ナタリー PowerPush - GENERAL HEAD MOUNTAIN
これが究極の愛情表現──。アルバム「バタフライエフェクト」
GENERAL HEAD MOUNTAINがニューアルバム「バタフライエフェクト」をリリースした。メジャー移籍後2枚目のフルアルバムとなる今作は、またもバンドの新境地を切り開く問題作。「殺してくれないか」という切実な叫びから始まる1曲目「薊」を皮切りに、松尾昭彦(Vo,B)のさまざまな感情が全11曲を通して赤裸々に描かれていく。
今回ナタリーでは松尾の単独インタビューを実施。作品に込めた思いを訊いた。
取材・文/高橋美穂
壁を全部取っ払ってゼロに戻して作ったアルバム
──今作は、初めて何のテーマもなく作ったアルバムだそうですね。
前作の「深まる日々に、微笑みを。」ではずっとやりたかったことができて、僕が10年間やってきたことの完成形を見れた感じもあったんで。じゃあ次は何を作ろうかなって思ったときに、僕、今まではこれやらないぞ、あれやらないぞって、いっぱい壁とか線とか引いて(楽曲を)作ってて、それが美しいみたいな感覚があって、それでできた前作がすごく充実してたんです。それで、じゃあ今回は一旦ゼロに戻そうと、全部取っ払ったっていう。だから今作は普通に音楽を楽しんで作りました、わかりやすく言えば。
──取っ払うことってすんなりできました?
ああ、また困ったら壁を作ればいいと思ってたんで、何も違和感はなかったです。
──実際、制作期間はどうでした?
とても充実してました。結局、作り終わって思ったことは、可能性は否定しちゃいけないんだなって。当たり前のことにやっと気付きましたね。普通に音楽を楽しんで作ることができるってわかったんで、また(前のやり方に)戻っても、違うタッチで作れるだろうし。
──壁を取っ払ったことで、自分がやりたいことや、やれることに気付いたんじゃないですか?
ネタは結構あったんですよ、昔から。でも、これは今じゃねえなとか、どうやってまとめればいいんだろうって思ってたんですよね。でも、今回はプロデューサーとして佐久間(正英)さんと江口(亮)さんの2人がいてくれたんで、だから挑戦する気にもなれたんですよね。
──佐久間さんと江口さんから、どんな影響を受けました?
佐久間さんは歌う感覚みたいなことを教えてくれましたね。「くるか、こないか、だよ。歌は」って言ってくれて。で、江口さんはバンドの一番下から叩き直してくれたっていう。リズム練習から「おいズレてんじゃないか、はい! はい! はい!」って。クリック流して、「できるまでループ!」「はい!」みたいな。
──部活みたいですね(笑)。
そうですね。もともと僕、楽譜を読みたくなくて曲を作り始めたような人間なんで(笑)、基礎から叩き直されることが新鮮でした。
佐久間さんの本心はTwitterで確認するっていう(笑)
──曲に対してはどんなことを言われましたか?
江口さんは、ギターのアレンジをすごくたくさんやってくれたり、人が一番心地いいテンポを一緒に考えたり。これはカッコいいけど聴きにくいかもね、とか。
──世に出すなら届きやすくして出そう、っていうか。
そうですね。僕も前作はもうちょいたくさんの人に聴いてもらえるかなって思ってたんですけど、思った以上ではなかったんで、考えなきゃなって。どうすれば聴いてもらえるか。
──佐久間さんは、曲に対してどんなことを言ってました?
佐久間さんは、Twitterによると……。
──直接話そうよ!(笑)
目の前でTwitterに書いてるから、佐久間さん何書いてるのかなって思ったら、「いい歌録れた」って(笑)。実際どうなのかなって思ったら、Twitterで確認するっていう(笑)。でも佐久間さんがいてくれることで絶対的な安心感がありましたね。絶対的なゴールが佐久間さんにはあるので、僕がガーって突っ込んでも押さえてくれるっていう。ただ、一度だけすごく怖いときがありましたね。歌の譜割りで「ズレたところから入れたいんです」って言ったら、「いや、これは普通にいったほうがいいよ」って言われて。「いや、でも……」「あ、押し通す?」「通しません!」って(笑)。初めて怒った、やべえ!って。でも佐久間さんの言うとおりに歌ったら良かったんで、やっぱすごいなって。
──佐久間さんや江口さんという、自分じゃない人の意見も受け入れられた?
全然ウェルカムな感じです。曲が良くなるなら。
──でも、そうなれたのって最近ですよね。
そうですね。最初は、入ってこないでよって思ってたんですけど。でも、いざ入ってもらうと、やっぱ良くなるので。それがわかってからは、ぜひお願いします!って気持ちになりましたね。
GENERAL HEAD MOUNTAIN(じぇねらるへっどまうんてん)
2000年1月、松尾昭彦(Vo,B)を中心に宮崎で結成。2003年5月に現メンバーであるオカダコウキ(G)、海太(Dr)が加入する。2005年にインディーズレーベルより初音源「追憶の唄々」をリリース。その後も音源制作を重ね、2008年にフルアルバム「月かなしブルー」を発表。椎名林檎「罪と罰」カバーの収録や、マンガ家の魚喃キリコがジャケットを手がけたことなどで話題を集める。その後、2009年11月にシングル「羽」でメジャーデビュー。2010年1月のアルバム「深まる日々に、微笑みを。」が高い評価を受ける中、同年11月にアルバム「バタフライエフェクト」をリリースし、全国ツアー「音楽家とバタフライ」を実施。