「GeGってどんな音楽作ってんの?」って聞かれたら
──「Straight up(Prod. GeG)」は、WILYWNKAさんのラップからかなり新鮮な印象を受けました。
アルバムの中でも最後のほうにできた曲ですね。WILYWNKAとは定期的に曲作ってるんですが、レコーディング日に本人が違うビートでリリックを書いてきてて(笑)。「それ、お前のアルバム用の曲やで」「『こんな暗いのが(GeGの)アルバムに入るんや』と思ってた」ってやりとりを経て、イチからどういうテーマやフロウにするかとかを話しながら、この曲は作りました。
──あとロックなドラムも新鮮でした。
今後俺の音楽はこういうサウンドが増えていくと思いますね。僕はヒップホップ、ロック、レゲエ育ちなんですが、この先GeGとして新しい形を作り上げたいと思ってます。なのでこのアルバムは「GeGってどんな音楽作ってんの?」って聞かれたときに、「こういうのやってます」と言える内容にしたかったんですよ。唯一コンセプト的なものがあるとすれば、タイトルの「Mellow」に沿った曲ということだけで、あとは全曲全然違うジャンルだと思います。
──前からジャンルレスですもんね。
ホンマにジャンルは気にしてないです。そもそもジャンルってCD屋さんが棚のために作ったものじゃないんですかね? 似たような音楽を並べとけば売りやすいっていう。このアルバムは配信系だとヒップホップのジャンルに入るけど、それは前作のジャンルがヒップホップだったからそれを踏襲しただけで、自分的には「GeG」ってジャンルにならなきゃいけないと思ってます。
アメリカの音楽の形でJ-POPを作ってる
──今作で制作が難航した曲はありましたか? どのように制作しましたか?
いや、特になかったです。基本的に全部同じ作り方です。
──どんな作り方ですか?
海外の音楽の作り方で作ってる感じですかね。音数も日本のほかの楽曲に比べると少ないと思います。日本は1曲の中でいろいろなリズムが同時に目立ってることが多いですが、俺は必要最低限の音のみで作っていて。楽曲を1つのキャンパスだと考えて、そこに詰め込みすぎないようにしてます。あと制作について、日本人は1人でやってる方が多いですが、俺は“GeG”っていうチームで作っています。
──ああ、なるほど。そこに行き着いたきっかけが何かあったんですか?
自然になっていった感じですかね。家を建てるとして、全部自分でDIYしてもいいんですが、そしたらクオリテイは下がりますよね。それと同じで。チーム作りは昔から意識してました。音数に関してはアメリカの友達とセッションですかね。特に食らったのが、タイガ(アメリカ・コンプトン出身の世界的なラッパー)とかと曲作ってるPEYOTEっていうロサンゼルスのプロデューサーです。俺がずっと出したかったギターの音があったんですけど、日本人だと僕の周りでは誰もその音を出せなくて。そいつに「出せる?」って聞いたら、パソコンに直接ギターをつないで弾いてくれたんですけど、それが僕の求めてた音そのものだったんです。衝撃でしたね! それでセッションしたりもして、やっぱ少ない音数で音楽って作れるんじゃんって経験したのがデカいです。
──以前GeGさんが日本では出せないワンドロップのリズムを求めてジャマイカまで行った話と似てますね。
ですね。本物を体感する経験は大事だと思います。J-POPや演歌作るなら日本だと思うように。一緒に制作するといろいろ見えてくるものがあると思うのでもっとやっていきたいです。
──今作はHiplinさんとの「Sky」、kojikojiさんとRin音さんを迎えた「花束」、「なっちゃうじゃん」のようなボーカル曲がすごく新鮮に聴こえたのはそういう部分が関係してるのかもしれないですね。
いらない音は1つも入れてないから歌が際立つし、大切な音が埋もれることなくなるので、いい作り方だと思います。
GeG人生の集大成
──ボーカルの話でいくと「またとない日々を」のVIGORMANさんは素晴らしかったですね。
あいつは天才なんで。やっぱあの事件で本人もつらいことがいっぱいあったと思うんです。でもすごく成長したなって思います。昔だったらこの曲みたいな歌詞は書けなかった。いろんなことに気付いたんじゃないかなと感じます。個人的に早く旅行の道中で聴きたい曲ですね。
──アルバムには変態紳士クラブの「Let's get together again」も収録されています。
変態紳士クラブとしては約1年ぶりの新曲で、できあがった曲を3人で「いいね」って言うことは今まであまりなかったけど、これは3人とも納得したひさびさの曲。まあ、タイトル通り、またみんなで集まろうねって感じっすね。そういう意思表示の曲でもあるけど、そもそも変態って僕らにとってはお祭りみたいなユニットなんですよ。それぞれソロで活動してるし。昔みたくバンバン活動はしないとは思うけど、新曲は定期的に出しつつ、また年1回くらいお祭りみたいなライブはしていきたいって考えてます。
──個人的に一番GeGさんらしいなと思ったのが最後の「水仙」でした。
「水仙」はトラック的には一番新しいやつですね。伊豆スタジオという有名なスタジオを2泊3日で借りて、にしなと唾奇と僕で制作したんですよ。本当は2人に事前に渡してたビートもあって、それをレコーディングする予定だったんだけど、現地で唾奇が「気に入らない」と言い出して。「それは先に言えたやろ」と(笑)。
──(笑)。
で、そのままイチから制作したんです。1日目に原型作って、テーマ決めて、2日目にはほぼトラックはあの状態になってました! エンジニアの沢田さんとミックスしながらトラックを制作して、歌もにしなと唾奇とでゼロからアイデアを出し合って。唾奇はホントに納得いくまでやるから大変だったけど、すごくいい感じに仕上がったと思ってます。
──今回は唾奇さんが2曲も参加しているのはなぜですか?
それはシンプルに最近、唾奇と曲作るようになったからです。
──お会いしたことはないんですが、作品を聴いてる範囲だと芸術家気質なイメージがあります。
その通りです。昔はこんなやりづらいラッパーおんのかって思ってましたもん。でも今回「水仙」なんかはあいつがリーダーになって、にしなと一緒にメロディを作ったりしてて。すごいいいバイブスで音楽してるなって思います。唾奇は難しいやつって思い込みで決めつけたらダメですね。本当の彼はシンプルに愛にあふれた音楽家です。
──これは1月20日に東京・豊洲PITで開催されるライブが楽しみですね。
GeG人生の集大成のライブになることは間違いないです。俺の曲は先ほど話した通り、音数を必要最低限に抑えてますが、それはライブで120%にするためなんですよね。全曲バンドアレンジされて、音源とはまた違った迫力を楽しめると思います。ゲストは毎回未発表にしていて、自分でも3000人のお客さん相手に発表しないのヤバいなって思ってるんですが、まあ「わかるやろ」ということで(笑)。期待は裏切らないので、ワクワクして来てもらえるとうれしいです。2度とないような奇跡の夜になると思います。
プロフィール
GeG(ジージ)
変態紳士クラブのメンバーとしても知られる音楽プロデューサー。現在までにプロデュースした楽曲の総ストーリミング数は10億回を超えており、楽曲プロデュースはもちろんのこと、G.B.'s Musicの代表やライブディレクター、イベント企画、バックバンドプロデュースなど、多岐にわたる活動を続けている。2019年にソロ名義の1stアルバム「Mellow Mellow~GeG's PLAYLIST~」を発表。2024年1月に2ndアルバム「Mellow Mellow ~GeG's Playlist vol.2~」をリリースし、東京・豊洲PITで主催ライブ「メロメロライブ~GeG's Live Set vol.3」を開催する。
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