原因は自分にある。「仮定法のあなたへ」全曲解説|7つの歌声があなたに贈る、6つの“もしも”の物語 (3/3)

儚さが増した幽霊に

05. ダイヤモンドリリー
[作詞・作曲・編曲:MIMI]

「もしも、“あなた”がこの世にいなくても…」

──5曲目はすでに先行配信されている、MIMIさん提供の「ダイヤモンドリリー」です。

小泉 まずこの曲のキャラクターのことからお話できればと思うんですけど、今はニナニナ語で話さなくて大丈夫ですか?

──日本語で大丈夫です(笑)。

小泉 僕がこの曲のキャラに付けた名前はリリです。シンプルに「ダイヤモンドリリー」というタイトルから取った名前なんですけど、最初はリリーにしていたんですよ。だけど、もうちょっと聞き馴染みのある名前にしたいなと思って、伸ばし棒を取ったリリに決めました。デザインのこだわりについては、最初にもらったデザインでは、リリが持っている花束がカラフルだったんです。だけど、リリは幽霊のキャラなので、花の色をクールな色味に統一してもらえるようにお願いしました。儚さが増した幽霊になったかなと思っています。

リリ

リリ

また会う日を楽しみに

──では、楽曲についてはいかがでしょう?

小泉 MIMIさんというボカロPの方が作ってくれたんですが、MIMIさんらしい切ないピアノの音が際立っていて、歌詞もすごくすっと心に入ってくるから、ストーリーも描きやすいなと思います。この曲は、いろんな解釈ができるなと思っていて。リリックビデオがYouTubeに上がっているんですけど、そこに出てくる花束を持った女の子が“人間側”なのか、そうじゃなくて、お花屋さんのリリなのか、どっちなのかというのもそれぞれの受け取ったものによって変わってくるのかなと思います。広い解釈ができる曲だなと思いつつ、全体通してはすっと入ってくる歌詞とメロディだから、何回も聴ける曲だなって思います。

小泉光咲

小泉光咲

大倉 そうだね。ダイヤモンドリリーの花言葉が「また会う日を楽しみに」なんです。なんかもう、このテーマにこの花言葉は切ないと感じます。あと、振付のことも話していいですか? この曲の振りには幽霊役と人役がいて、幽霊側のメンバーが人間側を触ろうとしたんだけど触れなくて悲しい表情をするところがあるんです。そのとき、人間側のメンバーは「あれ? 今なんか少し感じたかな」という仕草をする。普通だったら映像で演出されるようなニュアンスも振りに入っているので、パフォーマンスを見てもらえたら、この曲の切なさがもっと伝わるかなと思います。

潤くんの声で脳内再生

06. 『誰も知らない歌』
[作詞・作曲:じん / 編曲: 酒井拓也(Arte Refact)]

「もしも、1000年後の世界で“あなた”の歌が見つかったら…」

大倉 この曲の作詞作曲は、じんさん。また超ビッグネームの方に提供していただきました……。この歌はテーマが「もしも、1000年後の世界で“あなた”の歌が見つかったら…」。アンセムソング、聴いてくれた方の背中を推すような応援歌ではあるんですけど、「1000年後にも残っているラブソングがあることを伝えよう」と歌う楽曲なので、そういった物語も思い浮かべながら聴いてもらえると、曲の世界観に入っていけるんじゃないかなと思います。なんというか、「マルチバース・アドベンチャー」で始まって「誰も知らない歌」で終わるというこのEPの流れが、まとまりのいい6曲になったなあと、個人的にすごく感じています。

長野 ホントにそう。

小泉 僕はこのイントロがめっちゃ好きです。雨が降っている中で芝生を歩いているような音が入っているんですけど、この音を聴いただけですっとこの世界に入り込める感覚があって。歌詞を聴く前から物語の中に入り込んじゃいます。

左から小泉光咲、吉澤要人。

左から小泉光咲、吉澤要人。

杢代 僕は潤くんが歌う「歌を歌おう」という最後の歌詞が好きですね。このパートは、レコーディングをする前から潤くんの声で脳内再生されていました。

長野 僕もそう。「このパートは潤くんだろうな」と思ってた。

杢代 潤くんの歌声がめっちゃ合うんだよね。彼はライブでもきっといい表情で歌ってくれるんだろうなと思っているので、ここはけっこうポイントです。

大倉 で、その潤さんが名前を考えた、この曲のキャラクター。エヌビィ・エネスという名前なんですけど、潤さんいわく「誰も知らない」という意味の英語・Nobodyknowsから“nbns”を取って、エヌビィ・エネスという名前にしたそうです。キャラデザに関しては、エヌビィくんの両腕に時計をいっぱい着けたり、大きな爪を追加するのをリクエストしていました。いろんな時空に飛んでいくから、時計をいっぱい着けているみたいです。

