アルバムタイトルに込めたメッセージ
──アルバムタイトルも含め、作品全体からポジティブな空気が伝わってきます。
SYU タイトルは、アルバムが完成したあとに決まったんです。終盤に配置されている「I BELIEVE」、これがアルバムの中で大事な曲という印象があって、歌詞の一節「明日はきっと 暖かな光が 傷ついた希望 照らすだろう」からインスパイアされてアルバムタイトルにしました。でも、最初は「THE STARS WILL LIGHT OUR WAY」という案もあったんですよ。「星たちが僕たちの進むべき道を照らしてくれるだろう」というイメージで付けたんですけど、ちょっと自己主張が激しい気もしたので、「OUR」を「THE」に変えて。コロナ禍を経て、「これから自分たちやみんなが健康に生きていけるように」とか「自分たちだけじゃなくてみんなの道も照らそうぜ」という気持ちを込めたものにしました。
──ドラゴンをモチーフにしたアートワークも非常にGALNERYUSらしいですよね。
SYU 20周年を記念するアルバムなので、ドラゴンは外せないなと。OnoさんとTAKAさんが加入して最初に作った「RESURRECTION」(2010年)もジャケットがドラゴンだったので、今回もそこは踏襲したかった。ジャケットでドラゴンを使い始めてからGALNERYUSの音楽的スタイルが確立された感覚がありますし、YAMA-B(※初代ボーカリスト。2008年脱退)がいた時代は音楽的にいろいろ冒険を繰り返していましたけど、「RESURRECTION」以降は音楽性を一切ぶらすことなく続けられているので。
変化してきた制作方法
──OnoさんやTAKAさんが初参加した「RESURRECTION」や、その後の「PHOENIX RISING」「ANGEL OF SALVATION」で現在のGALNERYUSサウンドが完成しましたが、今作ではそれ以降の経験や習得した技術を用いて原点回帰したような、そういう印象もあります。
SYU きっとそれは、各メンバーができることを深く理解したからじゃないですかね。このバンドって、ずっと無茶してきたんですよ(笑)。「ULTIMATE SACRIFICE」みたいなコンセプトアルバムはもちろん、「PHOENIX RISING」や「ANGEL OF SALVATION」でも、とりあえず難しいことに挑戦しながら一度レコーディングしてあとでライブに向けて練習しよう、という流れで制作を進めていた。それに対して、今回は頭からケツまでライブで弾けることを大前提にしているんです。YUHKIさんやったらYUHKIさん、僕やったら僕と、各メンバーの「こいつだったら、これぐらいの弾き方するんやろうな」ということを想定して制作しています。あと、最初からライブを想定しているところがより強く出ているかな。それはさっきも言ったように、ツアーの合間に曲作りをしたことも大きかったと思います。
YUHKI それでもチャレンジングなところは多々ありますよ(笑)。だけど、これは今までのGALNERYUSのスタンスでもあるんですけど、サラっとできるようなことってやっぱり自分たちも面白くないんです。それがまとまっていて、いい感じであれば、シンプルでも僕らはいいと思うんですけど、やっぱりフックがないと達成感がない。だから自然とチャレンジ精神が芽生えて、結局は自分自身の首を絞めることになるんですけど。
Ono YUHKIさん、たまにボソッと「いつからこんなことになっちゃったんだろう……」と言ってましたもんね(笑)。
YUHKI はい(笑)。でも、今作に関してはそういう部分は今までよりも少ないかな。むしろそのぶん、歌やプレイの勢いにスポットを当てられたかなと思っていますけど。
テクニックよりもエモーショナル
──楽器隊に関しては、特にギターやキーボードのインタープレイがライブ感を強めていますよね。
YUHKI SYUもライブ感が強いプレイが多かったから、そういう部分は確かに特徴的かなと思います。
SYU インプロ(ビゼーション)率がちょっと上がったのかな。
YUHKI ソロに関してはね。以前は構築美を追求する演奏スタイルでしたけど、これからはインプロ方面も追求していきたいと今回の制作で改めて思いました。もちろん構築美のあるサウンドは大好きなんですけど、今は歌も含めて勢いやライブ感をアルバムに封じ込めたかった。
