音楽ナタリー Power Push - GARNiDELiA

今だから振り返りたい 2人の“誕生”の瞬間

絞るよりもすべてを聴かせるフルアルバムにしたかった

──「Linkage Ring」からほどなくして「BiRTHiA」を発表する意味はわかったものの、それにしても1カ月で作るというスケジュールはタイトすぎません?

toku いや、制作当初はスケジュールに若干余裕があったんですよ。6曲入りのミニアルバムにするつもりだったので。

メイリア ところが「6曲って何を入れればいいんだろう?」ってなっちゃいまして。

──インディーズ時代には「ONE」と「PLUSLIGHTS -21248931-」という2枚のミニアルバムをリリースしていて、それぞれに6曲ずつ入っていますけど、その12曲から絞りきれなかった?

メイリア はい。「どれも聴いてほしいね」ってなっちゃって。

toku 当時からよく言えば音楽性の幅が広い、悪く言えば雑多なグループだったので(笑)。「6曲に絞ってその幅を網羅できなくなるよりも、すべてをお聴かせできるフルアルバムにしたほうがいいよね」っていう話になったんですよ。

メイリア どうせだったらすべてを知ってほしいということで、その2枚に入っている曲をほぼ全部入れた上に私のソロ曲や初音源化曲、未発表曲まで入れて自分たちの首を絞めるという(笑)。

──しかも全曲録り直しているからお2人の首はよりキツく締まった、と(笑)。インディーズ時代のCDって今は入手困難なんだし、当時の音源をそのまま再録してもファンは十分うれしかったと思うんですけど、なぜ録り直そうと?

toku 5年くらい前ってネット系の音楽に限らず、どのバンド、アーティストも音源の音圧がスゲー高かったから、その音圧競争に負けないようにっていう音作りをしていたんです。でも最近はハイレゾが普及し始めていることなんかもあって、作り手側のトレンドも変わってきているし、リスナーが望む音圧、音像も変わってきてると思うんです。だったら最新モードにチューニングし直してみようかな、っていう気持ちがあったのと、あと当時に比べてメイリアの声が大人っぽくなってますから。それで音圧や音像を変えるんなら、彼女の歌も録り直したほうが面白いかな、と思ったんですけど本っ当に大変でした……(笑)。

──これまでtokuさんは楽曲制作で頭を悩ませることはほとんどないっておっしゃってましたけど……。

toku 今回は本気でヤバかったです。だって15曲入りじゃないですか。1日1曲歌を録っても絶対に日にちが足りないんですよ。

メイリア しかも今回はTD(トラックダウン)もtokuさんがやってましたからね。

──1曲分の楽器を録るのに1日かかって、歌録りに1日、TDに1日かかって……。

toku あとマスタリングにも1日ほしいですね。

メイリア で、15曲入りだから3日×15曲+1日で46日はほしかった(笑)。だからtokuさんは毎日2~3曲ずつ私の歌を録りながら、それが終わったらすぐミックスして、TDをしてっていうのを繰り返してました。

逆にチャンスだから炭水化物抜きダイエット

──だからか、tokuさんちょっと痩せましたよね?

toku 痩せました! 最初にスケジュールを切った時点で「これは逆にチャンスだ!」と思ってアルバム制作と並行して炭水化物抜きダイエットをしましたから(笑)。

メイリア 一番忙しい時期にごはんを抜いてましたよね(笑)。

toku ほら、基本的に作業はDAWでやってるわけだからパソコンに向かいっぱなしだし、そんなにカロリー使わないし大丈夫かな?と思って。

──いや、これまでだって曲作りやレコーディングの最中、腹減ってましたよね? ちゃんと消費してますよ、カロリー。

toku でもこうやってアルバムはできたし、僕は無事痩せられましたから(笑)。

メイリア それこそ痩せる思いをしてでも録り直したくなっちゃってたんですよね(笑)。私も、過去の曲を今のアレンジと今の声で聴いてもらいたかった……過去と今をつなぐようなアルバムがほしかったし、今メジャーで活動している私たちが過去の曲を演奏したらどうなるんだろう?っていう興味もありましたし。あと「インディーズ時代の盤を持っていてくれるファンの人たちにも改めて楽しんでもらえる1枚にするにはどうすればいいか?」っていうことも考えたんですよね。録り直してみたら、聴き比べてみてくれるかなって。

──あと“リレコーディング”はしたのに“リアレンジ”しなかったのはなぜなんですか?

toku どの曲も制作当時のアレンジが完成形だと思ってリリースしているわけですし、リアレンジしたりリミックスしたりするのは“インディーズベスト”という趣旨から外れてしまうと思ったので。だから音色もほとんど変えてないんですよ。物持ちがいいというのか、システムが古いというのかっていう話なんですけど、今のプライベートスタジオでも当時と同じ音を出せてしまうので(笑)。

──「BiRTHiA」ってそこが特に面白かったんですよね。「ONE」や「PLUSLIGHTS -21248931-」と聴き比べてみると「やっぱりエンジニアリング1つで曲って変わるもんなんだなあ」って再認識させられて。

toku そこは意識しました。インディーズ時代の曲って盤で入手することは難しいんですけど、まだYouTubeやニコニコ動画では聴けますし、配信で販売してたりもしてましたから。メジャーデビュー後、アニメのテーマソングを通じて僕たちを知ってくれた人の中には若い子たちも多いと思うんですけど、そういう子たちが今回のアルバムとニコ動の音源を聴き比べることで、レコーディングやエンジニアリングにフォーカスした音楽の楽しみ方を知ってくれたらうれしいですよね。

ベストアルバム「BiRTHiA」 / 2015年8月26日発売 / SME Records
初回限定盤 [CD+DVD+小説] / 3240円 / SECL-1752~3
通常盤 [CD] / 2500円 / SECL-1754
CD収録曲
  1. ARiA
  2. ONE
  3. 21248931
  4. Arrow of Love
  5. Hands
  6. COLOR
  7. Lucifer
  8. Break down
  9. ASTEROiD
  10. Harmony
  11. Butterfly
  12. ホシノウタ
  13. SPiCa -ReACT-
  14. ORiON
  15. Birth
初回限定盤DVD収録内容
  • ARiA(Music Video)
GARNiDELiA(ガルニデリア)

モデルとしても活躍するメイリア(Vo)と、アンジェラ・アキ、LiSAらのアレンジャー、ボカロP「とく」などの横顔を持つtoku(Key, Compose)からなるユニット。2010年に別名でオリジナル曲「ARiA」を動画共有サイトに投稿し、同年アニメ「フリージング」オープニングテーマ「COLOR」を発表したのと前後して、ユニット結成を宣言する。以来ハードロック由来のヌケのいいギターロックから、ダンスミュージック、ピアノ1本で聴かせるバラードまで幅広い楽曲群をネットで発表する一方で、2010年末にはミニアルバム「ONE」をインディーズで発表。さらに翌年には東京・JCBホール(現・TOKYO DOME CITY HALL)での「ニコニコ大会議Final」や、中国・上海での「舞動漫櫻楽祭~ANIME ROCK CONVENTION~」など国内外でのイベントに招聘される。2014年3月、アニメ「キルラキル」の後期オープニングテーマ「ambiguous」でメジャーデビューすると7月には「魔法科高校の劣等生」後期オープニングテーマ「grilletto」、10月には「ガンダム Gのレコンギスタ」のオープニングテーマ「BLAZING」を立て続けに発表。そして2015年1月、メジャー1stアルバム「Linkage Ring」を、8月にはインディーズ時代の楽曲を集めたベストアルバム「BiRTHiA」をリリースした。