音楽ナタリー Power Push - Gero
“盤石のGeroライブ”と“ブランニューGero”の作り方
検証! GeroのライブMCはなぜ面白い?
──ただ「ジェイムズ・ヘットフィールドやANCHANGの影響を受けてます」と言いつつも、MetallicaやSEX MACHINEGUNSの単なるオマージュにはなっていない。きちんとGeroさんオリジナルのライブアクトを完成させています。
オレ、持ち時間の半分はしゃべってますもんね(笑)。
──あはははは(笑)。確かにMCの回数は多いし、そのMCがことごとく面白いところも魅力になっている印象を受けました。
3曲以上連続でやらないことにしてるんですよ。人って音楽を聴いているだけでも疲れますから。リズムにも楽器の音にもボーカリストの言葉にも集中しなきゃいけないし、集中したくなっちゃうから。だから3曲に1回は「ラフにしていいよ」「ちょっと水飲んでいいよ」って言いたくなっちゃうんです。特に自分の曲はけっこうキーが高かったり、シャウトが多かったり速かったりするから、連発すると聴いてくれる人たちも確実に疲れるでしょうし。音楽はきっちり聴かせる。締めるところさえしっかり締めておけば、プラスαの部分、MCは面白くてもいいし、むしろ面白いほうがいいのかな、っていう気はしてますね。それもあって今回のDVDは、アンコールがかかってからオレが出てくるまでのシーン以外は全編ほぼノーカットなんです。
──「この5分、本当にムダ話しかしてないから、全部カットだね」みたいなMCすら生かしてたし(笑)。
そうそうそう(笑)。DVDみたいなアイテムを手にしてくださる方の中には、CDもきっちり聴いてくれている熱心な方が多いと思ってるので。そういう方にCDとは違う「GeroのライブDVDならではの何か」をお見せするとなったら、3000人を前にバカ話をして笑ってる、その楽しい雰囲気もパッケージするべきなんだろうなっていう気がしたんです。音楽についてはCDと同じように……じゃない。最初にお話した通り、CDからさらに完成に近付いたものを聴いていただいているつもりなので、それ以外の何か、まさにプラスαをお届けしたかったんですよね。
──逆にMCがコミカルなのは楽曲やプレイに対する自信の表れだったりは? どれだけくだらないことを話したって、一発音を鳴らせば3000人を黙らせることも踊らせることもできるっていう。
そうありたいし、そういう自信もなくはないんですけど、「ゲロ」なんて名前で音楽活動を始めちゃったうえに、デビュー直後に「♪おいなりさーーん」「♪つるつるしこしこ」って連呼する「うどん」なんて曲を作っちゃってますからねえ……。今さらカッコいいMCをしても説得力がないし、カッコつけるのも恥ずかしいっていう面も多々ありますよ(笑)。
──「Love-Letter」や「Ivory」みたいな“いいラブバラード”を歌ったあとは必ず照れ隠しのように面白いことを言うか、逆ギレするかしてましたもんね(笑)。
はい(笑)。でも「Love-Letter」や「Ivory」に込めたメッセージがウソかって言われればそうじゃないし、そういう曲をちゃんと歌えば伝わるっていう自信は確かにあります。それも「今回のDVDはノーカットでいきましょう」って言えた理由ではあって。日本のリスナーさんって海外に比べてボーカリストのピッチやキーのズレに厳しいらしいんですよ。それだけ真剣に音を聴いてくれてるとも言えるんだけど、オレはそういうテクニカルなことよりもプレイヤーの感情が優先されることがあってもいいと思うし、そういう自分の歌を3000人の“日本の”お客さんが楽しんでくれてましたから。「感情が乗った結果ピッチがうわずったり、逆に下がったりしたほうが説得力が増すし、聴いている人の真に迫ることもあるんだよ」「だからこの映像はノーカットで出しても大丈夫」って思えたのは間違いないですね。
──当然ながらこのDVDの最大の見どころはMCの面白さではない。プレイのエモさこそがキモですもんね。
うん。ライブではエモーショナルな表現にはとにかくこだわってます。感情が乗ってピッチがズレるんじゃなくて、あえて半音下げることすらありますから。女の人の暗い恋愛感情なんかを歌った曲の場合、あえてキーを外したほうが、その気持ち悪さがエモーショナルに聞こえたりしますし。あと原曲ではシンセをバリバリ使ってたりしても、ライブでは極力同期モノは使わないようにしてるのも理由は同じで。バンドの演奏もちょっとヨレたり、走ったりしたほうがエモーショナルだし、生演奏ならではの真実味と説得力が増しますし。それに同期モノがなければ、ライブのリハ中に思い付いたカッコいいアレンジなんかも簡単に実践できますし。
“誰が”ライブを作るのか?
──ちょっと話が変わるんですけど、Geroさんにとって理想のライブってどういうものですか?
