音楽ナタリー Power Push - Galileo Galilei
“終了”という名の始まりを前に
「これは一体なんなんだ?」という曲と、なんなのか説明する曲
──今回のアルバムには、タイトル曲として「Sea and The Darkness」と「Sea and The Darkness II (Totally Black)」がそれぞれ最初と最後に収録されています。この2つの曲には、それぞれ音楽性は違うものの、バンドの最近のモードが反映されているように思えるんですが、具体的に影響を受けた音楽はあったんですか?
雄貴 まず、1曲目の「Sea and The Darkness」を作るときに1つ考えていたのは、アルバムを「シンセがメイン」とか「ギターロックのアルバム」とか、そういうふうに思われたくなかったということで。「これは一体なんなんだ?」って思われるものにしたかった。実際、完成した今、自分たち自身でもそう思ってるぐらいなんですけど(笑)。そういうアルバムを作るにはなんとも言えない感じで始まるのがいいと思って、歌とアコギから録っていきました。曲のイメージとしては、波に飲まれてにっちもさっちもいかないような状態。演奏もクリックなんかに合わせず、それぞれの楽器がうねるようにしたかったんです。影響を受けた音楽は具体的にはなかったし、俺はよくわからなかったんですけど、ドラムを録ってくれた方が「これはジョージ・ハリスンだね」と言っていて、そうかなあって(笑)。ほかには……ポール・ウェラーだっけ?
和樹 うん、「雄貴は嫌いだろうけど、ポール・ウェラーみたいな雰囲気も感じる」って(笑)。
──ああ、なるほど。ギターをハードに弾きながら歌い上げる感じは似ているかもしれない。
雄貴 で、最後の「Sea and The Darkness II (Totally Black)」は、最後に作った曲ですね。このアルバムは結局なんだったのかを曲で説明して終われたらいいなと思って。最初はインストのつもりで作っていたんですけど、やっているうちに歌を思い付いて。あと80'sっぽいドラムが欲しくなったり、「サックスを入れなきゃいけない」とも思ったりして。そんなことを思い付いたのが締め切りギリギリだったので、期限を延ばしてもらいました。「もう少し時間をください。サックスを入れないと終われないんです」って。もともとジョージ・ハリスンの「You」(1975年のアルバム「ジョージ・ハリスン帝国」に収録)の頭に入ってるサックスとか、ポール・サイモンの「Still Crazy After All These Years」(1975年の同名アルバムに収録)のサックスソロとかが最高に好きで、「そういう曲を作れたら、俺もサックスを入れてみたい」ってずっと思っていたんです。
「全部気に入っている」アルバムのポイントとなる曲
──「Sea and The Darkness II (Totally Black)」は特に、デビューした頃のGalileo Galileiには絶対にできなかったタイプの曲ですよね。
雄貴 そうですね、思い付きもしなかったと思う(笑)。でも、できたときに特にみんなから何かを言われたわけではなくて。仁司もこの曲と比べたわけではないと思うんですけど、「1曲目(「Sea and The Darkness」)いいよね」って言ってたんで、「そうなのか」という感じで。だから「Sea and The Darkness II」がすごく特別なものというわけでもなくて。正直に言うと、これまではアルバムの中にはお気に入りの曲もあれば、そうじゃない曲もあったんです。でも尾崎雄貴個人としては、俺の書いたものもそうだし、仁司と書いた「ボニーとクライド」も含めて、今回の曲は全部気に入ってるんですよ。
──「ベッド」にはAimerさんが参加していますね。同じく彼女が参加した「See More Glass」の「バナナフィッシュの浜辺と黒い虹」もそうでしたけど、およそ普段のAimerさんが歌いそうなタイプの曲ではないというのが面白いところで。
雄貴 Aimerさんの声の魅力に気付いたのは菅野(よう子)さんと一緒に仕事をしたときで、これはただのいちアーティストとしての自分の感想なんですけど、Aimerさんの声って確かにダークめなんだけど、「もっとすごいぞ、この人は」「いろんな歌を歌うべきだ」と思っちゃったというか。イメージが合わないから、もしかしたら断られる可能性もあったと思うんですけど、レコーディングのときに「こんな曲歌ったことなかったし、すごく勉強になります」って感激してくれて。Aimerさんは音楽を受け取るセンスがすごくある人で、受け取った上でちゃんとAimerというアーティストとして返してくれるんです。「そこはもう少しかすれた感じで」って言っても、ただかすれさせるだけじゃない。だからこっちも引き出される感じがあって、すごく楽しかったですね。
──雄貴さんは「全部気に入っている」と言っているけど、佐孝さんと和樹さんも好きな曲、もしくは作品のポイントになったと思う曲はない?
雄貴 アルバムを聴き直すたびに変わるよね?
