音楽ナタリー Power Push - Gero
“盤石のGeroライブ”と“ブランニューGero”の作り方
「Gero」と「金城さん」の狭間
──セットリストについても伺わせてください。「♪さあ新しいHOMEへ」と歌う野音ワンマンの幕開けにふさわしい1曲、「The Bandits」でライブを始めた直後、ファンを「デブ」呼ばわりした上で自分にも「デブ」コールを要求する「名古屋のデブ」という変化球、ある種の“大ネタ”を持ってきましたよね。
おカネを払って観に来てくれたお客さんをいきなり「デブ」呼ばわり(笑)。でもそれには意味があったんですよ。あの日ってお客さんもちょっと構えてたと思うんです。「Geroの野音だ!」って感じで。だからその緊張みたいなものを解きほぐしたかった。「みんな、いつも通り楽しく騒ごうぜ」っていうメッセージを伝えたくて、序盤から“大ネタ”を持ってきた感じなんです。実際、そのおかげで「アンチェインゲイザー」みたいなヘヴィな曲も、「Love-Letter」みたいなバラードも、みんなに自分なりの楽しみ方でしっかり楽しんでもらえたし、最後のほうの「うどん」と「うどん2」なんかも「名古屋のデブ」以上に笑いながら盛り上がってもらえましたから。
──そういう「こういう構成にしたら楽しめるんじゃないか」「『デブ』のコール&レスポンスをしたら、みんないつも通り楽しんでくれるんじゃないか」という戦略って、どうやって立てるものなんですか?
けっこう感覚的ですね。「難しく考え出したら逆にイメージがブレる」っていう思いがあるので、本当に思い付き。「Gero」という人が何をしたいと思ってるのか? その心の声に従ってる感じです。それはパフォーマンスについてもそうですし。「Gero」がしたいことをしたいようにさせる。だからステージに上がるとき、まったく緊張しないんですよ。それは野音のときもそうだし、なんなら7年前に初めて「Gero」名義でライブをしたときだって「オラーッ!」「行くぞーっ! かかってこいや!」ってステージに飛び出せちゃってましたから。
──ご自身の中に「Gero」というスイッチがあって、それが入るとブッ飛んだロックアーティストになれるという感覚?
まさにそうですね。オレ、本名は金城っていうんですけど、スイッチが「金城さん」のほうに入ると、いっつも「Geroさん」に対してビックビクになってますもん(笑)。例えばライブ当日も朝起きてから会場に入るまではけっこう緊張してますし、ライブが終わって「Gero」のスイッチがオフになるとすぐに「金城さん」が顔を出しますし。で、スタッフやバンドメンバーを集めては「で、今日のあのMCどうだった?」って反省会を開く、と(笑)。
──「金城さん」、大変だなあ(笑)。GeroさんをGeroさんたらしめるための苦労と悩みを一身に引き受けてる。
「Geroの処理班」(笑)。普段の自分は「Gero」と「金城さん」の両方に片足ずつを突っ込んでいる状態なんですけどね。実際今だって「Gero」のまんま取材を受けてたら、テンションが高くなりすぎて、こんなに自分のことを分析できてないと思うし、逆に「金城」のまんまだったらネガティブすぎて使えないことしか言わないと思いますもん(笑)。「Geroのギア」を入れて完全に「Gero」に振り切るのはライブのときくらい。で、ずっと高速回転してるとさすがに疲れるし、その調子だとたぶん勘違いをしたり驕ったりするようになるから、バランスを取るためにライブ直後には一気に減速して「金城」になる、と。でも「金城」のままだと今度は本当に気持ちがふさぎ込むし、自信もなくなってくるから、「Gero」を名乗り始めてから知り合った友達なんかと飲みに行って、あえて「Gero」っぽく振る舞う。それで「半Gero / 半金城」っていう、いつものバランスに戻す作業が必要になるんです。
セルフプロデュースの「ゴツい1枚」
──7月から11月にかけて全国27カ所を回るツアーがありますが、また野音同様「Gero」らしさ全開のライブになりそう?
