翔、右足!
──Johnnyさんが作詞作曲したニューアルバムのリード曲「Pappaparira Partyだ!」は思わず踊り出したくなるような曲調で、三浦亨先生が振り付けされたMVも最高ですね。
翔 「Pappaparira Partyだ!」のMVを撮るにあたって、みんなで踊って楽しいやつがいいねという話になって、「ひさしぶりに三浦先生呼んじゃおうか?」ってJohnnyが声をかけてくれて。
Johnny 俺、飲み友達なんです。ラッツ&スターの佐藤善雄さんとかも仲間で。
翔 80年代に嶋大輔、杉本哲太、紅麗威甦、岩井小百合といった銀蝿一家が活動する際、ダンスの先生が必要だろうということで入ってくれたのが三浦先生だったんです。頭ごなしに「おら、翔!」って、口うるさい人でね。今は75歳だそうで、40年ぶりにリベンジかましたろうと思ってたら、メチャクチャうまいの(笑)。
Johnny さすがですよ。キレッキレのダンス。
翔 で、俺にばっか「翔、右足!」って、すげえ文句言うの。63歳になった俺を呼び捨てにする人、さすがに業界にいないから新鮮で。最後も「俺はOK出してないからな!?」って捨て台詞残して帰っていったし。
──そのやり取りも昭和感あります(笑)。
翔 でしょ? いつか絶対闇討ちしてやろうと思って(笑)。でも、最高の先生だよね。俺たちの衣装についても、パーティだし革ジャンよりタキシードだろって話して。ダンサーで出てもらった横濱ツイスティンクラブの若い子たちも最高だったね。
Johnny 女の子たちに踊ってもらいたくて、たまたまネットで見つけたチームがTAKUと翔くんの知り合いだったから紹介してもらったんです。
翔 あの子たちは“平成生まれ、昭和育ち”のキャッチフレーズで活動してるロックンロール好きなダンサーなんです。昭和と平成のロックンローラーがコラボするのはとても素敵なことだし、次の世代にバトンを渡す意味でも素晴らしいチョイスだなと。
Johnny 翔くん、昔すごくジルバがうまかったから、間奏でうちの優華とキレッキレのダンスを踊ってもらおうと思って。
翔 「男の勲章 ~今日俺編~」のMVにも出演してくれた上野優華ちゃん、ダンスのセンスがいいんですよ。まったくジルバがわからなくても三浦先生とちょっと話しただけで踊れるようになったし。
──楽曲的にもこれまでの横浜銀蝿のイメージを超えたナンバーですね。
翔 俺たち横浜銀蝿40thのラストアルバムのリード曲になるわけだから、この時代を生きている俺たちが今一番感じているリアルなもの、「こんな時代だけど、みんなで歌って踊って楽しく過ごせる未来が早く来るといいね」という思いが詰まってるよね。メッセージ性もあるし、後半に俺たちの「尻取りRock'n Roll」の懐かしいフレーズが出てくるし。ミュージックビデオの構想も、ほとんどJohnnyが考えてくれて。
TAKU 4人そろったことで何が違うのかって言ったら、まずJohnnyがいなかったらこの曲ができてないですから。俺とか翔くんじゃあの曲、最初から考えつかないもの。
翔 みんなお互いリスペクトできるものを持ってるからね。Johnnyもギターで復活するまでホントに影で努力したと思うし、天性のメロディセンスは何年離れていようと本人が持ってるものだから。
人生面白いなと思う
──メインボーカルである翔さんの声も全然変わらないですね。ご自身で作詞作曲された「昭和火の玉ボーイ」での後半の怒涛の展開も表現力豊かで素晴らしいです。
翔 それしかできないからね。ずっと歌っていたいから。
──「ぶっちぎりアゲイン」同様、今作も嵐さん、Johnnyさん、TAKUさんの3人がメインボーカルを務めた曲が入っていますが、この構成も83年の解散前のラストアルバム「ぶっちぎりV」を彷彿とさせます。
Johnny 俺は高校の同級生だった翔くんと一緒にバンドを組んだのが音楽活動の始まりなんですけど、40年以上の付き合いなのに、そういえば翔くんの詞で歌ったことは一度もなかったなと思って。それで「雨の湘南通り」(1981年発表のアルバム「仏恥義理蹉蝿怒」の収録曲)みたいなグッとくる歌詞書いてよって頼んで、完成したのが翔くんが作詞、俺が作曲した「蒼い夜に抱かれて」なんです。
翔 Johnnyに言われて「そういえばそうなんだ!」と思ったよ。Johnnyが歌う曲の詞はJohnny自身か松本隆さんが手がけたものばかりだったし、これまでJohnnyの曲にはたくさん詞を乗せてきたけど、いつも横浜銀蝿としてのメッセージで。Johnny自身をイメージしたことなかったから気合いも入ったし、新鮮でしたね。曲をもらって「雨の湘南通り」みたいな大人のラブソングにしてよって言われて、まだやってなかったことをちゃんとできたなという思いはありますね。
