元気な曲ほど泣けるんです
──どちらのライブもすごい熱量のパフォーマンスが魅力だと思うんですが、ポップな曲でもウルッと来るときがあるんですよね。
藤咲 なんかわかります。確かにチル系の曲とかバラードとかより元気な曲ほど泣けるっていうのは私も感じる部分です。激しいことやってる姿を観て楽しい! けど泣く!っていう(笑)。
ドクソン 日常に疲れてるとかもあると思います!(笑)
──(笑)。基本的に後方の席からお客さんのいるフロア越しにステージを観る感じなので、その一体感にも感動できるのかなと。
アイナスター 私は「プリンセスでんぱパワー!シャインオン!」(2021年)のライブ映像でまさに涙が止まらなくなっちゃいました。電車の中で(笑)。笑顔を観て涙が出る感じ。
ドクソン ライブで幸せな涙を流せる、それがでんぱ組.incだ!
鹿目 ありがとうございます(笑)。その裏側にはメンバーの歩んできたそれぞれの道があって、グループとしての歴史もあって、いろんな思いがステージに出ると思っていて。でんぱ組.incの楽曲のいいところって、そういった内面的な部分をストレートに出すんじゃなくて、ときにコミカルに、ときに明るく伝えるからこそ“ちょっとした尊さ”があるように感じます。
ドクソン お客さんだってそれぞれがんばって日々を過ごしてますからね。お客さんもでんぱ組.incさんの曲を聴いて、自分と重ね合わせているんでしょうね。
藤咲 本当にそう。そういう人のために歌ってるというのも正直なところありますし。あとは歌詞が自分の体験と重なるものも多いんですよね。自分がその歌に感情移入できてるからこそ、観てくれる人の胸に響くのかな。
鹿目 私はでんぱ組.incを知ったのは「W.W.D」(2013年)でした。当時のメンバーは引きこもり、いじめられっ子とか、「自分のことがもともと嫌いなのかな?」という子が多かった。でも自分を変えたいという強い気持ちからアイドルになって、みんなに勇気を与える存在になった。私も当時引きこもり気味で学校にあまり行けていなかったんですけど、「私も変われるのかな」と勇気をもらえて、好きになったんです。その当時、自分がでんぱ組.incに救われたみたいに、私も似たような思いをしている人たちを救いたいと思っています。本当にアイドルに救われることってあるんですよ。
──ギャンパレも“みんなの遊び場”を用意してくれるから、がんばって日常を過ごしている人たちに元気を与える存在であるというのは、でんぱ組.incに通ずる部分ですね。
ドクソン そんなふうに感じてもらえたらありがたいです! ギャンパレのライブは「元気を与えたい」という気持ちとはちょっと違って、「遊び人と一緒に楽しい空間を作りたい」という感覚が強いですね。私には無理ですよ、「元気を人に与える」なんて! だからこそ、メンバーとファンの力を合わせて“みんなの遊び場”を作るんです。
変化を恐れず進化してきた2組
鹿目 ちなみに新メンバー加入とか体制変更のたびにファンの方からマイナスなことを言われることはないですか?
ユメノユア 毎回、賛否両論はもちろんあります。でも、逆に活動期間が長いからこそ、変わっていくことでよくなることを理解してくれている方々の応援があってここまで活動することができました。私たちはファンにエネルギーを与えてもらって、その力を使ってより面白い活動をしてお返ししていくという。でんぱ組.incさんはどうなんですか?
鹿目 毎回、強めのことを言われます……。私とねもちゃんが入った2017年が特にすごかった。それまでの6人組のイメージが強かったし、(最上)もがちゃんの卒業後ということもあって、もう殺されるかと! ファンの方たちからしたらグループの歴史が長かったからこそ、変化が怖かったんだと思うんですよね。
ドクソン なるほど。ギャンパレは入れ替わりがあったから、新メンバーが入って批判されることはなかったかな。とは言っても、否定する前に「そんなこと言わんで、まずは観に来たらいいやん」って思います。演者としては観て納得させたい部分もありますよね。
高咲 確かにライブを観てもらって、古くからのお客さんの心境が変化していった感じです。でんぱ組.incでのお披露目ライブは家族も観てくれてたんですけど、「やっぱり観た人と観てない人じゃ、グループへの理解度が違う」って。でんぱ組.incのライブは人の気持ちを動かすくらい大きなパワーがあると思います。お客さんはメンバーのことも好きでいてくれるし、もちろんグループならではの曲も絶対に好きだと思うんです。メンバーが変わっても昔からある曲が歌い継がれて、そしてまた新しい好きな曲が増えていく。それを楽しんでもらえたらいいなって。
鹿目 そうだね。加入ライブ以降、ライブを観て好きになってくれた人も本当にいた。でもやっぱり叩かれることが多くて、ねもちゃんと私は1、2年くらい支え合ってがんばってました。2021年に5人(愛川こずえ、天沢璃人、小鳩りあ、空野青空、高咲陽菜)が新メンバーとして加入してくれたとき、「ねもぺろが叩かれながらもがんばってやってこられた実績があるから、こうやって新メンバーを受け入れられる体制にグループもファンもなれた」みたいなことを先輩メンバーが言ってくれて。批判を受けたけど、がんばってきてよかったなって。
ドクソン カッコいいです。
──ギャンパレは、長年在籍していたグループ発起人のカミヤサキさんがいなくなって3年くらいが経ちます。カミヤさんの脱退は、ギャンパレにとっての大きなターニングポイントでしたよね。そのあとも話題をいろいろ世間に提供しつつ、メンバーがどんどん増えて。
高咲 13人いるとパフォーマンスの幅がいろいろ広がりそうというか、既存の振付を大きく変えないといけないとか大変そうです。
ユメノユア でも活動の幅は広がりました。メンバーみんなで日々ステージングを考えているので。ギャンパレはねもぺろちゃんみたいな固定ユニットはないんですけど、最近“ユニット曲”の概念ができまして。ステージには13人全員が立つんですけど、歌唱メンバーを絞ってパフォーマンスするんです。
ドクソン 歌唱メンバー以外はダンスに専念することもできれば、いろんな役もできます。“岩役”から“歯ブラシ役”までなんでもできます。
藤咲 あ! 歯ブラシの歌(2020年発表の「FiX YOUR TEETH」)大好き! 「歯、磨こ!」ってなるから、いい戦略(笑)。
ドクソン ピンキーさん似合いそう!
