「絶対にあきらめない」一念発起したGeG、妥協なしの2ndアルバム完成

GeGが2ndソロアルバム「Mellow Mellow ~GeG's Playlist vol.2~」をリリースした。

2020年にメジャーリリースした「YOKAZE」をスマッシュヒットさせ、大阪・大阪城ホールや東京・日本武道館での単独公演も成功させた変態紳士クラブのプロデューサーであるGeG。彼にとって4年5カ月ぶりのソロアルバムとなる本作には、変態紳士クラブや、そのメンバーのWILYWNKAとVIGORMANはもちろん、唾奇、にしな、MILES WORD、JAGGLA、SNEEEZE、kojikoji、Rin音、Hiplin、SISUIという豪華なメンバーが参加している。メジャーを離れ、自身が活動する場所をインディーズに移した彼が、どんな思いで本作を制作したのかをじっくり聞いた。

取材・文 / 宮崎敬太撮影 / 西村満

あらゆることがぐちゃぐちゃでした

──ソロ名義では4年5カ月ぶりのアルバムリリースになります。

そうですね。3年前くらいから作り始めてたんですけど、何回もポシャってました。で、ずっと「どうしよう、どうしよう」と思ってんですけどまあ皆さん知ってる事件とかもあっていよいよヤバいぞと!(笑) そこでやっぱ「ここは俺しかおらんか」と一念発起して、ほぼほぼそっから半年間で完成させました。なのでトラックなどはここ3年の間で作ったものもありますね。2022年に配信リリースした「なっちゃうじゃん」もアルバム用に作り直しました!

──今回の作品のとてつもないクオリティに衝撃を受けました。TikTokでも似合うのに、ストリートの匂いもするバランス感覚はGeGさんならではですね。

うれしいです! クオリティに関しては「YOKAZE」を作ってた頃って、実は音楽のことをあんまり深くは知らなかったんです。もちろんずっと曲は作ってたし、演奏してきたけど、深い知識はなくプロとは言えないくらいだったので、この3年間でめちゃくちゃ音楽を勉強したんです。その成果が確実に出ていると思います。今作はアルバム1曲1曲としっかり向き合って作って、それをまとめた感じで、自分としては全部リード曲だと思っています。

──トイズファクトリーを離脱したのはなぜですか?

これけっこう複雑でトイズファクトリーに当時マネジメントも委ねていたんですが、僕はマネジメントを自分たちでやりたかったんです。そうじゃないと、オリジナルのカッコいいチームを作ることができないと思ったから。トイズにはトイズが作り上げたチームがあるけど、それは独立したらなくなるわけですからね。僕は早い段階から、長年一緒にやって互いの呼吸感までわかるカッコいいチームを作りたいという目標があったんです。そういうことで契約終了の1年くらい前から交渉してたんですが、途中で交渉人などでのトラブルもあって話がこじれちゃって(笑)。自分らとしては別にそこまで「辞めたい」なんて思ってなかったんですよ。契約を更新する話もしてたくらいなんですけど、気付いたら今に至るという。でも俺が言い出したことが発端だから、自分でどうにかしないとあかんなって思ってます。インディーズでメジャーと同じ動きできるようにならないとダメですよね。

GeG

──GeGさんにとってメジャーで活動した経験はどんなものだったと振り返りますか?

めちゃくちゃ大切な経験やったと思いますね。今となっては感謝しかないです! 実際にインディーで同じことをしようと思うと、メジャーのすごさがよくわかりました。音楽制作にお金がかかることはわかってましたが、宣伝とかって1個やればいいってもんじゃなくて、あっちでもこっちでも見かけるから知られる。そうなるとお金もマンパワーも全然足りない。自分だけだったらまだしも、ほかのアーティストもってなると無理(笑)。やっていくためにはどうしようって今も日々奮闘してます。だから音楽制作事務所の株式会社Goosebumps Musicを設立して、大阪にレコーディングスタジオも作りました。マネジメント会社の株式会社GSPOも最近設立したので、そこで変態紳士クラブなども手がけていく予定です。

──難しいことが重なって音楽だけに集中できない状況だったんですね。

そうですね。あらゆることがぐちゃぐちゃでしたね。なのでこの3年くらいは準備期間だったのかなと思います。けどそこで音楽の勉強もいっぱいしたし、チームも徐々にできてきてます。自分には今のやり方のほうが性に合ってるとは思いますし、インディーズだからって絶対にあきらめないつもりです。

今回のアルバムは一個もあきらめなかった

──今作で最初にできたのはどの曲ですか?