だと思うんですけど、特に今は構想らしい構想はないんですよ。7月6日に「Road」っていうミニアルバムのリリースが控えてて、そっちの作業で大忙しなので(笑)。
──さっそく「Road」の音源を聴かせていただきましたけど、さっきの「ライブでは同期は極力使わない」という言葉の正反対をいく内容になってますよね。要はデジタル感が強い。
今回、鬱Pとカラスヤサボウさん、ハニワ(HoneyWorks)のGomさん、すこっぷさん、鈴木ぷよさんに作家として参加してもらってるんですけど、彼らとの打ち合わせのとき、そんなことを言ったらしいんですよ。「今回はデジロック、デジタルメタルでいきたい」って。でも「Gero」や「金城さん」が明確に「コンセプトはデジタルだ!」って決めたわけでもないし、本当に思い付きみたいな言葉だったから、デモが出そろったときオレ自身ちょっとビックリしました。「あっ! オレ、こういうのを求めてたんだ」「カッコいいじゃん」って(笑)。「one」「SECOND」「ZERO」っていうこれまでのアルバムとは全然違うことになりましたね。
──確かに。
しかも完全セルフプロデュースですから。デビュー以来ずっと黒須克彦さんにほとんどの楽曲のコーディネートをお願いしていたんですけど、今回は自分でやってみよう、と。
──腕っこきの作曲家・編曲家・プロデューサーである黒須さんのあとを継ぐのってけっこうプレッシャーありませんでした? それでなくても、最初のお話だとGeroさんは自分で自分を追い込むタイプみたいだし。
相手は天才・黒須克彦ですからねえ(笑)。でもこの3年以上、隣でずっと黒須さんの仕事を見てきてますから。「これはいい」「これはダメ」っていうジャッジの仕方とか、その「いい」と「ダメ」の判断基準、美意識みたいなものが養われた自信はあります。実際今回、自分で2曲書いてるんですけど、片っぽはカラッとしたロックバラード。ヘヴィメタルやハードロックではないんだけど、ちゃんと「Geroの音」になった自負があるし、もう1曲は一見「Gero」らしいヘヴィで速くて激しい曲なんだけど、ヒップホップの要素を入れたりしてますし。オレ、その曲の中でラップしてるんですけど、でもやっぱり「Geroっぽい」。ほかの曲についても、デジタル感が強いだけあって、これまでならまず使わなかった音色なんかもバンバン使ってるけど、やっぱり「オレの作品」って胸を張れる内容になった気はしてます。「ミニアルバム」っていうと「シングルほどの派手さはないし、フルアルバムほどのボリュームもないし」って見られがちではあるんですけど、「Road」に限ってはかなりゴツい1枚になってると思いますよ。これを極力同期を使わないGeroライブでどう再現するのか、自分自身楽しみですし。
Gero Live Tour 2016 -Load-
- 2016年7月16日(土)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
- 2016年7月17日(日)千葉県 KASHIWA PALOOZA
- 2016年7月23日(土)愛知県 ElectricLadyLand
- 2016年7月24日(日)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
- 2016年7月30日(土)宮城県 Rensa
- 2016年7月31日(日)山形県 山形ミュージック昭和Session
- 2016年8月6日(土)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
- 2016年8月7日(日)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
- 2016年8月20日(土)茨城県 mito LIGHT HOUSE
- 2016年8月21日(日)神奈川県 F.A.D YOKOHAMA
- 2016年8月27日(土)愛媛県 松山サロンキティ
- 2016年8月28日(日)徳島県 club GRINDHOUSE
- 2016年9月10日(土)大阪府 Zepp Namba
- 2016年9月17日(土)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
- 2016年9月19日(月・祝)群馬県 高崎club FLEEZ
- 2016年9月24日(土)北海道 cube garden
- 2016年9月25日(日)北海道 小樽GOLDSTONE
- 2016年10月2日(日)青森県 青森Quarter
- 2016年10月9日(日)福岡県 DRUM LOGOS
- 2016年10月16日(日)沖縄県 桜坂セントラル
- 2016年10月29日(土)広島県 SECOND CRUTCH
- 2016年10月30日(日)山口県 周南RISING HALL
- 2016年11月5日(土)京都府 KYOTO MUSE
- 2016年11月6日(日)兵庫県 神戸VARIT.
