「10代最強」の栄冠は誰の手に!? 過去最多のファイナリストが頂点争った「第3回 激闘!ラップ甲子園」決勝大会の記録

10代最強ラッパーを決めるフリースタイルMCバトル「激闘!ラップ甲子園」の第3回決勝大会が、3月26日に大阪・GORILLA HALL OSAKAにて開催された。3回目となる今回は、過去最多となる24名のファイナリストが参戦。3ブロック制のトーナメント方式により、若きラップアーティストたちによる名勝負の数々が次々に繰り広げられた。以下にその模様をレポートする。

取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / Kenji Kitazato、Mai Yamauchi

新要素の加わった大会レギュレーション

出場ラッパーは前回覇者・ビシキマと、東日本および西日本予選の成績優秀者、書類選考やオーディション通過者を合わせた計23名に、ワイルドカード枠1名を加えた計24名だ。当初、ビシキマはシード扱いで1回戦が免除される予定だったが、本人への了承を得たうえで急遽ワイルドカード枠の新設が決定。決勝大会当日の朝にこの枠を争うワイルドカードマッチが行われ、これを勝ち抜いたBJOWが対戦表に名を連ねることとなった。これは「M-1グランプリ」でいうところの敗者復活枠のようなものと捉えて差し支えないだろう。

トーナメントは8人ずつの3ブロックに分割され、それぞれ「TIGERブロック」「DRAGONブロック」「LIONブロック」と名付けられた。各ブロックを通過した3名によって巴戦方式の決勝戦が行われる。

対戦形式は前回大会までと同様、1on1による8小節×3ターンのフリースタイルバトル。リリックの内容やラップスキルなどを総合的に踏まえて5人の審査員が優勢と判断した対戦者の札を上げ、その数が多かったほうの勝利となる。なお、審査員はFORK(ICE BAHN)、呂布カルマ、CIMA、Fuma no KTR、S-kaineの5名が務めた。

上段左からFuma no KTR、S-kaine、下段左からFORK(ICE BARN)、呂布カルマ、CIMA。

上段左からFuma no KTR、S-kaine、下段左からFORK(ICE BARN)、呂布カルマ、CIMA。

バラエティ豊かな対戦が繰り広げられた1回戦

TIGERブロック1回戦

実力者ひしめくTIGERブロックは、のっけから激闘の連続となった。前回大会セミファイナリストのLARK FIENDは、「第17回BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権」との2冠を狙うREDWINGに敗れ初戦突破ならず。前回準優勝に輝いている楓も、くしくも前回大会1回戦と同じ顔合わせとなったyujingに雪辱を許し、早くも姿を消した。2大会連続の決勝進出となった中学生ラッパー・TAPPERは、大会初出場で東日本予選を制した江戸っ子Bボーイ・2faceに惜敗。ロシアにルーツを持つGROMは、償うべき過去を抱えラップで更生を期すizanamiを下し2回戦進出を果たした。

LARK FIEND

LARK FIEND

REDWING

REDWING

左から2face、TAPPER。

左から2face、TAPPER。

楓

左からGROM、izanami。

左からGROM、izanami。


DRAGONブロック1回戦

フィメールラッパー2名(NAGASE、彼岸)を擁するDRAGONブロックは、壮絶なディス合戦の様相を呈した。前回覇者のビシキマは初戦から貫禄すら感じさせるバトルを繰り広げ、ワイルドカード出場のBJOWはあえなく撃破されてしまう。山形のラップシーンを背負い大阪へ乗り込んできた雪国ラッパー・たんぽぽと「楽しんだもん勝ち」マインドで勝負するNAGASEによる初出場同士の対戦は、語彙とスキルで上回るたんぽぽに軍配。蓮雫蝶はsosumeとの熱のこもったディスり合いを僅差で制し、同様に熱量の高い舌戦となったM.C.Tと彼岸の一戦はM.C.Tが辛くも勝利を収めた。

BJOW

BJOW

ビシキマ

ビシキマ

左からsosume、蓮雫蝶。

左からsosume、蓮雫蝶。

左からたんぽぽ、NAGASE。

左からたんぽぽ、NAGASE。

左から彼岸、M.C.T。

左から彼岸、M.C.T。


LIONブロック1回戦

初出場組を多く抱えた、個性派ぞろいのLIONブロック。風貌から異彩を放つ陰キャ系ラッパー・おててツナマヨは過去の闇を吐き出すかのような執念のラップで今大会最年少の知葉瑠を退け、「歌うまジャイアン」の異名を持つBIG POSIONは特徴的なハスキーボイスで沖縄のホープ・MCトキダを説き伏せてみせた。無名の新星・ArFαは、サックスも嗜む音楽サラブレッド・いちぢくが繰り出すメロディアスなフロウに絡み取られて敗戦。「激ラ」常連で連続ベスト4の実力を持つSirogarasは、うさぎを愛する純朴ラッパー・槌ノ呼(ちなみに予選でのMCネームは「エチエチ男」)との巨漢対決を制して2回戦進出を決めた。

左からおててツナマヨ、知葉瑠。

左からおててツナマヨ、知葉瑠。

BIG POSION

BIG POSION

MCトキダ

MCトキダ

いちぢく

いちぢく

ArFα

ArFα

左から槌ノ呼、Sirogaras。

左から槌ノ呼、Sirogaras。

ディスとリスペクトが入り乱れた2回戦

2回戦の結果は以下の通り。

TIGERブロック2回戦

2回戦は、TIGERブロックのREDWING対2faceからスタート。両者ともにラッパーとしてのプライドを前面に出す真っ向勝負に打って出たが、フロウの力強さとワードの説得力でREDWINGが上回る。続くyujingとGROMの一戦は細かなテクニックもちりばめながらの撃ち合いとなり、手数の多彩さでyujingに票が集まった。

左からREDWING、2face。

左からREDWING、2face。

左からyujing、GROM。

左からyujing、GROM。


DRAGONブロック2回戦

DRAGONブロックでは、ビシキマが相手のリリックを先読みしてユニゾンしてみせるなど試合巧者ぶりを発揮する。呂布カルマ審査員がドロー判定を下した関係でポイントが2-4と人数オーバーを起こしているが、いずれにせよビシキマの勝ち抜けが決まった。続くM.C.Tと蓮雫蝶の関西勢対決は、互いの生き様を認め合いながら声高に思いをぶつけ合うエモーショナルなバトル内容に。判定の結果M.C.Tの勝利が告げられると、2人はリスペクトのこもった熱い抱擁を交わした。

左からビシキマ、たんぽぽ。

左からビシキマ、たんぽぽ。

抱き合う蓮雫蝶とM.C.T。

抱き合う蓮雫蝶とM.C.T。


LIONブロック2回戦

LIONブロックのおててツナマヨ対BIG POISONのバトルは、ビジュアル的にはさながらのび太とジャイアンのタイマン勝負のよう。互いに有効打の多い好勝負となったが、結果的には4-1でジャイアンことBIG POISONに軍配。決着後には友情を確かめ合うかのように握手が交わされた。一方、いちぢくとSirogarasの対戦はラップバトルというよりも即興メロディメイキング合戦のような展開を見せ、審査員3名からドロー判定が下されてこの日初めての引き分けに。延長戦に突入し、合計6ターンに及んだ2人の“歌合戦”は最終的にSirogarasが白星を奪取。両者は晴れやかな笑顔で健闘をたたえ合った。

おててツナマヨ

おててツナマヨ

左からいちぢく、Sirogaras。

左からいちぢく、Sirogaras。