最初にできたというか、最初に録ったヴァースは「Still Hungry feat. MILES WORD × JAGGLA × SNEEEZE × VIGORMAN」のMILES WORDくんですね。ライブの打ち上げかなんかでミナミで一緒に遊んだんです。よく覚えてないんですが、「一緒に曲作ろう」みたいな話がまずあって、MILESくんから「スタジオ行くわ」って連絡があったんだけど、僕は最初「そんなこと言ったっけな」みたいな感じでした(笑)。

──お酒を飲みまくるGeGさんらしいエピソードですね。

けどレコーディングしたらMILESくんめっちゃカッコよかったんですよね。最初は「Still Hungry」で一緒にやる感じではなかったんですよ。もっとMILESくんらしいアンダーグラウンドな感じのビートも提案してたけど、「GeGっぽいビートでラップしたい」と言ってくれて。

──GeGさんの曲にMILES WORDさんが参加してたのは意外でした。でもめちゃくちゃカッコいいヴァースを蹴ってますね。

ちなみにこのアルバムの最後に録ったヴァースがこの曲のJAGGLAくんなので、最初と最後が「Still Hungry」ですね。

GeG

──SNEEEZEさんの参加もおひさしぶりな感じがしました。

今回のアルバムはSNEEEZEくんがかなり活躍してくれていて。「EDEN」のにしなのパートは歌詞もメロディもSNEEEZEくんが作ってます。彼はすごい才能の持ち主だと思います。毎回何個も歌を書いてくれて、しかも制作の速度も激早の天才なんです。

──この曲はまさにTikTokでも似合うのにストリートの匂いもする曲だと思いました。

そうっすね。俺はJ-POPも作るけど、ストリートにいる人間でもあるんで、「Still Hungry」は自分が生きてきた証なんかなと思います。みんな快くやってくれて本当に感謝です。あきらめなくてよかったです。

──あきらめなかったというのはどういうことですか?

ホンマはこうしたかったとか、そういう妥協を今作はしなかったということですね。仲間同士で作ってたし、ちゃんと素直に話して最後まで作り上げました。このアルバムで一番デカいのは1個もあきらめなかったことです。

「正直ダサかったで」

──メジャーは作品のリリース日を軸にいろんなスケジュールが組まれてますもんね。

そうですね。もちろんインディーズでもあるのですが、メジャーにいたときはその納期が早すぎてあきらめざるを得なかったですね。納期を守るのが一番大切で、クオリティとかこだわりは二の次になってたんです。けどあるとき、なんか自分でなんかおかしいなと思って、WILYWNKAに「俺、ダサい?」って聞いたら、「正直〇〇辺りからダサいで」と言われて。「おお、言うねえ」と思ったけど、同時に「やっぱそうやったんや」とも思いました。PERSIAくんにも言われたし、仲間にもそう思われてたことを知りましたね。

──それは具体的にどういう面が「ダサかった」んでしょうか?

これはいろんなインタビューで言ってますけど、売れてる時期って何やっても「いいですね」って言われるんです。納期の間に作ったら「ありがとうございました」と言われる。そしたらだんだん自分でも何がよくて何が悪いかわからなくなっちゃうんです。うーん、天狗になったつもりはなかったんですが、音楽にこだわってなかったですよね。こだわって作ることやあきらめないことの大事さに気付かせてくれたのが唾奇でした。そのおかげでアルバムが完成したと言っても過言じゃないです。

──というと?

「EDEN」を作ってるとき、唾奇からよく「野暮ったいねえ」と言われてたんですよ。僕、「野暮ったい」の意味を知らなかったからGoogleで調べたら「ダサい」だったんですね。「あいつ、直接ダサいと言ってきおった」と(笑)。まあ普通にちょっとムカつくじゃないですか。「だったらカマしたるわ」って気持ちになれた。めっちゃがんばりました。ダサいって言われたら腹立つし。でも完成してお互い「なんも言うことないね」となったときの気持ちよさは何にも代え難い。これがこだわって音楽を追求する楽しさなんだなって知りましたね。完成したあと、みんなで沖縄で打ち上げもして。今までこんなに1曲を大切にしてこなかったなと。大切に向き合うことを唾奇から教えてもらえて、すごくうれしい経験でした。けど以前の唾奇だったらこういう曲やらなかったと思うし、あいつの中でもかなりモードが変わってきてるような気がしましたね。