GARNiDELiA「幻愛遊戯」インタビュー|芸事に心血を注いで生み出した2曲 (2/2)

打ち上げ花火のようにド派手な曲を

──そして10月19日には同じくデジタルシングルとして、“踊っちゃってみた”シリーズ最新作にしてダンサーのみうめさん、217さんとのラストコラボ曲「謳歌爛漫」がリリースされますね。

MARiA みうめが10月いっぱいで引退しちゃうので、「謳歌爛漫」は3人での“踊っちゃってみた”シリーズ最終章ですね。ダンスを踊るシリーズはなんらかの形で続けるとは思いますけど、みうめ、217、MARiAの3人でステージに立つことはもうなくなってしまうので。

MARiA(Vo)

MARiA(Vo)

──最後の曲なのに、あるいは最後の曲だからか、タイトルからめちゃくちゃにぎやかですね。

MARiA とにかくド派手にしたかったんですよ。最後の曲だからこそ、シリーズ史上もっとも華やかな曲にしないといけないと思って。

toku みうめへのはなむけの曲になればと。

MARiA だからタイトルからグランドフィナーレ感のある、集大成的なものにしたくて。華やかな四字熟語をものすごい集めたうえで、本来なら「桜花爛漫」という四字熟語の「桜花」を「人生を謳歌する」とかの「謳歌」に変えてこうなりました。

toku ただ、MARiAには「ド派手な曲をやりたい」と言われたんですけど、そのとき僕は全然そういうメンタルではなくて。

MARiA けっこう落ち着いた感じのデモを上げてきたよね。一旦そのデモのメロディに歌詞を乗せてみるかと、まず「謳歌爛漫」というタイトルを決めて、今まで書いてきた“踊っちゃってみた”曲の歌詞を読み返しつつ、最後の曲のテーマは何がふさわしいか考えたとき、なんか、打ち上げ花火っぽいなと。ドーン!と打ち上がって「ありがとう!」みたいなのがきっとうちらには似合うはずだから、tokuに「花火をテーマに詞を書くから、もっと派手なアレンジにして!」って。

toku そこでメロディも含めて、過去の“踊っちゃってみた”曲のオマージュになるようなフレーズを引っ張ってきたりしながら再構成して、この形になりました。

──過去のオマージュもありつつ、しっかり更新されていますよね。例えばヒップホップ的な要素が入っていたり。

toku 今までとは毛色を変えてね。

MARiA “踊っちゃってみた”も10年やっていますからね。10年も経てば流行りのジャンルとかも変わってくるから、さかのぼって聴いてみると、そのときどきのトレンドを取り入れているなって思うよね。

toku 例えば「極楽浄土」(2016年4月投稿)だったら、ダブステップを意識してワブルベースを入れたりね。

MARiA うんうん。そこも面白いよね。

toku(Compose, Key)

toku(Compose, Key)

MARiA(Vo)

MARiA(Vo)

「極楽浄土」ってタイトルはやめたほうがよくない?

──先ほどMARiAさんもおっしゃいましたが、“踊っちゃってみた”シリーズも10年やっているんですよね。

MARiA 趣味で始めたものが、かなり大きなプロジェクトになりましたね。特に「極楽浄土」以降、私たちの看板になった、音楽人生を変えたと言ってもいいシリーズなので「ああ、終わっちゃうんだな」という寂しさはすごくあります。みうめと217は家族みたいなものだったし、3人でステージに立つのが大好きだったので、そのエモさが歌詞にも出ていて。今までの“踊っちゃってみた”曲ではセクシーで強い女性像を思い浮かべて歌詞を書いていたんですけど、「謳歌爛漫」に関しては今の自分の気持ちを素直に書きました。

toku もともとガルニデはロック一辺倒ではなく、ロックとダンスミュージックの両輪でやりたいと思っていたので、わかりやすくダンス色を打ち出せたのも大きかったですね。MARiAと「いつか“踊っちゃってみた”の流れでアニメのタイアップ取れるところまで行けたらいいね」みたいな話をしたことがあるんですけど、さっきの「幻愛遊戯」も四字熟語タイトルのダンス曲という点で“踊っちゃってみた”から派生した楽曲で。そうやって1つの目標を達成したのとほぼ時を同じくしてみうめが引退するというのに、因縁めいたものも感じたりしていて。