Johnny あと、さっきの三浦先生の話じゃないけど、80年代当時、俺たちに関わってくれていた人を探したんです、俺。それで「ぶっちぎりアゲイン」も「ぶっちぎり249」のライナーノートも、デビュー前に業界にプレゼンする原稿を書いてくれた金森信一さんに書いてもらったんです。
翔 しぶといよね、みんな(笑)。それぞれ仕事をやり続けてくれてるからこうやって一緒にできるチャンスがあるわけだから、人生面白いなと思うよ。うん。
──先ほどJohnnyさんのソロ曲「$百萬BABY」を書かれた松本隆さんのお名前が出ましたが、松本さんも今年作詞家50周年です。
Johnny 3年くらい前、音制連(日本音楽制作者連盟)の新年パーティに何十年かぶりに松本さんがいらっしゃって。「先生、覚えてます?」って言ったら全然忘れてました(笑)。「Johnnyですよ。今ベルウッドやってるんです」「えっ、そうなの!」って。はっぴいえんどもベルウッドだったから。
──ベルウッドは1972年に日本の新しいフォーク、ロックを紹介するためにキングレコード内に設立されたんですよね。歴史を感じます。そしてTAKUさんは今回のアルバムで「OYAZi ROCK」を作詞作曲して歌われています。
TAKU 詞の話になっちゃうんですけど、リアルでいたいなと思ったんです。ノスタルジックに昭和を歌ったり、若い子になったつもりで書いたりするのは無理かなという気がしていたので、だったら今の自分が思ったり、感じていることをそのまま乗せられればいいなという姿勢で臨んだんですね。それで去年僕が還暦になって、ちょうど息子が大学を出て社会に旅立つという経験をしたこともあって、息子を持つ親父たちに捧げる歌を書こうかなと思って。昔、嵐さんが「親父」って曲を出したんですけど、それは自分の親父の背中を見た息子としての歌じゃないですか。「OYAZi ROCK」はそれとは逆の立場で書いた曲です。ただ、80年代当時みたいな高い声が出せなくなっているので、歌はだんだんきつくなってきてますね。
Johnny TAKUの曲はE♭とかを多用してるから難しいんだよね。
TAKU 俺はやりたいようにやってるだけだから(笑)。永ちゃんにしてもB'zにしても、やりたい放題だと思うのね。実際我々も誰も「いや、それはダメだよ」って言わないし。その反面、責任を持ってやらないといけないから、アルバム作りも若い頃とは違う面白さがあったりします。
──TAKUさんのドライビングベースも聴きどころの1つです。「Pappaparira Partyだ !」のMVでは5弦ベースを使っていましたね。
TAKU あれは去年、BLACK CLOUDというブランドの人が還暦用に作ってくれたものなんです。「TAKU還暦記念」って焼印を押してくれて。今まで5弦のジャズベースなんてステージ上で使ってないから、ちょうどいいなと思ってアルバムで使いました。ツアーでは革ジャンで演奏するし、ロックンローラーの雰囲気とあの赤いジャズベースは雰囲気が違うじゃない? だからMVで披露できてよかったなって。
──続いて、嵐さんが歌う「おはよう」もパワフルなポップナンバーです。
嵐 今回曲を作るにあたって、ほかのメンバーに負けちゃいけないなと思って、テーマをずっと悩んでいたの。で、さっきも言った通り俺はずっと寝るばかりの生活をしていたんだけど、朝起きてメシを食ってるときに、生活っていうのはみんな1人ひとり違うもんなんだなと思ったんだよね。じゃあ、この部分を切り取って歌にしたら面白いかなと考えて、曲のテーマを決めました。「今日1日がんばるぞ!」って気分にもなるし。俺の生活はあの歌の通りです。
──コロナ禍もあり、朝起きて「おはよう」と言えることが何よりの幸せですよね。ラストに収録された「逢いたくて 逢いたい」も含め、老若男女関係なく感じるものが多いアルバムになりました。
嵐 「逢いたくて 逢いたい」はたったあれだけの詞の量で1曲にまとまるのはびっくりしたな。歌ってひと言で決まるんだね。
最後までアクセル全開で突っ走る
──「ぶっちぎり249」の初回限定盤にはDISC 2としてスタジオライブアルバム「みんなで決める銀蝿ベストテン」が付属します。ファン投票の結果を見たときの感想はいかがでしたか?