佐孝 うん。しかもMVを作ったりするために、みんなの推し曲を挙げてみると、今回のアルバムってスタッフも含めて全員がバラバラなんですよ。それってすごいことだなって思うんですけど(笑)、個人的には「青い血」ですね。メロディが好きなんですよ。Aメロとかが、ちょっと聴いたことのない、普通ではない感じになっていて。これは雄貴しか作れない曲だと思うんですよね。
和樹 僕は「鳥と鳥」。これまで尾崎雄貴が書いてきた歌詞の中で、これが一番好きなんです。それにこの曲は、Galileo Galileiでは初めてツインドラムを使っている曲で。……ツインドラムと言っても自分が2回叩いているんですけど(笑)、The Doobie Brothersの曲とか、矢野顕子さんの「ごはんができたよ」(1980年の同名アルバムに収録)とか、知らず知らずのうちに好きで聴いていた曲が、実はツインドラムだったということがけっこうあったんです。2つのドラムを同じ人間が叩いた感じにしたほうがいいのか、違う人間が叩いた感じにしたほうがいいのかが難しくて、けっこういろいろ考えたんですよ。
次のページ » 今まで一度も立ち向かったことなんかないんじゃないか?
- ニューアルバム「Sea and The Darkness」 / 2016年1月27日発売 / SME Records
- 「Sea and The Darkness」
- 期間限定通常盤 [CD+DVD] 3600円 / SECL-1835~6
- 通常盤 [CD] 3200円 / SECL-1837
CD収録曲
- Sea and The Darkness
- カンフーボーイ / Kung Fu Boy
- ゴースト / Ghost
- ウェンズデイ / Wednesday
- ベッド / Love Song
- 鳥と鳥 / Bird Cage
- 燃える森と氷河 / Different Kinds
- 日曜 / Her Surprise
- 恋の寿命 / Limit of Love
- 嵐のあとで / Aftermath
- ユニーク / Unique
- ブルース / Blues
- 青い血 / Blue Blood
- Sea and The Darkness II(Totally Black)
<ボーナストラック>
- クライマー(re-master ver)
- ボニーとクライド(re-mix, re-master ver)
期間限定通常盤DVD収録内容
- 恋の寿命 -Music Video-
- 嵐のあとで -Neue Vox Session-
- クライマー -Music Video-
- カンフーボーイ with POP ETC
Galileo Galilei "Sea and The Darkness" Tour 2016
- 2016年3月1日(火)北海道 苫小牧ELLCUBE
- 2016年3月4日(金)岡山県 IMAGE
- 2016年3月6日(日)広島県 CAVE-BE
- 2016年3月8日(火)香川県 DIME
- 2016年3月12日(土)熊本県 熊本B.9 V2
- 2016年3月13日(日)福岡県 DRUM Be-1
- 2016年3月15日(火)石川県 vanvan V4
- 2016年3月18日(金)大阪府 Music Club JANUS
- 2016年3月19日(土)京都府 磔磔
- 2016年3月21日(月・祝)兵庫県 神戸VARIT.
- 2016年3月23日(水)愛知県 ElectricLadyLand
- 2016年3月25日(金)静岡県 Sunash
- 2016年3月27日(日)東京都 LIQUIDROOM
- 2016年3月28日(月)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
- 2016年3月30日(水)茨城県 mito LIGHT HOUSE
- 2016年4月1日(金)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
- 2016年4月3日(日)宮城県 darwin
- 2016年4月6日(水)東京都 LIQUIDROOM(※追加公演)
- 2016年4月10日(日)北海道 札幌PENNY LANE24
※アルバム「Sea and The Darkness」にLIQUIDROOM公演チケット先行予約用のフライヤー封入。
Galileo Galilei(ガリレオガリレイ)
尾崎雄貴(Vo, G)、佐孝仁司(B)、尾崎和樹(Dr)を中心に2007年に北海道・稚内にて結成。2010年2月にミニアルバム「ハマナスの花」でメジャーデビューを果たす。その後「青い栞」「サークルゲーム」などでヒットを記録し、2013年10月にはPOP ETCのクリストファー・チュウをプロデューサーに迎えて制作されたアルバム「ALARMS」を発表。邦楽ファンのみならず洋楽ファンからも支持を集める。2014年2月には東京・渋谷公会堂での初ホールワンマンを行い成功を収めた。同年10月にはクリストファー・チュウプロデュースのミニアルバム「See More Glass」を発表。2015年には3月に「恋の寿命」、6月に「嵐のあとで」という2枚のシングルを立て続けに発売し、10~11月にはPOP ETCも参加したツアー「"broken tower tour" 2015」を実施し、12月には表題曲がアニメ「ハイキュー!! セカンドシーズン」のエンディングテーマに採用されているシングル「クライマー」をリリースする。そして2016年1月に4thアルバム「Sea and The Darkness」を発表。春から実施される全国ツアーをもってGalileo Galilei名義での活動を“終了”することが発表された。