J-POP研究会みたいになっていた
──往年の名曲から近年のヒット曲まで幅広くカバーしたことで、今と昔のJ-POPの違いなんかも感じられたんじゃないでしょうか。
MARiA それはめっちゃ感じました。レコーディングのたびに、J-POP研究会みたいになってたもんね。
toku うん(笑)。
MARiA 歌詞で言えば、やっぱり物量というか情報量の違いをすごく感じます。80年代、90年代のヒット曲って本当にシンプルに直球で伝えるものが多いけど、最近の曲は情報を詰め込むような感じで作られていて、字面を追うだけでも大変だったり(笑)。今回、「フレンズ」と「廻廻奇譚」を同じ日に録ったんですけど……。
──それは頭がおかしくなりそうですね。
MARiA いやホントに(笑)。「フレンズ」の歌詞はA4用紙1枚に余裕で収まる感じだったのに、「廻廻奇譚」は2ページびっしりだったんですよ。1つの音に対する言葉数の詰め込み具合もすごいし、時代を経てそういうふうに変わってきているんだなあというのはすごく思いましたね。
toku 当時の曲が聴き手に想像させる余白を残していたのに対して、今の曲は全部を説明しまくったうえで「で、どう?」みたいに問いかけてくるんですよね。それが今の音楽なんだろうなと思います。
──音もそうですよね。言葉だけでなく。
MARiA そうですね。音像としても物量がかなりすごいことになっている。
toku 隙間がないくらいにね。そこからまた音数を減らす方向に今は推移しているところもありますけど、大きな流れとしてはそこに今と昔の違いを感じます。
──では、作り手として……作詞家、作曲家として刺激を受けた曲を挙げるなら?
MARiA もちろん全部すごいなあと、皆さんそれぞれに素晴らしいなと心底思ったんですけど、歌詞を書く立場として特に印象的だったのはwacciの「別の人の彼女になったよ」ですね。「どうしたらこんなにリアルな気持ちを言葉にできるんだろう?」とすごく思いました。尊敬しかない。
toku メロディ作りに関しては、皆さんやっぱり素晴らしいなと思いますね。そのメロディに付けるコードひとつ取っても、設計図がしっかりしているのを感じます。特に「Pretender」なんかは、ジャズハーモニーの勉強をしたら最初のほうに出てくるツーファイブワンなどの基礎的なコード進行をベースに組み立てられていて、言ってみればアレンジのお手本みたいな作りの曲なんですよ。でも、メロディが独特で秀逸だから今までにない感じに聞こえる。そんなふうに、売れている曲というのは目新しく見えても構造的には基礎がしっかりしているものが多いんです。歴史的に継承されているセオリーにはやっぱりそれだけのパワーがあるんだな、と今回改めて感じましたね。
MARiA すごい、なんか作曲の授業みたい(笑)。先生かと思った。
──ちなみに僕は今回のアルバムを通して聴いていて、「白い恋人達」の大サビに来たときに「このメロディは天才が過ぎる!」と改めて驚かされたんですよ。
MARiA・toku わかるー!(笑)
MARiA 確かになあ。あれはとんでもないよ。
toku その前までで十分に名曲として成立してるのに、「まだ行くんだ?」みたいな。
MARiA そこに行くまでだけでも天才なのにさ。
toku ダメ押ししてくるからね。もう謝るしかない(笑)。「すいませんでしたー!」って。
ストップしている景色をもう一度動かすワールドツアー
──ちょっと大雑把な聞き方になっちゃいますが、今回カバーをやってみていかがでした?
