Galileo Galilei「Tsunagari Daisuki Box」インタビュー|7年ぶり再始動を果たした彼らの原点、そしてこれからを感じて

昨年10月に約7年ぶりの再始動を発表したGalileo Galilei。活動再開の第1弾として、5枚組ボックスセット「Tsunagari Daisuki Box」が届けられた。未発表曲、初CD化曲、新曲「4匹のくじら」を含む企画盤(DISC 1)、ラストツアーの札幌公演を中心に映像を収めたBlu-ray(DISC 2)、インディーズ1stアルバム「1tas2」復刻盤(DISC 3)、インディーズ1stシングル「HELLO GOODBYE」復刻盤(DISC 4)、初の全国流通作品「雨のちガリレオ」(DISC 5)からなるこのボックスセットは、Galileo Galileiの原点と軌跡を追体験できる、再始動という新たな門出を飾るにふさわしい作品に仕上がっている。

音楽ナタリーでは、メンバーの尾崎雄貴(Vo, G)、岩井郁人(G)、岡崎真輝(B)、尾崎和樹(Dr)にインタビュー。再始動に至った経緯、ボックスセットの内容、そして5月31日にリリースされる7年ぶりのニューアルバム「Bee and The Whales」の展望などについて聞いた。

取材・文 / 森朋之撮影 / 斎藤大嗣

再始動へと導いたある夜の天啓

──昨年10月に発表されたGalileo Galileiの再始動は大きな話題を集めました(参照:Galileo Galileiが活動再開、新体制でZeppツアー)。まず、再始動に至った経緯を教えてもらえますか?

尾崎雄貴(Vo, G) 2021年の末にBBHFのライブが福岡であって。前日の夜、宿泊先の部屋でボーッとしてるときに「Galileo Galilei、今やれるんじゃないか?」と急に思い立ったんです。そういうときは人にすぐ伝えてできるかどうか判断したいタイプなので、BBHFのサポートで一緒に福岡まで来ていた岩井くんに連絡しました。岩井くんが「やらない」と言ったらGalileo Galileiはやれないので、まずは聞いてみようと思って。

尾崎雄貴(Vo, G)

尾崎雄貴(Vo, G)

──天啓に打たれたように「Galileo Galileiをやろう」と?

雄貴 そうですね。岩井くんにも、「なんかさあ、やりたいんだよね」と迷ってる感じではなくて、「俺はやりたいんだけど、どう?」という話し方をしました。

岩井郁人(G) Galileo Galileiの再始動は予想してなかったので、驚いたし、感動しました。まさか雄貴からその言葉が出ると思ってなくて、「ありがとう」って言っちゃったんですよ。

雄貴 俺も「ありがとう」って返しました。

岩井 ただ、即決で「やるよ」とは言えないなと思いました。自分はGalileo Galileiを一度脱退したわけだし、その後、自分でバンド(FOLKS)を立ち上げて、それも今は休止していて。バンドを続けるのは簡単ではないので、「ずっと続けられるやり方を一緒に模索したい」という話をしたんです。その後、何度も何度も話し合いを重ねて、一番いい形を探しながら今に至った感じですね。

岩井郁人(G)

岩井郁人(G)

雄貴 岩井くんは自分の会社を持っているし、ソロとしても活動していて、映像の仕事もやっているんです。クリエイティブなことをやっているのを知っていたので、「それを辞めてガリレオをやってね」とはまったく思ってなくて。僕も僕でソロプロジェクトのwarbearや、Galileo Galileiの活動終了後に結成したBBHFというバンドがあって、それを止めることは考えてなかったんですよ。「お互いにガリレオとは別に守るべきものがあるよね」という状態をわかっていたし、だからこそ気持ちよく、建設的な話ができたんだと思います。

「大事な話があるから」

──岡崎さんもBBHF、warbearで雄貴さんと活動をともにしてきました。

岡崎真輝(B) はい。

雄貴 岡崎くんはサポートとしてベースを弾いてもらうことが多かったし、音楽を聴きながらお酒を飲んだり、友好を深めていたんです。岩井くんに話をしたあと、BBHFのリハのときに、岡崎くんに「このあと、残って」と声をかけて。

岩井 「大事な話があるから」って(笑)。

雄貴 含みを持たせたわけではないんだけど、岡崎くん、「え、なんですか?」みたいな感じで。

岡崎 (笑)。

雄貴 「まだ確定してないけど、Galileo Galileiをやろうと思ってるんだよね。そうなったらベースを弾いてほしい」と話しました。ずっと岡崎くんを何かのプロジェクトで正式メンバーとして迎えたいと思っていたし、岡崎くんもその場で「やります」って言ってくれたんです。でも、帰り際に「やっぱりもう1回考えます」って(笑)。

岡崎 雄貴さんからも「この場で決めなくていいから」という言葉をいただいたんですよ。話をいただいたときは高ぶりを抑えらず「やります」と言ったんですけど、落ち着いていちから考えてお返事しようと。もちろん自分としてはその時点で前向きな気持ちでした。

岡崎真輝(B)

岡崎真輝(B)

──岡崎さんがGalileo Galileiを知ったのはいつ頃ですか?

岡崎 「閃光ライオット」というオーディションですね。Galileo Galileiは初代グランプリ(2008年)で、それ以来、自分にとって憧れのバンドでした。メンバーとして加入して、最近ようやく地に足が着いてきたんですけど、最初はフワフワした状態でした。「画面の向こうにいる人たちだ」っていう(笑)。

雄貴 この前フェリーの中で「それぞれの第一印象と今の印象を話そうぜ」という話になって。岡崎くんの僕らに対する第一印象は「有名人」だったみたいです(笑)。

岡崎 (笑)。BBHFのサポートを数年やらせてもらって、尾崎雄貴さん、尾崎和樹さん、岩井郁人さんとして認識しました。

雄貴 AIみたい(笑)。岡崎くん、(尾崎兄弟の地元の)稚内に親戚がいるそうなんですよ。

岡崎 Google Earthで稚内を見ながら、「ここ知ってます」って話して。

雄貴 稚内、狭いからね(笑)。でも、そのことで僕は運命的なものを感じました。

Galileo Galileiじゃないとできないことがあった

──和樹さんはどのタイミングで再始動の話を聞いたんですか?

