円熟したMasatoshi “SHO” Onoのボーカル
──「IN WATER'S GAZE」を含め、本作ではボーカルの気持ちよさも際立っています。作品ごとに歌の質感も少しずつ変化している印象を受けるのですがいかがでしょう。
Ono 声に対する印象も年齢とともにどうしたって変わってきますので、自分なりに声の出し方とか歌い方を工夫して、なんとか印象が変わらないようにしたいなと思っていて。
SYU 歌録りのときにボーカルトラックを聴くと、確かに声の出し方が以前とは変わっているんですよ。言うたら優しくて色気があって、よりエモーショナルになっている。丁寧に出している感じなんですけど、それがオケに乗っても全然負けてなくて、バーンと前に出てくるんです。毎回そのコントロールの仕方に驚かされます。
YUHKI 円熟味ってやつですかね。
Ono どうでしょうね。20代の頃は「50過ぎても声出てるのかな?」と思ってましたけど、20代の頃に想像していたよりは出るんですよ。
SYU ロングトーンが以前よりもますます伸びてませんか? 以前のライブ映像を見返したときと比べて、今はロングトーンの伸びがちゃうんですよ。
Ono 「ああしたい、こうしたい。これもして、合わせてこうしたい」とか欲張ってもだいたいはうまくいかない。だったら、シンプルな方法を選んでトライしてみたほうがうまくいくんです。その取捨選択がプラスに作用しているんですかね。
YUHKI それはすごく理解できます。多くを求めすぎると、できなくなるんですよね。若い頃だったらそれも勢いでどうにかできたかもしれないけど、年齢とともにどうしても無理が効かなくなる。だけど、これに特化してやろうとしたほうが歌も楽器も伝わりやすいですよね。そういうところが“ガルネリシニア”としては変わってきたのかな(笑)。
Ono ガルネリシニア(笑)。よりシンプルでストレートになってきたのは、そういう影響も大きいのかもしれないですね。
SYU 視点を変えれば、それは音楽的という言い方もできると思うんですよ。できることをやるっていうのが本来の姿だし。GALNERYUSは以前がめちゃくちゃすぎただけ(笑)。
「CRYING FOR YOU」は亡き母に捧げるバラード
──歌詞に関してはいかがでしょう。メッセージは時代とともに変化している部分もありますし、アルバムごとのコンセプトに沿って書いているところもあるかと思いますが、今作においては20周年というところで意識したことはありますか?
SYU 歌詞に関してはないかな。今回の僕の曲は、メロディがどういうメッセージを求めているかということに焦点を当てて書いたつもりです。YUHKIさんはYUHKIさんで、個人的に強く思うことやそのときに考えていることを詰め込んだと思うんですけど。
YUHKI 「IN WATER'S GAZE」は虚像の社会に対する疑問であるとか、その中で自分たちはこれからどう生きていくのかということを抽象的に書いていて。「CRYING FOR YOU」に関しては……Onoさんと僕はたまたま近い時期に母親を亡くしまして。僕は親に対する感謝と懺悔の気持ちを書いて、OnoさんはOnoさんの気持ちで書いてくれたので、まさしく母に捧げるバラードですね。
Ono 悲しみから生まれた曲ですが、最後は前向きな歌詞で終わるんですよね。
YUHKI わりとパーソナルな内容ではありますけど、おそらく聴いてくれる皆さんにも当てはまる部分も多いと思うので、そういうことを2人で書かせてもらいました。
──Onoさんも「LOST IN THE DARKNESS」や「FINALLY, IT COMES!」「VOICE IN SADNESS」で、歌詞をお一人で書かれています。
Ono 僕はいつも、SYUくんやYUHKIさんから曲をもらって「こういう感じで、こういうテーマで書いてほしい」と言われて、それに沿って書いているんですけど、自分がそのとき思っていることだったり過去の思い出からテーマに合った感情を引っ張り出していて。「FINALLY, IT COMES!」だったら希望、「VOICE IN SADNESS」では寂しさだったりを表現しつつ、「LOST IN THE DARKNESS」では「あいつは許せない!」という怒りをテーマに自分らしく書きました。
YUHKI 「LOST IN THE DARKNESS」は先日ライブで初めて披露して、コーラスもやらせてもらったんです。あれはいいですね、怒りに任せて叫べますから(笑)。
Ono 相変わらず英語の歌詞を書くときに翻訳サイトに手助けしてもらっているんです。でも翻訳サイトによっては精度がよくないこともあるから、「本当に合ってるだろうか?」と不安を感じると今度はAIちゃんに聞いてみるんですよ。すると「英語的には合っていますが、『Go to hell』は非常に強い言葉なので使いどころに注意してください」と言われました(笑)。
最新作が最高傑作