- 2016年11月12日(土)大分県 DRUM Be-0
- 2016年11月13日(日)宮崎県 MIYAZAKI WEATHERKING
- 2016年11月27日(日)東京都 Zepp Tokyo
- ライブDVD「Live Tour 2015 -Re:load- DVD」 2016年6月22日発売 / NBCユニバーサル・エンターテイメント
- 「Live Tour 2015 -Re:load- DVD」
- 初回限定盤 [DVD2枚組+CD+ブックレット] / 6480円 / GNBL-1033
- Amazon.co.jp
- 通常盤 [DVD] / 4320円 / GNBL-1034
- Amazon.co.jp
DVD収録内容
- Opening
- The Bandits
- 名古屋のデブ
- OIRAN UTOPIA
- アンチェインゲイザー
- へたらぶ
- 楽ニナレマスカ
- Love-Letter
- モノクローム
- Unlocked
- you
- Circle
- 道名津
- BELOVED×SURVIVAL
- Ivory
- うどん
- うどん2
- しゃよう
- DREAMER
- 吾輩はオス猫である
- 空の青さと思い上がり
初回限定盤 特典DVD収録内容
- Making of “ZERO to Re:load”
初回限定盤 特典CD収録曲
- The Bandits
- OIRAN UTOPIA
- アンチェインゲイザー
- へたらぶ
- 楽ニナレマスカ
- Love-Letter
- モノクローム
- Unlocked
- 道名津
- BELOVED×SURVIVAL
- Ivory
- うどん
- うどん2
- しゃよう
- DREAMER
- 空の青さと思い上がり
- ミニアルバム「Road」 2016年7月9日発売 / 1944円
- 「Road」
収録曲
- WAITING
[作詞:Gom / 作曲:Gom、shito / 編曲:HoneyWorks] - NOT EQUAL
[作詞・作曲:Gero / 編曲:大和] - 脆弱オーバードーザー
[作詞・作曲・編曲:鈴木ぷよ] - 君だった
[作詞・作曲・編曲:烏屋茶房] - Mistermind
[作詞・作曲・編曲:すこっぷ] - アンノーンアンノーン
[作詞・作曲・編曲:鬱P] - Road
[作詞・作曲:Gero / 編曲:鈴木ぷよ]
Gero(ゲロ)
兵庫県生まれのボーカリスト。2009年、ニコニコ動画に投稿した「歌ってみた」動画が話題を集め、本格的な活動をスタート。2011年にリリースした初のフルアルバム「Gourmet」はインディーズながらオリコン週間アルバムランキングで7位を獲得し、2012年にはミニアルバム「Cross」も発表する。また両年には全国ツアーを2回敢行。東京・SHIBUYA-AXや大阪・なんばHatchなどの大バコもソールドアウトさせている。2013年7月にはテレビアニメ「BROTHERS CONFLICT」のオープニングテーマ「BELOVED×SURVIVAL」でメジャーデビューし、同月メジャー1stフルアルバム「one」も発表。以来、6枚のシングルと3枚のオリジナルアルバムを発表する一方で、毎年25本前後の大規模ツアーを行うなど、精力的な活動を展開している。そして2016年6月には前年10月に開催した、キャリア最大規模のキャパシティの会場でのライブ、東京・日比谷野外大音楽堂公演の模様が収められたDVD「Live Tour 2015 -Re:load- DVD」をリリース。翌7月には初のセルフプロデュース作となるミニアルバム「Road」を発表する。