音楽ナタリー Power Push - Galileo Galilei
“終了”という名の始まりを前に
今まで一度も立ち向かったことなんかないんじゃないか?
──雄貴さんにとってのポイントになった曲は?
雄貴 サウンド面で言うなら「嵐のあとで」ですね。ミックスしてくれたマイク・クロッシーのサウンドも含めて、自分たちが意図していたことがハマったと思える瞬間があって、すごく自信がついた曲でした。それでいて自分たちが想像していた以上のものになることってあるんだ、とも思ったし、それって初めての経験だったんですよ。あとびっくりしたのは、この曲は既発のシングル曲だったからアルバムに入れたら浮くと思っていたのに、浮かなかったんですよね。アルバム版はマスタリングをグレッグ(・カルビ)にお願いしているんですけど「マスタリングだけでこんなに変わるんだ」と驚いたんです。そういう意味でもすごく勉強になったというか。
──あと「Sea and The Darkness」というアルバムタイトルは、どんなふうに決まっていったんですか? 1曲目の曲名とアルバム名、どっちが先だったんでしょうか。
雄貴 アルバムタイトルが先でした。Galileo Galileiを終わらせようとしている自分たちの境遇や、最初のほうに言った自分たちが覚えている孤独感のようなものにすごく似合うなと思ったんですよ。俺らが何年間のうちに感じてきた孤独って、「ぽつん」というような孤独ではなくて、むしろ波のようにもっと襲い掛かってくるような孤独だったり、悔しさだったり、悲しみだったんです。そして俺たちは「楽しい、楽しい」って言いながら、ずっとその孤独から逃げてきていたというか。だから今回のアルバムのテーマとして、自分たちのこの数年の人生と、引き裂かれるような悲しみからどうにか逃れようとすること、というのがあって。ただ、その悲しみや孤独って誰もが感じることでもあると思うんです。例えば「ゴースト」の歌詞で言う「ペットが死んだ」ということだったりするんですけど、その悲しみを現実のものとして受け止められない人もいれば、逆にペットのことを忘れたくないからと悲しみが終わることから逃げている人もいるかもしれないし。俺はそれってどっちもすごく人間らしい行為だと思う。今回アートワークにジョン・コーディ・キムっていう作家の「Steadfast Stanley」というアニメのキャラクターを使わせてもらったのも、崩壊した街で離れ離れになった飼い主を探しながらゾンビから逃げていくという作品に、自分たちの状況が重なった部分があったからで。俺たちが今までやってきたのも何かから逃げることで、正直立ち向かったことは今まで一度もなかったんじゃないかって、自分では思っているんです。
自らと立ち向かった先に見える世界
──だとすると、今回そういうものを表現することで、初めてそれに立ち向かっているのかもしれないですね。
雄貴 俺自身は今回のアルバムで、自分という人間をやっと舞台に上げたような感覚があるんです。それがGalileo Galileiとしての最後の作品だったというのは意図してなかったことなんですけど……。
佐孝 結局、俺らが好きな1970年代のバンドに「なんでパワーがあるんだろう?」ということを考えたとき、それって雄貴が言っていた通り、彼らが自分をさらけ出していて、そこに魂を感じるからだと思うんですよ。もちろんサウンドもカッコいいから参考にしたいけど、それだけじゃなくて、魂が一番大事で。今回の作品は、その自分たちの魂の部分に触れられていると思うし、そこがこれまでのアルバムとは違うと思うんです。もちろん、これまでもそうしたくてやってきたけど、なかなかできるものではなかったというか。
和樹 だから、今回のアルバムを聴いていると「これができるまでに時間がかかったな」という感覚になるんです。「ボーカリストが曲を作っているんだから、自分たちはそれに似合う演奏をすればいいや」ということではなくて、ベーシスト、ドラマーとして「俺たちはこういう人間なんだ。だからでっかい音で弾くんだ」「叩くんだ」みたいな思いを音に乗せられるようになるまでに。「なんでこれまでやってこなかったのかな」「もっと早く気付いていればよかったのに」って。でもGalileo Galileiというバンドが終わっても、また新しい形で音楽ができることになるんであれば、そこでまた「こういう人間だからこう叩くんだ」っていう挑戦はしたいし、それができるのはうれしいことで。今回は、そういう先のことも考えながら作ってましたね。
──和樹さんの言う通り、Galileo Galileiというバンドでは今回が最後の作品になるものの、皆さん、これからも音楽を続けていくと思います。「Sea and The Darkness」を完成させた今、これからについては、どんな可能性を感じていますか。
雄貴 しばらくは地べたを歩くべきだと思うから、まだこの先どうなるかはわかりません。もちろん寂しい気持ちもあるけど、ワクワクしている感覚も実はあって……。それはたぶん、今回のアルバムで自分たちという人間をしっかり表現できたからでもあると思いますね。
──今回の歌詞には不安をテーマにしたものが多く出てきますが、実は過去形が多いですよね。そのあたりからも、ポジティブな今の3人の姿がうかがえるような気がします。
