狭い入り口の先を自分の音で拡げる

──ただメイリアさんがおっしゃる通り「いつも通りのGARNiDELiA」を目指したのは「grilletto」が「魔法科高校の劣等生」のオープニングテーマだったからなんですよね？

toku　そうですね。デモを渡したときに「もうちょっとデジタル感強めで」っていうオーダーがありましたから。ただ、そんなに「魔法科高校の劣等生」に寄せようって意識していたかというとそうでもない気もしてるんですけどね。

メイリア　でもtokuさんはもともとアレンジャーだから、たぶん普通のアーティストさんよりも作家的というか職人的な意識が働いているんだと思いますよ。私が見ている限りでは「いや、オレはこういう感じでやりたいんだ！」みたいなタイプじゃなくて、いろいろオーダーをもらって「あっ、わかりましたー」って曲を作るほうが楽しいタイプのような気がする。

toku　そうかも（笑）。確かに「好きなようにやってください」って言われるよりは「こういう感じでお願いします」って言われたほうがコラボ感があって好きかもしれません。アニメの世界観っていうある意味狭い入り口から曲作りをスタートさせながらも、その世界を自分の音で拡げていく。そしてアニメのオープニングであり、しかもGARNiDELiAの曲でもあるっていう音楽を目指すほうが楽しいですね。メイリアの言葉じゃないけど、せっかくタイアップのお話をいただいた以上、職人気質みたいなものも働いている気はしますし。「立派なアニメの看板を作ってやるぞ」って。そうやって作品の看板作りに力を注いでも匿名性の高い音になることはない。僕が作っている以上、結局GARNiDELiAの音になると思っているから「こういう感じでやりたいんだ！」みたいなことも、「『魔法科～』に寄せなきゃ」っていうこともあんまり強く意識しないのかもしれない。

まだまだ引き出しの中身はありますから

──「結局GARNiDELiAの音になる」とはいうものの、前回のインタビューで「ガルニデサウンドってどういうものですか？」って聞いたら、お2人とも「わからない！」って即答してましたよね。

メイリア・toku　あはははは（笑）。

メイリア　ただ「魔法科高校の劣等生」の2クール目の放送が始まって、初めて私たちの曲が流れたとき、ちょっとネットで感想をチェックしてみたんですけど「『なんかGARNiDELiAっぽいなー』と思ってクレジットを確認したら、やっぱりGARNiDELiAだった」っていうコメントをけっこう見かけたんですよ。私たち自身はガルニデサウンドの正体をうまく言葉にできなかったりはするんだけど……。

toku　なんか認知されてはいる（笑）。

メイリア　ねっ。「grilletto」がメジャー2作目なのにその認知されてる感じ、「っぽいな」って思ってもらえる感じってホントにすごいことだなって思ってます。

──確かに。「ambiguous」を「キルラキル」のオープニングで90秒間しか聴いたことがない人も大勢いるはずなのに、そしてなんとなればご本人たちですらガルニデサウンドの正体を言語化できてないのに（笑）、GARNiDELiAが理解されている。

メイリア　たぶんtokuさんの特徴的なサウンドの影響かな、とは思うんですけどね。

toku　1人で活動していらっしゃるアニソンシンガーの方と違って、GARNiDELiAはボーカリストと、コンポーザー・アレンジャーのユニットですから。どの曲もアレンジャーが同じなので意思やサウンドのテイストを一貫させやすいんですよ。ただ、まだまだ引き出しの中身はありますから（笑）。アルバムを楽しみにしていてください。

──了解です（笑）。

なんで2人で詞を書いたんだろう？

──一方、詞はtokuさんプロデュースではなく、メイリアさんとの共作になっています。

メイリア　なんで2人で書いたんだろうね？（笑）

──いや、そこを伺いたかったんですけど（笑）。インディーズ時代の楽曲のクレジットを見るに、たいていどちらか1人が書いてるのに今回は2人なんだなって思ったので。

メイリア　でも本当に「なんとなく」なんですよ。

toku　不思議な作り方をしたもんね。

メイリア　私が最初に大まかな歌詞を書いて、それを渡してtokuさんに1コーラス目を作ってもらって、私が2コーラス目を作るという（笑）。

──複数MCがいるヒップホップグループなんかの場合、自分が歌うヴァースは自分で書いてますけど……。

メイリア　なんとなくそういう作り方をしちゃいました。私しか歌わないのに（笑）。

──でも1コーラス目も2コーラス目もちゃんとワントーンにまとめられている。ちょっとフェミニンな言葉で理不尽さに立ち向かう人の姿を歌ってますよね。

メイリア　「魔法科～」に対する愛をちゃんと込めようっていう思いは2人とも持っているし、お互いちゃんと作品を研究していますから。あと私がどういう詞を書く人間なのかっていうことはtokuさんにもわかってもらえているから、1コーラス目と2コーラス目がちゃんと同じトーンになるんだと思います。

toku　うん。「魔法科～」の主人公の（司波）達也が理不尽な状況に追い込まれていきながらも才能や努力で乗り越えようとしている感じと、いろいろ理不尽なことも少なくない音楽業界でがんばっていこうとしている僕らの姿を重ね合わせ……。

──あはははは（笑）。

メイリア　でもまさにそういう詞なんですよ。達也に関して言うなら、学校の成績を見ればアニメのタイトル通り“劣等生”で……。

──実家に帰れば、“いらない子”扱いされ（笑）。

メイリア　でも学校の生徒会メンバーや風紀委員メンバーからはものすごく高く能力を評価されているみたいな（笑）。だからどんなに理不尽な目に遭っていても誰かに出会ったり、自分自身の居場所をちょっと変えたりすることで状況って変えられると思ってるんです。