ナタリー PowerPush - Getting Better
片平実が語るロック系パーティの「今」と「これから」
片平実が考える「アンセム」
──アルバムタイトルにもある「アンセム」という言葉がものすごく象徴的だと思いますが、片平さんにとってのアンセムとはどういったものですか?
大勢の人に通じやすい、伝わりやすい曲ですかね。
──そう考えると、このCDは本当に冒頭からアンセムの連続で。アンセムが何曲もあるっていうのもおかしいかもしれないですけども、みんなが一緒になって楽しめる曲がガンガン続くのは気持ちいいです。7月には夏フェスシーズンに突入しますし、邦楽アーティストが多く出るフェスに行こうと思ってる人には刺激になる1枚ですよね。
だといいですね。僕はアーティストではないですが、こうやって完成した作品がどうんなふうに届くのかな、どんなふうに響くのかなっていうのが気になっていて。不安もあるし、ワクワク感もあるしっていう感じですね。
アルバムジャケットに隠された“下地”
──アルバムジャケットもかなり凝ってますよね。これはTHE BEATLESの「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」がモチーフですよね?
はい。それとTHE ROLLING STONESの「LET IT BLEED」ですね。ケーキの下にレコードラベルがあって、それはPRIMAL SCREAMやARCTIC MONKEYS、OASISが元ネタ。すごくわかりやすい感じだと思います。
──ああ、そう言われると確かに見たことがある要素がいろいろ散りばめられてますね。
このミックスCDには収録されてないけど、これまで「Getting Better」でかけてきた音楽が下地になってこの盤、今があるっていうことがわかってもらえるかなと。そういう意味では、実はすごく深いんですよ。
──あくまで日本のロックだけでつないでいるけど、このCDをきっかけにイベントに来てもらったら、そこで初めてジャケットの意味を含めた「Getting Better」の全体像が理解してもらえるんでしょうね。
そうだといいですよね。
リリースパーティは“対バン”みたいな感じ
──このミックスCDと同日に、a flood of circleの楽曲のみで構成されたミックスCD「AFOC THE MIX」も発売されます。単独アーティストのミックスCDを制作するのは、通常のミックスCDとは視点が異なるものなんですか?
曲ありきで作っていく感じなので、通常のミックスCDと変わらないです。特に1アーティストだと全部許可は得られるので(笑)、僕の思ったとおりにやれますし。
──そうか、曲の許諾という意味でのやりやすさは「Getting Roll」とは違いますよね。
そこは大きいです。初CD化の新曲や未発表曲も入ってるのでコアなファンにも聴いてほしいし、入門編としても楽しめると思います。
──そのa flood of circleとのダブルリリースパーティツアーも6月下旬から始まります。各会場でKING BROTHERSやThe Mirrazなど「Getting Better」とゆかりの深いアーティストと共演しますが、どういう感じになりそうですか?
とにかくめちゃめちゃいいパーティになればいいなって思ってます。「Getting Better」は普段オールナイトでやってますけど、今回は通常のライブの時間にやるのもあって、対バンみたいな感じですよね。例えば、キンブラとかとやるときは前半で多分パブロックやルーツミュージックをかけて、後半で「Getting Roll」の曲を中心にやれればいいなと思ってます。
──ライブの転換DJというよりも、ほかの出演バンドとガチでぶつかり合う感じで。
こういうときは、やっぱりバンドっていいなと思いますよ。バンドは4~5人いるのに、僕はひとりですから(笑)。
邦楽系ロックイベント急増の功罪
──さらにこれから夏フェスシーズンに突入しますが、この「Getting Roll」をきっかけに、ロック系クラブイベントに足を運んでくれる人がさらに増えて、シーンが盛り上がっていくといいですよね。
そうですね。でも、前作のときもそうだったんですけど例えばロックのクラブイベントっていうのはこのミックスCDみたいなことをやればいいんだって安直に思われちゃうと、ちょっと怖いなっていうのは実はあって。実際そういった日本のロックだけをかけるイベントがめちゃめちゃ増えてるっていう事実は、僕らの功罪なのかなと思ってます。進もうとしているところは一緒かもしれないですけど、その過程として一部の層を相手にした狭い感じじゃなく、もっとロックの濃い部分を掘り下げてほしいなと。DJする側も、お客さん側も。それこそ「Getting Roll」のジャケットじゃないですけど、いろんな要素がごちゃまぜになってるところに音楽の面白さがあると思うし。そうじゃないと本当に薄っぺらいものになっちゃって、そこで終わっちゃうと思うんですよ。
──「Getting Better」では洋邦、新旧にかかわらずいろんなロックがかかります。このイベントに足を運ぶことで「音楽はこれだけじゃないんだよ」って、もっと視野が広くなるきっかけになるといいなという気はしますね。
そうですね。これはあくまで希望だし、もちろん強制はできないので、本当に「だといいな」っていう気持ちです。薄っぺらいところだけつまんでほしくないなっていう思いは、常にありますね。あとは、とにかく楽しんでほしいです。それに尽きます。
CD収録曲
- セントレイ
- ワンダーフォーゲル
- 虹
- センチメント・エキスプレス
- リライト
- Discommunication
- CANのジャケットのモンスターみたいのが現れて世界壊しちゃえばいい
- ユキちゃんの遺伝子
- Monkey Discooooooo
- avenger strikes back
- tokyo2pm36floor
- 走れエロス
- NEVER ENDING STORY
- Summer Frequence
- under the umber shine
- AMBITIOUS
- BANKROBBER
- Human License -carnival mix-
- バクチ・ダンサー
- Party People
- ACTION!!!!
- テキーラ!テキーラ!
- ROCK MUSIC
- RUSH
- FLY
- 物語はちと?不安定
- HOT DOG
- Funk-a-lismo!
- PAPA'S GOT A BRAND NEW PIGBAG
- Red Motelの朝
- Good morning
CD収録曲
- ブラックバード
- 博士の異常な愛情
- 泥水のメロディー
- シーガル
- Miss X DAY
- Ghost
- ロシナンテ
- エレクトリック ストーン
- Buffalo Dance
- Quiz Show
- Human License
- Sweet Home Battle Field
- Chameleon Baby
- Blood Red Shoes
- Hide & Seek Blues
- 水の泡
- ノック
Getting Better
片平実の主宰によるDJパーティ。1996年2月に東京・下北沢CLUB Queで、月イチレギュラーのオールナイトイベントとして始まる。邦楽/洋楽問わず、最新のロックを核とした幅広い選曲が魅力。その交流の広さから、「Getting Better」をリスペクトするアーティストも多く、ゲストDJとしてイベントに参加する機会も多々ある。2006年からは大阪・梅田Shangri-Laにて隔月定期開催スタート。札幌から福岡までまわる全国ツアーも不定期で行われており、活動の幅をさらに広げている。