翔 メンバー全員で結果を予想したけど、誰1人当たらなかったね(笑)。まあ、コンサートでたまにしかやらない曲が入ってきた感じだから、いいバランスだなとは思った。
──1位「横須賀Baby」、2位「ゆくさきゃ横浜」、3位「雨の湘南通り」というベスト3の結果が意外でした。
Johnny 「ツッパリ High School Rock'n Roll」と「ぶっちぎり Rock'n Roll」が入らなかったのはびっくりしましたね。
翔 少しスローな、聴かせる感じの曲がファンは好きなんだなって。
Johnny 「土曜の夜だぜ!!」なんてひさしぶりにやったね。
TAKU 「半拍ズレてるお前に夢中」もそうだね。
Johnny ただ、これ、10位からカウントダウンで入ってるじゃないですか。10位が「半拍ズレてるお前に夢中」だから、「俺から歌っていいの、これ?」と思って(笑)。
翔 いやいや、絶対いいって。ファンはみんなずっと聴きたかった曲なんだから。
TAKU これ、本当はスタジオライブじゃなく、コンサートで演奏する予定だったんだよね。
Johnny 去年の12月に予定していた神奈川県民ホールでのライブの音源を入れる予定だったけど、コロナでできなくなって。それでみんなのリクエストで選んだ曲をスタジオライブで演奏することになったんですけど、なんの曲が選ばれるかわかんないから心配でさ。20年ギターを弾いてなかったから、難しいのが来たら嫌だなと思ってたね(笑)。
──1位のデビュー曲「横須賀Baby」は演奏のテンポも含めてグッときました。この曲から始まり、この曲で終わるんだなって。
翔 「横須賀Baby」はコンサート会場の雰囲気でテンポが毎回変わるんです。速くなったり、遅くなったり。ほかの楽曲にはない特別な感じがあるね。ゆっくり聴かせて最後みんなで「Oh 横須賀Baby」って歌いたければわざと溜めるし。だから今回のレコーディングも「どのテンポでいこうか?」って悩んだね。なんにせよ、「今夜はお前とbaby」って俺たちの声が入れば昭和の香りがして、Johnnyがタララーンって間奏を弾いたら一瞬であの頃に戻るわけ。
──サビ始まりのインパクト、メロディの強さ、歌詞の切なさ。シンプルだけど誰にも真似できない、日本ロック史に残る名曲中の名曲だと思います。いよいよ10月14日に東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で開幕するファイナルツアー、めちゃくちゃ楽しみにしています!
翔 2019年の暮れに「COUNTDOWN JAPAN」フェスに出たとき、6000人ぐらい入る会場だったんだけど、ホントに人がよく入ってくれて。俺、すごい心配だったのね。ひさびさのフェスだったし、みんな知らねえだろと思ったら、前のほうに若い子がいっぱいいて、みんな一緒になって歌ってくれるわけ。感動したね。何も恐れることはなかった、たくさんの人たちに愛されてるんだと思ってすごくうれしかった。今回のツアーもコロナの状況がどう変わるかわからない中ではあるけど、俺たちは最後までアクセル全開で突っ走るつもりだから「ヨロシク!」って感じだね!
ツアー情報
- ファイナルツアー バハハ~イ集会「昭和魂 永遠!」
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- 2021年10月14日(木)東京都 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
- 2021年10月16日(土)宮城県 トークネットホール仙台 大ホール
- 2021年11月14日(日)石川県 本多の森ホール
- 2021年11月17日(水)福岡県 福岡市民会館 大ホール
- 2021年11月19日(金)岡山県 岡山市民会館
- 2021年11月20日(土)広島県 上野学園ホール
- 2021年11月28日(日)埼玉県 さいたま市文化センター 大ホール
- 2021年12月2日(木)北海道 札幌市教育文化会館 大ホール
- 2021年12月3日(金)北海道 札幌市教育文化会館 大ホール
- 2021年12月10日(金)大阪府 フェニーチェ堺 大ホール
- 2021年12月11日(土)愛知県 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
- 2021年12月17日(金)神奈川県 神奈川県民ホール
- THE CRAZY RIDER 横浜銀蝿 ROLLING SPECIAL(ザ・クレイジーライダー ヨコハマギンバエ ローリングスペシャル)
- 1979年9月21日に嵐(Dr)、翔(Vo)、Johnny(G)、TAKU(B)によって結成されたロックンロールバンド。1980年にシングル「横須賀Baby」、アルバム「ぶっちぎり」を同時発売してデビューし、音楽活動はもちろん、映画やドラマに出演するなど活動の場を広げていった。1981年に初の東京・日本武道館公演を成功させ、1982年に「日本レコード大賞」特別賞を受賞するなど、日本全国に横浜銀蝿の名を轟かせるも、1983年12月31日のコンサートをもって活動を終了。翔はソロアーティストとして、TAKU、嵐、Johnnyはプロデューサーとしての活動をスタートさせた。その後、横浜銀蝿、湘南銀蝿、THE CRAZY RIDER 横浜銀蝿 ROLLING SPECIAL RETURNSといった名義での幾度かの復活を経て、2006年に神奈川・横浜BLITZで結成25周年記念公演、2010年に神奈川・横浜市教育会館で結成30周年記念公演を開催。そしてデビュー40周年イヤーの2020年、オリジナルメンバーの4人で横浜銀蝿40thとして1年間の期間限定復活を果たし、2月にオリジナルアルバム「ぶっちぎりアゲイン」を発表した。映画「今日から俺は!!」のエンディングテーマに使用されるなど、代表曲「ツッパリ High School Rock'n Roll」が改めて脚光を浴びるが、新型コロナウイルス感染拡大の影響でZeppツアーが延期となり、2021年12月31日までの活動延長を発表。2021年6月にZeppツアーを完走し、9月にニューアルバム「ぶっちぎり249」をリリースした。10月から12月にかけて横浜銀蝿40thとしてのラストツアー「ファイナルツアー バハハ~イ集会『昭和魂 永遠!』」を開催する。