雄貴 過ぎ去ってしまったことや、そのことについてもう手遅れだったと気付くこと……。自分はそれについて考えるのが好きだし、そういう経験をすることが多い人間なんです。それでいて自分たちは失敗をすごく恐れる人間でもある。でも、それが特殊なタイプだとは思わないし、そういう人が多いと思うんですよ。何かのキャンペーンみたいに「前に進もう!」「がんばれ!」っていろんなところに書いてあるけど、「何をがんばるの? どうがんばるの?」「それよりこの不安をどうにかしてほしい」って感じている人は多いんじゃないかって。今回の作品は特に何かのメッセージを残すわけでもなく、誰かに寄り添うという種類のものでもないんだけど、そういう人が「ただ受け取ることはできる」。「同じようなことを考えてるヤツらもいるんだな」って思ってもらえる、そういうアルバムになっていたらうれしいですね。
- ニューアルバム「Sea and The Darkness」 / 2016年1月27日発売 / SME Records
- 「Sea and The Darkness」
- 期間限定通常盤 [CD+DVD] 3600円 / SECL-1835~6
- 通常盤 [CD] 3200円 / SECL-1837
CD収録曲
- Sea and The Darkness
- カンフーボーイ / Kung Fu Boy
- ゴースト / Ghost
- ウェンズデイ / Wednesday
- ベッド / Love Song
- 鳥と鳥 / Bird Cage
- 燃える森と氷河 / Different Kinds
- 日曜 / Her Surprise
- 恋の寿命 / Limit of Love
- 嵐のあとで / Aftermath
- ユニーク / Unique
- ブルース / Blues
- 青い血 / Blue Blood
- Sea and The Darkness II(Totally Black)
<ボーナストラック>
- クライマー(re-master ver)
- ボニーとクライド(re-mix, re-master ver)
期間限定通常盤DVD収録内容
- 恋の寿命 -Music Video-
- 嵐のあとで -Neue Vox Session-
- クライマー -Music Video-
- カンフーボーイ with POP ETC
Galileo Galilei "Sea and The Darkness" Tour 2016
- 2016年3月1日(火)北海道 苫小牧ELLCUBE
- 2016年3月4日(金)岡山県 IMAGE
- 2016年3月6日(日)広島県 CAVE-BE
- 2016年3月8日(火)香川県 DIME
- 2016年3月12日(土)熊本県 熊本B.9 V2
- 2016年3月13日(日)福岡県 DRUM Be-1
- 2016年3月15日(火)石川県 vanvan V4
- 2016年3月18日(金)大阪府 Music Club JANUS
- 2016年3月19日(土)京都府 磔磔
- 2016年3月21日(月・祝)兵庫県 神戸VARIT.
- 2016年3月23日(水)愛知県 ElectricLadyLand
- 2016年3月25日(金)静岡県 Sunash
- 2016年3月27日(日)東京都 LIQUIDROOM
- 2016年3月28日(月)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
- 2016年3月30日(水)茨城県 mito LIGHT HOUSE
- 2016年4月1日(金)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
- 2016年4月3日(日)宮城県 darwin
- 2016年4月6日(水)東京都 LIQUIDROOM(※追加公演)
- 2016年4月10日(日)北海道 札幌PENNY LANE24
※アルバム「Sea and The Darkness」にLIQUIDROOM公演チケット先行予約用のフライヤー封入。
Galileo Galilei(ガリレオガリレイ)
尾崎雄貴(Vo, G)、佐孝仁司(B)、尾崎和樹(Dr)を中心に2007年に北海道・稚内にて結成。2010年2月にミニアルバム「ハマナスの花」でメジャーデビューを果たす。その後「青い栞」「サークルゲーム」などでヒットを記録し、2013年10月にはPOP ETCのクリストファー・チュウをプロデューサーに迎えて制作されたアルバム「ALARMS」を発表。邦楽ファンのみならず洋楽ファンからも支持を集める。2014年2月には東京・渋谷公会堂での初ホールワンマンを行い成功を収めた。同年10月にはクリストファー・チュウプロデュースのミニアルバム「See More Glass」を発表。2015年には3月に「恋の寿命」、6月に「嵐のあとで」という2枚のシングルを立て続けに発売し、10~11月にはPOP ETCも参加したツアー「"broken tower tour" 2015」を実施し、12月には表題曲がアニメ「ハイキュー!! セカンドシーズン」のエンディングテーマに採用されているシングル「クライマー」をリリースする。そして2016年1月に4thアルバム「Sea and The Darkness」を発表。春から実施される全国ツアーをもってGalileo Galilei名義での活動を“終了”することが発表された。