音楽ナタリー Power Push - Gero
“盤石のGeroライブ”と“ブランニューGero”の作り方
GeroのライブDVD「Live Tour 2015 -Re:load- DVD」が6月22日に、最新ミニアルバム「Road」が7月6日にリリースされる。
「Live Tour 2015 -Re:load- DVD」は2015年10月の東京・日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブの模様が収録された映像作品。ひとたび歌い出せばロックボーカリストとして圧倒的な存在感とテクニックを見せつけ、またひとたびMCとなれば、本人曰く「そこらへんのアンちゃん」感あふれるコミカルな横顔を見せるGeroの姿をほぼノーカットで追っている。そして対する「Road」はGero初のセルフプロデュース作。彼を知る者なら誰もが驚くだろう最新型のGeroサウンドを提示することに成功している。
大会場でキャリアの集大成的パフォーマンスを繰り広げたライブの映像集と、ニューモードをアピールする最新CD。相反する2枚を時を置かずに発表するGeroは何を思うのか? 話を聞いた。
取材 / 須藤輝・成松哲 文 / 須藤輝
“CDの歌い方”と“ライブの歌い方”
──今回のライブDVD「Live Tour 2015 -Re:load- DVD」を観ていて、すごく気になったGeroさんのひと言があったんです。
気になったひと言?
──「ただライブに来ても十分面白いんだけど、CDを聴いてから来るとライブが5倍も6倍も面白くなる」っていうMCなんですけど……。
ああ、言いました、言いました。
──でもGeroさんのCDはおよそライブの従属物とは思えない。2015年には活動初期の楽曲をリアレンジ、リレコーディングした「ZERO」を発表しているし。要はシーンのトレンドや最新のレコーディング技術をにらみながら、ハイクオリティな音源を作りたいタイプなんじゃないかな?って気がするんです。
確かにライブとCDどっちも大事だし、「CDを聴いてライブに来ると楽しめる」と言いつつも、実は全然違うものだよな、とも思ってます。これはボーカリストさんごとに意見の分かれる話だと思うんですけど、オレの中では「同じ曲でもライブだとこう歌うとカッコいいけど、CDだとちょっと違うんだよな」っていう感覚がありますし。
──ステレオと正対したファンに聴かれるCD音源での歌い方と、一緒に歌い踊りながら聴かれるライブでの歌い方は確かに違いそうですね。
いや「CDだからキチッと歌うけど、ライブだったら盛り上がり方次第でラフでも大丈夫」みたいな話とも違うんですよ。確かに動画共有サイト出身、つまりボーカルディレクションも自分でしていたこともあって、デビューしたての頃は視界が狭くなってトコトン突き詰めたくなる自分もいたにはいたんですよね。デビューシングルの「BELOVED×SURVIVAL」のレコーディングのときにほぼ初めて他人のボーカルディレクションを受けるっていう経験をしたんですけど、そのディレクターさんが「はいOK!」って言ってくれても、「いやいやいや! もっと歌ったら、今よりいいテイクが録れるかもしれないでしょ」ってツッコんだりしてましたし。
──回数を重ねたほうが、いいテイクに巡り会う確率は上がりそうですもんね。
そう思ってたんですけど、ノドって消耗品ですから。歌えば歌うほど、むしろいいテイクになりにくくなるっていう側面もあるんですよね。信頼できる第三者が「いいね!」って思えるテイクが録れたならスパッてやめちゃったほうがよかったりもする。デビューしてから3年でそのことがわかった感じはしてます。だからオレに限って言えば、CDでの歌い方のほうがライブよりもラフかもしれない。「キッチリ録る」という大前提はありつつも、オレの目から見たらラフに映る箇所があっても、信頼できる人が「OK」って言うならそれは大丈夫なテイクだし、そのくらいのほうがダイナミックで面白いのかなって。で、その曲をライブで何回も歌っていると、さらに洗練されたり、また新しい発見があったりするんですよ。むしろCDの歌声よりもキッチリすることがある。そのライブでの発見を改めて曲に込めてみたのが去年の「ZERO」っていうアルバムなんです。
Metallica、SEX MACHINEGUNS、そしてGero
──で、そのライブの模様が収められた「Live Tour 2015 -Re:load- DVD」なんですけど、Geroさんは日比谷野外大音楽堂のステージのど真ん中に堂々と立って、抜群の存在感をバッチリ示してました。
ありがとうございます! ただオレ、この間、それよりもっとレベルの低いところでビックリしちゃってたんですよ。X JAPANさんの1989年の野音でのライブの映像を観てたんですけど、そのときの感想が「Xってやっぱスゲーなあ。野音って広いなあ」って。