とにかく誰も飽きさせないライブですね。学生の頃、先輩から「オレのバンドがライブやるからちょっと来いよ」とか言われて、その先輩が怖いから「はいっ!」なんて言ってライブハウスに行ったいいけど「うわ、長っ」「まだやんのかよ」ってなったことが少なくなくて(笑)。当時の先輩のバンドとプロを名乗らせてもらってる自分のライブを比べるのはアレなんですけど、それでも「やっぱりああいう思いはしたくないし、させたくないなあ」っていう刷り込みみたいなものはあります。
──なら野音公演は大成功ですね。2時間ちょっと、ホントに楽しくDVDを観ていられましたから。特にDVDって飽きても逃げ場がないじゃないですか。鑑賞している人の聴覚だけじゃなくて視覚も奪うメディアなんだけど……。
演者に飽きちゃったら画面の端っこでもボーッと眺めるしかなくなりますもんね(笑)。それか観るのをやめちゃうか。CDだったら「あんまり面白くないな」って思ってもとりあえず流しっぱなしにしておいて、なんか別のことをやればいいけど、それもできないし。
──でもこのDVDには逆にそういう気持ちにさせる要素が1つもなかった。本当に面白かったです。
自分やバンドももちろんがんばりましたけど、スタッフさまさまでもありますよね。照明であったり、音響であったり、特効であったり。個人的には特に照明がスゲーと思っていて。歌ってる最中も「オレ、今スゲーカッコいい光の中で歌ってるな」って思ってましたし、改めて映像を観てみても「スゲー」以外に感想はなかったですし。あと野音特有のムードっていうのもあるんでしょうね。画面の上のほうには常に夜空が映ってる、あの気持ちのよさとか。だからこのDVDに関しては画面の端っこのほうを観ていても楽しいのかも。もしオレを観るのに飽きても、空を眺めていられるから(笑)。
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- ライブDVD「Live Tour 2015 -Re:load- DVD」 2016年6月22日発売 / NBCユニバーサル・エンターテイメント
- 「Live Tour 2015 -Re:load- DVD」
- 初回限定盤 [DVD2枚組+CD+ブックレット] / 6480円 / GNBL-1033
- Amazon.co.jp
- 通常盤 [DVD] / 4320円 / GNBL-1034
- Amazon.co.jp
DVD収録内容
- Opening
- The Bandits
- 名古屋のデブ
- OIRAN UTOPIA
- アンチェインゲイザー
- へたらぶ
- 楽ニナレマスカ
- Love-Letter
- モノクローム
- Unlocked
- you
- Circle
- 道名津
- BELOVED×SURVIVAL
- Ivory
- うどん
- うどん2
- しゃよう
- DREAMER
- 吾輩はオス猫である
- 空の青さと思い上がり
初回限定盤 特典DVD収録内容
- Making of “ZERO to Re:load”
初回限定盤 特典CD収録曲
- The Bandits
- OIRAN UTOPIA
- アンチェインゲイザー
- へたらぶ
- 楽ニナレマスカ
- Love-Letter
- モノクローム
- Unlocked
- 道名津
- BELOVED×SURVIVAL
- Ivory
- うどん
- うどん2
- しゃよう
- DREAMER
- 空の青さと思い上がり
- ミニアルバム「Road」 2016年7月9日発売 / 1944円
- 「Road」
収録曲
- WAITING
[作詞:Gom / 作曲:Gom、shito / 編曲:HoneyWorks] - NOT EQUAL
[作詞・作曲:Gero / 編曲:大和] - 脆弱オーバードーザー
[作詞・作曲・編曲:鈴木ぷよ] - 君だった
[作詞・作曲・編曲:烏屋茶房] - Mistermind
[作詞・作曲・編曲:すこっぷ] - アンノーンアンノーン
[作詞・作曲・編曲:鬱P] - Road
[作詞・作曲:Gero / 編曲:鈴木ぷよ]
Gero(ゲロ)
兵庫県生まれのボーカリスト。2009年、ニコニコ動画に投稿した「歌ってみた」動画が話題を集め、本格的な活動をスタート。2011年にリリースした初のフルアルバム「Gourmet」はインディーズながらオリコン週間アルバムランキングで7位を獲得し、2012年にはミニアルバム「Cross」も発表する。また両年には全国ツアーを2回敢行。東京・SHIBUYA-AXや大阪・なんばHatchなどの大バコもソールドアウトさせている。2013年7月にはテレビアニメ「BROTHERS CONFLICT」のオープニングテーマ「BELOVED×SURVIVAL」でメジャーデビューし、同月メジャー1stフルアルバム「one」も発表。以来、6枚のシングルと3枚のオリジナルアルバムを発表する一方で、毎年25本前後の大規模ツアーを行うなど、精力的な活動を展開している。そして2016年6月には前年10月に開催した、キャリア最大規模のキャパシティの会場でのライブ、東京・日比谷野外大音楽堂公演の模様が収められたDVD「Live Tour 2015 -Re:load- DVD」をリリース。翌7月には初のセルフプロデュース作となるミニアルバム「Road」を発表する。