原因は自分にある。「Foxy Grape」特集|3rdシングル「Foxy Grape」徹底読解 げんじぶと今夏を過ごす貴方のための1万5000字

原因は自分にある。が6月7日にニューシングル「Foxy Grape」をリリースした。

彼らにとって約3年半ぶり、3枚目のCDシングルとなる今作。イソップ寓話「酸っぱい葡萄」をモチーフに、夏を楽しむ人々への負け惜しみと羨望を歌う表題曲「Foxy Grape」に、げんじぶらしい難解な言葉遊びが“超早口”で炸裂する「余白のための瘡蓋狂想曲」、メンバーの裏エピソードで歌詞が構成される“隠れ自己紹介曲”の「GOD 釈迦にHip-Hop」など、独自の世界観をより深く掘り下げる楽曲の数々が詰め込まれた作品となっている。

シングルのリリースを記念し、音楽ナタリーでは大倉空人、小泉光咲、桜木雅哉、長野凌大、武藤潤、吉澤要人の6人にインタビュー。シングル収録の全5曲を徹底的に紐解いてもらった。加えて、グループのリーダーに就任したばかりの吉澤に今の思いを聞いた一問一答のページも。大ボリュームの1万5000字特集をぜひ、げんじぶと今夏を過ごすあなたのお供に。

取材・文 / 三橋あずみ

Interview:3rdシングル「Foxy Grape」を大いに語る

いろんなものに“2次元”を見出せるんだ

──「Foxy Grape」は2020年1月発表の「嗜好に関する世論調査」以来、約3年半ぶりとなる3枚目のシングルです。

長野凌大 新曲は配信リリースばかりでしたからね。

小泉光咲 こうしてやっと出せたのは、うれしいことです。

大倉空人 僕ら的には、ちゃんと円盤を出せる世界に3年ぶりに帰ってこられた感があります(笑)。

原因は自分にある。

原因は自分にある。

──「Foxy Grape」はイソップ寓話の「酸っぱい葡萄」をモチーフに、夏を楽しく過ごす人々を嫉ましく思う“負け惜しみ”の気持ちを歌った楽曲です。デビュー曲「原因は自分にある。」の中にあるフレーズ「酸っぱい葡萄の種として眠ろう」とのつながりも感じさせるこの楽曲のテーマについてはどのような思いがありますか?

凌大 哲学や戯曲など、僕らの曲にはこれまでもさまざまな場所からの引用がありましたけど、今回は寓話を引用していて、ジャケットビジュアルは絵本をイメージしているんです。僕たちはある時期から「2次元と3次元の架け橋となる存在」をコンセプトの1つとして活動しているけれど、今回寓話や絵本がテーマになったことで「いろんなものに“2次元”を見出せるんだな」と、また新たな可能性を感じました。これまでは2次元と言えばオンライン、PCモニタの中のものという感じだったから。「Foxy Grape」は「2次元ってほかにもいろいろあるよね」という挑戦だし、ここでまた、げんじぶの視野が一気に広がったと思います。

──楽曲についてはいかがでしょう。最初に聴いたときの印象を教えてもらえますか?

武藤潤 今回の楽曲はメタルテイストで、僕は曲調からも新しい姿のげんじぶを想像しましたね。この曲を歌いこなせたら、新たな世界が見えてくるんじゃないかな?というワクワク感がありました。

光咲 僕らの曲は基本テンポが速いから、僕は「Foxy Grape」のゆったりめなテンポ感にまず驚きがあって。ただ、サビのメロディの奥でピアノが流れているところには、げんじぶらしさを感じました。さりげないおしゃれさや言葉使いで“らしさ”を出しつつも、新たなインパクトを与えられる曲なんじゃないかなと思います。

武藤潤

武藤潤

小泉光咲

小泉光咲

自分の中で過去イチ湿っぽく

──歌入れについてもお聞きしたいのですが、「Foxy Grape」は光咲さんが言っていたようにテンポがゆったりめで、展開も普段のげんじぶの曲よりシンプルだと思うんです。歌にいつも以上の“余白”が与えられているからこそ、表現にそれぞれの工夫があったのでは?と思ったのですが……。

凌大 おっしゃる通りで、僕は最初に聴いたとき「この曲はボーカルが引っ張っていかなきゃいけない曲だな」と思いました。これまでの曲は速いテンポの中で鳴っている音に自分たちが歌を合わせていく感じだったんですけど、「Foxy Grape」は全体的にゆったりとしたテンポの中でリズムをコントロールしてグルーヴを作っていかないといけないから、いつもと違う難しさがある。ピッチが高いわけじゃないけど、逆にテクニックが求められるんです。だから僕は、リズム感と声の出し方を特に意識して、いつもとは違う個性の自分が出せたらいいなと思いながら歌いました。

空人 のっぺりとした聴き心地にならないように、僕はアクセントを意識してグルーヴ感を出せるようにしました。特にサビの「今でも踊らされている」と歌うところ。「い」と「ま」の間に「ん」を入れて、強めに歌うことでニュアンスを出すとか……。とにかく、アクセントとグルーヴ感に注意を払って歌っています。

──細かな表現にも注目すべき皆さんの工夫が詰まっているんですね。ほか、特に聴いてほしいポイントはありますか?

空人 ラップパートは全体的に遊び心を入れてレコーディングしたので注目してほしいです。中でも(杢代)和人の「今よそ見してたら変わらない日々」の「してたら」のスピード感が僕はすごく好きです。

杢代和人

杢代和人

凌大吉澤要人 僕はですね……あっ(お互いの顔を見合わせる)。

光咲 そうですね、僕は……。

 光咲が言うんかい! 第三者介入!(笑)

一同 あはははは!