MARiA そうだよね。

toku やっぱり10年経てばみんな進んでいく道も変わっていくし、逆に10年かけて“踊っちゃってみた”を擦りまくった感もありますが、いずれにせよやれてよかったなと思っていますね。当初はね、MARiAが「海外に向けて日本の文化を発信するための音楽を作りたい」と言い出して「極楽浄土」ができたりしたんだけど、今思えばMARiAの嗅覚って鋭かったんだなって。

toku(Compose, Key)

toku(Compose, Key)

MARiA ありがとうございます(笑)。tokuは最初、ビビりまくっていたからね。「『極楽浄土』ってタイトルは、やめたほうがよくない?」とか言って。

toku 「エゴサしたときに絶対負ける」とかね。

MARiA 「極楽浄土」はめちゃくちゃ大きな概念として定着しているから、うちらがそれと同じ名前の曲を作っても検索上位に表示されないって。でも私は「やってみなきゃわかんないじゃん!」「絶対に『極楽浄土』しかあり得ない! 私は譲らないからね!」って、けっこうバトったよね。しかも「極楽浄土」は、イントロの「ジャーンジャーンジャーン」のところから絶妙にダサさとカッコよさがせめぎ合っているというか。

toku 全部、頭拍ですからね。

MARiA tokuは「これ、本当に大丈夫?」って心配してたけど、私が「大丈夫! ダサいのがいいの!」みたいな。

toku 「これなら誰でもステップ踏めるから」って。

MARiA 「そのダサさがキャッチーなんだから、絶対に行ける! 私を1回信じて!」と説得したら渋々OKしてくれて。いざ投稿して再生数が一気に伸びたらtokuも「あ、行ったわ」って(笑)。でも、確かに「極楽浄土」に至るまでは「Girls」(2012年8月投稿)、「Lamb.」(2013年10月投稿)、「PiNK CAT」(2015年4月投稿)と普通にEDMで踊っていたから、突然“和”の色を付けて展開していくことに対して、みうめと217も「どう転ぶんだろうね?」みたいになっていて。

toku あ、そうだったんだ。

MARiA そうなの。「これ、伸びるかな?」「全然刺さんなかったらどうしよう?」って2人ともちょっと及び腰なところもあったんだけど、私には和モノで攻めたいという気持ちしかなかったから「いや、1回やってみよう!」と。で、やったら変わりましたね、未来が。あのとき自分を貫いてよかったわと思いつつ、みんなもついてきてくれて本当にありがたかったな。tokuもめちゃくちゃ文句言いながら「じゃあいいよ、やるか……」みたいな感じだったので(笑)。

toku まあ、やると決めたからにはね、しっかりやらないと。

──“踊っちゃってみた”シリーズでアルバム「響喜乱舞」(2018年9月発売)も作りましたし(参照:GARNiDELiA「響喜乱舞」インタビュー)。

MARiA アジアツアーもやって。だから「謳歌爛漫」を作っているときは、そういう10年分のいろんな思い出がよみがえってきましたね。今、みうめに振付をやってもらっていて、このあとミュージックビデオの撮影をするんですけど(※本インタビューは9月中旬に実施)、これが最後の撮影だと思ったら……やっぱりすごく寂しいけど、みうめはみうめで自分の選んだ道を覚悟を持って歩んでいくのでね。お互いに「それぞれの道を生きていこう」という話もしたし、みうめの背中を押せるような、仲間に向けた歌でもあります。

GARNiDELiA

GARNiDELiA

誰かが踊っていてくれる限り、このプロジェクトは終わらない

──「極楽浄土」を作った当時、MARiAさんが「絶対に行ける!」と主張した裏には、何か確信めいたものがあったんですか?

MARiA まだデビューして間もない2014年の後半ぐらいから、頻繁に海外のイベントにお呼ばれするようになったんですよ。こんなに海外に行かせてもらうんだったら、日本代表として、日本の文化を発信するアーティストになりたかったのと、日本の文化を詰め込んだ楽曲を持つことはGARNiDELiAの武器の1つになると思ったことが起点になっていて。私としては、例えばフランスとかで着物が人気だったりするので、どちらかというとヨーロッパのほうを向いて作っていたんです。でも蓋を開けてみたら、お隣の中国を中心にアジア圏の皆様に愛していただけて、そこは全然予期していなかったんですよ。

toku 「え? 中国で?」と思ったよね。

MARiA だから確信と呼べるようなものはなくて、「とにかく“和”を体現するような曲を作りたい」という強い気持ちと「それはいつか必ず武器になる」という根拠のない自信があった感じですね。ただ、「極楽浄土」というタイトルだけはめちゃくちゃ自信があったんですよ。ちょっとヤンキー文化みたいな……。

