音楽ナタリー PowerPush - GARNiDELiA
現状最強の楽曲と制作環境、2人の矜持 すべてを詰め込むメジャー1stアルバム
「ここでこれ持ってきたか!」というトラックリスト
──その楽曲のラインナップと並べ方、つまりトラックリストなんですけど、やたらなことになってますよね?
メイリア・toku あはははは(笑)。
──PVの中のメイリアさんがバキバキ踊る「PRIDE」のあとにはヌケのいいギターロック「True High」がつながって、このままギターサウンドで押すのかと思いきや、エレクトリックでストレンジなワルツ「Gravity」、最新キラーチューンのダンスロック「BLAZING」、ちょっとノスタルジックな「フタリ座流星群」が続き……。
メイリア まさに「ここでこれ持ってきたか!」ってビックリしてもらえるような意外性がありながらも、歌詞的にはストーリー性があってっていうことを意識した結果なんです。それと曲順についてもやっぱりライブは意識しました。ある意味セットリストなんですよね。序盤「BLAZING」まで攻めまくって、ちょっと飛ばしすぎたってことでMCを挟みつつ「フタリ座流星群」からミディアムテンポの優しい曲を続けて、「Steps」あたりからダンスゾーン。そしてダンスロックの「オオカミ少女」からの後半戦、また盛り上がっちゃうぜ!ということで……(笑)。
──シングル曲の「grilletto」と「ambiguous」を叩き込んで。
メイリア キター!ってなってもらって「ありがとうございました」って引っ込んで。アンコールがかかったらバラードの「LiNKAGE」をしっとりと聴いていただく、みたいな(笑)。
toku 確かにそういうライブをやってる自分たちの姿が見えるんですよね(笑)。
参照する力と解釈する力が生み出すオリジナリティ
──ただそのライブ中盤戦の曲、「フタリ座流星群」以降が単なる優しいミディアムチューンかって言ったら……。
メイリア そこがtokuさんのひねくれてるところなんですよねえ。
──人のせい(笑)。
toku でも僕の責任であることは否めない(笑)。
メイリア 普通のアレンジ、構成の曲が1つもないですよね。
──「Moon Landing」にしてもシンセベースが8分音符でルート音を刻み続けるパンクやニューウェイブみたいなアレンジになってますし。
toku 僕としてはパンクやニューウェイブよりももうちょっとあと。初期のPet Shop Boysやトレヴァー・ホーン(「ラジオスターの悲劇」で知られるThe Bugglesの中心人物にして、Art of Noise、Frankie Goes to Hollywoodらを輩出したイギリスZTT Recordsのオーナー)のイメージなんです。メイリアは優しいミディアムチューンって言ってくれるけど、実は僕自身は「そんなにメロウにしなくてもいいだろう」と思っていたんですよね。
──「優しいミディアムチューン」として書いたはずなのになぜ?
toku なんて言えばいいんだろう? やりたいことをある程度ワガママにやってもメイリアがいれば大丈夫だと思えたんだと思います。トラックの温度感は上がりもしなければ、下がりもしない。ずっと一定なんだけど、だからこそボーカルが引き立つっていうアレンジにしたかったし、そういうトラックを作ればメイリアがちゃんと魅せてくれるだろうと思ってたんですよね。それは「Moon Landing」に限らず、新曲はどれも一緒。メイリアの声が乗るからできることを“あえて”やってみた感じではありますね。
──その“あえて”の思惑の中には、tokuさんのルーツの一端を見せるというものもあります? Pet Shop Boysやトレヴァー・ホーンもそうだし、あと「Steps」の……。
toku あっ「Steps」、僕の推し曲なんですよ。
──そういう趣味性の高い曲だと思ったんです。序盤タメにタメておいて、ハンドクラップを連打するフィルで煽ってから太いシンセベースと跳ねるドラムで一気に踊らせる。でも実はBPMはそんなに速くない。あのアレンジって初期のUnderworldやThe Chemical Brothers的というか。1990年代中盤、それまでテクノやハウスに見向きもしなかったロックファンすら踊らせたダンスミュージックと同一線上にある手つきだよなと思っていて。
toku まさにまさに(笑)。どのアーティストもそうだと思うんですけど「○○っぽいね」って言われるのが一番イヤなことではあって。だからこそ逆に自分が影響を受けた音楽をお見せしつつも、それをいかに解釈するか、いかにヒネってみせるか。その解釈の仕方でオリジナリティを浮かび上がらせようとは考えていました。
メジャーだから辿り着いたレコーディング環境
──ところが以前のインタビューでもおっしゃっていた通り、そのアレンジや作曲に時間がかかることは……。
