ナタリー PowerPush - GENERAL HEAD MOUNTAIN
大型新人メジャーデビュー 4曲入りシングルでシーンを刺す
自分は月。何かを照らす太陽ではない
──あと今回の歌詞で思ったのは、これまでネガティブな感情を爆発させているような印象だったんですけど、「傘」の「間違え続けた日々にまでも / 名前を付けて部屋に飾ろう」という一節はとてもポジティブだなって。
この曲は「受け入れよう」っていうのがテーマなんです。攻めっぱなしも辛いなって思ったんで(笑)。自分を書く上で、そういう作業が必要だなって。こういう曲調の歌はインディーの1stとかでやってたので、そういうのを今の僕が書いたらどうなるんだろうっていう原点回帰的な部分もありますね。
──なるほどね。それでいて「羽」では、これまでもよく使われていた「月」って言葉が出てきますけど、やはり自分を表現する上では、太陽じゃなくて月が出てくるんですか?
太陽ではないと思います。何も考えず何かを照らすっていうことはできないなと。照らされた結果どうしようかなってのがあるんで。照らす気がないっていうか(笑)。
──表現者、特にボーカリストって、太陽的なニュアンスというか、人を照らしたり、引っ張ったりする人が多いと思いますけど、違うんですね。
そうっすね。「ついてこいよ」とかは思わないです。見ててくれればいいです。
──じゃあ、共感とかも……。
僕、基本的には求めてないです。自由に受け取ってほしい。だから歌詞の中でも余白を多く作ってるつもりで。バシっと書いたら終わることも、ちょっと遠くに書いて隙間を作って、その人なりの受け取り方をしてほしいので。
──でも、見ていてはほしいんですね。
そう。ワガママなんです(笑)。表現はしたいし、表現はお客さんがいないと成立しないのもわかってるんで、難しいとこなんですけど。で、僕はあんまり人前に出たいタイプでもないので。
──そこもフロントマンの概念と逆ですよね。モテたいとか目立ちたい人が多いイメージがありますから。
まあ、モテたいですけど(笑)。ただ、人前に出たいタイプではないけど、僕の歌は僕が一番表現できるので、自分でやるしかないなって。
──じゃあ人前に立ちたいというより、歌いたいとか歌詞を書きたい気持ちのほうが強い?
そうです。表現するのが好きです。そのためには人前に立ったりしないといけないし、立たないとその臨場感が伝わらなかったりするし。ステージに上がればぐわーってなるんですけど、上がるまでが……っていう。
──正直ですね。
カッコつけても、どうせいつかボロが出るんで(笑)。どうせみんなカッコいいことやるんだから僕はこんな感じで。
──そこはメジャーでも変わらないと。
そうですね。今もちゃんと思ってることしゃべってますからね。
音楽以外の表現をしてる人に興味がある
──表現するのが好きだという気持ちは、ジャケットへのこだわりにも表れてますね。
はい。僕、絵が描ければいいなって思ってるんですけど、びっくりするくらいセンスがなくて、幼稚園生みたいな絵しか書けないので。
──以前はマンガ家の魚喃キリコさんがジャケットを描かれてましたけど、今回は画家の筒井はじめさんが手掛けてらっしゃいますね。筒井さんの作品は好きだったんですか?
そうですね。それで、魚喃さんと同じように一方的なラブコールを送ったんですけど、「曲を聴く前は断ろうと思ってた」って言われたんですね。すごく忙しかったみたいで。でも曲を聴いて反応してくれて、今回アーティスト写真も撮ってもらったんです。よくしてもらってます。
──曲で反応が変わるってうれしいですよね。
いや、もうほんとに。バンドマンが反応するのとは意味合いが違うし。こういう人が反応してくれる音楽がちゃんと作れてるんだなっていうのはうれしかったです。ちょっと自分がやってきたことにほっとしました。間違えてなかったんだなって。
──バンドとして認められたというだけではなく、表現全体でも認められたという思いにつながりますもんね。
うんうん。嘘かほんとかわかんないですけど、僕たちの音楽について「美意識があふれてるぜ」って言われたので。「最高だぜ」って。
──これからも、音楽に留まらず全体的に表現を考えていきたいですか?
まあ、こんなにCDが売れない時代だからこそ、逆にジャケットとかはしっかりしたいなって思ってますね。
──いろんなところに飛び火していくといいですよね。
筒井さんがいろいろ紹介してくれるって言ってたので、楽しみなんですよ。音楽以外の表現をしてる人に最近興味があるので。いろいろ勉強して、音楽に還元できればと。
僕は多分音楽しかできないです
──松尾さん自身は、音楽以外の表現もしてみたいと思います?
僕ですか? 最近気付いたんですけど、僕は多分音楽しかできないです。いろいろ中途半端にはできますけど、音楽だったからこんなに反応してくれる人がいたんじゃないかな。良くも悪くもですけどね。気付いて愕然としたんですけど。「うわー、音楽以外は何もねえ!」って(笑)。
──ショックなことであり……。
うれしいことでもあって。筒井さんとお話したことはいい出会いでした。途中酔っぱらってて覚えてないんですけど。
──そう気付いたからには貫くしかないですね。
はい、尽きるまでやって、パッと散ってやろうと思います(笑)。散り際の美学とか、僕、そういうのはすごく信じるタイプなので。それありきの僕の中での音楽なので。
──刹那を前提とした爆発力っていう。
それはもちろん。ずっと続けたいならもっとへらへら音楽やりますよ。「みんなノッてるかい? YO! YO!」みたいな(笑)。
──刹那にはリアリティがあると思いますか?
常に終わりを見据えてるから、いろいろビビらずできますしね。でも今後のことを考えると「やべえ何もねえ」「資格もねえ」ってなりますけど(笑)。でも、今は充実してますよ。アルバムの制作の真っ只中ですし!
GENERAL HEAD MOUNTAIN
(じぇねらるへっどまうんてん)
2000年1月、松尾昭彦(Vo,B)を中心に宮崎で結成。2003年5月に現メンバーであるオカダコウキ(G)、海太(Dr)が加入する。2005年にインディーズレーベルより初音源「追憶の唄々」をリリース。その後もリリースを重ね、2008年に1stフルアルバム「月かなしブルー」を発表。椎名林檎「罪と罰」カバーの収録や、マンガ家の魚喃キリコがジャケットを手がけたことなどで話題を集める。その後、コロムビアミュージックエンタテインメントと契約し、2009年11月シングル「羽」でメジャーデビュー。