Galileo Galilei「MANSTER」「MANTRAL」インタビュー|計28曲の大作を生み出した4人の蜜月 (2/3)

Galileo Galileiとファンにとっての懐かしさ

──ここからはアルバム2作の内容について詳しく聞かせてください。「MANSTER」は“人間の外面、他者から見たときの性質”、「MANTRAL」は“ニュートラルなときの人間性”がテーマということですが、曲の振り分けはスムーズでした?

雄貴 いや、けっこう迷いましたね。ある曲を「MANSTER」に振り分けて、次の曲ができると「前の曲はやっぱり『MANTRAL』かな」と思ったり。そういう入れ替えが何回も起こって、それが面白い部分でもあり、悩んだところでもありました。収録曲を決めて終わりではなくて、今度はアルバムに合わせてアレンジを変えたり。どっちにしても簡単に“陰と陽”みたいな分け方はできなかったです。

──確かに表裏一体ですよね。「MANSTER」は音響的にも攻めているロックアルバムに仕上がっています。先行配信された「SPIN!」は人生が目まぐるしく回転する瞬間を描いたアッパーチューンです。雄貴さんと岩井さんの「とにかく面白い曲を作ろう」というアイデアから制作が始まったとか。

雄貴 そうですね。「名曲じゃなくていいから、面白くてカッコいいものを作ろうよ」という日があって、岩井くんと僕でいろいろ試してたんですよ。スタジオは僕の家の中にあって、家族も住んでるから、子供の友達が駆け込んでくることがあるんですけど、その日はなぜかめちゃくちゃ邪魔が入る日で。

岩井 そうだね(笑)。

雄貴 「面白い曲を作ろうと思ってるのに、なんで邪魔するんだよ!」とイライラしながら(笑)、すごいスピードでアイデアを詰め込んだら、「あれ? 普通じゃない曲ができそうだぞ」と。冒頭でエフェクトをかけた声を使ってるんですけど、それを聴いたときになぜかたまごっちを思い出して。サウンド的にはモダンだと思うけど、どこかに懐かしさを感じたんです。「この曲は早く聴いてほしい」と思って先行配信したら、ファンの人たちから「『PORTAL』(2012年発表のアルバム)の頃のGalileo Galileiが戻ってきた」というコメントがあって。懐かしさを感じたという意味で、ファンと僕らの意識は共通なんだなと思いました。

──なるほど。ちなみにお子さんの友達は、皆さんがバンドをやってることを知ってるんですか?

雄貴 知ってると思うけど、興味はなさそうです(笑)。たまに公園で遊んであげたりするんですけど、小さい頃の思い出って、めっちゃ残るじゃないですか。大きくなってから「公園でおじさんたちと遊んだな」と思い出すんじゃないかなって。そういう経験も曲になったりします。子供たちと野球をやって、気付いたら夕方になって。子供たちが1人ずつ帰っていって、ごはんの匂いもしてきて……そういう体験って、この年齢になるとできないですよね。そういうときに僕も小学生の頃、たぶん一番幸せだった時期を思い出して、それが「MANTRAL」に入ってる「カラスの歌」につながったりしています。

尾崎雄貴(Vo, G)

尾崎雄貴(Vo, G)

「どうやって?」ではなく「やってみよう」

──岩井さん、「MANSTER」の中で印象に残ってる曲は?

岩井 「PBJ」かな。この曲、僕はまったく参加してなくて、制作の過程も90%くらい知らないんですけど、「こんな引き出しもあるんだ?」とびっくりしました。LAUSBUBの髙橋芽以さんのコーラスもすごくいいんですよ。

──髙橋芽以さんはいくつかの曲にコーラスで参加していて、それも作品の魅力につながっていると思います。和樹さんはどうですか?

和樹 最後の「KING M」はかなり挑戦的だなと思ってます。この曲は雄貴と岡崎くんが2人で作ったんですよ。僕はほかの予定があって作業に参加できなかったんだけど、いきなり「『MANSTER』を締めくくるにふさわしい曲ができました」とリンクが送られてきて。聴いた瞬間に「めちゃくちゃいいな」と思ったし、個人的にすごく印象に残ってます。

──すべての曲を全員で作ってるわけではないんですね。

和樹 はい。メンバーの中でいろんな組み合わせがあります。

雄貴 全員そろうと遊んじゃいがちなんで(笑)。

岡崎 そうだね(笑)。僕は「MATTO LIFE」が印象深いかな。冒頭のサウンドやメロディが象徴的ですが、野球に影響を受けてできた曲です。

岡崎真輝(B)

岡崎真輝(B)

雄貴 「MATTO LIFE」は作り始めたときはもうちょっとモダンな感じだったんですよ。和樹と岡崎くんがドラムとベースを考えるタイミングで、ロックの王道のコード進行に変えてみたら、この曲が進むべき方向が見えてきた。馴染みがあるというか、グッと生活感に寄った曲になりましたね。

──「ヴァルハラ」についても聞かせてください。「MANSTER」を「MANSTER」たらしめた楽曲ということですが、これはバンドセッションが元になっているとか。

雄貴 はい。僕と岡崎くん、和樹が集まって、そのときに思い付いたギターを弾いて、それに合わせてドラムとベースを鳴らして。まさにセッションですよね。曲のテーマとしては、神話感?

岡崎 うん。

雄貴 さっきも言いましたけど、バイキングや北欧神話にハマって、乾杯するときに「スコール!」とデンマーク語で言ったりしてた時期があるんですけど(笑)、「ヴァルハラ」にはその影響が出てると思います。Galileo Galileiが楽しいのは、「バイキングみたいな曲を作ろう」と言ったときに、「それをどうやってバンドに取り込むの?」みたいなことを誰も言わないから。ただ「いいね、やってみよう」と言うだけ。そういう感じで作った曲が多い気がしますね、今回の2枚のアルバムは。