月蝕會議「月蝕會議2019・2020年度議事録」特集 レコーディング現場潜入レポート&メンバーインタビュー|エンドウ.、Billy、鳥男、楠瀬タクヤに聞く、新作アルバムとオンラインサロンの魅力

月蝕會議 インタビュー

“終わらない文化祭”をやってる感じ

──皆さんは、3周年を迎えた昨年6月にオンラインサロン「月蝕會議室」をオープンしました。サロンを始めるきっかけはどんなものだったんでしょう?

左から鳥男(B)、エンドウ.(G)、楠瀬タクヤ(Dr)。

エンドウ.(G) 僕らはもともとコライトによる制作作業をしてきましたし、いろんな人に楽曲を書いて、いろんなゲストが参加する形で楽曲を作ってきたので、その延長線上で「より多くの人と一緒に楽曲制作をしてみよう」と思ったのがそもそものきっかけでした。あと、タイミング的にはコロナ禍になったことも大きかったですね。

楠瀬タクヤ(Dr) 前々から「やってみたいね」という話はしていたんですけど、コロナ禍でみんな家にいるし、ライブもできないし……という状況が踏み切るきっかけでした。

エンドウ. いろんな方に参加してもらいやすいタイミングでもあるのかなと思って。

──実際にオンラインサロンを始めてみて感触はいかがですか?

エンドウ. やっぱりすごく楽しいですよ。ずっと文化祭をやっているような感じで。

楠瀬 本当にね。“終わらない文化祭”をやってる感じです。

Billy(G) 会員の中にはクリエイターの方もいるので、たまに僕らの楽曲のステムデータを公開したりもしていて。いろんなことをかなりオープンな形にしています。

エンドウ. キングレコードに怒られない限り、活動に関することは基本的に全部見せてますね(笑)。

鳥男(B) だからこそ制作していても人に見られている緊張感というか、適度な高揚感のようなものがあって引き締まります。「この作業の1つひとつがエンタメなんだな」という気持ちで臨んでいます。

Billy 本当に「作曲風景を見せるエンタメ」という感じですね。

オンラインサロンを通して、リスナーの顔が見えた

────ちなみに楽曲制作において、サロン会員からリアルタイムでリアクションが返ってくることによる影響はありますか?

エンドウ. あります。皆さんの反応を見て「ああ、ウケがいいな。じゃあそうしよう」と判断したりもするので。ただ、だからといって僕らのやりたいことがブレるということもないんです。なので今のところいいことしかない(笑)。

楠瀬 僕らの場合、このメンバー間で決めていく道がすでに太くできているので。

エンドウ. 「これはやりたくないけど、みんなが求めているからやろう」というふうにはしたくないですし、特に気を付けているわけでもないんですけど、そもそもそうならないような気がします。確固たる自分たちの制作のセンスはあって、その譲れない部分は無意識のうちに守っているのかなと。

左からエンドウ.(G)、楠瀬タクヤ(Dr)、Billy(G)。

楠瀬 会員の皆さんも「それは違うよ!」と、僕らのやり方に強く言うわけでもないですからね。僕らはミュージシャンとして活動していますけど、会員は個性豊かでいろんな業種や立場の方がいるので、人が集まれば集まるほどにぎやかになっていくと思っています。だからこのサロンを通して、たくさんの方に会いたいですね。

エンドウ. そうですね。サロンについては、もっともっと広がってほしいと思っています。

鳥男 普通に音楽をやっているだけだと、受け手のパーソナルな部分や人となりってなかなかわからないんですよ。でもオンラインサロンで1歩近い距離でリスナーとつながることで、スピーカーの向こう側にいる人たちの表情がより見えるようになった感覚があります。それって演者としてもすごく重要なことだと再認識したというか。そういう意味でもこのサロンがもっと広がって、いろんな人のパーソナルな部分を知れたらいいなと思いますね。

──音楽を起点にしてさまざまな人たちのハブになっていくような雰囲気なんですね。

エンドウ. 僕らのサロンの会員には、音楽を作る人もいれば、そうじゃない人もいるんです。中には絵を描くのがすごくうまい方もいますし、ただ音楽を聴くことが好きな人もいれば、楽器メーカーの方もいたりして。決して「音楽クリエイターのためだけのサロンではない」ということは、僕ら自身も気を付けています。音楽クリエイターでなくても、さまざまな人が参加して楽しめる場所を作れたらいいなと。

楠瀬 DMMの掲示板やDiscordを使用して僕らや会員同士でコミュニケーションを取れるんですけど、飯テロが起こるだけの日もあったりして(笑)。サロン会員の間で仲間ができたり、交流が広がっていくような瞬間もあります。

鳥男 みんなでゲームをする日もあるしね。

月蝕會議=大人の遊び場

──ニューアルバム「月蝕會議2019・2020年度議事録」についても聞かせてください。「議事録」シリーズはタイトルの通り、その時々の活動をまとめる意味合いが強い作品ですよね。

エンドウ. そうですね。ですから、アルバム全体のコンセプトは特にないんです。ただ、1つひとつの曲にはいろんなアイデアを詰め込んでいて。ちょうど今レコーディングしていた「リロードショー」は、ももいろクローバーZの「ロードショー」をもとにした楽曲なんですけど、原曲から大幅にアレンジを変えてシネマティックかつ重厚なサウンドに仕上げていて。アルバム全体のイメージは「月蝕會議らしく1つの方向に偏らないように」「いろんなチャレンジをしたい」というぐらいかな。

Billy 細かい部分でのこだわりはたくさんあるんですけどね。

エンドウ. そうそう。でも、全体としては「行き当たりばったりでも、とにかくその場で起こることを楽しむ」ということを大切にしてます。

左から鳥男(B)、エンドウ.(G)、楠瀬タクヤ(Dr)。

鳥男 それが月蝕會議のよさというか、音楽をシンプルに楽しむための秘訣なのかなと思います。活動を長く続けるためには、特定の方向に決めきらずに常にフレキシブルであることが大事というか。月蝕會議は基本的にストレスフリーな場所なので。

──なるほど。いろんなことが試せる遊び場のような感覚なんですね。

Billy そうですね。贅沢な大人の遊び場のようなところというか(笑)。

鳥男 だからこそアーティストイメージやアルバムのコンセプトのような、アーティストが背負わなければいけないものから逸脱していられるのかもしれない。

エンドウ. 僕らの場合、「次はこういう戦略でこれを目指そう。そのためにこういうことをして……」ということはまったく考えていないので、だからこそ楽しく活動ができているのかなと思います。気負わず、背負わずみたいな。

楠瀬 とにかく「そこにあるものを、一番いい味に調理できるようがんばる」という気持ちでやってますね。