──特攻服の背中に刺繍を入れたい感じ。

MARiA そうそうそう! この四文字を背負いたい。まず「極楽浄土」という字面が強いし、響きも濁音だらけで。

toku GARNiDELiAの「極楽浄土」だから濁音ばっかり。

MARiA 「濁音いくつあるの? やば!」みたいな(笑)。その字面と響きの強さもデザインしやすいというか、“踊っちゃってみた”シリーズは最初の「Girls」からずっと、いかにサムネイルでクリックしてもらえるかを研究しながら作っていて。要は女の子3人が「極楽浄土」という文字を背負ってたら、ちょっとクリックしてみたくなるんじゃないかって。

toku ちなみに僕のデザインです。

MARiA そう。しかも紫色の文字だから禍々しくもあって。どうせやるなら、もうダサいのかカッコいいのかわからないぐらいの振り切れ方をしようということでああなったんですけど、それが功を奏したみたいで。中国の皆さんに「なんでこの動画を観ようと思ったんですか?」と聞いたら「『極楽浄土』という字面がカッコいいから」と言ってくださったり。漢字文化圏の国なのでまずそこに目を引かれて、クリックしてみたら「派手な衣装を着た女の子たちが踊っていて面白い」と、派手好きな国民性ともマッチしたのかあれよあれよと拡散されていったという。だからいろんな要素が絡み合っているんですけど、とにかく「極楽浄土」というタイトルを譲らなくてよかったなと。

toku だいぶ揉めたけどね。僕が嫌がったせいで。

MARiA あまりにも揉めすぎて「一旦持ち帰ろう」みたいになったよね。「ほかの案も出してみよう」って。確かにスタイリッシュではないから。

toku とはいえ字面で「極楽浄土」に勝る四字熟語はなかなかないですよ。ただね、さっきもちょっと言いましたけど、ガルニデはSEO対策にうるさいので。

MARiA そうそう。「GARNiDELiA」という名前自体もそうだからね。

toku 誰も使っていない言葉を作れば、検索上位に来る。

MARiA その理屈でいくと本家の「極楽浄土」に後出しで勝てるわけがない。でも、今「極楽浄土」で検索するとうちらの曲が一番上に表示されるんですよ。そんなことある? もちろん勝ち負けの世界ではないんですけど、何が起こるかわからないということを証明した曲でもあるのかな。そこから大きく広がっていったシリーズがここで幕を閉じることになるけれども、私たちとしては湿っぽい終わり方にしたくなかったから、「謳歌爛漫」で最後の花火を打ち上げました。まあ、私たち3人がステージに立たなくなっても、二次創作で広がり続けていくのがこのプロジェクトの面白いところだから。

──ああ、二次創作文化として生き続ける。

MARiA 誰かが踊っていてくれる限り、このプロジェクトは終わらないんだなと、今すごく感じています。

GARNiDELiA

GARNiDELiA

ライブ情報

GARNiDELiA Presents HALLOWEEN MiRACLE WONDER PARTY 2022

  • 2022年10月21日(金)東京都 チームスマイル・豊洲PIT
    <出演者>
    GARNiDELiA / luz / 少年T / しゅーず / +α/あるふぁきゅん。 / みうめ / 217

プロフィール

GARNiDELiA(ガルニデリア)

モデルとしても活躍するMARiA(Vo)と、さまざまなアーティストへ楽曲提供を行うtoku(Compose, Key)からなるユニット。2014年3月、アニメ「キルラキル」の後期オープニングテーマ「ambiguous」でメジャーデビューする。その後も数多くのアニメソングのテーマ曲を手がけ、2015年1月にメジャー1stアルバム「Linkage Ring」を、8月にはインディーズ時代の楽曲を集めたベストアルバム「BiRTHiA」を発表した。海外での活動も活発で、2017年5月には初の海外単独公演を中国・上海で行い、秋には「GARNiDELiA stellacage Asia Tour 2017」と題しアジアツアーを開催した。2021年3月にポニーキャニオンへの移籍を発表し、5月にはメイリアがさまざまなアーティストの提供曲を歌唱するMARiA名義のソロアルバム「うたものがたり」をリリース。6月にはtokuが10人の女性アーティストをゲストボーカルに迎えたソロアルバム「bouquet」を発表した。2022年9月にテレビアニメ「うちの師匠はしっぽがない」のオープニング主題歌「幻愛遊戯」を配信。10月にはMARiAが展開する動画シリーズ“踊っちゃってみた”の最新楽曲「謳歌爛漫」をリリースする。