toku ないんですけど、今回3分の1くらい自分でTD(トラックダウン)をやってるので……。
メイリア TDには時間かけてましたよね。
toku 楽器もボーカルも当然いくつもテイクを重ねてるので「これがいいかな?」「いや1コ前のテイクがよかったかな?」っていうのを延々と繰り返し(笑)。あと今回のアルバムはハイレゾ配信もするんですけど、プライベートスタジオの機材だとスペック的にハイレゾ音源の録音と編集に追いつけねえなあって頭を悩ませたり。スタジオワークには時間がかかりましたね。
──その録音環境、編集環境って以前と変えてます? 素人ながらに以前の作品とはちょっと音場が違う印象を受けたんですけど。
toku 今まではリファレンスモニターにテンモニ(ヤマハ「NS-10M Studio」)を置いてみたり、プライベートスタジオもできる限りほかのスタジオと同じ環境にしていたんですけど、最近は自己満のセットに変えていて(笑)。メジャーデビューが決まった頃に防音設備のある物件に引っ越したから、いろいろなセッティングを試せるようになったんですよ。で、自己満のセッティングができあがっちゃったんですけど(笑)、そのセットでミックスしてみて、もしもまったくダメでしたってなっても、やめればいいだけ。メジャーのスタジオを使えるんだからそこでもう1回ミックスし直せばいいやって考えられるようになったし、それこそギュッとしたスケジュールの話じゃないけど、デビューから1年足らずでいろんな曲を作らせてもらっているので。そういう試行錯誤の末にリスニングに耐える、しかもプライベートスタジオならではの音ができあがりつつあるのかもしれないですね。
メイリア 音、よくなってますよね? 特にダンスナンバーって低音ばっかり強調されちゃったりしがちなんだけど、どの音もちゃんと粒が立ってるし。
toku ありがとうございます!
メイリア あはははは(笑)。お礼言われた!
toku でも本当にそうで。これまでシングルには必ず1曲ダンスチューンを入れてたんですけど、その曲のマスタリングは全部ソニー・ミュージックスタジオの酒井(秀和)さんにお願いしていて。マスタリングのたびに「ここはこうしたらいいと思うよ」って教えていただいていたから成長できたんでしょうね。
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- メジャー1stアルバム「Linkage Ring」2015年1月21日発売 / DefSTAR Records
- 初回限定盤A[CD+Blu-ray] 3980円 / DFCL-2110~1
- 初回限定盤B [CD+DVD] 3580円 / DFCL-2112~3
- 通常盤 [CD] 3100円 / DFCL-2114
CD収録曲
- PRIDE
- True High
- Gravity
- BLAZING
- フタリ座流星群
- Moon Landing
- march
- Steps
- Lamb.
- オオカミ少女
- grilletto
- ambiguous
- LiNKAGE
初回限定盤Blu-ray、DVD収録内容
- 「ambiguous」ミュージックビデオ
- 「grilletto」ミュージックビデオ
- 「BLAZING」ミュージックビデオ
ワンマンライブ「stellacage」ライブ映像
- Love or Game
- Lamb.
- grilletto
GARNiDELiA(ガルニデリア)
アニソンシンガーやモデルとしても活躍するメイリア(Vo)と、アンジェラ・アキ、LiSAらのアレンジャー、ボカロP「とく」などの横顔を持つtoku(Key, Compose)から成るユニット。2010年に別名でオリジナル曲「ARiA」を動画共有サイトに投稿し、同年アニメ「フリージング」オープニングテーマ「COLOR」を発表したのと前後して、ユニット結成を宣言する。以来ハードロック由来のヌケのいいギターロックから、ダンスミュージック、ピアノ1本で聴かせるバラードまで幅広い楽曲群をネットで発表する一方で、2010年末にはミニアルバム「ONE」をインディーズで発表。さらに翌年には東京・JCBホール(現・TOKYO DOME CITY HALL)での「ニコニコ大会議Final」や、中国・上海での「舞動漫櫻楽祭~ANIME ROCK CONVENTION~」など国内外でのイベントに招聘される。2014年3月、アニメ「キルラキル」の後期オープニングテーマ「ambiguous」でメジャーデビューすると7月には「魔法科高校の劣等生」後期オープニングテーマ「grilletto」、10月には「ガンダム Gのレコンギスタ」のオープニングテーマ「BLAZING」を立て続けに発表。そして2015年1月、メジャー1stアルバム「Linkage Ring」をリリースした。