Ono 僕がGALNERYUSに入ったばっかりの頃、取材でよく「GALNERYUSはすごくテクニカルなんだけど、決してその技術をひけらかしているわけじゃなくて、曲に合わせて弾いたらそうなった」と言っていたんですけど、それを今の僕たちらしくやるとこうなるのかな。いろいろ極まってきているんだと思います。これは主観でしかないですけども、ジャンルを問わずいろんなボーカリストの歌を聴きながら、たまに「わかったわかった。そんなにテクニックをひけらかさなくてもいいよ」と感じることがあるんです。「私うまいでしょ」「俺うまいでしょ」みたいな。GALNERYUSは僕が加入する前から、そういう主張をまったく感じなかった。本当に自然なんですよね。それがさっきも言ったように、年齢とともにだんだん練れてきた。やれることがどんどん増えていって、その結果僕は「ちょっと待ってください!」と必死に追いついている感覚です(笑)。
YUHKI 計算高く作ったアルバムもありますけど、今はテクニックよりもエモーショナルに、より感覚的に作るようになったのかもしれない。Onoさんなんてその最たるものだと思うけど、意識しなくてもそういうところが自分たちの中で重視されるようになったのは面白いですよね。
SYU それこそ、YUHKIさんが書いた「CRYING FOR YOU」のラストでOnoさんのフェイクが出てくるんですけど、あれなんてまさにアドリブですからね。本人はそういうのは苦手やって言うんですけど、いざやったら全然いい感じになって。
YUHKI 最後の大きなコーラスの掛け合いでOnoさんがフェイクする部分があるんですけど、そこは本当にナチュラルで。スコーンっと抜けていく感じが気持ちいいですから。
Ono 今までGALNERYUSで、あそこまで「自由に歌ってください」って言われたことなかったからね。
SYU そうですね。普段はフレーズが決まっちゃってるところが多いですし。
YUHKI そう考えると、決め込まない部分がだんだん増えてきてるよね。そこは細かく言わなくても伝わる、みんなが理解してくれているという信頼感の表れですし。バンドとして、今はすごくいい状態なのかなと。
SYU それこそ、LEAにも助けられているところも多いしね。
YUHKI まあ一番若手で無理が言えるからね(笑)。それに、彼ならできると信用しているからこそ僕らは要求するわけですから。
アルバムには必ず1曲はキラーチューンを
──以前SYUさんにお話を伺ったときに「必ず1曲はキラーチューンがないと、アルバムとしてはダメだ」とおっしゃっていましたが、今回もリード曲の「THE REASON WE FIGHT」を筆頭に、先ほど話題に上がった「I BELIEVE」などキラーチューンが豊富で。さらに、今作はYUHKIさん作曲の「IN WATER'S GAZE」や「CRYING FOR YOU」もアルバムの中でいいフックになっています。
SYU YUHKIさんは僕のような曲を作れないと言ってくれるんですけど、逆に僕はYUHKIさんみたいな曲が作れない。「IN WATER'S GAZE」は僕の中でも大のお気に入りだし、自分が書いたって言いたいぐらいですから(笑)。
YUHKI 言っていいよ。じゃあ「THE REASON WE FIGHT」は僕が書いたって言うから(笑)。
──「IN WATER'S GAZE」はイントロを聴いただけでは、先の展開がまったく読めないくらい展開が激しいですものね。
SYU YUHKIさんの構築美がここで大炸裂していて、20年の集大成と言っても過言じゃない仕上がりになりましたね。
YUHKI やっぱりSYUが常にいい曲を作ってくるから、僕も毎回キラーチューンを必ず1曲は作りたくなるんです。今回は「2曲作ってください」というオーダーだったんですけど、それだったら自分的キラーチューンを用意して、もう1つはSYUが作らなそうな曲、アルバムに幅を持たせられて、なおかつ浮かない曲にチャレンジしようと。自分の中では3拍子か10拍子で構成されていて、なおかつスピードがあってライブでお客さんがノれることは絶対に外せなかった。自己満足で変な曲を作ってもしょうがないので。結果的に長い曲にはなってしまいましたけど、自分がお客さんとともに楽しめる曲という意味では間違いない1曲が作れたと思います。
SYU 基本的には3拍子だけどメロスピ曲ではあって。そんな中で、アンサンブルセクションでのキメの休符が本当に気持ちいい。ああいうアレンジは今回僕が書いた曲の中にはないので、ちょうどいい感じにアルバムを緻密にしてくれているなと思います。
YUHKI じゃあ休符が聴きどころってことですね(笑)。
SYU あとはリフですよね。お客さんもノりやすいと思うし。
YUHKI そこも意識的で。Onoさんが煽りやすいようにとか、そういう画を思い浮かべながら作ってます。
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円熟したMasatoshi “SHO” Onoのボーカル