ナタリー PowerPush - Galileo Galilei
故郷の一軒家で作り上げた新たな世界「PORTAL」
10代限定フェス「閃光ライオット」の初代グランプリという肩書きを引っさげ、2010年2月にメジャーデビューを果たしたGalileo Galilei。彼らの静謐さと情熱を併せ持つ個性的なサウンドは幅広い層から高く評価され、東京での活動を通じてその知名度を飛躍的に上昇させていった。
そんなGalileo Galileiの活動は2011年に大きな変化を迎える。同年春、出身地である北海道の札幌市にプライベートスタジオを設立し、自分たちの手だけで新たな音楽を作り始める。さらに12月には岩井郁人(G)の幼なじみである新メンバー、野口一雅(Piano, Organ)が加入。大きな環境の変化を経て、Galileo Galileiのサウンドはさらなる成長を遂げた。
そんな成長が如実に感じられるのが、今回リリースされた2ndフルアルバム「PORTAL」だ。このアルバムの魅力、さらにバンドの現在のモードを、アルバムレビューと独占動画から確かめてほしい。
レビュー / 高橋美穂 ライブ撮影 / 高田梓
Galileo Galilei「PORTAL」レビュー
Galileo Galileiが2ndフルアルバム「PORTAL」を完成させた。2ndフルアルバムではあるが、今作は、はじまりのアルバムと言うに相応しいだろう。
2010年のメジャーデビューのタイミングで、故郷・北海道から上京した彼ら。しかし、それから約1年後の2011年春、札幌に一軒家を借りて共同生活を始める。そのガレージを改造してスタジオ(その名も、わんわんスタジオ!)を作り、そこで楽曲制作はもちろん、レコーディングからミキシングまでの作業を、メンバー自ら行うようになったのだ。さらに、岩井郁人(G)のかつてのバンド仲間だった野口一雅(Piano, Organ)が加入し、5人編成になった。
居心地がいい故郷に、いつでも音楽を生み出し、記録できる環境を作ったことで、才能をのびのびと発揮できるようになったこと。そして、キーボーディストがメンバーになったことで、アイデアをより具現化できるようになったこと。この2つの要素が揃ったことで、Galileo Galileiは、本当の意味でのスタートラインに立てたのだと思う。実際に「PORTAL」を聴くことで、「お茶の間にも切り込めるポップセンスを持った新世代のギターロックバンド」というデビュー当時に私が彼らに抱いていた印象は、「音楽シーンに名を刻む革新的なロックバンド」へと変わっていった。
とは言え、違和感がある音楽性に変化したわけではない。尾崎雄貴(Vo, G)の柔らかな声が描くメロディは、すうっと耳に溶け込んでいく。ただ、インディロックやエレクトロニカ、ダンスミュージックなど、国内外の音楽の動向が鮮やかに取り入れられていて、聴けば聴くほど、はっとさせられるのだ。どの楽曲も、既存のポップミュージックの方程式に当てはまることなく、自由で、遊び心にあふれている。90年代に生まれた5人組ならではのビビッドな感性が、何にも邪魔もされずに生かされていると思う。そしてインストを含む全14曲の中で、想像を膨らませるような物語が展開されていくのだ。
歌詞においても「老人と海」「Good Shoes」「くじらの骨」など、タイトルからして気になるキーワードが、たくさんちりばめられている。歌詞を、その主張に感情移入するでも、メッセージに背中を押されるでもなく、本を1ページ1ページめくっていくような感覚で聴くことができるのだ。それがとても心地良い。
「PORTAL」には、大きな建物の正門という意味がある。その門とは、さまざまな音楽に触れられる門? ワクワクする物語の門? Galileo Galileiの世界への門? いずれにせよ、私たちを新しい場所に連れていってくれる門であることには、間違いないはずだ。
収録曲
- Imaginary Friends
- 老人と海
- Kite
- Swimming
- さよならフロンティア
- Freud
- Good Shoes
- 明日へ
- 星を落とす
- Blue River Side Alone
- 青い栞
- スワン
- 花の狼
- くじらの骨
初回限定盤DVD収録内容
- 青い栞 Music Video
- さよならフロンティア Music Video
- 明日へ Music Video
Galileo Galilei(がりれおがりれい)
2007年に北海道・稚内で結成されたロックバンド。元々音楽や映像が大好きだった尾崎雄貴(Vo, G)&尾崎和樹(Dr)の兄弟が、自宅のPCでさまざまなライブ動画を観たことをきっかけに自宅にあった楽器に触れるようになる。この“遊び”が母体となり、佐孝仁司(B)とともにGalileo Galileiを結成。バンドオーディションに送ったデモテープがきっかけとなり、5000組超の参加者の中からファイナルステージまで昇りつめグランプリを獲得する。2009年11月に岩井郁人(G)が加入し現在の編成に。同年末に屋内フェス「COUNTDOWN JAPAN 09/10」に初出演を果たし、翌2010年1月にはデビュー前にもかかわらず「ハマナスの花」がau「LISMO!」CMソングに起用される。この曲を含むミニアルバム「ハマナスの花」で、同年2月にメジャーデビュー。2011年2月には初のフルアルバム「パレード」をリリース。オリコンウィークリーチャート初登場5位を記録した。同年4月にはSHIBUYA-AX、11月には新木場STUDIO COASTでのワンマンライブのチケットをソールドアウトさせ、ライブバンドとしても高い評価を得ている。12月には岩井の幼なじみである野口一雅(Piano, Organ)が新メンバーとして加入。5人組バンドとして新たなスタートを切った。2012年1月、2ndフルアルバム「PORTAL」をリリースする。