尾崎和樹(Dr) いつだったかな……。

雄貴 (笑)。岩井くんに話す前から、酔っぱらってウダウダ好き勝手言ってたんですよ、和樹には。

和樹 そうだった。「ガリレオやりたい」とか「やる」ではなくて、「ガリレオ……どうしようかな。うーん」って悩んでいたというか。そういう話になることはたまにありました。なのでGalileo Galileiをやるって聞いたときも驚きはなかったです。いいバンドになって、いい音楽を作るのは確定しているし、自分も「やろう!」って感じでした。うれしさもありましたね。Galileo Galileiの好きな曲をもう一度ライブでやれるかもしれないなって。

尾崎和樹(Dr)

尾崎和樹(Dr)

──なるほど。雄貴さん、和樹さん、岩井さんはGalileo Galileiの活動終了後も近い距離で付き合ってきたわけじゃないですか。

雄貴 そうですね。家族ぐるみでパーティをやってるような(笑)。

岩井 いつも一緒にいるよね(笑)。

──疎遠になったわけでもなくて、ずっと一緒に音楽をやってきて。でも、Galileo Galileiという名前で活動するのはやっぱり特別なことなんですね。

雄貴 うん、そうですね。やると決めるまでは、和樹以外の人にその話をしたことはなかったし、みんなからその名前が出ることもなかったです。そもそもGalileo Galileiの再始動を思い付きもしなかったというか……。warbearとBBHFでは、自分が出したいものを昇華しきれないという思いはあったんですけど、「俺に残された道はGalileo Galileiか……いや、それはないな」という感じでしたね。それはたぶん、この3人も一緒だったんじゃないかな。だから岩井くんも驚いたんだろうし。

岩井 うん。

──Galileo Galileiじゃないと表現できないことがある、と。

雄貴 はい。それは絶対ありますね。

岩井 僕もそれはめちゃくちゃあると思っていて。「自分はBBHF、warbearのメンバーにはならないだろうな」と思っていたんですが、それはGalileo Galileiのためだったんだなと。僕たちが曲を作って、探求するときの一番コアな部分、音楽に対する好奇心が詰まったバンドなんですよね。それをどこかで求めていた気がするし、みんなもそうだったんじゃないかな。音楽という手段でみんなの好奇心を満たしながら旅を続ける、探索を続ける。それはGalileo Galileiというバンドじゃないと、どうしてもできない気がして。

雄貴 そうだね。

岩井 それは今作っている曲にも出ていますね。不思議だけど、Galileo Galileiという名前があることがとても大事なんだなと思います。

──自由にクリエイティブを発揮できる場所なんですね。

岩井 そうですね。この数年でそれぞれがスキルを身に付けて、また集結しているので。

雄貴 再始動を発表したあと、BBHFのEP(2022年5月発表の3rd EP「13」)を作ったんですよ。その後、Galileo Galileiの楽曲の制作が始まったんですけど、レコーディングの雰囲気とか、喜びの種類がぜんぜん違っていて。小学生の男の子的な「これやってみようぜ」という冒険心を満たす場所としても成り立ってしまう。BBHFやwarbearは「作品を作って、それをライブでやる」というところにフォーカスしてるんですが、Galileo Galileiはそうではなくて。ブラック企業じゃないけど、「ここまでいきたい」と思ったら、とことんやっちゃうんですよ。

和樹 (笑)。

雄貴 さっき岩井くんが「音楽をやるうえで一番コアな部分」という話をしてたけど、それは僕も同じで。音楽を仕事にする、僕らの音楽を聴いてくれる人に対してできることをやって生活することの根源にあるのは、音楽を通して探求心が満たされたり、レベルアップしたと感じることなんですよ。それを満たせる場所が一番大事だし、今は最高の時間を過ごしてますね。

Galileo Galilei

Galileo Galilei

岡崎 いい音やいい曲ができたとき、斜に構えて何も言わずに頷くみたいなことはなく、「最高!」みたいな感じなんですよ。

岩井 わかりやすいよね。

雄貴 「ウキャー!」っておサルみたいになってます(笑)。

岡崎 自分の感情をダイレクトに出せているのもすごくよくて。そういう環境があるのも、このメンバーだからだと思います。僕にとって奇跡のような瞬間が毎日のように起きてますね。これを途切れさせたくないし、なんなら合宿とかもしてみたいんです。

雄貴 だからか。岡崎くんが最近、合宿の話をしているのは(笑)。

岡崎 はい(笑)。いいアイデアがどんどん湧き上がってきてるのに、「今日はいったん解散」ってなるのがもったいないなと感じていて。

和樹 しかもメンバー全員がそれぞれ、お互いに持ってない、優れた部分を持ち合わせていて、それがぶつかることも一切ないんですよ。自分の考えの深さまでメンバーが潜ってきてくれないことって起こりがちだと思うんですけど、それもなくて。「みんなすごいな」ってリスペクトしている状態がずっと続いているし、みんなと一緒にスタジオで音楽を作ってるだけで満足で、幸せだなって思います。

雄貴 和樹、帰りたがらないよね。BBHFやwarbearの制作は、「もう帰っていいかな」というサインを送ってくるんだけど(笑)、ガリレオではずっといるし、ニコニコしていて。きっとうれしいんですよね。