アイナスター メンバーがたくさんいるから、歯ブラシの毛束を作ることもできるんです。
藤咲 すごい! 数の暴力だ!(笑)
デビューしたら毎日が戦いだから
鹿目 素朴な疑問なんですけど、合宿(「WACK合同オーディション」)ってやっぱりしんどいですか?
アイナスター 合宿はパフォーマンス審査以外にごはんを時間内に食べ切るとかも審査対象になります。合宿中は毎朝6時過ぎにマラソンがあって、1日3回の食事にデスソースが入っていることがあるし。ごはんを食べたら次の審査に向けて練習、また練習という感じで、夜に順位が発表されるんですけど、審査でチームになっていた人が脱落することもあって、過酷な内容ではあります。私はもともとWAggという育成グループにいて、なかなか昇格できずにいたんですけど、3年かけてやっと去年合格できました。だからギャンパレは先輩グループという感じでしたね。
ドクソン 合宿所は食事もすべて用意していただいているものだから、「ごはんは残さず食べましょう」という。そういう態度というか、物事との向き合い方も見られるんですよね。
ユメノユア 合宿で食べられるごはんは、根本的には先輩たちが活動をしてお客さんからいただいたお金だから、大事にしないといけないという考えですね。
鹿目 確かにどれも大切ですね。でも、この令和の時代になかなかない体験かもですね。毎日順位を付けられたり、脱落する人がいたりして、心がやられるんじゃないですか?
アイナスター もう1日目の途中ぐらいで心はぶっ壊れるんです(笑)。逆に言えばいかに自分のリミッターを解除して、日々限界を突破できるか。1週間という限られた時間でどれだけ自分の可能性を見せられるかが合宿で問われる部分なのかな。「合宿で合格するのがゴールじゃない」というのはよく渡辺(淳之介 / WACK代表)さんが言っていることなんです。やっぱり、その1週間を乗り越えた先が本番であり、もっとつらいことだってあるよっていうことで。
鹿目 興味深いです! 合宿前と合宿後で変わったことは?
アイナスター 研修生は昇格、候補生は合格を懸けて合宿に臨むんですけど、結局、合宿の1カ月前から走り込みをするとかじゃダメなんですよ。前回の合宿でダメだったら、次の合宿で合格するために1年かけていろいろ考えて、行動して、積み重ねたものをぶつけるというか。どれだけ取りつくろっても、ダメなところも含めて本心が見えちゃう場所だから。逆にここを乗り越えると、怖いものがなくなります。虚栄心がなくなって、吹っ切れるというか。
鹿目 それだけ過酷なら、確かに覚悟が必要ですよね。自分をうまく見せようとするプライドが成長の妨げになるのはわかる。
高咲 自分が加入してすぐに振り入れを5日間ぐらいでやったんですけど、今聞いた合宿のような感じではないから、もっとやれたかもなと思いました。
ドクソン でんぱ組.incさんバージョンの合宿も観てみたい!
ユメノユア ピンキーさん、すごい嫌そうな顔してる!(笑)
藤咲 (しかめっ面を見せる)
鹿目 でんぱ組.incも体育会系ですよ。私、でんぱ組.incに入ってめっちゃ痩せましたから(笑)。
高咲 それこそピンキーがでんぱ組.inc一番の体育会系ですよ。
藤咲 日々のライブを体力測定だと思っている節もあるので。その日の体力、コンディションが悪かったらそれまで自分が積み上げてきたものがなしになると思っているので、次のライブまでに体力作りのために走って、筋トレをしてます。12年間の活動で、ライブをした翌朝から撮影があって夜にまたライブがあるとか、かなり詰め詰めのスケジュールをこなしていくと、だんだん毎日何をしているかわからなくなったり、「私は今どこにいるの?」みたいになることもあって。コロナ禍以前は特にワールドワイドに活動していたこともあってなおさらですね。だからそういうときに泣き言なんて言っていられない。それこそ加入したときの初ライブなんて2曲でヒーヒー言ってましたし、毎回「そんなんじゃダメだよ」と怒られてました。
ユメノユア そういう時期、ありますよね。わかります。甘えがあっちゃいけないというか。
藤咲 当時まだ学生だったというのもありますね。けっこうしごかれた経験があったからこそ、「毎回ライブはいいコンディションでやりたい」という。確かにそのWACKさんの合宿で言われている「この先がもっとつらい」はその通りだなって。
ユメノユア WACKの合宿はニコニコ生放送で生中継されていて、すべての行動が世に出るので過酷に思われがちなんですけど、ピンキーさんが言うように、この世界に入ると「毎日が勝負」だし、毎日順位を付けられるようなものだし、ライブも1回1回が勝負。気を抜いたらお客さんが来てくれなくなる。そういうマインドをWACKに入る前の段階で教えてくれるから、現役メンバーが候補生の子たちを見て学ぶところも多いですね。感化されるというか、「自分もがんばらなきゃ」って気持ちになります。
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個々のマインドが集まってグループのマインドに