジャーデビュー。1996年にはシングル「グロリアス」「BELOVED」が立て続けにヒットし、1997年に「HOWEVER」がミリオンセールスを記録したことでトップバンドの仲間入りを果たす。1999年7月には幕張メッセ駐車場特設会場にて20万人を動員するライブ「MAKUHARI MESSE 10TH ANNIVERSARY GLAY EXPO '99 SURVIVAL」を開催。この人数は単独の有料公演としては、日本のみならず全世界での史上最多動員記録となっている。その後も数多くのヒット曲やヒットアルバムを生み出し、2010年4月には自主レーベル「loversoul music & associates」を設立。メジャーデビュー20周年を迎えた2014年9月20日には、宮城で大型ライブ「GLAY EXPO 2014 TOHOKU 20th Anniversary」を敢行した。同年11月5日、1年10カ月ぶりとなるオリジナルアルバム「MUSIC LIFE」をリリース。
高橋まこと(タカハシマコト)
1954年生まれ。BOØWYのメンバーとして1982年にデビューし、一世を風靡する。1987年にBOØWYが解散したあとは、さまざまなバンドに参加。1994年にはソロアルバム「楽しき人生」を発表している。
2014年11月26日更新