MARiA やってよかったし、シンプルに楽しかった(笑)。自分の中にない、いろんなものをたくさん吸収できたなと思っていて……それはソロでも得られた感覚だったりはするんですけど、今後の作品に生きてくるものがたくさんあるだろうなと。というか、まだ新しい曲を書いてないだけで、たぶんもう私自身は変わってると思うんですよ。だから次に作るものがどうなっていくのか、自分でもワクワクしていますね。
toku カバー曲をYouTubeとかに上げると、楽曲のタグが付くことによってほかのアーティストのファンにつながっていったりもしますよね。「この曲、ガルニデもやってるんだ」と聴いてくれる人がいたり、GARNiDELiAを知らない人が楽曲をきっかけに知ってくれたりとか。最初からその広がり方を求めて始めたわけではないんだけど、カバーという文化のそういうところがすごいなと改めて思いましたね。
──アーティスト軸で広がるだけでなく、楽曲軸で広がっていく面白さがあると。
MARiA うん、それはすごくありますね。
toku 海外では日本よりもフランクにカバーが行われているイメージがあって、新作アルバムの1曲目がカバーだったりすることも普通にあるじゃないですか。日本ではなかなかそんなことはないけど、それくらいカバーが“特別ではないもの”になっていってもいいのかなという気はしますよね。自分たちもカバーされる側になりたいという思いもあるし。そういった意味でも面白い企画だったなと思います。
──ありがとうございます。では最後に、5月に始まる4年ぶりのワールドツアーに向けて意気込みを聞かせてください。
MARiA いやあ、なんせ4年ぶりですからね。「ツアーって、どんなんだっけ?」というところからなんですけど(笑)。ツアー日程を文字で見るだけで「大丈夫か?」みたいな。
toku 現時点で発表されている日程だけじゃないっていうのも……。
MARiA まあでも、4年前にストップしちゃってる景色をもう一度動かすツアーになるので。特に海外のお客さんにとってはなおさら止まってる感があるだろうから、その間もずっと走り続けて進化してきた新しい私たちをどうやってみんなに刺していくかというチャレンジにもなると思います。チャレンジでもありつつ、昔も取り戻しつつ。だからセトリをどうするかはけっこう悩ましいところではあるんですけど。
toku たぶん、ツアーと並行してアルバム制作も進めていく感じになるので……。
MARiA 新曲もやりたいよね。
toku ライブで初披露する新曲も混ぜつつやっていけたらなと。
──お二人それぞれのソロを経て、今回のカバーを経て、さらに4年ぶりのツアーを経ることで、次にいったいどんな作品が来るのかというのは率直にすごく楽しみです。
toku そこは本当に自分たちもワクワクしているところですね。去年、今年の活動内容を考えると、まったく新しいものができるだろうなという予感しかないので(笑)。
MARiA ライブをやっていく中で「こういう曲が欲しいよね」みたいな考えも生まれるだろうし……それはこの4年間なかったことなので。こうやって長いツアーが組める状況になったのは、そういう意味でもうれしいんですよね。家にこもって曲を書いていたときとは全然変わるだろうなと思っていて。
──言うなれば血流が止まっている状態で書いていたわけですもんね。それが次からは血の巡りがよくなり、代謝もよくなった状態で書けるようになる。
MARiA ホントにそう! だから私たちもめっちゃ楽しみなんです。とんでもないツアースケジュールだけど(笑)、がんばります!
ライブ情報
GARNiDELiA「stellacage 2023 -stella ship- Re:CoNNeCT」
- 2023年5月7日(日)神奈川県 CLUB CITTA'
- 2023年5月20日(土)台湾 Zepp New Taipei
- 2023年5月27日(土)京都府 京都FANJ
- 2023年5月28日(日)静岡県 LIVE ROXY Shizuoka
- 2023年6月18日(日)茨城県 mito LIGHT HOUSE
- 2023年7月2日(日)宮城県 darwin
- 2023年7月8日(土)福岡県 BEAT STATION
- 2023年7月9日(日)広島県 広島セカンド・クラッチ
- 2023年8月5日(土)香港 Music Zone @ E-Max
- 2023年8月23日(水)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
- 2023年8月24日(木)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
- 2023年9月2日(土)東京都 大手町三井ホール
- 2023年9月16日(土)タイ Centerpoint Studio
- 2023年9月22日(金)中国 深センHOU LIVE(南山春筍店)
- 2023年9月24日(日)中国 成都麓湖水上劇場
- 2023年9月26日(火)中国 重慶寅派動力
- 2023年9月28日(木)中国 北京福浪 Live House
- 2023年9月30日(土)中国 万代南夢宮上海文化中心(夢想劇場)
- and more
プロフィール
GARNiDELiA(ガルニデリア)
モデルとしても活躍するMARiA(Vo)と、さまざまなアーティストへ楽曲提供を行うtoku(Compose, Key)からなるユニット。2014年3月、アニメ「キルラキル」の後期オープニングテーマ「ambiguous」でメジャーデビューする。その後も数多くのアニメソングのテーマ曲を手がけ、2015年1月にメジャー1stアルバム「Linkage Ring」を、8月にはインディーズ時代の楽曲を集めたベストアルバム「BiRTHiA」を発表した。海外での活動も活発で、2017年5月には初の海外単独公演を中国・上海で行い、秋には「GARNiDELiA stellacage Asia Tour 2017」と題しアジアツアーを開催。2021年3月にポニーキャニオンへの移籍を発表し、11月に5thアルバム「Duality Code」を発売した。2022年6月にはMARiAの2ndソロアルバム「Moments」、2023年3月にはGARNiDELiA「GARNiDELiA COVER COLLECTiON」がリリースされた。5月より国内外の20都市以上を巡る大規模なツアーが開催される。
GARNiDELiA (@GARNiDELiA) | Twitter