空人 やっぱ光咲天才だわ……。

光咲 僕はサビを聴いてほしいなと思っていて。今までにない、ちょっとサビっぽくない入り方をするんですよ。ここでこの曲の世界観を見せられると思うし、観測者(原因は自分にある。ファンの呼称)さんに新たなインパクトを与えられると思います。

 サビつながりで言うと、ラストのサビの雅哉パートにはほかのサビと違う展開があって、歌詞的にも起承転結の“結”の表現になっているんです。雅哉の歌もすごくいい感じで。

空人 マジで決まってるよね!

桜木雅哉 おっ。ありがとうございます。

要人 僕が聴いてほしいのは、自分のパートになっちゃうんですけど、1番Aメロの「相手にしてくんないから僕も逸らす目と目」。ここ、自分の中で過去イチ湿っぽく歌ったんです。もう、「だる重……」みたいな声で。この歌詞に自分なりに合わせにいった歌い方をしているので、そこは注目してもらえたらうれしいですね。

個人個人に委ねられている余白

──「Foxy Grape」のダンスパフォーマンスについてはいかがですか?

空人 この曲は、minmi先生にひさびさに振りを付けていただきました。「原因は自分にある。」も「嗜好に関する世論調査」もそうですけど、minmi先生はその曲の象徴になるようなキャッチーな振りをいつも作ってくださるんですよ。で、今回は(親指と人差し指の腹を合わせ)こういう仕草をするんですけど、なんだと思います? お金じゃないですよ。

凌大 正解は、ワイングラスを持つ仕草です!

光咲 まあ中身はたぶん、100%ぶどうジュースなんですけどね。

 僕は「ファンタグレープ」がいいな(笑)。

空人 グラスを傾けて飲む仕草が何度も出てきたり。そこは僕たちも曲に合わせて色っぽく、大人っぽく表現していますね。

雅哉 僕、ラストサビ前の音ハメのダンスがめっちゃ好きで。僕らがバチッと振りをそろえて踊っているところを客観的に観てみたいんですよ。

空人 客観的に観たいの?

 じゃあ雅哉はそのときだけ客席のほうに回ってもらって。

要人 フォーメーションに穴が開くけど大丈夫?(笑)

光咲 観測者さんが「どうした、どうした?」ってなっちゃうから。

要人 ダンスリーダーの凌大的には、この曲の振付はどう?

凌大 それこそ「原因は自分にある。」とか「嗜好に関する世論調査」の頃……デビュー当時の僕らには踊りこなせなかった、大人っぽい色気のある振付だなと思う。経験値を積み重ねてきたからこそ表現できる、映える仕草や動きがたくさん入っていると思います。これまで通りに7人のそろった振りも出てくるけど、いろんな経験をしてきたそれぞれの個性や仕草もすごく生かされてるなあって。歌と同様にダンスにも個人個人に委ねられている余白がけっこうあって、そういう部分でカッコよさをすごく出せると思うので、1人ひとりの細かな動きもじっくり観てほしいです。

吉澤要人

吉澤要人

長野凌大

長野凌大

やっぱり杢代さんが笑いの中心

──全体の流れで言うと、最初と最後に要人さんがセンターに立つフォーメーションがすごく印象的だったのですが、それには何か意味があるんですか?

凌大 なんだろうね? (メンバーカラーが)紫だから?

 グレープ色だからね。

要人 「いいポジションをもらえたな」と僕も思ってます(笑)。

光咲 純粋に、要人に合う曲調だからじゃない? 大人の色気系は要人が担当してくれているんで。

空人 要人の大人っぽさは“日本代表”レベルだから。

要人 (笑)。ちなみに、最初と最後の振りは「僕ら以外にも負け惜しみを感じている人、いるよね?」というアピールを意味しているらしいんです。自分と“同類”の人を探している。それを先生から教えていただいて、僕はすごく納得しました。

一同 へえー。

──要人さん以外の皆さんは今の解釈は初知りですか?

光咲 まあ、僕は知ってたけど。

空人 光咲、負け惜しみすんな?

一同 あはははは!

 ちなみに、ミュージックビデオも要人からバーン!と始まります。

雅哉 MVめっちゃいいよね! 今回、セットがすごかったんです。1人ひとり違うセットの中で撮ったパートもあるし、(右手を思い切り突き出しながら)ぜひ観てほしいです!

一同 えっ!?(笑)

雅哉 あ、今のはMVを観てもらったらわかります(笑)。

空人 皆さんが夏を楽しんでいる中、ある館に閉じこもった僕たちは外で夏を送れないけれど、7人は7人なりの夏を楽しんでやるというコンセプトのMVなんです。すごく作り込まれたセットの中でメンバーがいろんな手段を使って遊んでいるんですけど、個人的にはラップパートに注目してほしいです。すごく迫力のあるカメラワークでチェスのシーンを撮ったので、ぜひ観てほしいですね。

桜木雅哉

桜木雅哉

大倉空人

大倉空人

──撮影で楽しかった思い出はありますか?

空人 あるよね、雅哉?

雅哉 “3文字造語しりとり”で盛り上がりました!

空人 杢代さんがいると、そういう遊びを提案してくれるんですよ。みんなで盛り上がって面白かったね。やっぱり杢代さんが僕たちげんじぶの笑いの中心です。