原因は自分にある。「虚像と実像」インタビュー|げんじぶとは何者なのか?2ndアルバムが浮き彫りにする“虚像と実像”

原因は自分にある。が、12月8日に2ndアルバム「虚像と実像」をリリースした。

今年1月リリースの1stアルバム「多世界解釈」では、哲学的な世界観の歌詞、疾走感のあるピアノロック……と、デビュー曲から持つアイデンティティを強く打ち出したげんじぶだが、2ndアルバムに収録されたのはギターロックサウンドが印象的な「黄昏よりも早く疾走れ」、ポエトリーリーディングに挑戦した「灼けゆく青」、禁断の恋をテーマにしたストレートなバラードソング「豪雨」など、これまでのイメージを塗り替えるような楽曲の数々だ。

「私たちが見ている『原因は自分にある。』とは何者なのか。」というテーマのもと集められた彩り豊かな楽曲群が浮き彫りにする、原因は自分にある。の“虚像と実像”とは? 音楽ナタリーでは、7人のメンバーに話を聞いた。

取材・文 / 三橋あずみ撮影 / NORBERTO RUBEN

僕は“理科”を感じるなって

──1月リリースの「多世界解釈」に続き、今年2枚目となる2ndアルバム「虚像と実像」が完成しました。今作は「彼らは本当に現実世界に存在しているのか。私たちが見ている『原因は自分にある。』とは何者なのか。」というテーマのもと作られたということで、「多世界解釈」同様とてもコンセプティブな香りがしますが、こういったテーマについてはスタッフさんから前もって説明があったのでしょうか。

大倉空人 事前に説明はなくて。アルバムのジャケット撮影をしていたときにアルバムタイトルの発表をしてもらい、収録曲を制作していく中で、このアルバムがどういう作品になるかを聞いた感じでした。

──そうだったんですね。「虚像と実像」というタイトルを聞いて、皆さんはどう感じました?

小泉光咲 僕は“理科”を感じるなって……。意味はよくわからないけど、中学生のときに理科で習った、懐かしい単語だよなって思いました(笑)。

武藤潤 わかる(笑)。

吉澤要人 ロウソクとレンズの実験のやつだね。

杢代和人 僕は「げんじぶっぽいな」と思いました。哲学的で、「どういう意味なんだろう?」ってすぐには理解できずに気になってしまうような。

桜木雅哉 僕もそう思った。

──いろいろな受け止め方ができますよね。例えばグループで活動しているとき、皆さんは本当の自分とは違う、“虚像”の自分を意識したりすることはあるのでしょうか。

長野凌大 ライブ中にはときどき考えることがあります。曲によって、等身大の自分の気持ちでやるときもあれば、ちょっと大人びた“げんじぶの長野凌大”として気持ちを入れることもあって。

武藤 逆に僕は、虚像の世界にいすぎて実像がわからなくなってきたというか……。

長野 確かに、それも考えるよね。

杢代 深い。

──要人さんはどうですか?

吉澤 僕はまさしく虚像と言いますか……。

一同 あはははは!

杢代 どういうこと?(笑)

吉澤 自分は虚像と実像がハッキリ分かれていると思いますね。じゃあどっちがどっち?って聞かれると、潤くんと一緒でわからなくなっちゃうんですけど。どちらの自分も存在しているな、ということは感じます。

吉澤要人

吉澤要人

吉澤要人

吉澤要人

1曲目がギターサウンドメインであることの意味

──「虚像と実像」に収録されている、「多世界解釈」以降にリリースされた楽曲には、どれもグループにとっての新しい表現や挑戦があったんじゃないかなと感じていて。

杢代 そうですね。

──まず、先行配信されたアルバムの1曲目「黄昏よりも早く疾走れ」。これまでにない、ゴリッとした質感のロックサウンドが印象的な楽曲です。

小泉 「黄昏よりも早く疾走れ」は「げんじぶっぽい」という意見も「新鮮だ」という意見もあって、僕らの中でも印象が割れた曲なんです。僕は「新しい挑戦だな」と思いました。これまでのげんじぶの曲はピアノの音を重視していたけど、この曲はすごくロック調だし……あと、けっこう強めな歌い方をしたのも新鮮でした。僕のパートにはかなり高い音域のファルセットもあって、チャレンジがたくさんあったんです。

長野 1曲目がギターサウンドメインになっていることに、僕は意味があるなと思っているんです。1stアルバムの「多世界解釈」はグループの自己紹介をするような作品だったけど、今回の「虚像と実像」ではさっき言っていただいたように、曲の中で新しい挑戦をたくさんしているから。今まで大事にしてきたピアノの音ではなく、ギターサウンドメインの曲を1曲目に置いて「これまでとはちょっと違うぞ」ということを表現しているように思えるんです。

──確かに、1曲目でこれまでのイメージを一旦リセットするような感覚にもなりますね。

杢代 すごく疾走感があって自然と気持ちがノってくるので、「ここから『虚像と実像』の世界に突入するんだ」という意味でも“入り口”にふさわしい曲だな、と思います。歌詞が青春をテーマにしているから僕ら自身も身近に感じられて、歌っていても楽しい曲なんです。

──作詞作曲はみきとPさんが担当されています。

長野 みきとPさんは“ボカロのボス”みたいな方、というイメージが僕の中にはあって。げんじぶの曲は「ボカロ曲っぽい」と言われることが多いので、そんな方に書いてもらえてうれしかったです。

──光咲さんも言われていたように、皆さんがロックボーカリスト的な歌い方をされているのも新鮮でした。

武藤 疾走感とパワフルさはすごく意識しました。あとは弱めに歌っているパートからいきなり強く発声して、メリハリをハッキリと付けたり。

武藤潤

武藤潤

武藤潤

武藤潤

吉澤 青春の明るさもその裏の悲しみみたいな部分も表現している歌詞なので、重みを出したくて。僕はオクターブ下のサビを歌っているんですけど、上を歌っている潤くんたちの声のニュアンスに添えるように、必死に当てにいった記憶があります。

大倉 あの、いいですか? 僕は歌割りを見た瞬間「これは俺の曲だな」と……。歌い出しも僕、1番のサビとラスサビも僕と潤なんです。

武藤 あはは(笑)。まあ、そうでございますね。「黄昏」で(メンバーカラーの)黄色も入ってるしね。

小泉 空人、疾走感ある感じするもんね。

大倉 曲調も好きな感じだったので、うれしかったです。攻撃的に、圧力強めに歌うのが似合う曲だと思うから、ライブではいつも以上にカッコつけていこうかなと。皆さんの心も躍ってくれたらいいなと思います。

──ちなみにこの曲の振り付けは?

大倉 つい先日終わりました。走ってますよー!

桜木 走ってますねえ。

大倉 げんじぶ史上、一番汗をかく曲になったんじゃないかなと。

杢代 曲と同じように、振りもノンストップって感じ。

小泉 エネルギッシュな感じだよね。

大倉 その中で細やかさも求められるので、勢いに自分たちの意識まで持っていかれないようにしないとと思っています(笑)。とにかく、すごく迫力があると思いますよ!