エヌビィ・エネス

エヌビィ・エネス

感覚の違いはとても新鮮で、すごくいい経験に

──「仮定法」というテーマのもと、今作で皆さんはさまざまなカラーの曲を歌われていますが、1曲1曲の世界観の違いを感じると同時に、表現力がどんどん豊かになっている皆さんの歌の力の広がりをすごく自然に感じられる仕上がりになっていると思いました。皆さん自身、自分たちの表現の幅が広がっているという実感はありますか?

小泉 曲によって確実に声色を変えられるようになったなということは、僕自身感じます。そこは成長した部分なのかなって。

吉澤 あとは今までの僕らって、人それぞれいろんな解釈ができる“多世界解釈”の曲を主に歌ってきたと思うんです。だけど、このEPの収録曲は曲の軸となるストーリーがあるので、その世界観に僕らが声を吹き込んでいくような感覚でした。その違いで、僕個人としては表現方法がつかみやすかった感覚があって。曲によって見せ方の振れ幅があるにはあるんだけど、その楽曲の世界観にあった表現を見つけられたというか。その感覚の違いはとても新鮮で、すごくいい経験になったなと思っています。

──そんな「仮定法のあなたへ」を携えて、3月末には全国ツアー「架空のアウトライン」がスタートします。最後に、ツアーに向けての思いを聞かせてください。

長野 今回の春ツアーの「架空のアウトライン」というタイトルには、まだ見ぬあなたに会いに行く、“架空の人のアウトライン像”を探しに行くという思いも込められているんです。「仮定法のあなたへ」は、観測者に向けてはもちろん、そういった“まだ見ぬあなた”に向けてのEPでもあって、僕らは常に、誰でもこの場所に入ってこられるような受け入れ体制を持って歌っています。そういう意味で言うと、僕らはずっと前から、いろんな曲を歌って、いろんなことを“多世界解釈”して、すべての人を受け入れるっていう形を取っているような気もします。だからこそ安心して、どこから入ってきてくれても、それぞれの楽しみ方でライブを楽しんでくれたらうれしいなと思います。

原因は自分にある。

原因は自分にある。

ツアー情報

LIVE TOUR 2024 “架空のアウトライン”

  • 2024年3月23日(土)宮城県 東京エレクトロンホール宮城
    [第1部]OPEN 12:00 / START 13:00
    [第2部]OPEN 17:00 / START 18:00
  • 2024年3月31日(日)埼玉県 三郷市文化会館
  • 2024年4月7日(日)愛知県 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
  • 2024年4月21日(日)福岡県 福岡市民会館
  • 2024年4月26日(金)大阪府 フェニーチェ堺
  • 2024年4月27日(土)大阪府 フェニーチェ堺

プロフィール

原因は自分にある。(ゲンインハジブンニアル)

大倉空人、小泉光咲、桜木雅哉、長野凌大、武藤潤、杢代和人、吉澤要人による7人組ダンスボーカルグループ。グループ名には「原因」という言葉を肯定的に捉え、自身が引き起こす事や作り出す物を“原因”として音楽シーンに新たなインパクトを与えたいという意味が込められている。2019年10月に1stシングル「原因は自分にある。」でCDデビューし、2021年1月に1stアルバム「多世界解釈」をリリース。4月に初のワンマンライブを成功させ、12月には2ndアルバム「虚像と実像」を発表した。2023年1月には3rdアルバム「無限の終わり」をリリースし、パシフィコ横浜 国立大ホールでワンマンライブを行った。6月には3rdシングル「Foxy Grape」を発表し、8月には7人が主演を務めたテレビ東京系ドラマ「沼オトコと沼落ちオンナのmidnight call~寝不足の原因は自分にある。~」の主題歌「蝋燭」を配信リリース。11月にはぴあアリーナMMでのワンマンライブ「因果律の逆転」を成功させた。2024年3月、コンセプトEP「仮定法のあなたへ」をリリースする。