──他人事(笑)。あえて繰り返しますけど、今回のライブDVDは“Geroさんの野音公演”の模様を収めたものです。
そうなんですよ。「X、スゲーなあ」って思った直後に「あっ! オレ、ここでライブやったことあるわ」「オレ何言ってんだろ」って気付いた、と(笑)。
──でも「野音スゲー」って気持ちはわかります。3000人が集まる場所ですから。ただGeroさんはその3000人の期待を一身に引き受けていたからビックリしたんです。ちゃんと「3000人のアニキ」をしていたというか。
はははは(笑)。そういうノリが好きなんですよね。オレ、一番好きなヘヴィメタル・ハードロックボーカリストって誰かって言ったらSEX MACHINEGUNSのANCHANGさんですから。
──まさにアニキキャラですね。
ですよね。で、ANCHANGさんが好きなボーカリストは誰か?っていうと、Metallicaのジェイムズ・ヘットフィールドらしいんですよ。ジェイムズなんていったら、もう「3000人のアニキ」どころの騒ぎじゃない。「世界のアニキ」じゃないですか(笑)。だから、ジェイムズに関しては「間接的に」なんですけど、それでも2人の影響を受けてる気はしますね。
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- ライブDVD「Live Tour 2015 -Re:load- DVD」 2016年6月22日発売 / NBCユニバーサル・エンターテイメント
- 「Live Tour 2015 -Re:load- DVD」
- 初回限定盤 [DVD2枚組+CD+ブックレット] / 6480円 / GNBL-1033
- Amazon.co.jp
- 通常盤 [DVD] / 4320円 / GNBL-1034
- Amazon.co.jp
DVD収録内容
- Opening
- The Bandits
- 名古屋のデブ
- OIRAN UTOPIA
- アンチェインゲイザー
- へたらぶ
- 楽ニナレマスカ
- Love-Letter
- モノクローム
- Unlocked
- you
- Circle
- 道名津
- BELOVED×SURVIVAL
- Ivory
- うどん
- うどん2
- しゃよう
- DREAMER
- 吾輩はオス猫である
- 空の青さと思い上がり
初回限定盤 特典DVD収録内容
- Making of “ZERO to Re:load”
初回限定盤 特典CD収録曲
- The Bandits
- OIRAN UTOPIA
- アンチェインゲイザー
- へたらぶ
- 楽ニナレマスカ
- Love-Letter
- モノクローム
- Unlocked
- 道名津
- BELOVED×SURVIVAL
- Ivory
- うどん
- うどん2
- しゃよう
- DREAMER
- 空の青さと思い上がり
- ミニアルバム「Road」 2016年7月9日発売 / 1944円
- 「Road」
収録曲
- WAITING
[作詞:Gom / 作曲:Gom、shito / 編曲:HoneyWorks] - NOT EQUAL
[作詞・作曲:Gero / 編曲:大和] - 脆弱オーバードーザー
[作詞・作曲・編曲:鈴木ぷよ] - 君だった
[作詞・作曲・編曲:烏屋茶房] - Mistermind
[作詞・作曲・編曲:すこっぷ] - アンノーンアンノーン
[作詞・作曲・編曲:鬱P] - Road
[作詞・作曲:Gero / 編曲:鈴木ぷよ]
Gero(ゲロ)
兵庫県生まれのボーカリスト。2009年、ニコニコ動画に投稿した「歌ってみた」動画が話題を集め、本格的な活動をスタート。2011年にリリースした初のフルアルバム「Gourmet」はインディーズながらオリコン週間アルバムランキングで7位を獲得し、2012年にはミニアルバム「Cross」も発表する。また両年には全国ツアーを2回敢行。東京・SHIBUYA-AXや大阪・なんばHatchなどの大バコもソールドアウトさせている。2013年7月にはテレビアニメ「BROTHERS CONFLICT」のオープニングテーマ「BELOVED×SURVIVAL」でメジャーデビューし、同月メジャー1stフルアルバム「one」も発表。以来、6枚のシングルと3枚のオリジナルアルバムを発表する一方で、毎年25本前後の大規模ツアーを行うなど、精力的な活動を展開している。そして2016年6月には前年10月に開催した、キャリア最大規模のキャパシティの会場でのライブ、東京・日比谷野外大音楽堂公演の模様が収められたDVD「Live Tour 2015 -Re:load- DVD」をリリース。翌7月には初のセルフプロデュース作となるミニアルバム「Road」を発表する。