純粋な気持ちを信じて
──たかはしさんの思う「ぶらんこ(Lycanthrope)」のMVの見どころはどこですか?
最後のマフラーが出てくるところかな。
──狼男が女の子のマフラーを巻いて登場するシーンですね。あのシーンはすごく切ないですね。
はい、キュンキュンします! 私、キュンキュンするマンガとか映画が好きなんです。新海誠さんの作品とか。あ、そう言えば、この曲には新海誠さんの「星を追う子ども」っていう映画の雰囲気も入ってます。
──なるほど。ではこのMVを観た人に、どういうメッセージを伝えたいですか?
初心に戻ってほしい。見返りとか捨てて「なんとなく」の気持ちを信じて、純粋に好きな人や好きなことに突き進んでほしいです。
──まさに今回のテーマ「Follow Your Heart & Music(自分の心に従え。音楽と一緒に)」ですね。
はい。
──内藤監督のコラボや「ぶらんこ」の再レコーディングなど、さまざまな“挑戦”をした今回の企画の感想を教えてください。
今までで一番ワクワクする制作でした。全部好きなんですよ。どこも妥協してない。こんなに本当に自分の100%を出せたのは初めてなんじゃないかな。
音が自分の心を代弁してくれる
──今回のテーマ「Follow Your Heart & Music(自分の心に従え。音楽と一緒に)」にちなんでお聞きしたいんですが、たかはしさんは、何かに挑戦するときに音楽に背中を押されたり、支えられたりした経験はありますか?
挑戦するときじゃないんですけど……音楽が自分の心を代弁してくれてるなと思うことがあって。落ち込んだときってギターを持っても、コードが弾けないんですよ。そういうときは本能のまま音を鳴らすしかなくて。聴く音楽もグランジとか現代音楽とかばっかりになります。あとライブも自分の心を解放できる場所ですね。ライブのときだけは本能のままに生きられるんです。動物とか赤ちゃんみたいに。
──人からどう見られるかが気にならなくなる、ということでしょうか?
はい。
──あんなに多くの人に観られているのに不思議ですね。
ギターを爆音で鳴らすのが好きなんです。
「列伝ツアー」を経て
──「挑戦」と言えば、2月に始まったスペースシャワーTV主催のライブツアー「スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2018」も、バンドにとっては大きな挑戦だったのではないでしょうか?
はい、かなり。最初は「早く帰りたい」って思ってました……なんか大人の人がいっぱいいて怖いんです。後半は大人の人とも仲良くなって、居心地もよくなったんですけど、初めは緊張しちゃって。
──「列伝ツアー」には“出演する4組がしのぎを削るツアー”というイメージがありますが、今回一緒に回ったIvy to Fraudulent Game、SIX LOUNGE、Saucy Dogからの影響はありますか?
今回の4組はそんな感じがなくて。誰が1位みたいな感じじゃないんですよ。だからよかった(笑)。でも自分たちの中でバンドへの意識が変わりつつあって。
──どう変化しているんですか?
スタジオにたくさん入るようになりました。今まではそんなにスタジオに入ったりしてなかったんで。あとライブ前にメンバーで真面目に話したり、ライブ後に反省会をするようになりました。
──その気持ちの変化はどうして起こったんですか?
練習すれば悪いライブをしても後味が悪くならないってことに気付いたんです。「列伝ツアー」って長いからもしその日うまくいかなくても「次がある」って思えるのかなって思ってたんですけど、この場所でやる列伝は1回しかなかったんだって。
──自分たちのツアーではそういう感覚にならなかった?
はい。「次があるから」って思ってました。
──その気持ちの変化は今後の活動にも大きく影響しそうですね。
かなり大きく影響すると思います。今までは絶対に音楽を仕事だと思いたくなかったんです。努力してるって思いたくなかった。あくまでもバンドは趣味で、自分はずっとフリーターでいたい。今も思ってるんですけど。でも今回、努力した結果の解放が本当の気持ちよさなんだなって気付いて「そう思うと仕事っていいなあ」って。まあこの考えはずっとは続かないと思いますけど……でも音楽は一生やりたいです。
「自分が聴きたい曲を作ればいいんだ」という気付き
──では最後に、たかはしさんが今後挑戦したいことを教えてください。
曲をたくさん作りたい。いろんなジャンルの曲を作りたいです。一時期、何を作ればいいのかわからなくなっちゃって曲が作れなかったんですけど、今は一気に曲ができてきているところで。
──何を作ればいいのかわからなくなったところから、どうやって曲ができるようになったんですか?
曲を作るのをやめてたんです。困難にぶち当たったらまずやめる。で、半年くらい曲を作ってなかったんで、その反動で今は半年分の曲が一気にできています。
──曲を作らない半年間は何をしてたんですか?
本を読んだり音楽を聴いたり。そうしているうちに最近「自分が聴きたい曲を作ればいいんだ」ってわかったんです。聴きたい邦楽ってあんまりないなってことに気付いて「だったら自分で作るしかない」「自分のために曲を作ろう」と思いました。
──じゃあこれからできる曲は、今までの曲とはずいぶん変わりそうですね。
はい。今できてきてる曲も、すでに変わってます。自分のことを歌うようになった。自分の思ってることがちゃんと書けるようになったと言うか。
──前は「曲が降ってくる」と言っていましたが、その作り方も変わりそうですか?
降ってこなくなっちゃったのかなって思うくらい、自分の内から出てくるものを曲にしてます。
──この半年の間に何があったんですか?
大人になっちゃったんです。
──でもそこで「降ってこなくなったから音楽作るのしんどい」ということにはならないんですね。
はい。こうやって考えが変わっていくことで、音楽を作ることを何年も続けていけるんじゃないかな。
──次は大学を卒業するタイミングでも変化しそうですし、そうやって、一生曲が作れそうですね。
そう思います。今回1つ乗り越えたので、このあとは一生曲が作れるんじゃないかなって思います。楽しみです。
2018年3月29日更新