ナタリー PowerPush - 銀杏BOYZ

峯田和伸×宮藤官九郎対談

銀杏BOYZが9年ぶりとなるニューアルバム「光のなかに立っていてね」とライブリミックスアルバム「BEACH」を2枚同時リリース。ナタリーではこれを記念して、峯田和伸と宮藤官九郎の対談を企画した。

峯田と宮藤は2003年公開の映画「アイデン&ティティ」でそれぞれ主演と脚本を務めて以来の仲。ひさびさに顔を合わせた2人は、銀杏BOYZの新作を中心とするさまざまな話題に花を咲かせた。

取材・文 / 大山卓也 撮影 / 佐藤類

「ぽあだむ」撮影後に買ったレコード

左から峯田和伸、宮藤官九郎。

宮藤官九郎 こんな感じで2人で話すのすごいひさしぶりですよね。

峯田和伸 そうですね。

宮藤 いろいろ聞きたいことあったんですよ。まずあのPV観ました。長澤まさみさんが出てるやつ。かわいいですね(笑)。

峯田 あはは(笑)。長澤さん、顔こんなちっちゃいんですよ。

宮藤 あれ撮ったのは本多劇場?

峯田 うん。

宮藤 前から好きだって言ってたから、峯田くんどんな気持ちだったのかなって思って。

峯田 あのときは自分でカメラ回してたんですけど、もうRECボタンを押してからはちゃんと撮らなきゃっていう気持ちだけになっちゃって。あんまり覚えてないんですよね、もう。

宮藤 うんうん(笑)。

峯田 で、そこから帰り下北にYellow Popってありますよね。レコード屋。あそこにすぐさま走ってレコードを2枚買ったの。

宮藤 なんのレコード?

峯田和伸

峯田 Cultureっていうレゲエのレコードと、あと斉藤哲夫っていうフォークの人の。60歳になっても70歳になっても、そのレコードを見ると俺はこれを買う20分前に長澤まさみさんといたんだって思えるなって。なんとかその思い出を残しておきたくて。

宮藤 峯田くんすごい早くから長澤さんのこと話してたもんね。市ヶ谷の駅で切符買って「おつりを取り忘れてますよ」って言ったら長澤まさみだったっていう妄想とか。そういうふうに関わりたかった?

峯田 そうなんですよ。本当は仕事とかじゃなくて、市ヶ谷で「おつりを忘れてますよ」って言いたかった。

宮藤 市ヶ谷っていうところがいいですよね。雑多な感じがして。

「愛の裂けめ」はX JAPAN

宮藤官九郎

宮藤 アルバムすごくよかったですよ。

峯田 わ、ホントですか。ありがとうございます。

宮藤 こないだ俺ラジオで「ぽあだむ」かけましたけど、不思議な曲で、よくあそこにたどり着いたというか。前のアルバムには絶対ない感じの曲ですよね。

峯田 ずっと前、僕が19歳くらいのときに作った曲で「BABY BABY」っていう曲があって。ああいう曲をまた作りたいってずっと思ってたんです。女の子を思って歌う、単純ではっきりした色合いの曲。コードがいっぱいある、ああいうわかりやすいやつをひさしぶりにやりたくて。

宮藤 このアルバムは先に曲名を見て「こんな感じの曲だろうな」と思って聴いたら全部裏切られた。だって「金輪際」っていうタイトルだったら絶対「ドドドドドドン!ワー!」みたいな感じかと思ったら、全然そうじゃないじゃない? すごかった(笑)。

峯田 「愛の裂けめ」も、もともとはX JAPANみたいな曲だったんですよ。

宮藤 えっ?(笑)

峯田 生演奏でやると、ブラストビートのスピードメタルみたいな曲なんです。もともと「駆け抜けて性春」っていう曲があってあんな感じでやりたかったんですけど、メンバー抜けちゃって。けど、デモは録ってたんで、そのときにチン(中村)くんが弾いてたギターの素材を使って、逆回転とかしながら弾き語りでやろうっつって。

宮藤 X JAPANみたいな曲をやろうと思ってたっていうのがまずおかしいですよね。

峯田 みんなでずっと「紅」聴きながら「これ超えようぜ!」って言ってがんばったんですけどね(笑)。

ニューアルバム「光のなかに立っていてね」 / 2014年1月15日発売 / 3150円 / 初恋妄℃学園 / SKOOL-021
「光のなかに立っていてね」
収録曲
  1. 17才
  2. 金輪際
  3. 愛してるってゆってよね
  4. I DON'T WANNA DIE FOREVER
  5. 愛の裂けめ
  6. 新訳 銀河鉄道の夜
  7. ボーイズ・オン・ザ・ラン
  8. ぽあだむ
  9. 僕たちは世界を変えることができない
ライブリミックスアルバム「BEACH」 / 2014年1月15日発売 / 2625円 / 初恋妄℃学園 / SKOOL-022
「BEACH」
収録曲
  1. はじまり
  2. 十七歳
  3. SKOOL KILL
  4. 日本発狂
  5. 若者たち
  6. 駆け抜けて性春
  7. 漂流教室
  8. BABY BABY
  9. べろちゅー
  10. 人間
  11. 東京終曲
  12. まだ見ぬ明日に
銀杏BOYZ(ぎんなんぼーいず)
銀杏BOYZ

2003年1月、GOING STEADYを突然解散させた峯田和伸(Vo, G)が、当初ソロ名義で「銀杏BOYZ」を始動させる。のちに同じくGOING STEADYの安孫子真哉(B)、村井守(Dr)と、新メンバーのチン中村(G)を加え、2003年5月から本格的にバンドとしての活動を開始。2005年1月にアルバム「君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命」と「DOOR」を2枚同時発売し、続くツアーやフェス出演では骨折、延期、逮捕など多くの事件を巻き起こす。2007年からはDVD「僕たちは世界を変えることができない」や「あいどんわなだい」「光」といったシングル作品をリリースし、2011年夏のツアーを最後にライブ活動を休止。しばしの沈黙を経て2014年1月に約9年ぶりとなるニューアルバム「光のなかに立っていてね」とライブリミックスアルバム「BEACH」を2枚同時リリースした。チン、安孫子、村井はアルバムの完成に前後してバンドを脱退しており、現在は峯田1人で活動を行っている。

宮藤官九郎(くどうかんくろう)

1970年宮城県生まれ。1991年より大人計画に参加し、多くの作品の脚本、演出などを手がける。1995年からはパンクコントバンド・グループ魂を結成し「暴動」名義でギタリストとして活躍するほか作詞作曲も担当。俳優としてさまざまな作品に出演するほか、ドラマや映画の脚本・監督も数多く手がけており、最近の作品としては、映画「中学生円山」(監督・脚本)、「謝罪の王様」(脚本)、「土竜の唄」(脚本)などがある。2013年に脚本を担当したNHK連続テレビ小説「あまちゃん」は国民的ヒット作として話題を集めた。