どんなに晴れっぽい曲でも、ちょっと天気が悪くなる
──90年代UKロック直系の楽曲から、フォークロア、ニューウェイブ、ダンスミュージックまで、多彩なサウンドが反映されているのも印象的でした。GALAXIEDEADの音楽性、めちゃくちゃ広いですよね。
デッド そこは意図せずというか、似たような曲を作ろうと思っても、作れないんですよ。「こういう感じの曲は前にもやったしな」と思うと、別のことをやろうとするクセがあって。同じパターンというか、1つのひな型で何曲も作ることがないので、自然といろんな方向の曲ができちゃうんです。だからライブで演奏するのが大変なんですけどね(笑)。
岡田 そうだね(笑)。特に今回はマンガをもとにしている曲が多いから、原作コミックのストーリーやシーンに合わせている分、余計に幅が広がっているのかも。アルバムの全曲を並べると、同じ人が作ったとは思えないっていう(笑)。
デッド 曲調もそうだし、ジャンルの系譜も1曲ずつ違うから、全曲通して聴くと正体不明なんですよね(笑)。
岡田 でも、不思議と統一感もあるんですよ。薄曇りで、天気が悪い感じというか。
デッド イメージだけどイギリスっぽい感じ?(笑)
──確かにカラッと晴れてる雰囲気はないですね。
デッド そうですよね。デモを作ってるときも、「最後は自分で歌うから、いいか」って思うんですよ。この声で歌うと、どんなに晴れっぽい曲であっても、ちょっと天気が悪くなるっていう。
岡田 もやっぽいんだよね。そこがいいところだと思うし、なかなかいない声ですよね。
デッド あとはやっぱり、いろんな人たちからの刺激が大きいですね。山田玲司さん、桐木憲一さん、岩井澤監督もそうですけど、いろんな人の助けを借りて、影響を受けまくってできあがったアルバムだと思うので。お題をもらって曲を作るのも楽しいし、燃えるんですよ。掻き立てられるものがあるし、本当に恵まれているなと。前作の「やさしいスポンジ」は、完全に自分だけで作った私小説みたいなアルバムだったんですよ。東京に出てきたことのあれこれ、貧乏したことのあれこれなんかを、なるべく事実と違わないように曲にしようと思ったので。
──今回の「ボイスコミックジェネレーション」はまったく逆の作り方ですからね。外部の人たち、特にミュージシャン以外のクリエイターとの関わりの中から生まれた作品というか。
デッド 曲の着想がまったく自分じゃないっていう(笑)。そういう状態でも曲が書けることがわかったし、いい体験をさせてもらいました。皆さんから受けたインスピレーションが体に入ってきて、それが粉々になって、メッセージみたいなものが浮かんできて。不思議な体験でしたね……次はどうしようかな?
岡田 私小説に戻るのがいいんじゃない? まあ、単に自分が聴きたいだけだど(笑)。
デッド (笑)。そういう作り方もできるし、すでに曲もできつつあるんだけど、自分自身を題材にするとときどきキツくなるんですよね。もう歌うことがない、とか。
岡田 自分を切り売りしてる感じね。
デッド 「こんなこと歌ってもショボいよな」とか。
岡田 それもあるね。
デッド 切り売りしてもいいんだけど、それが曲として映えるというか、華がある曲になるかどうかわからないじゃないですか。日常なんて、パッとしないことのほうが多いわけで……そういう意味でも、マンガやアニメ、小説に触れて、違う視点や演出の方法を取り入れるのは大事ですよね。もとは私小説風の曲であっても、切り取り方によって違う曲になると思うので。
ネットを介して広まってきたプロジェクトだけど
──「ボイスコミックジェネレーション」のリリース以降は、どんな展開になりそうですか?
デッド 今まで通りというか、映画やCMの音楽を作っていきたいし、バンド形式の活動もやりたくて。今回きのこ帝国の西村“コン”さんがドラマーとして参加してくれているんですが、このアルバムのメンバーを中心にしつつ、いろんな形でやってみたいんですよ。15人編成くらいのビッグバンドとか、いずれは。
岡田 いいじゃない。やってみよう。
デッド (笑)。あとはなんだろうな? アニメの主題歌もやってみたいですね。オファー、お待ちしてます。
岡田 僕はGALAXIEDEADの曲のファンなので、もっとこいつの曲を聴きたいし、関わりたいと思っていて。あとは広め方ですよね。宅録で始まって、ネットを介して広まってきたプロジェクトなんですけど、今後はもう少しライブにも力を入れていきたいですね。
──「ボイスコミックジェネレーション」にもライブで映えそうな曲が多いですからね。
デッド 目下練習中です(笑)。レコーディングに参加してくれたメンバーと一緒にライブをやりたいと思ってるので。ほかのバンドとは出自が違うというか、ライブハウス出身というわけではないんですけど、いろんなバンドと交流したいし、できればフェスにも出てみたいので。
岡田 ライブ、がんばりましょう。
デッド はい(笑)。新作を作りながら、ライブも続けていくのがとりあえずの目標ですね。