──20周年という節目に、未来を見据えた充実のアルバムが誕生しましたね。以前、SYUさんにインタビューした際、「過去のアルバムが一番よかったね、じゃなくて、最新作が一番いいよねと言ってもらいたい」と話していましたが、今作は間違いなくそういうアルバムだと思います。
SYU 本当にそれは毎回意識しながら作っていますし、今もその思いは変わってなくて。YUHKIさんもそうだと思うけど、メロディを作ることに壁を感じたことが本当にないんですよ。
YUHKI うん、ないね。
Ono 素晴らしいですね。
SYU 音楽のみならずいろんな場面から吸収するものがあって、そこでふと降りてきたアイデアをiPhoneに吹き込んで常に溜め込んでいて、そういうことの繰り返しの過程で「これはきた!」みたいなメロディが見つかるタイミングが絶対にあるんです。それさえ見つけられたら「これでここから1年、生きていけるわ」って思えるし、そこからアルバムに向かっていける。絶対にいいと思ったものしか作らへんから、その時点で自信がある作品が必ずできる。だから毎回「最高です」と言えるんです。
YUHKI 僕もメロディがGALNERYUSの楽曲において一番大事だと思っているので、作曲者としてはそこでいいものさえできればもう勝ちなんですよ。肝心なメロディが二の次だったら、いくらアレンジで補強したって土台がしっかりしていないといい曲にはならないので。
SYU YUHKIさんの曲やったらピアノで弾き語りしただけでも成立させることができるし、僕はアコギ1本でもすごくいい曲だって言えるような曲を書いてるつもりだから、そこは絶対に揺るがないと思う。
YUHKI 聴き手としての好き嫌いはもちろんあるとは思うんですけど、自分たちが作った曲に対して自信があればいいアルバムだと胸を張って言える。それが今回もできているって確信を持てれば、それは僕らにとってすごく幸せなことなわけです。
Ono なので、このアルバムも自信を持って送り出せると思います。
公演情報
GALNERYUS「"THE RISING OF THE NEW LEGACY Pt. II" TOUR 2024」
- 2024年10月11日(金)神奈川県 新横浜 NEW SIDE BEACH!!
- 2024年10月13日(日)千葉県 KASHIWA PALOOZA
- 2024年10月18日(金)福岡県 DRUM Be-1
- 2024年10月20日(日)大阪府 Yogibo META VALLEY
- 2024年10月26日(土)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
- 2024年10月27日(日)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
- 2024年11月3日(日・祝)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
- 2024年11月4日(月・振休)埼玉県 HEAVEN'S ROCK Kumagaya VJ-1
- 2024年11月8日(金)宮城県 darwin
- 2024年11月10日(日)北海道 cube garden
- 2024年11月30日(土)愛知県 ElectricLadyLand
- 2024年12月5日(木)兵庫県 チキンジョージ
- 2024年12月7日(土)広島県 広島セカンド・クラッチ
- 2024年12月22日(日)東京都 立川ステージガーデン
プロフィール
GALNERYUS(ガルネリウス)
SYU(G)を中心に結成されたヘヴィメタルバンド。幾度かのメンバーチェンジを経て、現在はSYU、Masatoshi “SHO” Ono(Vo)、TAKA(B)、YUHKI(Key)、LEA(Dr)の5名で活動中。2003年に1stアルバム「THE FLAG OF PUNISHMENT」でメジャーデビューを果たす。テレビアニメ「HUNTER×HUNTER」「RAINBOW-二舎六房の七人-」「曇天に笑う」のエンディングテーマを手がけるなどヘヴィメタルバンドのレンジを広げる活動を展開しており、ボーカルの小野“SHO”正利はソロ名義の小野正利としても「HUNTER×HUNTER」の主題歌を担当した。デビュー20周年を迎えた2023年3月にアルバム「BETWEEN DREAD AND VALOR」をリリースし、全国ツアー「"STRUGGLING BETWEEN DREAD AND VALOR" TOUR 2023」を開催。2024年9月にはメジャーデビュー20周年アルバム「THE STARS WILL LIGHT THE WAY」を発表した。10月からは東京・立川ステージガーデン公演を含む全国ツアー「"THE RISING OF THE NEW LEGACY Pt. II" TOUR 2024」を開催する。